ソードアート・オンライン 幻影の暗殺者   作:双盾

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技量と道筋(努力)は比例していない

時間は深夜、人通りも全くない広場で、俺とアスナ、それと黒猫団一同が並んでいた。

俺とアスナは距離を取る。

カウントが始まった。

3、アスナは細剣を、俺は木の棒を掴み

2、互いに視線を交差させ

1、切先を合わせて

0、アスナは接近し、俺は後退した。

ジリジリと距離が狭まってくる。

そしてアスナの攻撃範囲に届いた瞬間、

 

「ふっ!!」

 

ウインドフルーレの刀身が黄色い光を放つ。

細剣初期スキル『リニアー』だ。

この技を初期スキルだと言って侮ってはいけない。アルゴによれば単発技のなかで最も速いとのことだ。

身を低くしたままサイドステップで正面から外れると、俺のいた場所に閃光が走った。

 

「くっ」

 

間一髪、刀身が見えないほどの早業。回避は困難。スキル後硬直もほとんどない。

厄介な。

更に距離を縮めて追撃の細剣ソードスキル『ストリーク』。しかし今度は剣閃を捉えることができたので余裕をもって躱していく。

 

「そこだ」

 

僅かな硬直時間を狙って投剣初期スキル『ソードシューティング』を放ちつつ距離を取っていくが、

 

「まだよ!」

 

投剣をスレスレで避けていく。刃は髪を霞めていくがダメージ判定にはならない。

加速して鋭い突きを放ってくるアスナを視線から外さずに後退し続ける。

 

「もう逃がさないわよ!!」

 

「俺は逃げてるわけじゃないんだぜ?」」

 

俺の後ろには建物の壁。迫るアスナ。黒猫団が息を呑む。

そして、渾身の細剣スキル『アヴォーヴ』。

俺は、壁を蹴ってアスナの攻撃をスレスレで躱して背後に回る。アスナは攻撃が破壊不能オブジェクトに弾かれスキル硬直で動けずにいる。

 

「終わりだ」

 

メニューから対戦についてを出して降参を選択する。

「WIN アスナ」という表示が出て、アスナの硬直が解ける。

木の棒をストレージにしまっていると、アスナが問い詰めてきた。

 

「どうして降参したの?あのまま攻撃してれば勝てたでしょう?」

 

「今回のデュエルは俺が勝つことが目的じゃない。実力を見れたらそれでよかったから」

 

落ちている投剣を回収して、振り返る。

 

「まあ、実力って言うのはさ。本人に合った方法で鍛えないと意味無いってことは分かっただろ?」

 

「っ!!」

 

「だからさ、しばらく休んでから、自分に合った戦いを見つければいい」

 

「…………分かりました。少し休んでみましょう。それでも変わらなかったら、今のような方法を取ります」

 

「ん。じゃ、さっさと寝てしまえ。ベッドは俺の貸しておくから」

 

夜はこれからと言いたいが、まだ幼いユウキには良くない。

俺はあることを考えた。

 

「サチ、ユウキ。アスナと寝てみたらどうだ?誰かが近くにいた方が安心するだろ?」

 

「ジン!?何言って…………」

 

「いいねそれ!!アスナ、一緒に寝よ?」

 

「ユウキ!?」

 

サチは俺とユウキに翻弄されてオロオロしている。アスナもどうしようかと言った表情で困っているが、ユウキの無邪気な瞳の攻撃力と凄まじい押しの前に、OKの返事を返してしまった。

黒猫団はいつも賑やかで明るい雰囲気で満たされていてそれは、他人が関わろうと変わることはないのだ。

俺の寝床は、ケイタに貸してもらった。

 

 

 

 

翌日、俺はスキル構成とレベルについて考えていると、俺の部屋から女子3人が出てくるのを見た。

3人は楽しそうに、まるで姉妹のように笑いあいながら出てきた。実際の姉妹はそんなことはないんだろうけど。

ユウキが3女、サチが次女、アスナが長女だ。

 

「あ、ジン!おはよー」

 

「おうっ、おはよう」

 

飛びつき抱き着いてきたユウキを受け止め、抱き返して挨拶する。

ニヒヒッっと笑うユウキの頭を撫でてやる。バーチャルだからだろうか髪は滑らかでサラサラで、甘い香りが感じられた。できればずっと撫でていたい。

 

「ジン、おはよう」

 

「おはようございます」

 

「おはようサチ、アスナもな」

 

小さく手を振って挨拶するサチと、その横で頭を下げるアスナ。アスナの態度は未だに硬いが、心なしか表情が柔らかく見えた。

サチは調理場へと向かい、アスナは俺と対面する席に腰掛ける。

やがて、続々とメンバーが起きてくる。

ササマルが他メンバーの中では最も早く、次にケイタ、そしてダッカーとテツオが起きて、全員が揃った。

丁度、調理が終わったようで料理の数々が運ばれてくる。

しかし今日の料理はいつもと少し違った。

 

「ローストビーフか。珍しいな」

 

「アスナさん、全然食べてなかったって言ってたから。猪肉より柔らかい物の方がいいと思ったから」

 

なるほど、と納得し「いただきます」を言って料理の数々に手を付けていく。

こうして俺達の1日が始まった。

 

 

 

 

 

俺達は樹海エリアの少し奥、岩林エリアに来ていた。

 

「よーし、今日のノルマはモンスター1000体討伐+半径5kmのマップ作成だ。気合入れていくぞ」

 

「「「「「おおー!!!」」」」」

 

「え、こんなに?皆一体レベル幾つなの?」

 

皆がいい返事を返す中で、アスナが困惑している。

アスナの質問には俺が答えた。

 

「このギルドの主戦メンバーの平均が大体20で俺とユウキが25だ。アスナだったか?お前のレベルは?」

 

「じゅ、13」

 

「ん、そか。まあプレイヤー平均の少し上ってところか」

 

ソロでこのレベルは相当の期待ができるな。

実際にデュエルの時の動きは中々の物だったからな。

 

「んじゃユウキ、アスナと行動してやってくれ」

 

「りょーかい!!」

 

「皆、行動開始だ!!」

 

皆完成している南以外の方向、アスナとユウキは東に、ケイタとダッカー、テツオが西に、俺とササマルは北に向かって進んでいった。

ササマルは速度重視なバトルスタイルで、目指す人物は本田二代だそうだ。

 

「硬いな!!」

 

この岩林エリアにはゴーレムタイプのモンスターが出現し、言わずとも分かる通り硬い。

攻撃力もそれなりに高く、非常に厄介なのだが動きが遅く、単調なので慣れるとノーダメージでの撃破ができるのだが時間がかかる。

 

「このぉ!!」

 

ササマルは、槍中級スキル『ブラッシュ・バッシュ』で応戦している。

ブラッシュ・バッシュは、槍スキルの中でも珍しい打撃技で、5連続攻撃という高威力かつ高速な柄や石突きでの薙ぎ払いと突きの技だ。

スキル後硬直が長いが、ゴーレムは今の技で少し遠くに吹き飛び、近づいてくる間に硬直が解けて止めの『ソニック・チャージ』を放った。

ゴーレムは砕け散り、少し高めの経験値が入る。

 

「うへぇ、今回は手古摺りそうだね」

 

「その方が燃えるだろ?」

 

「ジンはそういうやつだったな」

 

呆れの表情を見せると、ゴーレムの掃討に励んだ。

俺はそこまで強いとは思えなかった。だって毒ダメージに極端に弱かったから毒与えて放っておいたら死んでたみたいなことが殆どだったから。

 

 

 

 

「ではノルマ報告の時間だ」

 

黒猫団ホームにて、俺はそう宣言する。

まず最初の報告はユウキ、アスナペア。

 

「余裕だったよ!!ついでに強そうなの見つけたから倒したらコレドロップしたんだよ!」

 

ユウキがドロップしたとかいう武器を具現化する。

出てきたのは大き目の細剣だった。

『ライティング・ラッシュ』と名のつけられた細剣は、白い刀身に光沢感のある鍔と、見るからにレアなものだと分かった。

DEX+3とAGI+2という高能力。持った感じも短剣と同じくらいの軽さで、高速での攻撃が安易に想像できた。

これをアスナが使えば名の通り【光の猛攻】を見せてくれるだろう。

パーティーメンバーではないにしても攻略速度が上がるのでアスナにプレゼントしても問題無いだろう。

 

「OKよくやったユウキ。こいつはアスナにくれてやれ」

 

「へ!?そんな、私は」

 

「いいのいいの。アスナに使ってくれってジンが言ってるんだから」

 

「…………わかったわよ。ありがとう」

 

「じゃ次」

 

ユウキとアスナの微笑ましい会話が終わる前に次の報告を促す。

で、結果として全員がノルマを達成できているということだったので今回のMVPはユウキということだった。

報告会が終わるとサチがお疲れ様と料理を運んできた。

今度はステーキに野菜サラダと、バーチャルなのに何故か栄養バランスのいい食事が出てきた。

まあ美味しいからいいので文句はないのだが。




自分にあったやり方大切。

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