1話 織部正也という少年は(前編)
人は1人では生きられない。
たとえ目には見えていなくても、いつだって沢山の人に支えられ、助けられながら俺は今日も生きている。
こんな事を口に出して言うのは恥ずかしい事かもしれない、でもみんな恥ずかしいから口に出して言わないだけで、きっと心の中では分かっている事なんだと俺は思う。
父さんは俺にこう言った。
絆は宝だ
人との繋がりは大切だ
家族、恋人、親友、友達――すべての人間関係は、決して
俺も本当にそう思うんだ。
事実、俺は沢山の人に支えられながら今日まで生きてきた。
だから、俺だって誰かを支えたい。
そして今まで助けられてきた分、俺だって誰かを助けたい。
俺に追うべき背中を見せ続けてくれた父さんを
仕事で忙しいはずなのに、俺にしっかり愛情を注ぎながら育ててくれた母さんを
お互いに全てをぶつけ合うケンカをして、俺の初めての男友達になってくれたアイツを
ピアノを通じて音楽の素晴らしさを教えてくれた、ちょっぴり素直じゃないあの子を
昔泣いてばかりだった俺を、優しく励ましてくれた俺の大切な三人の親友を
――そしてこれからの未来に出会う、俺と関わるすべての人を支えたい、助けたい。
それが出来た日に初めて、俺は『カッコいい男』になったと胸を張って言えるはずだから。
■ ■ ■ ■ ■
「ね、ねぇ……
「も~かよちんったら~! さっきから大丈夫って凛はずっと言ってるにゃ!」
ここは、東京都千代田区にある
学校が終わって放課後、そこは本来であればあまり人がいないはずの時間帯であるが、今日は珍しく音ノ木坂中学指定のセーラ服に身を包んだ二人の少女の姿があった。
その二人のうち、若干猫語が混じった日本語を巧みに操る少女は、オレンジ色の髪をボーイッシュな長さにまで切りそろえて、どこか活発そうな印象を受ける。
一方もう1人の少女は、活発そうな少女とは対照的に、眼鏡をかけ、明るいブラウンの髪をショートボブにし、いかにも人見知りしそうな女の子といった印象があった。
「でも……迷惑じゃないかな……?」
そう言って眼鏡をかけた少女……
「迷惑なんかじゃないよ! かよちんは先輩に相談したいことがあるんでしょ!?」
「う、うん……そうだけど凛ちゃん……」
凛が言うように、確かに花陽には今、頭を悩ませている“ある事”があった。
しかもそれは、誰に相談しても何とかなるような内容の悩みでなく、どうしようと花陽は今日まで途方に暮れていた。
そんな花陽の様子を見かねたのか、普段から役員でもないのにも関わらず、生徒会室によく入り浸っている事が多い凛に
『困ってるなら、先輩たちに相談したらいいにゃ!』
――と言われ、放課後になってから凛にほぼ強制的に連行される形で花陽はここに居るのだが……
「こ、心の準備が……」
そう、圧倒的にそれが足りなかった。
確かに、
「も~! ほら行くよ、かよちん!」
そんないつまでも生徒会室に入ろうとしない花陽に、ついに我慢ならなくなったのか、凛は花陽の手をつかみ、そのまま生徒会室へと強引に引っ張って行った。
「ええっ!? まって凛ちゃん! 本当に待っ……誰か助けて~~!!」
「お待たせしましたー! かよちんを連れてき……」
花陽の助けを求める声も
そこには、生徒会室に来客してきた生徒を、堂々と迎える生徒会長の姿があった。
さぁ、ご覧あれ―――これが生徒の模範となるべき存在の、
「――学園に巣食う闇を払う!
俺の名は『
…………ああ……なんという事でしょう。
そこには恥ずかしくも、一人で堂々と長鏡に向かってポーズを決め、ビシッと指を差しながら、何かの決め
「…………し、失礼しました…」
凛はそう言いながら、見てはいけないものを見てしまったといった顔で、ゆっくりと生徒会室の扉を閉めた。
「り、凛ちゃん……? 今のが生徒会長さんなんだよね……?」
「かよちん、今日は帰ろう……凛たちは何も見なかったんだにゃ……」
「凛っ!? 来たんならノックぐらいしてから入ってくれない!?」
そう言いながら真っ赤な顔をして生徒会長――正也が生徒会室の扉を勢いよく開け放つ。
そんな正也に、凛はまるで初対面の人に会うかのような顔をしてこう返す。
「ど……どうしたんですか、『
すいませんが、凛たちは正也先輩に用があるのでこれで……」
「ああああーーー!! やっぱり聞いてたか死にてぇぇぇーーーーっっ!!!」
現在、思春期真っ只中の男子中学生の悲痛な絶叫が、放課後の校舎内に響き渡った。
■ ■ ■ ■ ■
「で……凛、今朝言ってた子は連れて来てくれた?」
あの後、なんとか落ち着きを取り戻した正也は、廊下で立ち話もなんだからということで、花陽と凛を生徒会室に招き入れると、凛にそう問いかけた。
「はい! 『
「おい、それ以上そのネタで俺をイジるなよ凛!? ついには泣くぞ!? 俺、案外涙もろい性格してんだからなぁーーー!!」
にこやかにそう言ってからかってくる凛に対して、若干目の端に光るものを滲ませつつそう言い返す正也。
「……ふふっ…ふふふっ……」
花陽にとっての一般的な生徒会長のイメージとは、ずいぶんかけ離れた印象を感じさせる正也のそんな姿に、先程までの緊張はどこへいったのかという風に花陽は不思議と笑ってしまっていた。
「ああ~もう……全く、凛は仕方ないな本当に―――ええっと、君が凛が言ってた“かよちん”でいいんだよね?
初めまして、俺は三年の
花陽の先程までの緊張した顔がほころんだ所を見逃さず、すかさず正也は花陽に明るく親しみのこもった丁寧な口調で、改めて自己紹介をした。
「は、はい、私は二年の小泉花陽です。いつも凛ちゃんがお世話になっています……」
そんな正也の絶妙なタイミングの自己紹介に、花陽は人見知りな自分にしては本当に珍しく、初対面の人に比較的リラックスして自己紹介が出来た自分に驚く。
先程はとっても恥ずかしい姿を晒してしまったが、そこは流石に生徒会長。
対人スキルの高さはそれなりにあるようであった。
「いや、凛にはいつもこっちの方がお世話になってるよ、よく生徒会の仕事を手伝ってくれてるしな」
「ふふ~ん! それ程でもないにゃ!」
正也の言葉に、自慢げに胸を張る凛。
「でも、もれなく失敗した時の後始末も全部俺がやってるから、結局はプラスマイナスゼロってとこかな~」
「あ~! 酷いよ正也先輩! 凛がせっかく手伝ってあげてるのに~!」
「はははっ! 冗談冗談! いつもいつも本当に助かってるよ……ありがとう凛」
正也はからかうような表情から一転、真面目そうな顔を作るとそう言って凛に対して優しく微笑んだ。
「そ、そんな真面目に言われても、それはそれで困るからやめてよ正也先輩……」
そう言って照れる凛の姿を見ながら、正也はニヤッとイタズラっぽく笑って後ろを向く。
「しめしめ……これで生徒会の残り任期満了までの貴重な人手の信頼をゲットだぜ……この後輩、やはりチョロい!」
「い、一瞬でも喜んだ凛が馬鹿だったにゃ!?」
花陽の目の前で展開される、凛と正也の楽しげな会話。その会話の内容から凛と正也の間の、気の置けない関係が垣間見ることが容易にできる。
花陽にとって、自らの幼馴染である凛が生徒会のお手伝いをするようになった理由は、実は未だに謎ではあるが、確かにここ半年ほど凛は陸上部の部活の合間を縫って、飽きもせずに生徒会のお手伝いを続けているのは事実だった。
もしかしたら、先程から垣間見せるこの2人の仲の良さも、そこに起因してるのかもしれない。
そう思うと花陽は、凛と正也が楽しげに会話しているのを見ていると少し羨ましく思えてしまっていた。
「よし、前置きもこの辺にして――そろそろ本題に入っていいかな?
小泉さん、今日はここに相談があるって凛から聞いてるんだけど、それを話してくれない?」
―――と、だらだらするのはそろそろお終いとばかりに、そう言った正也の雰囲気が、明るいフレンドリーな先輩から、一人の生徒会長としての真面目なそれに変わる。
凛も正也が真面目になったのを感じて、黙ったようだ。
そんな正也の姿を見て花陽は、出会ってから短時間で早くも様々な顔を見せるこの織部正也という人物を、本当に不思議な人だと思った。
でも、何より凛ちゃんが……自分の幼馴染がこんなにも心を許しているこの人なら、信頼してもいいのかもしれないと花陽は決断し、その口を開く。
「…………はい、わかりました」
花陽は少し深呼吸をした後、少し迷ったような表情をしたが、やがて意を決したように話し始める。
「わ、私には仲良くしてもらっている先輩が居るんです。
た、たまたま同じ委員会に入ることになったのがきっかけで知り合ったんですけど―――その人は本当にいい先輩なんです!人見知りでうまく話せなくて困ってた私を、優しくフォローしてくれて……他にも沢山……沢山お世話になってて!
―――でも、そんな先輩が急に元気が無くなって……私、心配になって、大丈夫ですか? って聞いても先輩は『大丈夫だよ』って、辛そうに笑って言うばかりで!
そして……一週間前から学校に来なくなっちゃって……っ!」
彼女が紡ぐ言葉は、感情が先走っていてうまく言葉にできていないようだった。
それでも伝わる。
その言葉は、確かに助けを求める彼女の心の叫び
「絶対何か果歩先輩にあったはずなんです! 事件かトラブルか―――とにかく何があったのかはわかりません。でも、私には…どうにもできなくて……っ!
だから、もしかしたら
……お願いします!どうか!果歩先輩を助けてください!!」
最後にそう言って、花陽は涙ながらに頭を下げる。
そんな花陽の言葉を聞き、正也は一瞬目を見開いて、そしてゆっくりと目を閉じた後、呟く。
「―――それは……生徒会の業務をはるかに超えた内容の相談だね……」
正也の言葉に花陽はビクッと肩を震わせる。
(ああ……やっぱり駄目だったんだ。そうだよね、こんな話されても困るだけだって、わかってたのに私……)
花陽がそう思ったその時だった。
「―――でも、
「え……?」
花陽は正也の声に下げていた頭を上げた。
その時、花陽は初めて目の前に居る正也の顔を正面から直視する。
自信に満ち溢れた表情、確かな意思を受け取ったと言いたげな力強い輝きを放つ黒い瞳。
その口元はニカッっと自信ありげに微笑み、見るものに不安を与えない笑顔を浮かべていた。
「小泉さん、相談してくれてありがとう。
その依頼――生徒会を代表して、この
その声に、表情に、
ただあるのは目の前の泣いている後輩を助けたいという意思。
その正也の姿に花陽は確かに感じた。
音ノ木坂中学の生徒の笑顔を
「……はい! ありがとうございます!」
花陽はそう言うと、正也にもう一度頭を下げる。
礼を述べる彼女の表情に、もう涙は無かった。
「よし、そんじゃあ今日はやることがあるから俺は先に帰るな! 凛、後の戸締りはよろしく!」
正也は凛にそう言うと椅子から立ち、生徒会室のカギを凛に向かって放り投げると、机に散らばる私物を急いで片付け始めた。
「わわっ…! えっ……正也先輩!?」
「じゃあまた明日~!」
正也は手提げ鞄を肩にかけると、
生徒会室に残されたのは凛と花陽の二人きりとなった。
「―――え、もう行っちゃったにゃ正也先輩……」
「―――ほ、本当に大丈夫なのかな?」
……依頼をしておいてなんだが、正也の落ち着きのないその様子に少し不安になってしまう花陽だった。
■ ■ ■ ■ ■
「……よう、来やがったか正也」
「悪い! 待たせちゃったな
生徒会室から飛び出した正也はすぐさま家に帰った……と思われたがそうではなく、学校の空き教室内で正也のことを待っていたらしい、中学生の平均的な身長より一回りも大きなガタイの良い太った男と、何やら会話をしているようだった。
「いや、後輩待ってたんだろ?いらねぇよ別に……と思ったがやっぱり有難くもらっとくわ、10個な」
「10個とか……そんなんだからまだ太ったまんまなんだよお前は……」
「うるせえよ!? これでも少しは前より痩せたんだよ!」
彼の名前は
彼と正也は、小学生の時にお互いボロボロになるまで殴り合い、その後お互いを認め合って仲良くなるといった、週刊少年誌も真っ青なレベルのベタな経歴を経て親友になった仲である。
「クッソ……今度から筋トレ内容また増やしてみるか――うん? それにしてもなんかいつもよりやる気みたいだな正也、どうした?」
「ああ、やっぱりわかる? これでもついさっき可愛い後輩からの期待を背負ったばっかりだからな!」
正也はそう言うと、武司に誇らしげな顔で親指を立ててサムズアップした。
「え、またお前なんか頼まれごとを引き受けやがったのか!? 今の追ってる
「いや大丈夫、俺も実はビックリしたんだけど、奇跡的にタイミングが良かった依頼だったのもあったから、自信満々に引き受けてきました!」
「はぁ……お前がそんなんだから、生徒会が生徒の間で『何でも屋』とか『お悩み相談室』とか言われてるんだぞ?」
武司は若干そんな正也にに呆れながらそう言う。
その表情には、こうして人の苦労を簡単に背負おうとしてしまう自らの親友に対する心配の色があった。
「あはははは……。本当にそうだよな、なんも言い返せないよ。
それでも、こんな俺を今まで支えてくれたみんなに感謝してる。この生徒会長やってた1年間で、俺は1人じゃ何もできないってことを改めて痛感させられたよ。
――でも、多分この仕事が今期生徒会としての最後の大仕事になりそうだからさ、ここまで来たら最後までよろしくな、武司」
正也は昔を思い返すかのように目を閉じて……そして満足したような表情で武司に対してそう返した。
武司はそんな正也に応えるように軽く笑った。
「――はいはい、最後まで付き合うぜ正也……よし、そんじゃあ頼まれてた
「そうか、それは良かったよ……サンキュー武司、いつもこういう時悪いな」
「良いんだって……俺とお前の仲だろ?
それにこの学校をシメてる俺のとこには、こういう学校の裏の情報は集まりやすいからなぁ……」
「ははっ、頼りにさせてもらってるよ」
そう言ってニヤッと笑う武司に、正也も同じくニヤッと笑って返す。
―――ここで正也の親友である、柊 武司という人物について紹介しておこう。
小学生の頃、クラスの中で立派に“ガキ大将”の役目を務め、そして中学に入って“番長”に転身するといった華麗なる経歴を持つ男である。
そんな彼の築き上げてきた武勇伝は、数えればキリがないほどである。
そんな彼が保有する武勇伝の中で最も豪快なものの中に、入学早々中学一年でありながら武司は、音ノ木坂中学に
そんな武司に正也は、何故そんな事をしたのかと尋ねた事がある。
すると武司は、『大した理由はねぇよ……ただ、俺がやりたいからやっただけだ』と、その理由を話そうとしなかったが、彼が番長となってから音ノ木坂中学の不良達が校内で起こす問題が激減したという噂を聞くと、その理由を察することも容易なものである。
仲間に優しく、義理と人情に溢れる“漢”――それが正也が評する柊 武司という人物である。
「でもこれだけじゃ証拠としては不十分なんだよな、どうしたもんか―――あ、そう言えば今日は
そう言って武司は、今この場に居て当然の存在が居ない事を不思議そうな顔で正也に問いかける。
「ああ……今日は三人ともちょっと用事があって……」
正也は武司に目線を合わせないようにして俯く。
そんな正也の様子に色々察した武司は、少し顔を引き
「――――おい……まさか……?」
「――――はい……ご想像の通りです」
正也は観念したようにそう言った。
「おいおいおい……マジかよ……っ!
ガキの頃から全く成長してないなあの“猪突猛進娘”! ――正也!アイツ、おまえの女ならそろそろマジで首輪でもつけとけよ!」
武司は正也の発言を聞き、『マジであり得ねぇ!』と今にも叫びそうなオーラを全身に漂わせながら、頭を抱えて大声でそう言った。
「そう言う誤解を生む発言はやめてくんない!?
大体俺の女とかじゃないから! 三人とも
「あーあーあー! 出ました出ました『ただの幼馴染ですから』発言! お前、この中学校生活の約三年間でそれトータルで何回いいましたかぁ~!?」
「本当にみんな中学になってからそればっか聞いてくるよな!?
しかもそういう関係じゃないって事実を言っても全然信じてくれる気配がないし……!
いい加減にしてよマジで……!」
正也はそう言うと教室の床にうずくまって頭を抱えてしまった。
――どうやら本人にしては相当気にしている事のようで、全く起き上がってくる様子がない。
「はぁ……もう良いわ、この話してても延々水掛け論になりそうだしな……で、本当に良いのかよ?」
武司はそんな正也にそう問いかける。
その目は『心配じゃないのか?』と言外に正也に訴えていた。
するとさっきまでうずくまっていた正也がスッと立ち上がり、そんな武司にこう返した。
「大丈夫……だって皆が俺に『絶対任せて!』って言ったんだから。
そんな幼馴染を―――仲間を信じる事ができなくて何が『カッコいい男』だよ」
そう言ってニカッと笑う正也の表情には、自らの幼馴染達に対する強い信頼がそこにはあった。
「……はははははっ! ま、お前はそういう奴だったな!」
武司は自信満々にそう言う正也を見て豪快に笑う。
♪~♪~♬~
その時、正也の胸ポケットから携帯の着信音が鳴り響いた。
その瞬間を待ってましたとばかりに正也の顔が引き
「来たっ!! ごめん武司、俺そろそろ行くわ……」
そう言って正也は教室を後にするために武司に背を向けた。
その背中に武司が一言。
「―――助けが欲しいんだったら俺も行くぜ?」
正也は自分を心配する親友の声に対し、振り返らずにそのままこう言った。
「良いんだって、お前一昨日隣町の不良どもとやりあったって言ってたけど――その時に足首痛めてるだろ? 隠してても無理してるの俺にはバレバレだぜ?」
「全く……このお人好しヤローが……俺より弱いくせに何言ってるんだか、まぁ良いぜ、カッコよかったから許してやるよ、行って来い!」
『お前には隠し事が出来ねぇみたいだな……』と言いたげに、少し嬉しそうにニヤケながら武司はそう言って正也を送り出す。
「そりゃ、お前に比べれば俺なんて絶対弱いに決まってるっての……おう! 行ってくる!」
正也は少し苦笑いした後、そう言って勢いよく走って教室を後にする。
「――もう行っちまいやがった。
どんだけアイツらの元に駆けつけたいんだか……お前は成長しても根っこのところは全く変わってないよな本当に……」
正也が去った後、一人になった教室内で武司は笑いながらそう呟く。
「もし正也一人なら、俺は絶対着いて行ったんだろうが……ま、あの三人が居るなら問題ないか」
そう言いながら武司は手近の椅子に、足を労わるようにしてゆっくりと腰かける。
その様子からは先程までの正也への心配は既に無かった。
「だってアイツらは―――“四人揃ったら”向かう所敵なしなんだからよ」
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
また編集作業が終わり次第、すぐに今回の続きである後編も投稿させて頂きます。
もし宜しければ、後編も目を通していただけると嬉しいです。
ではまた―――――