プロローグ
――俺は今、絶賛後悔している。
俺こと『
死因である交通事故だが、それも信号が変わる際にブレーキを掛けようとしたトラックが、何故か操作不可な状態に陥り、横断中の少女に突進しようとしているのを目の当たりにしてしまい体が勝手に動いてしまったのだ。その少女を庇うように突き飛ばし、彼女が大きな怪我をしていないことを確認し、俺の意識は無くなった――。
そんな理不尽な死を突き付けられた俺だったが当然、納得出来るわけがなく、まだ生きていたかった。俺が大好きな『ラブライブ!』をもっともっと堪能したかった。死ぬなんて嫌だよ。
この願いを神様が聞き届けてくれたのか。何故なのかは知らないが、気付けば俺は再度生き返っていた。
トラックに当たってグチャグチャになったであろう五体は、充分に動かすことが出来るし、ちゃんと景色も見えるし、嗅覚も、味覚もしっかりとしている。
ただ……一つだけ。
――何故か、俺は女になっていた。
◇
「初めまして。今日からこの音ノ木坂学院に転入してきました『
俺、『片桐 光』改め、『片桐 光莉』は音ノ木坂学院にやって来た。
この世界が『ラブライブ!』の世界だと分かった瞬間の俺の行動は早かった。今までいた学校を辞め、ここに転入してきた。世間が狭いのか良くわからないけれど、俺の母親がここ音ノ木坂学院の母親と旧友で、音ノ木坂学院の理事長と話を付けることで俺の転入が認められたというわけだ。
そして、理事長から送られてきた制服のデザイン表に目を通したり、オーダーメイドで制服を注文したりと慌ただしい日常を送っていたら、あっという間に転入の日付になってしまい現在に至る。
――うん。やっぱり、後悔するね。
教壇の前に担任の教師と一緒に立つ俺だったが、後悔をしている理由は一つ。
ここ音ノ木坂学院は男子校で、生徒は男子のみということ。
(ここって本当に音ノ木坂学院で、『ラブライブ!』の世界で合ってるんだよね……。恨むよ、神様)
「この子は音ノ木坂学院の新しい試みということで通ってもらう試験生だ。可愛いのはわかるが、粗相のないようにしろよ。……片桐、お前の席はあそこだ」
そういって担任の教師が指差したのは、アッシュ色の髪を携えたかなりの美少年の隣の席。
何となく俺はこの美少年が誰なのか、把握してしまった。
自分の席までの道程を歩こうとした際、担任に腕を握られ引き留められた。
「ま、そんなわけだが、色恋に積極的なお前らのことだ。この美少女に質問したいだろう? ってことで、今の時間から一時間目終了までは、転入生への質問コーナーとする」
別に一時間目は私の授業だし、いけるだろう。と楽観的に言い放った担任だったが、俺からすれば冗談じゃない。
どんな質問が投げかけられるのかも、女の子らしい答えも何もかも理解してないのに、適切な回答なんて出来ないんだからやめてよ。
『はいはーい!!』
教師の一言によって、教室中の男子生徒の手が挙げられた。
「そうだな。じゃあ、最初は高坂からいこうか」
……高坂。この音ノ木坂学院で、二年生でありつつ、高坂という苗字を持つ人を俺は一人しか知らない。
『ラブライブ!』で本人は皆がリーダーでセンターと言っているが、メンバー全員がリーダーと認める『μ's』のリーダー。
「俺、
そういって席を立った橙色に寄っているような茶髪を短く切り揃えている美少年が声をあげた。
やはり『μ's』のリーダーで発起人である高坂穂乃果なんだね。てか、前世の俺よりもイケメンでちょっと泣きそう。この世界に置ける俺は、今の自分が言うのはなんかナルシストっぽく聞こえるから嫌なんだけど、結構可愛い容姿をしている。だから、別に気にしてはないんだけど。ちょっと、前世と比べちゃうからやだな。
穂乃果でこの容姿なのだから、他の『μ's』のメンバーもそうなのだろう。
穂乃果からあまり視線を逸らさないように、少しだけ教室内を見回すと、肩口まで綺麗な黒髪を伸ばしている少年やアッシュ色の髪でショタっぽい顔付きの少年がいた。おそらく彼らがそうなんだろうねと納得した俺は再び視線を穂乃果に戻す。
「光莉ちゃんはさ、スクールアイドルって興味ある?」
「はい?」
男女逆転でもスクールアイドルがあることにビックリなんだけど。というか、初対面で良く名前呼びが出来るよね。……穂乃果だから、仕方がないか。
音楽室で真姫ちゃんと会った後、勧誘している際は西木野さんって呼んでたはずなんだけど、気のせいかな。初対面で女の子を名前呼びって、ちょっとプレイボーイ臭がするね。
「スクールアイドル、ですか?」
「そう。ここらで有名なのは『UTX学院』の『
やっぱり『A-RISE』のメンバーも男女逆転に巻き込まれているんだ。
これで俺の予想は当たっている可能性が高くなってきた。ここに転入してくる際に理事長の姿を見たけれど、変わっていなかった。つまりはそういうことなのだろう。
言い方は悪いけれど、理事長は話に関わらない。『音ノ木坂学院』は女子高であったが、男子職員がいないわけではなかった。だけれど、『Love Live』に出場する人は全員女子だった。
この世界では教員などは性別が変わっていないが、女子しか参加していなかった企画に参加していたグループはすべて性別が逆転していると考えられる。
「――光莉ちゃんさえ良かったら、俺達『μ's』のマネージャーになって一緒に廃校を阻止してくれないかな」
※次回の更新は未定です。あまり評判がよろしくなければ一生あげることがないかも知れない作品です。
……ノリで書いただけなので。
でも、『μ's』の男性化Verを全員出すまでは書くかも