孤島の六駆   作:安楽

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4話:9ヵ月後の彼女たち④

 航空巡洋艦・熊野は鈍色の海上でうんと背筋を伸ばそうとしたが、近くに作業中の駆逐艦娘たちがいることを思い出して、気分転換を思い留まった。

 現在の熊野は水無月島の第三艦隊・旗艦。今回の任務は、第一艦隊のような陽動でも、第二艦隊のような諜報でもなく、それらの艦隊が帰還する際の撤退支援だ。

 艦隊の帰投ルートに機雷を仕掛け、追撃してくる敵艦隊を罠にかけつつ撤退するための準備。それを、熊野率いる第三艦隊と、空母・千歳率いる第四艦隊で作業中なのだ。

 

 第四艦隊の分も含めて現場監督を任されている熊野としては、ここでだらしない姿を晒して士気を下げるわけにはいかないなと考えているのだが、そんな熊野を見てくすくすと笑いを噛み殺している声が背後から聞こえてくる。

 

「……初春? 何か?」

「そう気負わずともよかろうに。伸びや欠伸をしたところで、下がる士気がそもそものう?」

 

 ワイヤーの束を解いている初春がおかしそうな、言葉にすれば「しょうがなーいのーう?」とでも言いたげな顔で笑うものだから、熊野はむっすと頬を膨らませる。

 

「確かに、うちは艦隊、部隊と言った概念はあまり強くはございませんが……。わたくしの場合は、嗜みですわ。レディとしての嗜み」

「嗜んでものう……。レディぶっておるの、うちの鎮守府ではお主しかおらぬじゃろう?」

「暁に昔のレディへの憧れを思い出してもらうべく、奮闘中ですわ? 結構いい線言ってますのよ? ――それより、初春?」

 

 熊野の語調を強めた呼びかけに、初春の肩がびくりと震える。

 

「手伝いましょうか? ワイヤー絡まったの、解けませんのよね?」

「……助けてたもう」

 

 手先が不器用な初春が涙目で絡まったワイヤーを差し出すのを、熊野は「しょうがありませんのねえ」と受け取って一緒に解きはじめる。

 しかし、手先が不器用なのは熊野も一緒であり、結局は2隻揃って叢雲に助けを求めて呆れられる始末だ。

 

「まったく、何やってんのよもう……。手順は出撃前に確認してるし、こんなの何度もやってるでしょうに……」

 

 ため息交じりにワイヤーの絡まりを解きながらやり方を示す叢雲は、水上に正座して動向を見守る熊野と初春に解き方のコツなどを言い含めてゆく。

 こういった工作系の訓練は時間を割いて幾度も行ってはいるが、まだまだ熟練どころか一人前の域にすら達していないのが現状だ。

 第三艦隊の艦娘は建造されてから日が浅い者も多く、旗艦・熊野ですらまだ建造されて3ヵ月経つかどうかと言った時期だ。

 得手不得手の凹凸を埋めるだけの実戦経験は足りず、艦隊決戦よりもこういった支援活動や航空戦隊である第四艦隊の護衛を任されることが多い。

 旗艦こそ熊野ではあるのだが、その手際や判断には甘さが多く、実質は叢雲の助言で動いている部分が強い。

 

 ならば最早、叢雲が第三艦隊の旗艦をやればとも思うのだが、それには当の叢雲自身があまりいい顔をせず、何より提督が待ったをかけているのだ。

 以前、叢雲自身が漏らした弱音を聞くに、自分はそれほど肝が据わっていないからだと言うことらしい。

 突発的なトラブルに弱く、パニックを起こして咄嗟の判断が下せなくなる。

 その光景を実際に目の当たりにした熊野としては、確かに判断は自分の領域だなと頷く思いだ。こう見えて肝は据わっている方だと自負もしていることもあり。

 それに、気負ったり先走り過ぎると初春も諌めてくるので、案外この第三艦隊は人員のバランスが取れているのではないかとも思えるのだ。

 結成してから日は浅くも、それぞれの役割をしっかりと熟せているとも。

 

 しかし、そこで問題になるのは他の艦娘たちだろう。

 熊野らと同じく、不器用ながらも生真面目な浜風は、まだいい。彼女に至っては生真面目過ぎることの方が問題だから。

 問題は、その浜風にワイヤーの扱いをレクチャーしている漣と卯月の方だ。

 水無月島の暴走駆逐艦こと漣と卯月は、事ある毎に悪戯を仕掛けて、陸でも海でも艦隊を賑やかしてくれる。

 昨晩の入居時も、夕張がメロンの香りの入浴剤を入れてご満悦だったところへ密かにドリアン風味の入浴剤を混入し、滅多なことでは怒らないはずの夕張をマジ切れさせていたものだ。

 その後、ふたりして追いドリアン風呂に浸けられて成敗となったが(漣が「オイドリアーン!」と奇声を上げて浜風の腹筋を破壊していた)、彼女たちの悪戯はこれに留まらない。

 しかしまあ、やったらやったきり、と言うわけではなく、甘んじて罰を受けるという姿勢の上でやらかしている以上、これが彼女たちなりの接し方なのだろうと、熊野は溜息交じりにそう考える。

 

 仇討ちを遂げて抜け殻のようになっていた時雨を皆の輪に呼び戻したのもそうだし、何かときな臭い言行の青葉に密着したりするのもそうかもしれない。

 まあ、青葉も含めて悪戯・ドッキリを仕掛けるトリオになってしまっていると言えば、それまでか。

 とにかく、被害担当の高雄には毎度毎度頭が下がる思いだ。

 悪乗りする響は本当にやめてほしいが、電が雷を落とすので、まあ、つり合いは取れているのだろう。

 

 その問題児の漣と卯月は、今は浜風の手元に掛かりきりで、何か悪さをしようと言う兆候はない。

 いくら悪戯っ子とはいえ、作戦行動中にまでやらかすほど空気を読めていない娘らではないのだ。

 そうして考えが一周して、やはりこの艦隊はバランスが取れているなと気持ちを改める。

 練度不足は否めないが、それでも時間をかけて練度を積んでいけば、最前線で戦っている皆々と同等の活躍が出来るはずだと、熊野は信じている。

 いざその時が来たら、どう感じるのかまでは、さて置き。

 

 

 ○

 

 

 それにしても遅いものだと、熊野は胸騒ぎと共に息を吐く。

 一通り機雷の敷設が完了したことを確認し、後はひたすら待機の時間と言うことを旗下の駆逐艦娘たちに通達して、さて一息と言った時に、急に不安が込み上げてきたのだ。

 今回の作戦は無線封鎖状態で進行し、第二艦隊が座礁・横転した装甲空母の調査を終えるか切り上げるか、もしくは何らかのトラブルに見舞われるかした時点で封鎖解除、全艦隊撤退となる手はずだ。

 先程上空を通過した“利根四号”が発光信号にて伝達する限りでは、第一艦隊が“スカーヘッド”に喧嘩売りに行ったと、眩暈を覚える様な事態になっていた。

 それは帰りが遅くなるどころか、一歩間違えれば全滅する流れではないかと、熊野は悲鳴のような疑問の叫びを挙げている。

 陽動役のくせに深入りし過ぎなのだ。

 

 今は後方で控えている第四艦隊の艦載機も、第一艦隊の支援が行えるのは日が出ている間だけだ。

 日没まではあと1時間もない。航空機による支援が行えるのも、あと1時間足らずなのだ。

 島からの陸攻はあと一度だけ出撃が予定されているはずだが、もう満足に支援は出来ないだろう。

 夜間偵察機もあるにはあるのだが、基本的に偵察のみの運用で、戦闘支援を行えるだけの練度はなかったはずだ。

 今すぐ前戦に駆け付けたいという気持ちは強いが、それを制する気持ちはもっと強い。

 

 そもそも無線封鎖状態と言うこの状況こそが、熊野の不安の大元だ。

 提督たちが決めた作戦に不満などないし、もしもあるのであれば決定前に異議を唱えている。

 無線封鎖にあまり良い思い出がないのは、今の熊野がではなく、艦船時代の重巡・熊野にとってだ。

 どうしても苦い記憶としてフラッシュバックが起こってしまう。こうした無線封鎖の状態が尾を引く形で、姉妹艦が沈んだのだから。

 

 これも、敵側に無線を傍受する艦種がいると判明した以上、避けねばならないことだ。

 時雨の護衛していた輸送船団や、高雄や青葉の所属していた装甲空母を強襲した敵艦隊は、まるで人間側の動きを事前に察知していたかのような動きを見せたのだと、第二艦隊の外来組から証言が取れている。

 水無月島においてはそういった敵の先回りはまだ確認されていはいないが、時雨は支配海域付近にて、高雄や青葉等はこの海域の真っただ中で、そういった傍受の可能性を示唆している。

 敵には居るのだ。こちらの通信を傍受して、その内容を理解し、自分たちの有利に立ち回れる個体が。

 

 

「……もしも、私たちの通信を傍受出来る敵が居たとして、それはどんな敵だと思う?」

 

 深刻な顔で物思いに耽ってしまった熊野を気遣ってか、叢雲が熊野の補完艤装の端に腰かけながら、そんなことを問うてくる。

 「何で艤装に乗りますの」と半目でにらみ、熊野は問いに応えるべく頭の中に散らかっていた考えをまとめ上げる。

 

「推測できる像はふたつ、ですわ。ひとつは、こちら側の言語を理解している敵。最低限人間並みの知能を有している深海棲艦ですわね」

「ほう? 第一艦隊や第二艦隊の面々が時折遭遇するという、人の言葉を話す姫や鬼のことかや?」

 

 あごに手を当てて呟く言う熊野に、叢雲とは反対側に腰かけた初春がそう問い掛ける。

 叢雲と同じように、自分の艤装を脚部と腰部の最低限のパーツ以外を解除し、それらを変形、省スペース化して足場にしているもので、「どういう神経していますの?」と、熊野はやはり半目にならざるを得ない。

 

「人の言葉を話す深海棲艦は、もう10年以上前から確認されていますが、そのほとんどは怨念・怨嗟の言葉だけで、まともな会話が出来たという話は聞いたことがありませんの。実際に会話に成功したという例は、北方海域を縄張りとする北方棲姫の1件のみ。言葉は話せても会話が出来ないという判断が下され、同時にこちらの会話の内容も理解はされないだろうというのが、支配海域の外の通説でした……」

 

 だからこそ、敵を前にしてもいつも通り友軍艦や鎮守府と通信でやり取りをしていたわけだが、その通説がこの海域付近で初めて覆ったのだ。

 敵支配海域の内外から仕入れた情報を述べ、熊野はここまで口にした情報に「しかし」と前置きする。

 

「北のお姫様以外にも、そうした人間の言葉が理解できる深海棲艦が居ても、おかしくはありませんのよね? この場所は、敵の庭なのですから……」

「それは、この敵支配海域下でのみ有効な、独自の現象と言うことでしょうか?」

 

 今度の問いかけは浜風のものだ。

 熊野の補完艤装に我が物顔で腰かける2隻と違い、水面に自分の足で立っているのだが、1隻だけ立たせているのも忍びないなと熊野は唸る。

 補完艤装の形状を艦船に近いデフォルトのものから、高速巡航形態時に取る縦長のものへと変形させ、スペースを空け(座っていた叢雲と初春は艤装から転げ落ちて海面にへばりついた)、「お掛けになって?」と浜風に勧める。

 それには恐縮して両手を振る浜風だが、だったら頂きだと、漣と卯月が空いたスペースに転がり込んできた。

 

「それって要はさ、敵はこの支配海域限定で、漣たちの言葉を超翻訳できる、ってことっしょ?」

 

 漣の言が、概ね熊野が言いたかったことだと頷くと、補完艤装の端っこに座り直した叢雲が、眉根を寄せて頭をかいた。

 

「何それ、自分のお庭だと頭良くなるってこと?」

「……支配海域、と呼ばれるくらいですからね。敵側にとって有利な現象が起こるのは、確かにその通りかと」

 

 浜風が納得したように言うが、叢雲は解せない様子だ。

 

「うちで通信傍受の可能性があったのって、時雨と、高雄と青葉の時よね? 時雨の時はともかく、高雄や青葉の時は念のためって暗号使ってたって話よ? 暗号解読のノウハウまで、そんな超常現象で可能にするってこと?」

「さあ……。あるいは、そうではなくって。こちら側の暗号が故意に、向こう側へ渡っていた可能性もありますわね。像のふたつめですわ」

 

 熊野が顎に当てていた手をピースの形にして皆へ向ける。

 卯月が同じようにピースして見せるのを、熊野はピースをはさみの動きにして応える。

 

「深海棲艦との接触作戦は幾度か行われていて、成功例も1件だけあったのですから、当然向こう側の言語をはじめとするコミュニケーション方法を研究しているところもあるのでしょう」

 

 そういった深海棲艦に関する研究論文のようなものは、現状に対して影響力の大小を問わず、毎月数十件はアップロードされている。

 支配海域の一時解除時にそれらの論文のダウンロードも行なわれてはいるが、たった数時間では膨大なデータを取得する関係上、即戦力となる艤装関連や生存に関する項が最優先に設定され、論文の類は概ね後回しにされているのが現状だ。

 電の補佐としてテキスト関連に目を通すようになった熊野ではあるが、コミュニケーション方面で有用な論文は未だに発見できていない。

 

「それ、こっちの情報を敵に横流ししてるってこと? わちゃあ……、それって、かなりヤバくない?」

「本当に情報を横流ししていたら、確かにヤバい事態だと思いますわ。それに、こっちのやり方なら、敵が暗号の解読はおろか、こちらの言葉がさっぱりわからない場合であっても一方的な疎通は可能になりますもの」

「……その、後者の情報漏えいであった場合、いったい誰ぞ? ということになるのう……」

 

 自前の扇子を開いて口元を隠した初春が言う。

 もちろん、人間だろうと熊野は考えている。

 “海軍”本部も一枚岩ではないと、外部から来た高雄たちの言で知ってはいる。

 数ある鎮守府、企業や研究機関のどれかが、もしくは幾つかが、深海棲艦側へ最前線の情報を流していてもおかしくは無いのだろう。

 その手段や目的までは、さすがに定かではないが。

 

「……いいえ。みっつ目の可能性がありますわね」

 

 ひとつ目の像とふたつ目の像を重ねて露わになる形だ。

 卯月がもう片方の手もピースにして皆から「一本多い」と突っ込まれている姿に少しだけ微笑み、熊野はたった今まとまった考えを述べる。

 

「深海棲艦化した元・艦娘が、理念か私怨か、何らかの理由で、わたくしたちの行く手を阻んでいる。という可能性ですわ」

 

 ここにいる艦娘たちは、艦娘の深海棲艦化が眉唾物の噂話ではなく、現実に起こり得る現象だという考えを持っている。

 かつて潜水棲姫を討った伊168が同じく潜水棲姫となってしまったケースや、今現在深海棲艦化が進行している暁がいるためだ。

 そしてこの可能性は、水無月島鎮守府の古参組にとっては、最も考えたくないものだろうと熊野は考える。

 水無月島鎮守府のが機能を停止してから復旧するまでの10年で、敵の支配海域はかなりの広域に展開している。

 当時その海域で戦っていた艦娘は、一時的なものも含め、ほとんどが水無月島鎮守府の所属であり、暁型の姉妹たちや天津風の顔馴染であったはずなのだ。

 そんな顔馴染の似姿と戦うなど、いったいどれだけの苦痛だろう。熊野は、それ以上の想像を放棄した。

 

 

 ○

 

 

 可能性は幾つか挙がるが結論は出ず。

 まあ当然かと、熊野が気を抜いて伸びをして欠伸して、「ああ、しまった」と渋い顔をする。

 こうして緩んでしまわないように、ずっと気を張っていたというのに。

 見れば、つられた卯月も大口を開けて欠伸していて、それが浜風に、漣に、初春や叢雲に伝播してゆく。

 まるで戦いに身を置く者たちとは思えない緩さだなとは思うが、それも今この時が平和な証だ。

 

 初春に言われた通り、気負わずともまあいいかと思い始めた矢先、ふと、第三艦隊の皆の頬を風が撫でた。

 足元を見れば緩やかな波が起こっていて、卯月が顔を輝かせてその上に着水して足踏みする。

 熊野は風が来た方角を見て息を飲む。

 向こうの空が暖かな夕日の色に染まっていた。

 

 支配海域の一時解除。

 熊野をはじめとする第三艦隊の面々は、まだ見たことのなかった空だ。

 時刻通りの夕焼けが、潮風と緩やかな波を運んでくる。

 足元に伝わる揺れを感じながら、熊野たちは夕日を背負ってこちらへ向かってくる第一・二艦隊の面々の姿を遠くに見つける。

 

 皆が皆、雨天用の外套装備を纏っているということは、途中でスコールに見舞われたということだが、この支配海域下で天候が変化するという意味を悟り、熊野はさっと全身から血の気が引いてゆく感触を覚える。

 天候が変化したということは、敵艦の姫・鬼級と接触したということ。そして皆が外套を羽織っているということは、本来は捜索のみで撤収するはずだった第二艦隊の面々も戦端に巻き込まれたということだ。

 第二艦隊は旗艦の高雄と青葉以外は、情報収集用に非武装化した自立稼働型連装砲たちや発動艇を満載して、火力などほとんどないに等しかったはずだ。

 

 まさか、誰かが欠けてはいないかと帰投する艦隊に目を凝らす熊野は、しばらくしてほっと胸を撫で下ろす。

 自らと見張り員妖精が目視にて、全艦の姿を確認。阿武隈と高雄が手信号で“任務達成”と合図を送ってくる姿もだ。

 任務達成。それは陽動作戦と目標の捜索を完遂したという意味だろうが、それにしては成果が過大ではないかと熊野は思う。

 この夕焼けは、敵の姫級を倒したがゆえに生じたものだなと、そう察することが出来たからだ。

 先の“利根四号”からの連絡で“スカーヘッド”に喧嘩吹っかけに行ったとは聞いていたが、陽動どころか見事討ち取ってしまったというわけだ。

 

 まさか、自分たちにこの夕焼けを見せるためにわざわざ強力な敵に向かって行ったわけでもあるまいと、熊野は自惚れそうになる気持ちを努めて落ち着けようとするが、それでもこの景色には胸が高鳴るものがある。

 かつて鋼の体で戦っていた時代と同じ色が、まだこの世界には残っているのだ。艦の記憶に引っ張られ過ぎだとは思うものの、それでも美しさに目元が潤む。

 艦の熊野としては懐かしいもので、そして艦娘の熊野としては初めてのものだ。

 もちろん、第三艦隊の皆にとっても。

 

 懐かしさと未知への感動を同時に体感出来るというのは、艦娘という存在であることの最大限の役得なのではないか。

 そう小さく呟いて、少し詩人になりすぎたかとひとりで照れ臭くなった熊野は、皆の好奇に満ちた視線を誤魔化すように(お株を奪われた叢雲は仏頂面だが)、調子外れの大声で帰投する艦隊を迎え入れた。

 


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