現在の時刻は午後、12時30分。俺と黒咲、そしてキュゥべえは一足先に、待ち合わせ場所のファミレスに来ていた。巴マミ、鹿目まどか、美樹さやかの三人はまだ来ていない。
「……なあ、黒咲」
「……何だ?」
「何だか周りの視線が痛いんだが」
「お前が、寝間着で来たからだろう」
「完全な不審者スタイルのお前にだけは、言われたくねぇよ!」
「不審者だと?俺はただ、スカーフで口元を隠し、サングラスをかけているだけだ」
「まごうことなき不審者じゃねぇか」
「まぁ、一番目立ってるのは僕なんだけどね」
キュゥべえの言うとおり、一番目立ってるのはキュゥべえであった。。何故目立っているかというと、以前のキュゥべえなら、普通の人には見えない。 しかし、どういうことか今は、全ての人に姿が見えているうえ。会話に使うテレパシーも周りの人にだだ漏れであった。
「わかってんなら、しゃべるなよ!」
「そういうわけには、いかないよ。君達には先に、僕が犯した罪について、もっと詳しく話しておきたいからね」
そう言うと、キュゥべえは魔法少女の真実について語り出した。……殆どアプリで知っていたので話さなくてもいい。と思ったのだが、キュゥべえが話した内容はの中には、アプリに無かった情報も含まれていた。
「──というわけなんだ」
「……まじかよ」
「デュエリストの風上にもおけないな」
「その事実を、これから来る三人は知っているのか?」
「実は、鹿目まどかと美樹さやかの二人には、君達がデュエルしている間に、話してきたんだ」
あれ?何か嫌な予感がするな……
「今度はちゃんと、踏んでもらったよ!」
「何やってんのお前!?」
「まあ、そんなわけだから、これから来るのは、巴マミ一人だけなんだ」
「巴マミというのは、俺がこの世界に来る前に、あったという少女のことか?」
そういや、黒咲はまだ面識が無かったか。……今の服装、明らかに不審者だけど、これから会わせてもいいのだろうか?
「……そうだ、もう彼女は契約してしまっている」
「だから、僕だけでなく、君達もいるこの場所で、彼女に本当の事を話そうと思うんだ」
「なるほど、俺と幽奇でフォローしろということか」
「……色々心配だな」
「僕がいるから、大丈夫だよ!」
「頼むから、余計なことは言うなよ……」
待ち合わせ時間の午後一時頃に巴マミはファミレスに着いた。
「もう来ていたのね。待たせちゃったかしら?」
「大丈夫、俺達も今来たところだ」
「え、ええと……そちらの方は?」
「安心しろ。ただの不審者だ」
「ええ!?」
「不審者ではない、デュエリストだ」
「でゅえりすと?」
「知らないのか、ならば教えてやろう」
そう言うと、黒咲はスマホをデュエルディスクに変形させる。
「今はやらないからな!?」
「えっと……、鹿目さんと美樹さんは、まだ来てないのかしら?」
「今日は、僕からマミに話したいことがあったからね。二人は来ないよ」
「……話したいこと?」
「落ち着いて聞いて欲しい──」
「僕を踏んでくれないか!」
「何言ってんのお前!?」
「しまった!言う順番を間違えたよ!」
「そういう問題じゃねぇ!」
「簡潔に言うとね。君は魔女になるんだ」
「簡潔過ぎるわ!!」
「え……私が魔女になるの?」
「簡単にはならないから大丈夫だよ!いや、絶対に魔女にはさせないから!マミさん気を確かに!」
色々な事があり過ぎたせいか、巴マミは完全に混乱していた。これ以上キュゥべえに任せると、本当にマミが魔女になりかねないので、俺はキュゥべえに変わり、説明する事にした。
「ソウルジェムが完全に濁りきると、魔女になってしまうだけだ。魔女を倒して、グリーフシードで穢れを無くせば、君が魔女になることはない」
「たった一人で一生戦い続けろって言うこと?」
「一人じゃない、俺……いや、俺達も一緒に戦うさ。なぁ、黒咲?」
「無論だ」
「本当に、これから私と一緒に戦ってくれるの?」
「俺達で良ければ」
「技名もちゃんと叫んでくれる?」
「わ、技名?」
あれ?何か雲行きが怪しく……
「あなた……必殺技を持っていないの?」
「持ってないが……」
「なら、作りましょう。黒咲さん、キュゥべえ、ちょっと借りてもいいかしら?」
「構わん」
「僕を踏んでくれるなら構わないよ」
「まだ言うか!」
俺の必死の叫びも通じず、結局、巴マミ指導の元必殺技を作ることになった、俺とマミはビルの屋上にいた。
「早速、必殺技を作るわよ!」
「どうしてこうなった……」
「あなたは何ができるのかしら?」
「重力を操れるぞ!」
俺がそう言うと、マミは憐れみの視線を俺に向けた。
「えっと、頭の方は大丈夫?」
「いや、本当だって!」
「そう言われても、信じられないわ」
「なら、証拠を見せてやるよ。そうだな、今からマミを浮かせてやろう」
そう言って俺は、マミの周りを無重力状態にし、マミの体を浮かせた。
「まさか超能力者だったなんて……あなた、キュゥべえと契約して、魔法少女になれば、魔法と超能力を両方──」
「さて、必殺技を考えるとしますか」
「無視!?」
その後、俺とマミは幾多の苦難を乗り越えて、遂に必殺技を完成させた。
……途中で、マミが見本に見せてくれた、ティロ・フィナーレが飛行機にかすったりしたが、大丈夫だろう。何か、ニュースで飛行機に謎の物体が衝突とか、あったけど、怪我人はいないみたいだし。そもそもかすっただけだ。絶対に俺達は関係ないはずだ……多分。
ファミレスに戻ると、黒咲とキュゥべえ、そして何故か鹿目まどかと、美樹さやかがいた。
「いいなー、私もデュエルディスク欲しいわー、ちょっと触ってもいい?」
「わ、私も触っていいですか?」
「好きなだけ触るといい」
黒咲は二人と親しげに会話している。だが、黒咲は未だに不審者スタイルだ。中学生二人に不審者という組み合わせ……通報されないのだろうか。ちなみに、キュゥべえは呑気に寝ていた。
「来ないと聞いていたんだが、来てたんだな二人とも」
「あ、こんにちは幽奇さん」
「おかえりー、必殺技はどうなったの?」
「……一応できたよ」
「お疲れさまです。実は、私達も今、必殺技の名前を考えていたんですよ」
「そうだ!幽奇も必殺技考えるの手伝ってよ!」
必殺技って……、化け物と戦うわけじゃないんだから。魔法少女じゃあるまいし……ん?
「……もしかして、魔法少女になる気か?」