スマホを拾ったので異世界を救います   作:TOLI

4 / 9
第4話 魔法少女とnewキュゥべえ

 ガブリエルとの通話が終わった後。黒咲は自分の寝袋を買うと俺に言った後、ビルから出て行った。

 

 特にやることも無かったので、俺はビルの中を探索した。途中で、掃除用具と大きめのタオルを見つけた俺は、それらを回収し、現在は寝床となる予定の、ビル内のとある一室を掃除していた。

 

「そういや、能力を使えるようになったのはいいが、どう使うんだ……?」

 

 俺の問いには、誰も答えない。今、この場所に居るのは、絶賛気絶中のキュゥべえだけだからだ。

 仕方ないので、一人で色々試してみることにした。

まずは身体能力上昇という、スキルだ。

 試す方法は簡単、その場でジャンプするだけだ。

 

「せーのっ!──ぐふぅ!?」

 

 天井の高さはそれなりにあったはずだが、俺は天井に頭をぶつけてしまった。

 どうやら、本当に身体能力が上昇しているらしい。

オマケに、天井に頭をぶつけた痛みは殆ど無かった。

 当初の予想以上に、このスキルはかなり役に立ちそうだ。

 

 続いて、大本命の重力操作について、試すことにした。確か、ガブリエルは、イメージした現象を実際に起こすとか。重力操作で、できると思った事を、全てできると言っていた。なので俺は、一番イメージしやすいであろう、無重力で自分の体を浮かす事に挑戦した。

 

 俺が頭の中で、イメージすると。あっさり自分の体は浮いた。しかし、重力操作を使った事で、不意にある疑問が浮かんだ。

 

「……どう活用すればいいんだ?」

 

 

 

 

 その後も、しばらく重力操作について、色々試行錯誤していると。ようやく、キュゥべえが目を覚ました。

 

「大丈夫か、キュゥべえ?」

「…………僕は」

「……ん?」

「僕は何てことをしてしまったんだぁぁぁ!!!」

 

 そう言うと、キュゥべえは床に頭を何度もぶつけ始めた。

 

「落ち着け!何があった?」

「僕はとんでもない過ちを犯してしまった!」

 

 キュゥべえは床に頭をぶつけるのを止め。俺の方に向き直った。……心なしか、その瞳は真っ赤に燃えている気がした。いや、真っ赤なのは元からか。

 

「僕はたくさんの女の子達に、過酷な運命を背負わせてしまった!僕は償わないといけない!彼女達を救う為にも、僕は自分の身を削る覚悟だ!僕は今!正義に燃えている!今の僕は昔とは違う!言うなればnewキュゥべえだ!僕は魔法少女達の為のマスコットキャラクターとして!彼女達に本当の事を言わなければならない!そして、ケジメとして踏んでもらおう!よし、そうと決まれば、早速行動だ!待っていてくれ魔法少女達!僕を踏んでくれぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

「マジで何があったぁぁぁ!?」

 

 キュゥべえがぶっ壊れた!?明らかに原因はガブリエルだよねコレ!?あの手術は失敗だよね!?いや、失敗なんてレベルじゃない!うっかり患者を殺すレベル、いや、うっかり患者をオーバーキルするレベルの歴史的大失敗だよね!?

 

 俺が混乱していると、先ほど、買い物しに行った黒咲が戻ってきた。

 

「何だこの騒ぎは!敵襲か?」

「……キュゥべえが壊れた」

「殲滅する!」

「何でだよ!」

「殲滅?魔法少女を救った後なら、大歓迎だよ!」

「お前はその口を閉じろ!」

「大丈夫!基本テレパシーで話してるから、口は閉じてるよ!」

「何?テレパシーだと!貴様、デュエリストか!」

「もう、勘弁してくれませんかねぇ!」

 

 

 

 

 数分後、ようやく落ち着いた一人と一匹と一緒に、俺は、アプリNo.001グローバルインフォメーションを使い。この世界についての情報を得ることにした。

 

「ええと、クリア条件はワルプルギスの夜とやらを撃退。重要な出来事は、近い内に、ワルプルギスの夜が襲来。で、重要人物だけど……」

 

 重要人物の所には、先ほど会った。黒髪の少女も含む四人の少女、まだ会ったことのない、赤髪の少女、そしてキュゥべえについての情報があった。     ご丁寧に顔写真付きな上に、軽くプライバシーが、侵害されているレベルの情報が書かれていた。

 

「キュゥべえは魔法少女と魔女を利用して、エネルギーを得てたのか」

「それが、僕の犯した過ちだよ。」

「罪を犯したのか、ちょうどここに、ベッド兼牢屋になりそうな物があるが、入るか?」

 

 そう言うと、黒咲は鳥かごを買い物袋から取り出した。後で、何故それを買ったか問いただしたい。

 

「喜んで入らせてもらうよ」

 

 キュゥべえは一瞬たりとも、迷うことなく鳥かごに入った。流石に可哀想なので、ビルを探索した時に手に入れたタオルを、底に敷いた。

 

「アプリで手に入る情報は、これで全部かな」

「行動するとしたら、明日だろう。」

「そうだな、もう寝る準備をすることにしよう」

「寝袋を買うついでに、ダンボールを入手してきた。使うといい」

「助かるよ。このビルの床は堅いし冷たいからな」

 

 俺達は寝る準備をした後、明日に備えて就寝──しなかった。寝る直前にキュゥべえが

 

「そういや、デュエリストとか言っていたけど、デュエリストとは何だい?」

 

 と言い出して、それに対し黒咲が

 

「ふん、いい機会だから。今から俺がデュエリストについて教えてやろう」

 

 そして、狙ったかのごとく、ガブリエルから着信。

 

『デュエルの準備ができたぞ!スマホを腕に添えてくれ!』

 

 その言葉を聞いた黒咲がスマホを腕に添えると、スマホが何かのディスクに変形した。ていうか、黒咲も俺と同じ……いや少し色が違うけど、スマホ持ってたのかよ!

 

「準備は整った、バトルだ!」

 

「いや、寝かせろぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 結局、その後デュエルをやることになり。俺達が寝たのは翌日の午前四時頃だった。何故そんな時間までデュエルをしていたかと言うと、俺がデュエルにハマったからだ。つまり、半分は自業自得だ。

 

 今の時刻は午前十時、黒咲とキュゥべえはまだ就寝中だ。約束の時間まで余裕があるので、二度寝しようと思ったのだが、そこに思わぬ来客が訪れた。

 

「昨日の礼を言いに来たわ」

 

 黒髪の少女──いや、アプリの情報によれば、暁美ほむらと書かれていたな。

 

「昨日……?ああ、契約を妨害したことか」

「まどかが契約すると言ったときは、思わず撃つ所だったけど。良くやってくれたわ」

 

 やっぱり、撃とうとしていたのか……

 

「安心しろ。今のキュゥべえはキュゥべえじゃない。newキュゥべえだ」

「言っている意味がわからないのだけど」

「話せばわかる──ほら、起きろキュゥべえ」

「うーん、はっ!君はもしかして、僕が契約してしまった魔法少女かい?」

「……ええ、そうよ」

「踏んでくれ!」

「何でだよ!」

「うるさいぞ、敵襲か!」

「めんどくせぇぇ!!」

 

 話が進まないので、黒咲には街に情報収集をしに行ってもらった。そしてほむらには、スマホの事を含め、殆ど話した。アプリの情報で敵じゃないことはわかっていたし、問題は無いだろう。

 

「つまり、まどかが契約する可能性はゼロと言うことね」

「そういうことだ。だから君には、ワルプルギスを倒すのに、協力してもらいたい」

「構わないわ」

 

 そう言うと、ほむらは、帰って行った。

 

 

 

 

 

「しまった、踏んでもらうのを忘れてたよ!」

「まだ言うか!」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。