内容としては前回の続きみたいな感じになります。
それにしても、働くって嫌ですね。
正社員って言葉がこんなに重いとは思っていなかったです。
まだお酒も飲めないような歳なのに、責任と疲労が増える。
沖縄に帰りて〜
目が覚めるとリビングは薄暗かった。
帰ってきたときはまだ紅い光が差し込んでいたが、今はもう月明かりすら差していない。
申し訳程度に豆電球が灯りをともしているだけだ。
そういえば左肩辺りが重い。
そして腕には小町の腕が絡み付いている。
小町の髪からはまだ微かにシャンプーの香りがする。
空いている手で小町の頭をそっと撫でる。
改めて思うが、可愛いな小町。
可愛い過ぎるぜこのやろー。
小町のアホ毛をツンツンと突いてみる。
なんだこれ面白いな。跳ね返ってくる。
俺が遊んでいると小町が起きてしまった。
「ぅ〜ん。…お兄ちゃん、ぉはょ」
「おう」
もうちょっと寝てても良かったんだけどな。
小町にラリホー唱えたら効くかな?
「お兄ちゃん、今、何時…」
変わらず俺の腕に巻きついている。
朝起きてからの眠ろうとするのと起き出さないといけないという葛藤している最中の小町。
これはこれでなかなか可愛いから困る。
「20時半くらいだ」
俺も結構眠っていたらしい。
「もうそんな時間かぁ。…お兄ちゃんご飯まだだよね?」
「そういえばまだ食べてないな」
小町の帰りを待っていてそのままだったからな。
まあ今のところお腹は空いてはいないが、これでは夜中に空腹で目が覚めてしまうだろう。
「じゃあなんか作るね。小町はカラオケで食べちゃったからお兄ちゃんのご飯だけだけど」
絡ませていた腕を解き、立ち上がってエプロンを巻き始める小町。
ああ、小町の温もりが…。
「悪いな」
「ていうかごめんね。急にカラオケ行っちゃって」
「いや、別にいいよ。誘われたらとりあえず行った方がいいだろ」
人との関わりとは面倒なものだ。
どうでもいいやつとも仲良くしないといけない。
上位カーストのやつらの会話とか、もう聞くに堪えん。
やんわり断ったとしても、裏で何を言われているかわからない。
「そっかぁ、また今度ね〜」とか言いながら、
『アイツ付き合い悪過ぎでしょ。マジありえないんだけど』
とか思っているのだ。
聞いているだけで気分が悪くなる。
まあその点ぼっちである俺は、そもそも人に誘われないからそんな悩みはない。楽でいいよな、ぼっちって。
…なんか、自分で言ってて悲しくなってきた。
俺が独り悲しくなっていると、小町は既に俺の夕飯を作り終えていた。
…早いな。3分クッキングより早いんじゃないか?
っていうかあれ、3分じゃなくね?
まあそもそもそんなに見たことないからよく知らないけど。
「おっ待たせー!小町特製loveloveチャーハンだよ☆」
「おう。サンキューな」
真っ白なお皿の上にはハートの形のチャーハンが乗せられている。
なんかすごいあざとかったけど可愛いから許す。
可愛いは正義だ。これ即ち小町は正義。
小町可愛い。
「さあさあどうぞ召し上がれ」
「頂きます」
テーブルの向かいでニコニコしながら俺を見る小町。
なんか食べづらい。
とりあえず一口。
咀嚼するたび美味しさが出てくる。
ブラックペッパーが効いていて食欲が増す。
速攻作ったとは思えない。
「美味いな…」
「えへへっ」
ニヤける小町。
なんだよ可愛いな。
「お兄ちゃん」
頬杖をついて俺を見る小町
「なんだ?」
「これからどうなるの?奉仕部」
「…別に、普通に引退だ」
もう俺らは受験生だ。
いつまでも、あそこに居てはいけない。
あそこは、居心地が良すぎる。いつまでも浸かっていたいと思ってしまう。
「いつ終わるの?」
小町の声は、どこか寂しそうだった。
「1学期終わったらだな」
それは、後1ヶ月ほどで終わるということだ。
夏休みが、初めて待ち遠しく感じられなかった。
「そっか…」
小町もそれ以降口を閉ざす。
小町も去年は受験生だったのだ、高校三年生の大変さ、と言えばいいのか、それを察してはいるようだ。
「じゃあ、仕方ないね」
その一言は、なんだかひどく罪悪感に苛まれた。
奉仕部は俺たち3人だけが大切に思っているだけではない。小町も、一色だって大切に思ってくれているだろう。
そのことが嬉しくて、そして申し訳なかった。
残ったチャーハンを一気に掻き込む。
味はしなかった。
「ごちそうさまでした」
「うん」
流しでお皿を洗う小町の後ろ姿は先ほどとは全く別になっていた。
「まああれだな、奉仕部がなくなっても別に大丈夫だろ。由比ヶ浜がことあるごとにパーティーとかそういうのしたがるだろうし、一色だって、何かしらの企画とか立ててくれるだろうし、むしろあれだな。小町にも一色にも奉仕部離れしてもらわないといけないまである」
「そうだよね。奉仕部がなくなっても終わりじゃないもんね」
そうだ。別に終わりじゃない。
これからだってその関係は続いていく。
「んじゃ風呂入ってくるわ」
「うん。お兄ちゃん早くしてね。小町も入るんだから」
「はいはい」
風呂に入ってさっぱりしたあとはベットでだらだらしていた。横になりゲームをして、本を読んだ。
夕方に眠ってしまったせいか、眠気はこない。
時計を見ると24時を過ぎていた。
とりあえず電気を消して眠ろうと試みる。
まあそのうち寝ていることだろう。
目を閉じてじっとしていると、ドアが静かに開くのがわかった。
「お兄ちゃん」
「…なんだ?」
小町が夜中に来るなんて珍しい。
「今日だけ一緒に寝ていい?」
「ああ。別に構わんぞ」
そう言うと俺のベットにもそもそと入り込む小町。
なんとなくお互い背を向けて眠る。
小町の背中は暖かい。
「お兄ちゃんはさ、雪乃さんと結衣さんといろは先輩のこと、どう思ってるの?」
「…どうって言われてもな、どうだろう。友達…ではないしな、まあ一色はあざとい後輩だな。雪ノ下と由比ヶ浜はどうなんだろうな」
簡単には言い表せないのだ。あのふたりとの関係は。
ただ、大事に思っているのは確かだ。
強いて言うなら、1番本物に近い存在、だろうか。
「お兄ちゃん…逃げないでね」
小町はその後静かになった。
逃げないでね。
その意味が俺にはわからなかった。
自分で書いていて思ったのですが、なんか終わりが近づいている気がします。
自分はこの後どうするのでしょうか?
ご意見・感想お待ちしております。
次は多分いろはす出るかな、うん。
お楽しみに。