デス・ア・ライブ   作:月牙虚閃

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更新大幅に申し訳ございませんでしたっ!これには理由がありまして、バイトだとか車の教習だとか複雑な事情あって、それで何が言いたいのかというとBASARAな武田信玄に殴り飛ばされて反省してきます。兎にも角にも、今回からは本編に突入します。まだ精霊は登場しませんが、あのチンプンカンプンな行為をしてしまうあの方が登場します。


deathberry meets sprits
April,10


あの天宮市の謎の大火災から5年が経った。街のそのときの被害を象徴とするものは今はほとんどない。一護も士道も琴里もあれ以降何事もなく暮らしている。しかし、それは表側の世界でのことで実際は精霊のことを深く知るために様々な行動を一護と琴里は起こしている。ただ、お互いそれぞれで動いていることは知らない。士道はどちらの動きも知らない。だが、それもあともう少しで新たな局面に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ~、ねみい。」

 

 

黒崎一護はつい昨日まで精霊を探すために街中を歩き回っていた。昨日は何も収穫は無かったが、この5年間の独自の調査で多くのことがわかった。例えば、この世界特有の災害の空間震が発生したときは必ず精霊が出現していること、空間震が発生しなくとも精霊が出現することなど。詳しく精霊を知るため精霊との対話を試みたこともあるが、前者の場合だと自衛隊の対策チーム出てきて自分の正体が露見してしまうことや他の理由もあり、空間震が発生していないときを狙うしかないので歩き回っているのだ。そのため一護はかなり疲れているのだが…

 

 

 

「あははは、ぐふだって陸戦用だー!あははは!」

 

 

「実は俺は『とりあえずあと10分寝ていないと妹をくすぐり地獄の刑に処してしまうウィルス』略してT-ウィルスに感染しているんだ…」

 

 

「ギャアアアアアア!」

 

 

というような意味不明な家族の日常会話(?)が一護の隣の部屋の士道の部屋で繰り広げられたおかげで一護の眠気は徐々に覚めていった。本当は二度寝を貪りたかったが、どうにもこうにもすっかり眠気が覚めた状態でまた寝るのも癪だったのでベットから身を起こして洗面所へと向かった。

 

 

洗面所で顔を洗った一護はリビングに向かうとそこには奇妙な光景があった。それは、木製のテーブルを誰かを近づけさせないようにするためのバリケードとして横に倒して活用している琴里がいた。しかも、その琴里がブルブルと震えていた。

 

 

「一体何があったんだ?」

 

 

琴里は無い力を振り絞るかのように応えたのだが、それははっきりいって内容が滅茶苦茶だった。

 

 

「一護おにいちゃん、お願い!士道おにいちゃんを助けてあげて―――――T-ウィルスから助けて!」

 

 

「は?」

 

 

全くもって状況を掴めていない一護なのだが、この騒ぎを引き起こした当事者だと思われる士道がリビングに来たので直接聞くことにした。

 

 

「実は、まだ寝ていたかったのに琴里が6時前に起こしに来たから適当にからかって、こうなっちまった。本当は朝食当番の俺を起こしに来てくれただけなのに。」

 

 

完全に士道のせいであった。一護は士道に謝らせこの騒ぎの終結を図らせて、無事に謎のT-ウィルスに感染しているという誤解を解いていつものように士道が料理を作り、一護と琴里は朝のニュースを見ていた。基本的には家事に関しては士道がやるが、士道が忙しければ一護がやることになっている。いつもはただのBGMとしてしか役割を持たない朝のニュースだが、今日はそれが少し違った。

 

 

「今日未明、天宮市近郊の―――――」

 

 

一護、それと食事の支度をしている士道もテレビか流れ出た言葉に眉を潜めた。それもそのはず、3人が今暮らしている地域がその天宮市であるからだ。少しテレビの画面を見続けていくと、映っていた映像が切り替わりまるで隕石が地上に落ちてきたかのように地面が抉れ、建物が無残にも破壊されている光景が映し出された。

 

 

「空間震か…」

 

 

士道がそれを見てそう呟いた。何度も空間震が()()()()()()の映像を見ているが、どうもそれが実際に現実で起こっているとはこのときの士道は思えなかった。出来上がった食事をテーブルに運びながら、ふと思い浮かんだ疑問を口にした。

 

 

「なあ、なんかここら辺一帯って空間震が多くないか?特に去年から。」

 

 

士道の言うとおり、3人の住む天宮市周辺は5年前から空間震が頻発している。そして最近になってさらにその頻度が増えたと一護も感じていた。一護はその事象が何かこの町に目的があるのではないかとも若干感じているのだが、考えすぎだとすぐにそれを否定した。ただ、空間震の発生が5年前に起きているというところに引っ掛かりを覚えている。

 

 

「…んー、そーだねー。ちょっと予定より早いかな。」

 

 

「早い?何がだ?」

 

 

「んー、あんでもあーい。」

 

 

琴里の意味深な発言に一護と士道は気になったのだが、士道はそれ以上に琴里の声が口ごもったことに関してより気になった。ゆっくりと琴里の頭の上に手を置き首を回した。その際、「ぐぎゅ」とかいう可愛らしい声が漏れた気がするが、それよりも琴里がチュッパチャップスを朝ごはんの時間帯に舐めている方が問題だった。

 

 

「こら、飯の前にお菓子を食べるなって言ってるだろ。」

 

 

「ん~ん~」

 

 

士道が飴を取り上げようと口から出ている棒を引っ張っているが、そのせいで琴里の顔がなんかすごい顔に変形してせっかくの可愛い顔がぶちゃいくになってしまっている。

 

 

しかしそんなことなど構わず士道は棒を引っ張り、対する琴里もチュッパチャップス愛が強く一歩も譲らずに対抗している。その必死な闘争を仲裁すべく一護が戦火の中へと飛び込んだ。

 

 

「はい、そこまで。舐めたもんはしょうがねえからそのまま舐めさせてやれよ。確かに朝っぱらから飴を舐めるのはどうかと思うけどな。」

 

 

「ったく、兄貴が許してくれたから今回だけだぞ。あとちゃんとご飯も食べろよ。」

 

 

「おー!愛してるぞ、士道おにいちゃん、一護おにいちゃん。」

 

 

ここで士道はふと思い出して琴里に尋ねた。

 

 

「今日は琴里も始業式なんだよな?」

 

 

「そうだよ。」

 

 

今日は琴里の言うとおり中学校の始業式。さらに言うと、士道と一護の通っている高校も始業式である。なので、どちらも午前授業なので昼ごろには帰宅できる。そういうわけなので、帰宅してからの昼食を琴里にリクエストしてもらったのだが…

 

 

「デラックスキッズプレート!」

 

 

琴里のリクエストは近所のファミレスのお子様ランチメニューだった。士道は中学生ってお子様メニューを頼めるのかと思いながら、ウェイターよろしくな礼をした。

 

 

「当店ではご用意しかねます。」

 

 

「えー」

 

 

士道の答えに不満を漏らす琴里を見かねて一護がそのファミレスでの外食を提案した。琴里はそれにパチパチと拍手をして、もうこの流れは止められないようなので士道もこの案に乗った。

 

 

「昼飯代は全部俺の奢りだから、士道は気にするな。」

 

 

士道は他の同年代の人と比べて家庭的な部分があるので支出を心配していると思い一護は自らのバイト代から出すことに決めた。

 

 

「いや、悪いよ。いつも兄貴に負担させてばっかで。」

 

 

「大丈夫だって。兄貴っていうのは下の弟や妹達のためにいるんだから。」

 

 

それを聞いた琴里は喜びを爆発させて、「地震が起きても火事が起きても空間震が起きても、ファミレスがテロリストに占領されても絶対だぞ!」と無茶な約束してくるのに一護と士道は苦笑しながらも今日だけはこういうのもいいかもしれないなと思った。

 

 

最後には一護に押し切られて昼食はファミレスで、ということになった。そうこう話し合っている内に登校時間を迎えて家を出て学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士道と一護の通う来禅高校のある地域は30年前に起きた東京の一部と神奈川の一部を襲った空間震の被害を受けた地域である。なので、ここ天宮市は空間震の被害軽減の拠点として様々な対策をとってきた。例えば、この来禅高校だって地下に避難するためのシェルターがある。士道と一護が登校して真っ先に向かったのは昇降口に掲示されているクラス分けの表。

 

 

「2年4組か。」

 

 

「俺も士道と同じみたいだな。」

 

 

士道と一護は学校の昇降口に貼り付けられているクラス分けの表を見てそれぞれ自分の名前があるのを確認し終えて、目的の教室へと向かった。まだ始業時間には早かったが、新学年・新学期ということで時間に余裕を持って登校する人が多く教室の中は賑わっていた。

 

 

「五河士道・五河一護。」

 

 

2人は見知らぬ少女に呼び止められ一瞬自分以外の同姓同名の人間がいるのではないかと疑ったのだが、それは間違いで自分たちに言っているのだとすぐに気づいた。

 

 

「俺たちに何か用か?」

 

 

一護がそう応えると、少女は微動だにせずに思案して言葉を返した。

 

 

「覚えてないの?」

 

 

一護はこちらの世界に来てからの記憶を遡って手繰り寄せてみたのだが、やはり記憶になかった。どうやらそれは士道も同じく思い出せないらしく「むう…」とうなっている。その少女は思い出せない2人の様子を確認して「そう…」と呟いて、手に持っていた参考書の方に目を移した。一護は少し悪いことをしたなあ、と思っていると…

 

 

「ぐぼあ!」

 

 

「うわっ!」

 

 

士道の狼狽に満ちた声と共に何かが潰れたようなときに人の発するような声が聞こえてきた。その声の主は一応士道と一護の友人の殿町宏人のものだった。

 

 

「助かったよ。でも、兄貴のせいで殿町の鼻が言葉にするには恐ろしい状態になってるんだけど。」

 

 

一護の裏拳を食らった殿町はそれが鼻に直撃したみたいで、床の上で体を左右に動かして悶絶をしている。その直撃を受けた鼻に関してだが、血のバーゲンセールだとだけ言っておく。それでもなんとか激痛地獄から抜け出した殿町が起き上がった。

 

 

「やるな、一護。だけど、お前ら2人セクシャルビーストブラザーズめ!」

 

 

「セク…なんだって?」

 

 

耳慣れない言葉にもう殿町に置いてけぼりの士道と一護なのだが、そんな様子を気にせずテンションが高い状態で言葉を続けた。

 

 

「セクシャルビーストブラザーズだ、この淫獣兄弟め。ちょっと見ない間に色づきやがって。いつの間にどうやって鳶一と仲良くなりやがったんだ?」

 

 

「「…はい?」」

 

 

「鳶一だよ、鳶一折紙。もしかして知らないのか!?」

 

 

「誰だそれ…兄貴は知ってる?」

 

 

「そういえば…定期テストの結果が張り出される紙でいつも俺の名前の一つ上にある名前だったような…」

 

 

士道と一護の反応が予想外だというように目を見開き、2人に体を寄せて距離を急激に近づけて鬼気迫る様子で迫ってきた。

 

 

「本当に知らないのかよ?」

 

 

「「お、おう。」」

 

 

殿町は「ハア…」とため息をついてから鳶一折紙について語りだした。かなり細かいことまで語っていたのだが、要約すると…

 

 

・定期テスト1位(ちなみに一護は2位、士道は100位前後)

・体育では一護に次ぐ成績

・『恋人にしたい女子ベスト13』では3位

 

 

上の2つの点はまだわかるが、『恋人にしたい女子ベスト13』なるものが行われていたことに突っ込みたいと思う士道と一護なのだが、ベスト13という中途半端な数字になった理由(ランキングの主催者が13位だから)を聞いて女子の恐ろしさを感じて身震いした。実はそのランキングは男子版も発表されているらしく、こちらの方がもっと執念深かった。

 

 

「『恋人にしたい男子ランキング』はベスト358まで発表されたぞ。」

 

 

「多っ!最後の方はワーストランキングに近いじゃねえかよ。」

 

 

思わず士道は叫んだ。確かこの来禅高校の男子の人数が358人だった気がするので、この学校の男子全員を網羅していることになる。そう思うと、結果というものは必ずしも優しいものではないので途中でやめた方がいいのにと心の中で思う一護なのだが、誰がこのランキングを作ったのか薄々気づいていたので諦めていた。

 

 

「そのランキング知ってるんだったら、自分の順位を知ってるだろ。何位だったんだ?」

 

 

士道の問いに殿町は眼を白黒させて動揺して何も応答できずに黙ったままだった。殿町のその様子を士道が訝しげに見ていたが、何やら殿町の胸元からメモ用紙のようなものがヒラヒラと落ちていったのを一護が拾い、自分の予想が当たっていたということを確信した。

 

 

「殿町…その……悪かったな…士道が変なことを聞いちまって。」

 

 

「そんなことを言わないでっ!余計に俺が惨めになるからっ!」

 

 

殿町はどこぞの好きな男性にフラれた昔ながらの女子のように頬に涙を伝わせながら教室を飛び出していった。未だに状況が飲み込めていない士道に例のメモ用紙を渡した。それを見た士道は殿町が走り去っていった方向に手を合わせた。メモ用紙に書いてあった内容とは…

 

 

 

・一護 5位

・士道 52位

・俺 358位

 

 

どうやってこのあと殿町に声を掛けていいか分からないような内容だった。

 

 

とりあえず、他にすることがないので指定された自分の席に座ることにした。ところがどっこい、その席というのが士道が折紙の左に、一護がその後ろの席だったのだ。士道が気になってさりげなく横目で折紙を見たら、逆に見返されてしまったので視線を逸らし脂汗を滲ませた。

 

 

間もなくして始業の鐘が鳴り(そのときにはもう殿町が教室の中に戻ってきていた)、これから1年間お世話になる担任が教室に入ってきた。その担任は教師というには少し幼く、教壇に立っているというイメージよりも自分たちと一緒に席に座っていそうなメガネを掛けた女性教師だった。

 

 

「はい、皆さんおはよぉございます。これから1年、皆さんのの担任を務めさせていただく、岡峰珠恵です。」

 

 

生徒の反応は概ね良好的なものが多く、特に女子生徒からは「タマちゃんだ。」という声が挙がっている。当の本人はその愛称で呼ばれるのを少々嫌っているのだが、1度染みついてしまったものを取り除くことは不可能―――――もう諦めるしかない。

 

 

ひとしきり自己紹介を終えたところで朝のSHRに突入した。一護は適当にそれを聞き流してあっという間に3時間経ち下校時刻となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「五河兄弟、どうせ暇なんだろ、飯いかねー?」

 

 

今日の日程を終えて他の生徒が教室から出ていくなか、ツンツンと整髪料で髪を逆立ている殿町は士道と一護に誘いを掛けた。士道は思わずそれに頷こうとする前に一護が応えた。

 

 

「わりいな、今日は琴里と外で昼飯だ。」

 

 

「やばっ、約束すっかり忘れてた。」

 

 

「おい。」

 

 

士道が琴里との約束を忘れていたことに一護はジト目で見つめて、士道は苦笑いしながら冷や汗をかいた。その最中、殿町はこのまま1人で孤独感を醸し出して途中まで一護と士道と帰ろうとしたが、琴里がいるということである画期的なアイデアを思いつき提案した。

 

 

「俺もそれに付いて行っていいか?」

 

 

「いいぜ。」

 

 

一護がそう答えた瞬間、殿町の眼が妖しく輝いた―――――気がした。

 

 

「なあなあ、琴里ちゃんって中二だよな。もう彼氏とかいるの?」

 

 

「「は?」」

 

 

いきなり妹の恋愛事情を聞こうとしたので2人の兄は怪訝な顔をした。全くもってこれから殿町の口から発される言葉というものが嫌な予感しかしない。

 

 

「別に他意はねえんだが、琴里ちゃん、3つくらい上の男はどうぐはっ」

 

 

一護は殿町が全て言い終える前に顔面への前蹴りで地に伏せさせた。それによって殿町の意識は一度三途の川を渡りかけたが何とか引き返すことができた。

 

 

「兄貴それはいくらなんでもそれはやりすぎだって。」

 

 

このあとの出来事は士道にとっては地獄だった。士道は何とか一護の妹への愛が為の暴走を必死に宥めて殿町に紅色の花は咲かなかったが、代わりに大量の鏡餅が出来る程度で済んだ。ついでに、士道がその場を治めるのに使った労力は大変なものだった。

 

 

意識は戻っているが、未だ体は地面に伸びている殿町を見ながら一護に物言いをした。

 

 

「こいつは家の琴里に手を出そうとしたんだぞ。この変態の魔の手から遠ざけるのは当然だろ。」

 

 

「確かにそうだけど…」

 

 

士道が一護に抑えるように説得している途中、突如として殿町は身を起こして余計に油を注ぐようなことを言ってしまった。

 

 

「いい蹴りだったぜ、お義兄様(にいさま)。」

 

 

一護は再び鉄拳を振るうことは無かったが、一護の纏っている雰囲気が荒々しく非常に危険な状態になっているのを感じて殿町はその場で見事なDO★GE★ZAをせざるを得なかった。何とかそれによって最悪の事態は免れた。

 

 

ただ、そのなかでも一護はこういうのでも自分の求めていた日常を感じていた。学校で勉強して、友人とバカなことをやって―――――これが自分が求めていた日常。だけど、何かが足りない。

 

 

「ウゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウ――――――――――――――」

 

 

そんな思いに世界が反応したかのように日常は引き裂かれ、非日常へと姿を変えた。


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