デス・ア・ライブ   作:月牙虚閃

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更新が大分遅れてしまいました、すみません。

最近、バイトとか色々なことでなかなか執筆できませんでした。

これが原作前の話としては最後となりますので、次からは原作突入となります。どうぞご期待ください。


black strength or white weekness

黒崎一護が新たに護るべきものが出来てから2年が経った。こちらの世界には虚がいない為に、未だ死神の力を解放していない。これは誰にとっても喜ばしいことなのだが、その代わりにこの世界特有と思われる突発性災害がある。それは空間震と言われるものである。

 

 

空間震…原因不明の突発性災害。その名の通り空間の地震である。その空間震が起きると町が隕石が衝突したかのようなクレーターが出来、町がくっきりと跡形もなく消えてしまう。その被害の大きさは大小様々だが、最大のものだとユーラシア大陸に大穴を空けてしまう規模だ。

 

 

一護は士道と伴に五河家の養子になったのだが、士道の本物の両親によって捨てられたショックで心に大きな傷を負っていた。養子になってすぐの時の士道はいつ死んでもおかしくない状況だった。一護が目の前にいない時は、突然眼から涙を流して泣き止まずにそれに吊られて琴里も泣いてしまうこともあった。

 

 

それでも一護や琴里に両親の必死の献身的なケアの甲斐もあって1年ほど前に何とか士道は立ち直ることに成功した。その際に、その当時に自分でも死んでもいいとも思っていた士道はその暗い経験を乗り越えたことにより、他人の絶望を敏感に感じ取るようになった。それをきっかけとして士道は自ら外へ積極的に関わっていき、それを傍で見ていた一護は士道を救って良かったと心から思った。

 

 

そしてこの日は8月3日。琴里の誕生日である。しかし、両親は世界的に有名な会社に勤めており今日も家にはいなかった。本当は一緒にいたかったのだがどうしても外せない仕事があり休暇を取れなかった。それを琴里は承知していたが、やはり自分の誕生日に親がいないのはどんな子供でも寂しいものである。そこで一護と士道は琴里に何かプレゼントをしようということになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プレゼントどうすりゃいいんだ?」

 

 

一護は琴里へのプレゼントを何にするか迷っていた。実は一護は両親からプレゼントを渡されてそれを琴里に渡してもいいとも言われていたが、それを自分のプレゼントとして渡すのは心が籠っていないと思い必死に集めたお小遣いでプレゼントを買うことにしたのだ。それは士道も同様である。それで20日30日は5%オフの某ショッピングモールに来ている。

 

 

「お兄さん、これ琴里に合うと思う?」

 

 

士道が駆け寄って一護にプレゼント候補を見せびらかしてきた。それはどうみても子供に合わなそうなブランド物の黒鞄だった。

 

 

「それ、どうみても琴里には大人過ぎないか。その前に今持ってる予算じゃ収まりきれねえだろ。」

 

 

鞄の値札には800000円の値札がついていた。その値札を見つけた士道は目を白黒させたのだが、一護はこんな高価なものを子供の手が届くところに乱雑に置いてあっていいのかと思っていた。他にも、通常のショッピングモールには置いてあるはずのない高価な商品が大量に陳列されていた。

 

 

どうやらここらへんにあるもののほとんどは高級品らしい。とりあえず、ここには子供が買えそうなものが無さそうなので今いるコーナーから離れることにした。その際に一護と士道ははぐれてしまったのだが、2人とも携帯を持っているので後で連絡して集合しようと2人は思っていた。

 

 

はぐれた後、士道は女性モノのグッズが多く置かれているコーナーに差し掛かった。ハッキリいえば、ここにある品物は琴里にはまだ早いと思えるようなグッズばっかりだった。しかし、そこにある品物のなかで士道の目を釘付けしたものがあった。

 

 

(あれを着けている琴里が見てみたいな。いつも泣いているけど、琴里がこれ着けている間だったら強く頑張っていてくれそう。)

 

 

士道が見つけたのは髪留め用の大人びた黒いリボンだった。最初の印象としては琴里には合わないと思えたのだが、なぜかわからないがそのリボンに魅入られていた。結局、プレゼントとしてその黒いリボンを買うことにした。

 

 

一方、一護は先ほどからずっとショッピングモール内を歩き回っていたが未だに琴里のプレゼントに見合うものに巡り合っていなかった。携帯の画面を見てみると時間はもうすぐ5時を過ぎようとしていた。体だけ小学生なのだが、その小学生にとってはそろそろ家に帰る時間だ。それ以上に家で待っている琴里が寂しがって泣いているのではないかと心配をしていた。そのためにも早くプレゼントを見つけなければいけないわけだが…

 

 

 

「琴里の好きなものといえばチュッパチャップスだけどよ、それじゃありきたりすぎるよな。」

 

 

好きすぎてご飯のときまでなめるのはどうか、と一護は付け加えとく。

 

 

歩き回って最後に一護が行き着いたのは士道が買った黒いリボンのあるエリアとは真逆の雰囲気を持つエリアだった。そこには琴里の年相応の子供用パジャマなどがあった。どれも琴里に似合いそうなものばかりのだが、一護が良いと思うものがなかった。だが、ここで琴里が最近気になっているというものがあると独り言で言ったのをぼんやりと思い出してきた。

 

 

「確か…テレビを見ててああいう可愛いの着けてみたいとか言ってたような、言ってなかったような。」

 

 

思い出せなくて少しイライラし始めてきたのだが、あるものを見つけてこれだと思い速攻で購入を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プレゼントを決定したころには、もう日が暮れかかって空は暗闇に包まれつつあった。これは本格的に琴里が泣きじゃくっているんじゃないかと思い、士道と合流して帰るために電話を掛けた。しかし、士道が電話口に出ることはなかった。何度か試してみたのだが、やはり繋がらない。

 

 

 

一護はすぐに電話に繋がらないことに不安を覚え、士道が何か危機的状況に陥ったのではないかとますますその思いが加速させていく。

 

 

 

そんな一護を絶望のどん底に陥らせるような出来事が起こってしまう。ガラス張りの店内から遠くの方から小さな紅い光が見えたかと思ったら、それが急速に広がり四方八方膨張して炎を撒き散らした。それだけでも十分に絶望的な状況なのだが、その炎を撒き散らした元凶が家の方角にあった。

 

 

「ッ!」

 

 

考えるよりも先にもう体が動いていた。一護がいるのは建物の3階で人間が飛び降りたらただでは済まない高さなのだが、迷わずガラスを突き破り跳躍して地面へと着地した。着地の際に衝撃を和らげるために完現術(フルブリング)を使って地面にある魂を使役させたのだが、傍から見ればビックリ超人と思われるに違いない。しかし、状況が状況なので来店者はそれを見ている余裕がなく目撃した人はいなかった。

 

 

全力疾走で燃えゆく街を駆けぬく一護。彼の頭には琴里と士道の安否しかない。炎は加速度的に広がり、刻々と状況は悪化の一途辿っていく。

 

 

 

「琴里、士道、いたら返事しろ!」

 

 

 

一護の叫びも虚しく返ってくる声はない。炎が燃え盛るだけで何もない。このときから最悪の事態が一護の頭によぎる。だが、それを振り払い懸命に琴里と士道をさがす。そして燃える炎と同系髪が揺れ動くのが見えた。

 

 

 

「琴里いいいいい!」

 

 

 

一護の声に反応した琴里が振り向いて駆け寄ろうとしたが、琴里が立ち止って叫んだ。

 

 

 

「来ないでえええ!」

 

 

その琴里の叫びに反するかのように琴里の周りを爆炎が包み込む。この炎は琴里のものらしいがコントロールが出来ないことを一護は把握した。しかし、あの琴里が自分から望んでこんなことをするはずがない。2年間だけなのだが、琴里の兄をやっている一護はそれをよくわかっている。他に琴里にこんなことをさせた張本人がいると思っていた。その一護の背後に影が…

 

 

 

「てめえ、そこで隠れていないで出てきやがれ。」

 

 

 

後ろにいたのは輪郭がはっきりとしない何かであったが、それからはとても良くない雰囲気を感じて一護はそれを敵だと判断した。

 

 

 

「ふーん、僕に気づくんだ。だから、君から君の弟と妹を離したんだ。」

 

 

 

「琴里だけじゃなくて士道もてめえが…俺の家族に一体何をしやがった。」

 

 

 

非常に切迫した状況のなか、その何かがその質問を待っていたかのような口調で一護の質問に反した。

 

 

 

「そうだね、その質問には答えてもいいかな。精霊って知ってる?実は琴里ちゃんを精霊にしたからこんなことになったんだ。」

 

 

 

「精霊…だと。」

 

 

精霊という言葉を聞いた一護は一つの記憶を引っ張りだされた。それは前の世界で力を取り戻してすぐの頃、学校での出来事であった。

 

 

(なあ、一護これ知ってるか?)

 

 

いつもどうでもいいことにハマってしまう浅野啓吾が見せたのは数冊の本で、所謂ライトノベルと言われるものであった。それらの本の表紙には美少女キャラが描かれていた

 

 

(お前、よくこういうモンによく食いつくよな。)

 

 

(偏見だ!内容もよく知らない癖にこのデート・ア・ライブにそんなことを言うなんて偏見だ!)

 

 

確かによく知りもしないのにそう言うのはこの本の著者に失礼だ。珍しく啓吾の意見に同意して読んでみることにした。読書は嫌いなほうではなくむしろ好きな方なので特に苦もせず1巻を読み終えた。

 

 

(悪かった。確かにこれは面白いぜ。)

 

 

(だろ。)

 

 

そういえば挿絵に琴里と士道の描いてあったなと思う一護だったが、今となってみればその小説の大まかなあらすじと設定しか覚えていない。しかも、それでさえあやふやだ。だからって、琴里と士道がそれに沿って生きているわけではない。2人は実在している、一護のやることはひとつ。

 

 

「てめえが何しようしているのかはわかんねえ。琴里を精霊にするって言ったよな。もしそいつが俺の家族をめちゃくちゃにさせるものだったら、俺はてめえを斬る!」

 

 

(ホロウ)はこちらの世界にはいないが、いざというときの為にお世辞でも趣味が良いとは言えない髑髏が描かれている板をポケットから取り出した。その板の正式名称は死神代行戦闘許可証で通称代行証と言われているものだ。これは一護の霊力を制御し監視するもので、これにより一護の真の力を解放させることができる。

 

 

 

それを迷いもなく胸に押し当てると、一護の周りから旋風が巻き起こり燃え盛る爆炎を消し去っていった。旋風の中から出てきた一護は黒い和装の装いで両腕に×の形の刺青のようなものがあり、その中ね最も目を引くものは背中に携えている柄の尻に途切れた鎖の付いた出刃包丁のような身の丈ほどの大きさの刀だ。謎の影はそれから繰り出される攻撃に警戒していたが、一護は自分の容姿に確かめた上で自分の胸にある玉に触れた。

 

 

 

(なんで崩玉が俺の胸に…一体どういうことなんだよ?こいつは藍染と融合してたんじゃないのか?)

 

 

 

一護は自分の変化に戸惑っていたが、今は目の前にある問題を解決するのが先決だ。ずっと警戒し続けていた謎の影に目を向けた。

 

 

 

「返してもらうぜ、俺の家族を。」

 

 

 

琴里と士道を奪還すべく一気に加速して謎の影を通り抜けようとしたところで影から驚くべき言葉を発さられた。

 

 

「琴里ちゃんと士道くんならすぐにでも返してあげるよ。」

 

 

その言葉が耳に届いた一護は動きを止めた。その発言の信憑性を確かめたく影に質問したのだが、言葉の通りの意味だと返された。

 

 

「返してあげるよ、用が終わるまでね。君にだけは忘れさせないでおいてあげるよ。見てごらん周りを。」

 

 

 

今まで撒き散らされた爆炎がすっかり消えていた。先ほど一護が消した炎は全体3分の1程度だったので、いま完全に炎が消えているのは何かが起きたということだ。

 

 

「炎が消えてるでしょ、この炎は僕が琴里ちゃんにあげた精霊の力が原因。この炎が消えたということは、僕が士道君にあげた精霊の力を吸収する能力が発動したみたいだね。」

 

 

「精霊の力を吸収?士道と琴里にそんな力を与えやがって、一体何が目的なんだよ!」

 

 

謎の影はそのことに関しては答えなかった。そのまま何も言わずに空間に溶け込んで消えていってしまった。

 

 

「おい、待てよ。俺の話は終わってねえ!」

 

 

一護が叫ぶも、影からの返事はそれ以降返ってこなかった。すこし時間が経って落ち着いてきたころに、一護は士道と琴里の捜索を始めて、程なくして2人は見つかった。琴里も士道も無事だったのだが、不思議な状態で見つけたのだ。琴里は素っ裸で、士道は服は着ていたが服が破けていて服には血がべっとりとついていた。気になることは多いが、いまはひとまず病院に連れて行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…」

 

 

精霊となってしまった少女、琴里は白いカーテンに囲まれたベットの上で横になっていた。どう見ても病院の病室である。

 

 

「もう起きても大丈夫か?」

 

 

ベットの上から見える琴里の視界に心配そうに見てくる一護が入ってきた。無事な一護の姿が見えて急に気持ちが高ぶって一護の胸へと飛び込んだ。

 

 

「お、おい!ちゃんと安静にしてなきゃダメだろ。」

 

 

「だって…一護おにいちゃんを見れてすごい嬉しかったもん。わたしの力のせいで死んだかもと思ったんだもん。」

 

 

琴里はそう言って思い出した。確か自分は謎の影のせいでとんでもない多くの人々を犠牲にしてしまった力を持ってしまった。それで、士道おにいちゃんに大怪我させてしまったはず。急に焦ってきて一護に士道の容態について尋ねた。一護が成程な、っていう風に頷いてから答えた。

 

 

「士道なら無事だぜ。今、隣の部屋にいるんだけど…」

 

 

それを聞いた琴里はベットの上から飛び降りて急いで病室のドアへと向かおうとした。しかし、一護に首根っこを掴まれ動き止められた。勢いが結構強かったのでお腹の中に何もないはずなのに胃液を吐き出しそうになった。

 

 

「ひどいよぉ、おにいちゃん。」

 

 

「わりぃ。けど、士道はいまは疲れて寝てんだ。だから起こしにいかないでくれ。」

 

 

「うーん、しょうがないなあ。」

 

 

一護の説得により士道の病室に行くのは諦めてくれた。琴里をベットの上に寝かせて、近くにある椅子に座ろうとしてズボンの後ろポケットに入れてあった誕生日プレゼントに気づき、いまこの場で渡すことにした。昨日からずっと眠っていて、さっき起きたばかりだから1日過ぎてしまったのだけれども。

 

 

「琴里、これ1日遅れだけど誕生日プレゼントだ。」

 

 

「ほんとに!ありがとうおにいちゃん。今、開けていい?」

 

 

「ああ、いいぜ。」

 

 

プレゼントの包装を破り、箱を開けるとそこには白いリボンが2つあった。

 

 

「わあ、一護おにいちゃんもリボンだ!」

 

 

「え!?もしかして士道のプレゼントと被っちまった?」

 

 

琴里は「ううん。」と首を横に振り、士道のプレゼントが黒いリボンだということを伝えて、一護は丸被りしなくて良かったと一安心した。

 

 

「そのリボンを着けているときでも着けていないときでも俺に頼っていいから。」

 

 

「どうしたのいきなり?」

 

 

「琴里、いつも俺とか士道がいないときとかそれで困っているときもあると思う。そのときはこのリボンこう願っていてくれ。『助けておにいちゃん』って。別に辛くて泣いていたって、このリボンにお願いしたときはおにいちゃんがいつでも護るから、必ず。だから、いつでも俺を頼ってくれ。」

 

 

「ありがとう、おにいちゃん!」

 

 

この出来事が後の琴里の運命を決定づけていく。


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