意図せず世界を手中に収めよう   作:マーズ

10 / 22
院長のクズ日記3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月P日

 

子供の元気な声が聞こえてくる場所は、いいところだと聞いたことがある。

それに従うと、俺がいるこの国はどうやらいい国らしい。

 

近所で武装勢力とかいう超はた迷惑な馬鹿の集団がぶつかり合っているけど、いい国らしい。

何故なら、俺のいる部屋までガキどもの元気な声が聞こえてくるからだ。

 

……うるせぇぇぇぇぇぇぇっ!!

朝っぱらからピーピー騒いでんじゃねえよ!起きちまったじゃねえか!

 

何で朝から鬱陶しい声を聞かないといけないんだよ。

本当、勘弁してくれよ。

 

お前らの相手をする嫌な一日が始まるんだ。朝くらいゆっくりさせろよ。

ドタバタドタバタと、朝から騒がしいことこの上ない。

 

お前ら、日本の密集住宅街でそれだけの騒ぎ起こしてみろよ。

近所トラブル勃発間違いなしだぞ。

 

いくら【俺が】作った孤児院が立派で荘厳で広大だからといって、騒ぎまくるなよ。

しかし、今日は珍しく一人で起きた。

 

なんだろう……この清々しさ……。

ガキどもが俺のベッドにもぐりこんでくることは、多分あいつらにトラウマやら辛い過去やらがあるんだろうけど、知ったことじゃない。

 

他人の体温って気持ち悪くて仕方がない。

夢の中で酒池肉林の愉快な生活を送っていたのに、人がくっついてくると悪夢に早変わりするからね。

 

まあ、クロやシロみたいな巨乳が一緒に寝ているとき、抱き着いてきて胸が当たるのは気持ちがいいんだが。

この欠陥だらけの身体は手が出せないし、押し付けられる楽しみしか享受できない。

 

マジで最低だ。俺もリア充したい。

自分の身体にイライラしながらも、今日は比較的に穏やかな気分だった。

 

ボーっとしているだけで美味いご飯が出てきて、のんびりと食べる。

あとは、時間が許す限り昼寝でもして、勝ち組ライフを謳歌しようとした。

 

だが、今日も今日とて邪魔が入る。

俺の部屋に入ってきたのは、クラリッサだった。

 

相変わらず無愛想な顔だ。

クロも無表情がデフォだが、頭を撫でたりしてやるとほにゃっと顔を崩すので、猫みたいでまだいい。

 

でも、こいつマジで愛想悪いからなー。

何だか見下されている気分で、不愉快になる。

 

それに、こいつも裏切り者だしな。

伝え聞くところによると、こいつはどこぞの軍隊に入っているらしい。

 

国民守るより俺を守れよ。

武装勢力がドンパチしていて、このあたりはかなり危険なんだぞ。

 

俺の盾となって死ぬくらいなこと、言えんのか。

それにさ、俺の部屋に来てアニメ鑑賞はやめろよ。

 

別にアニメが嫌いなわけじゃないけどさ、お前が見るアニメって全部キャラクターが幸せそうじゃん。

俺、あがいたりもがいたりしているキャラクターが出ているアニメの方が好きなんだよね。

 

見ていて嘲笑えるし。

なんていうか……傾向が合わないアニメを見るのって中々しんどい。

 

それに、こいつもやけにすり寄ってくるし。

俺がソファーに座ってんだから、地べたにケツつけろよ。

 

一緒に座るなよ。暑いし、生殺しだしで最悪なんだぞ。

軍人のこいつにアニメを見たくないなんて拒否することもできず、仕方なく鑑賞をする。

 

そこで目についたのは、眼鏡をかけたアニメキャラだ。

こいつ、全体としてほのぼのとしたアニメの中で唯一不憫な目に合っていた。

 

……愉快だ。

最初こそ嫌々見ていた俺だったが、次第に熱心に見るようになる。

 

すると、何を勘違いしたのか、クラリッサの奴は何故か眼鏡を掛けやがった。

……いや、別に眼鏡フェチじゃないっす(苦笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月A日

 

今日は悪夢を見た。

夢の中で、超大きな黒と白の猫が二匹現れた。

 

もうめちゃくちゃ大きい。

俺の身長なんて軽く越えていた。

 

その時点で夢なのだが、冷静じゃなかった俺はまったくそんなことに頭が回らなかった。

とにかく、嫌な予感がビンビンしたので、くるりと回って全速力で走りだした。

 

そもそも、俺って猫があまり好きじゃないのだ。

あいつら、人間に庇護されてめちゃくちゃイージーモードの人生……いや、猫生を歩んでいる奴らも多い。

 

それにもかかわらず、あいつらはまるで自分が主人であるかのように、我が物顔で部屋に居座るじゃないか。

動物とか全部嫌いだけど、まだ犬の方が可愛げがある。

 

あいつらは、人間のことを主人と認めることが多いからな。

そんなわけで逃げ出した俺だったが、化け猫二匹はなにをトチ狂ったのか、俺を追いかけはじめたのだ。

 

ああ、絶叫したね。

現実世界では決して出したことのない大声を出したね。

 

俺は今までにないほど全力で走ったのだが、相手は獣畜生、すぐに追いつかれてしまった。

そして、機嫌が良さそうに「にゃ~ん♪」と鳴いたかと思うと、二匹揃って俺に腹プレスを仕掛けてきやがったのだ。

 

柔らかいけど、押しつぶされる苦しみに喘ぐ俺。

嫌な汗が噴き出し、涙も出てくる。

 

「もうダメポ……」と最期の言葉を残したとき、俺は目を覚ました。

……ええ、最悪の目覚めですよ。

 

現実世界でも命が危ないときばっかりなのに、どうして夢の中でも死にかけなければならないのか。

あまりの不条理に、俺はホロリと涙する。心の中で。

 

今日は珍しく、チェルシーがいた。

こいつも裏切り者だが、俺の好感度は底辺までには低くない。

 

まあ、間違いなく低いのは低いのだが、他の奴らよりはマシだということだ。

何故ならこいつ、俺の世話を率先してやってくれるからだ。

 

いやー、楽ですわ。

こいつの作る飯はうまいし、朝は優しく起こしてくれるし。

 

ただ、起こすのが朝六時とかやめてくれませんかねぇ。

まだ寝させろよ。五時間くらい。

 

ギャーギャー喧しいなと思ったら、クロとシロが喧嘩していた。

俺の部屋で何やってんだ。

 

というかこいつら、また俺のベッドにもぐりこみやがったな。

今朝見た悪夢はこいつらの仕業か。マジでふざけんなよ。

 

お前らの添い寝で、俺は朝からうんうんうなされたんだぞ。

朝っぱらからイライラしていた俺だったが、朝飯ですっかりと機嫌を治す。

 

うん、やっぱりチェルシーの飯はうまいわ。

家事もできるし、俺に意見しないし……。

 

本当、裏切り者でさえなければなー。

朝飯の内容も、この国ではほとんど食えない和食だった。

 

焼き魚の骨を取るのが面倒で嫌いないのだが、チェルシーはそれも取ってくれた。

至れり尽くせりだな……っ!

 

こうして俺はすっかり上機嫌になったのだった。

まあ、その後シャルロットが部屋に突撃してきて一気にテンションが下がったのだが。

また生脚を見せつけやがって……あざといんだよ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月S日

 

ウサギ死ね。

基本的に動物嫌いな俺だが、この世界で一番嫌いな動物はと問われれば間違いなくこう答える。

 

―――――ウサギ。

しかし、俺がウサギに何かをされたわけではない。

 

むしろ恩恵をもらっているくらいだ。おいしかった。

では、何故俺がここまで嫌っているのか?

 

それは、俺が嫌いな人間がウサギに似ているからだ。

篠ノ之 束。

 

ISとかいう、何か凄い兵器を作ったドラえもんみたいなやつだ。どこでもドアよこせよ。

こいつ、何を考えているのか、しょっちゅう俺の部屋に遊びに来る。

 

いや、来るなよ。誘ってないじゃん……。

こいつの何が嫌って、うるさいのだ。元気なのだ。

 

俺、元気だったりしあわせそうだったりする人間って嫌いなんだよね。

それに、こいつはなにを考えているのかさっぱりわからないから嫌だ。

 

今日も屋根から飛び降りてきたからね。

普通、部屋に入ってくるときに通るのは扉だろう?

 

忍者みたいに、屋根から奇襲かけてくるんじゃねえよ。

それと、マシンガントークがうざい。

 

俺に話させる気がないなら、ぬいぐるみにでも話しかけてろよ。

この糞ウサギ、どうして俺が一人でいるときにだけやってくるのだろうか。

 

奴隷が近くにいないと、俺が茶を用意しなければいけなくなるんだけど。

この俺に雑用なんてさせんなよ。

 

でも、俺は大人しくお茶を用意する。

だって、こいつ怖いんだもん。

 

よくわからないけど、こいつの作ったISって世界最強の兵器なんだろう?

それを作るような奴に敵視されたら、もう俺生きていけない。

 

有能な盾はしょっちゅう孤児院からいなくなるし、もう嫌!

クロさん、シロさん!少し懲らしめてやりなさい!

 

というか、今日の束の様子がおかしい。

やたらとウインクしてくる……キモイ。

 

お前、可愛いと思ってんの?

いや、確かに容姿だけ見ればお前って高得点よ?

 

痛々しいウサ耳とかつけていなかったら、百点満点に近いんじゃないか?

だが、お前の性格が致命的なまでに俺と合わない。

 

俺は、ただ俺に従順に従って、俺の代わりに十分以上に稼いできてくれて、家事も全部やってくれる、そこそこ可愛い女が好きなんだ。

俺の決めつけだけど、お前、愉快犯だろう?

だから、ウインクするんだったら他の奴にしろ。うざい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月D日

嘘だろう……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月F日

嘘だと言ってよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月G日

もうダメだ……おしまいだぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月H日

皆死ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月J日

マジ無理……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月K日

隕石落ちてこないかなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月L日

働けってどういうことでしゅか?

勤務先がニッポンってどこでしゅか?

IS学園って何するとこでしゅか?

 

 

 





祝・院長、就職する。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。