「これでヨシ…ナルトは後方、サクラとサスケは左右、俺は前を見張る。コイツ等が抜け忍か、それを装った他国の忍か現状不明、周囲に気配は無いから新手の可能性は低いが一先ず今日の目的地まで気を抜くなよ…」
カカシが捉えた二人を大木に縛り終わると、普段の様子と違い真面目な声で三人に指示をする。
タズナを囲むフォーメーションを取った一行は再び移動を開始した。
「忍まで出てきたってことは……」
「ああ、下忍なりたての俺達が受けれる任務じゃない…」
『数が居てもカカシ先生が対処出来る位なら問題無いってばね…問題は先生を一対一に持ち込める手練が数人来た場合…騙されて受けた依頼だし、最悪オッチャン引き渡せば助かる可能性あるから【保険】はギリギリまで守るってばね。』
「「そうだな」ね」
タズナは左右と背後で小声で話し出すナルト達の物騒な会話にゴクリと唾を飲む。
敵に企てを知られず、自身の能力を明かさない事は傭兵に身を窶し、里と言う後ろ盾を無くした忍に取って絶対条件。
タズナを引き渡したところで【忍】の闘いは終わらない
しかし、それを知らず自身の不注意で護衛すら敵に回しかねない状況を作ったタズナから見れば安心は出来ない。
「せ、先生さん……」
「こらこら、依頼主を怖がらせるんじゃないの……本っ当ヤンチャな奴等で私も手を妬いてるんですよ、ハハハ……ですがコイツ等の言い分は間違っちゃいない。 全部話してくれますか、タズナさん」
「…あ、ああ…」
口調こそ穏やかではあるが、カカシがタズナを見る目は鋭かった。
当初有耶無耶のまま全てを終わらせようとしていたタズナも、これ以上隠し通せないと知ってポツリポツリの慎重に言葉を選び真実を話し始めた。
『…………流石に誤魔化しすぎだってばね………』
波の国の情勢、建設中の橋、ガトー及びガトーカンパニーの存在
、絡む利権と莫大な利益、抜忍の存在……話せば話すほど出てくる出てくる隠し事に流石のナルトも呆れざる負えなかった。
実際、サスケとサクラは開いた口が閉じず、何かあるとは思って居たカカシですら斜め上を行く事態に頭を抱え天を仰いでいた。
「依頼金の交渉をしようとは思わなかったんですか?」
「………………………」
「近隣の小国、特に何かしらの強みがある所は狙われやすい故にこの手の依頼は珍しく無い。 隠し事しないで話してくれれば支払い方法や期限など相談だって出来た。」
「す、すまん!!」
カカシの至極真っ当な意見にグゥの音も出ないタズナ
遥か年下であるはずのカカシに説教され、開き直ることも出来ずタズナはどんどん小さくなっているように見える。
「カカシ、ガトーって奴が手放したくない利権はそんなに大きいのか?」
本格的に任務継続の有無を考え始めたカカシに声を掛けたのはサスケだった。
「うーん…波の国近辺の地形や現状の輸送手段から見れば相当なモノだけど、急にどうした?」
あくまで急ごしらえの情報だからなんとも言えないけど、と前置きしてからカカシは地面に棒でタズナの話を簡略化した図を描きながら説明した。
「それで雇える抜忍のレベルってさっきの基準にすると、どれくらいですか?」
カカシの説明を聞いたサクラが今度は質問する。
「数を雇うなら100人前後ってところで、質を取るなら十数人……後者なら最悪だね…ってサクラまでどうしたの?」
おそらくさっきのは前者に該当する抜忍じゃなかな‥そう話すカカシに3人は顔を顰めながら、あーでもないこーでもないと話し合い始めた。
『少なからずカカシ先生レベルが居ること前提にしたほうが下手に気を抜かずに済むから良いってばね……となると目下一番の問題は…』
「俺(私)達の実力不足……」
任務遂行の為に必要なモノは分かりきっているのに、ソレを埋めるにはあまりにも時間が足りない。
3人は全員持ち物を確認し合ってはウーーンと唸り、頭悩ませる。
『急なパワーアップは無理だとして……オッチャン、生き残る為になんでも出来るってばね?』
「な、な、なんでもする! ワシに出来る事ならなんだってする! だから、波の国を見捨てんでくれっ!!」
3人の話し合いが5分程経った辺りで、ナルトが突然タズナをジッと見つめて問いかけた。
この時、タズナの中に合ったのが任務解消への恐怖か、他の何かかは分からないがタズナは必死に頭を下げた。
「ちょっと、ちょっと、勝手に話し進めすちゃ駄目じゃない……とは、言っても今更引き返せないのも事実……何か策あるの、ナルト?」
『……ゴニョゴニョ……』
「ほうほう」
『斯々然々』
「えっ!?」
『徒然成間々』
「ふんふん……」
『先生どうかな?』
「護衛対処の危険度はますが、下手に守りに入るよりは可能性は高いかもしれないね……」
こうして護衛任務の継続は決定した。
カカシはタズナに任務難易度が上がったこと、下忍三人がたてた護衛計画とそのリスクを説明した。
タズナもコレを承諾し、敵のテリトリーである波の国に入る前に全ての準備を整えてから入国した。
そんな一行に鬼人の脅威が迫っていることを彼等は知らない。