初の護衛任務! ~出会い最悪!先行き不安!~
日課のトレーニングと食事を済ませたナルト。
第七班の集合場所である空き地に向い、何時ものようにナルト、サクラ、サスケ、カカシの順に合流し、昨日の任務報告と新しい任務を貰いに火影室に向かった。
「今回の任務も問題なく終了したようじゃな。」
「依頼人が凄く感謝しててな、俺も鼻高々だったぞ!」
三代目火影ヒルゼン、その補佐のイルカが七班を誉めるとナルトの無表情が綻んで照れ笑いに変わり、そんなナルトを左右からチラチラ盗み見る3人。
低ランクとはいえ数々の任務を一緒にこなしてきた七班に前よりは表情見せるようになったナルトではあるが、いまだに無表情が当たり前であり、こんな表情は中々見れないのだ。
「「おっほん!」」
「「「!?」」」
「二人揃ってどしたんだってばね?」
「最近喉の調子が悪くてな……んんっ!あーあー!」
「儂も何だが…ゲホゲホ!」
かなりわざとらしい咳だがナルトは気づかない。
「ところでカカシ、今年は【アレ】を木の葉で開催するのは知っておるな?」
「もう【アレ】の時期ですか……モノは相談なんですが【アレ】にコイツらを出しても良いですかね?」
「私も普段ならまだ早い!と止めますが今期の卒業生は成長スピードが早く、将来はかなりの忍びになると思います。
だからこそ此処等で高い壁をぶつけないと天狗になるどころか折角の才能を潰し、最悪仲間も自身も怪我じゃ済まない状態になる···モノは試しで普段より監視を増やし、ある程度の安全確保した上でやらせてみては?」
「過保護なお前から賛成とは珍しいこともあるもんじゃ····では全下忍に参加の意志の有無を確認し、力量確認として現在よりワンランク上の任務をさせよう。
それを参加試験とし、良クリアした班のみを参加させるとしよう。」
この場で火影達の話を唯一正確に理解してるナルトは個人的な理由からウヘェ~っと嫌そうな顔をし、サクラとサスケは期待されてる事への嬉しさ半分とナルトの表情から【アレ】と呼ばれる物への不安半分と言った顔をしている。
「次の依頼内容は‥‥丁度良い。ランクも内容も今話した条件に当てはまるようじゃからカカシ班の参加試験はコレとする。」
三者三様ならぬ多者多様な反応に包まれた部屋。
火影が次の依頼書を見てから鈴を鳴らすと背格好から見て恐らく50~60代であろう男性が入ってきた。
その男はドアの外で多少なりと話を聞いていたのか自分の依頼を担当するナルト達を見て言った。
「こんなガキどもが護衛で本当に大丈夫なんだろうなぁ?
わし、超心配!」
ある意味では忍者も客商売と然程変わらないがこの男の第一声は失礼すぎではなかろうか、と思わずにはいられない。
普段無表情で並大抵の事ではそれを崩さないナルトが顔を歪め、ボソリと呟いた。
「俺はオッサンの全てが胡散臭すぎてこの依頼超心配だってばね」
すでに日も沈み始めていたため一時解散し、翌日は各自の準備や現状の把握、出発は準備や把握が昼前に終わったならその日に、昼を過ぎたなら明後日とカカシが提案したのだが依頼人であるタズナが今すぐ出発だ!と無茶を言い出した。
それからタズナとカカシの間で一悶着あったが、カカシは終始冷静で夜に発つことの危険性を説明し、出発を明日の朝にするという条件を付けることでその場は収まった。
ー夜・七班各自家ー
「波の国、護衛、年配···大した情報無かったが、あの爺さんの反応見れば用心にこしたことないな。」
「流石に今日の今日じゃ集まらないかぁ···あれ、これって···大工の護衛に絡んで来るとは考えられないけど念には念をってね!」
ナルト邸~
「ナル君って本当面白いこと考えるわね~」
「通常より収納量は減ったけどコレなら姉ちゃんみたいには使えなくても隙が少なくて済むってばね!」
「でも只の護衛任務にしては重装備過ぎない?」
「そうなんだけどあの爺さん何か怪しいんだよなぁ···」
「そっか、実際ナル君の勘にハズレはないからナル君が思うならきっと間違いないと思うわ。」
その夜、サスケ、サクラは大まかにしか依頼内容話さないタズナから得た情報に付け焼き刃ではあるが自分達で調べたここ最近の「波の国」の情報合わせて各々忍具等の準備をした。
ナルトは任務帰りだったのか夕方頃に来たもう一人の姉と慕う少女と協力して新しい収納巻物を完成させ、それに道具を詰め、更にそれを数本準備してから一緒に晩御飯を作り、少女と同班の個性豊かなメンバーの話をオカズに楽しく過ごした。
翌朝七班と依頼人のタズナは里の入口である『あ』『ん』と書かれた大きな門の前で落ち合い、里を出た。
あれから1時間程歩いたときタズナが振り返り三人の子供を見ては火影室でも聞いた一言を言った。
「先生さんは別にして本当にお前達なんかが頼りになるのかワシは物凄く心配じゃ!」
(((本当にしつこい····)))
三人の心が通じあった貴重な瞬間だ。
「確かにコイツらはまだ子供で実力だって上忍や中忍に比べればまだまだです。
ただ機転、危機察知、判断力···任務に必要な要素はしっかり持ってる事は俺が保証しますよ」
(カカシ···(先生))
上忍であるカカシに多少なりとも認められている事にサクラだけでなくサスケまでが嬉しくなっている頃、ナルトは今しがた通りすぎた場所にある水溜まりをジッと見つめていた。
しばらく見つめた後にため息一つ。
タズナはナルトの行動を意味が分からなそうに見ていたがカカシ、サクラ、サスケはポーチに手を忍ばせクナイや手裏剣を準備。
水溜まりとナルト達の距離は5メートル程で緊張が走った次の瞬間!!
ナルトがバックをガサゴソと漁り、取り出したのは【グシャぽん】と呼ばれる商店街に最近設置されたミニフィギアを包んでいる拳位の球体カプセルだった。
中に何か入ってるようだがカカシ達は握るナルトの手が邪魔で中身確認出来ず、敵は玩具のカプセルのインパクト強すぎて大した物じゃ無いだろうと無視した。
そして···
「えいっ!!」
取り出したカプセルを投げた。
水溜まりに潜む敵も味方も唖然である。
なんせ投げられた物が起爆札や手裏剣ではなく【グシャぽん】のカプセル。
当たった所で「いてっ!」程度だ···当たるのがカプセルだけなら···
カプセルは水溜まりの直ぐ脇に落ちて割れた。
敵が潜んでるであろう水溜まりにすら落ちなかった···が、中身は水溜まりに混じた。
敵はナルトを嘗めた····担当上忍は別としてサクラやサスケも嘗めた。
「笑わせてくれるじゃねぇーか小僧!!」
「玩具遊びがしたきゃ家でママとしてなバァーカ!!」
嘗めた結果、奇襲するまでもないと水溜まりから飛び出してきた二人の忍者はナルトを指差してゲラゲラと笑う。
そんな二人を無視してナルトはバックからラベルが貼られた容器を2つと袋1つを取り出して二人の忍者に見せる。
夏場のアイドル【花火】
台所のガソリン【サラダ油】
世界が誇る最高度数【スピリッタス】
敵も味方もドン引きした。
だって水溜まりの中から飛び出てきた二人の髪や服には水溜まりに混ざった2つの燃料が染み付き、よく見ると黒い無数の粉もまとわり付いていた。
更にナルトは地面を指差す。
ナルトの足元から点々と続く液体の染み。
大方カプセルに穴が隙間を作っていたのだろう。
しかも油と混ぜた液体は地面の吸い込みが悪い。
全員の視線がナルトに戻った時、彼の手にはマッチが···
「芸術は爆発だぁーーーってばね!!」
遠い未来で出てくるであろう忍の決め台詞を叫びながらマッチを放った。
点々と続く染みは導火線となり二人の足元まで火を運ぶ
目の前に迫る恐怖に冷静に対応出来る人間は極僅か
二人の忍は悲しいかな【僅か】ではなく【大多数】の方だった
ヒュー、パン!ドドドド、ドカーン!
汚い花火が路上に咲いた。