ナルト達が作戦を練り始めてから2時間経ったが、集合時間を決めたカカシはいまだ来ていなかった。
3人の作戦会議は続き、更に1時間過ぎた辺りでカカシはやって来た。
「やーーー、諸君おはよう!」
「カカシ先生、3時間の遅刻だってばね! 後で火影様に俺達3人の精神的苦痛、成長期の貴重な時間を奪ったこと、全て諸々含めて更に盛って報告するってばね!」
「そうよ、そうよー!」
「自業自得だな…」
「………お前ら嫌いだ!!」
カカシは表情こそ崩さないが、内心は3人の仕返しにボコボコにされダウン寸前。
何故なら本当に報告された場合、それが給料に響けば久しぶりの『イチャイチャシリーズ』の新刊を買えなくなるからだ。
「まぁ、それは置いといて…今から演習を始める!」
「先生!演習ってアカデミーだとチーム戦だったんですが今回もそうですか?」
「ルールは今から説明する。
演習は今から1時間、つまり12時30分までに、俺が持つ2つの鈴を奪うこと。
昼までに鈴を奪えなかった奴は昼飯抜き!
更に任務失敗の場合、アカデミーに逆戻りだ。
それとお前らは手裏剣、忍術なんでもありだ。」
ルールを聞きながら3人は内心ガッツポーズを決めていた。
個人戦や組手では計画は水の泡となっていたが、唯一の勝ち筋である演習に決まった今、後は出来る限り作戦通り動き、カカシに『ギャフン!』と言わせるだけなのだから。
「よーい、スタート!で始めるからな?」
「「「…………」」」
「よーい、スタート!」
3人が一斉に別々の林に飛び込む。
粗削りだがちゃんと気配を消せている事に感心していたカカシの前にせっかく隠れたのに姿を表した少年が居た。
「俺と一対一で戦え……はたけカカシ!」
「うーん、一番手は木の葉の名門一族うちはか…俺が見た感じ、こんな無謀な事はしないように感じたんだけど………ハズレみたいだね、サスケ君?」
「俺はドベのアイツらとは違うんだよっ!!」
サスケはクナイと手裏剣を大量に放つが全てカカシに避けられてしまう。
しかし、サスケはカカシに当てる気は端から無い……自身の動きと周囲への警戒を一瞬でも逸らせれば良いのだ。
案の定、カカシが避けた先には罠が仕掛けられいた。
「し、しまった!?」
穴は片足サイズで、膝くらいまで入るであろう深さの落とし穴である。
左右のバランスを失い慌てるカカシに追い討ちをかけるように再び大量の手裏剣とクナイを投げるサスケ。
「これでどうだっ!!」
「ぐわぁー!…なーんちゃって…策は良かったけどまだまだだよ……お昼までおやすみっ!!」
「残念……俺は分身だ。」
悲鳴が上がった次の瞬間、カカシはサスケの背後に音もたてず現れ、その手には先程投げられた無数のクナイの1本が握られており、それをサスケの首筋に当てていた。
そして気絶させようとした瞬間、サスケはボワン!と音たて消えた。
演習終了まで後46分………
演習場の入口付近にある団子屋の店前に置かれた長椅子に座るナルトとサクラが巻物を広げ、口寄せの術を使うと、ボンッ!と音たて煙が立ち込め、煙が風に吹かれ消えると、そこにはサスケが立っていた。
「実力確認は成功だってばね!」
「ナルトの集めてきた情報の内、『カカシが四代目火影の弟子で実力者』ってのは確認できたな……確かに今の俺らじゃ勝てない。」
「まさか四方八方からの手裏剣攻撃を無傷で交わすなんて………私達じゃ勝ち負け以前に勝負にすらならないわ。」
3人は演習場に戻るでもなく店員に団子とお茶を注文し、先に出てきたお茶をズズズッと啜り一息つくと次は団子を食べながら朝話し合った『カカシ対策』の穴を埋め、少しでも作戦の成功率を上げるための話し合いを始め。
「サクラ、お前を馬鹿にする訳じゃないから怒らずに聞いてくれ……」
「なにサスケ君?」
「おそらくアイツが警戒するとしたら俺かナルトだ。俺は『うちは』って他里にも知れ渡る名門一族の生き残りで、ナルトはイルカ先生とのアカデミーでのやり取りを調べれ実力関係なく警戒はする。」
「なんとなくサスケの言いたい事が分かったってばよ。」
「私はサスケ君みたいに特別有名じゃないし、ナルトみたいに目立った事をアカデミーでしてない。つまりカカシ先生から見た私は『ごく普通の頭が良くて可愛い女の子』ってこと?」
「「そこまで誉めてない」ってばね」
「二人とも喧嘩売ってんの!?しゃんなろぉー!」
「「め、滅相もないです…はい…」」
多少おふざけのようなギャグのようなやり取りはあったがサクラはちゃんと理解していた。
現状自身の力は二人に劣ること、当然カカシの中でも自身の対策優先度は低いこと、だからこそ今から行う作戦の鍵を握れるのが自身しか居ないと言うことを。
「つまりサスケ君とナルトがカカシ先生の注意を惹く囮役、私がトラップと二人のサポート役になるのね……」
「ああ。」
「安心しろってばね! 俺達もなるべくタイマン時間稼いで、空いてる方はサクラにサポートの合図だすから、サクラは俺とサスケを口寄せす出来るようになるべくチャクラは温存、罠は此処に書いてある通り張れば問題無いってばね!」
「時間まで後40分……サクラはラスト5分まで罠を張れ。時間が来たら俺達がそこまで誘導する。」
3人は所々穴はあるが必死に考えた作戦の成功を祈って一皿三本の団子を頼み、1人一本ずつ食べながら演習場に向かった。
「サクラは今朝の集合場所に向かってそこに罠を張れ。俺とナルトは出来るだけ時間稼ぐぞ…」
「おう!」
「分かったわ!」
3人は其処で別れた。
サクラは残り時間を全て罠とサポートに回すため少しでも早く着こうと走った。
サスケとナルトはそんなサクラがカカシに目をつけられないように気配消すのを止めてサクラと反対方向に走った。
演習終了まで残り36分……
1分、また1分と時間が過ぎるなかナルトとサスケは交代したり、時には同時に攻めたりしながらカカシを順調に足止めしていた。
しかし、この『足止め』はただの『足止め』ではいけないのだ。
①自分達が協力してる
②罠を張るサクラの存在
③最終的離脱方法が『口寄せ』である
これら3つ、特に②と③は3人が立てた計画を成功させるためにもバレてはいけない。
「邪魔だ、ナルト!アイツは俺が倒す!」
「お前には死んでも無理だってばね!」
「なんだとっ!」
「カカシ先生の前にお前を潰してやるってばね!」
カカシは演習そっちのけで今にもぶつかり合いそうな二人を呆れながら見ていた。
「お前らねぇ…」
辺りを飛び交うクナイ、いたるところで起こる起爆札の爆発、体術の押収……数多の任務をこなしてきたカカシにとっては避けること容易いが、サスケとナルトの攻撃はなまじ威力がありすぎるのだ。
下手に気を抜いて一発でも当たれば大きなダメージとなり、一気に形勢をひっくり返される可能性がある。
「昼まで後10分きったよ。そろそろ争うの止めたら?」
「「嫌だ!」ってばね!」
今回の3人にある程度期待していたカカシの中で3人の評価は絶賛急降下中だ。
然り気無く『協力・チームワーク・連係』を促してはみるが全く成果がない。
サクラは未だに姿を見せず、サスケとナルトは喧嘩ばかりで時々連係に近い攻撃をするがその制度は余りにもお粗末。
「はぁー、今回もダメかな…」
ぼそりと呟くカカシは自身の思考で、ある違和感を感じた。
その違和感の原因は一向に姿を見せないサクラの存在とサスケとナルトが稀に繰り出す連係だ。
カカシside
1…2…連係、1…2…3…連係、1…2…連係
1…2…3…4…連係、1…2…3…連係、1…2…3…4…連係
連係のタイミングは三回起きに変えてる…しかし、昨日今日の話し合いで此処まで完璧に足並みそろうか?
ドカーン!……バボーン!……ズッガァァン!……
まさかコイツら、連係入る前に起爆札で合図出してタイミング合わせてるな……
2人は確実に手を組んでる。
じゃあサクラは?
此処まで来たらサクラだけ協力してないって事はないだろう…
考えられる答えは1つだな。
カカシside終了
「お前ら手を組んでるだろ?」
「「!?!?」」
「どうやら図星みたいだな……ってことは未だ姿を見せないサクラが切り札だな?」
「「………」」
「この場での沈黙は何よりの答えだよ……消去法で考えられるサクラの役割は力より知識…つまり罠を張って待ち伏せ、または援護。」
確かに3人の計画は下忍が2、3時間で考えたにしては
素晴らしかった。
2人が囮で1人がそのサポート…確かに単純だが下忍にも可能でそれほど高度な技術は必要ないため、凝った複雑な作戦より失敗は少なく成功率も高い……実戦経験無い下忍が考えた作戦の中では満点クラスだ。
しかし相手が悪かった。
相手は様々な修羅場を潜ってきた凄腕の上忍のはたけカカシ。
1つ見抜かれただけで隠していた計画を丸裸にされてしまった。
「お前らはちゃんとチームワークが成立してた。この演習は全員ごーか……【パァァン!】」
ラスト8分でサスケとナルトは計画の失敗を悟った。
カカシは3人への評価を改めて合格を言い渡そうとした瞬間、空に何かが打ち上がった。
本来計画に無いその照明弾と発煙筒の赤い煙は失敗を悟った2人に闘志を呼び戻した。
何故ならその2つが上がっている場所は現在進行形でサクラが罠を張り巡らせている場所だからだ。
久しぶりの投稿になります!
原作に沿いながらも多少(?)中身は変わっていきます!
投稿出来るようであれば今日、外伝3話目を投稿します!