蠱毒な少年   作:巳傘ナコ

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始まるための物語
第一話 生きたい


才能はない…

センスもない…

体力も知力もない…

少年には何もなかった…

 

『頑張れば必ず良い結果に繋がる!』

『努力は必ず報われる!』

人は言うけれど、そんな保証はどこにもない。

 

少なくとも、この物語の主人公うずまきナルトには当てはまらなかった。

いくら少年が努力しても取り巻く環境は何一つ変わらず、それどころか酷くなる一方だった。

 

少年が『俺は怪物じゃない!』と訴えれば、『黙れ!化物!』と殴られ、困っている人を助ければ、『近寄るな!』と怯えられた。

少年は認めてもらおうと頑張ったが、結局何も変わらなかった。

 

少年にとって世界は残酷なモノだった。

 

 

少年には【うちは】や【日向】のような特殊な力や後ろ楯も無く、【猪鹿蝶】のような助け合える仲間も居なかった。

最後の拠り所となるはずの両親は少年が産まれた日に全てを託して逝ってしまった。

 

まだ三、四歳…そんな少年に待っていたのは優しさでも暖かさでもなく周りからの暴力だった。

止まない罵声

止まない暴力

毒入りの食事

死と隣り合わせな日常…

 

そんな日々が、当たり前になるほど続いても少年は【死】によって楽にはなれなかった。

体に封じられし九尾のチャクラがどんな怪我も治してしまうからだ。

 

少年は幼いながらに思った。

自分には周りが当たり前のように持つ【愛】や【家族】、 【平穏】や【安心】など様々なモノが欠けている…

それはまるでパーツが足りない玩具か人形のようであると····

 

 

地獄の様な日々を送る少年が周りを恨むことはなかった。

過酷な毎日を過ごすなかで『死にたい』と思うより『生きたい!』という思いの方が日に日に強くなっていった。

少年が抱き、決意した『なにがなんでも生き抜いてやる!』そんな思いは力も知恵も何もない少年が唯一誰にも負けなかったモノだろう。

 

 

故に少年は諦めなかった。

『生きたい』と願う少年に周りを怨んでる暇などなかった。

生き残る為に周りにある物をとにかく観察し、出来る限りのモノを取り入れた。

とにかく色々欠けていた少年はどんな小さなモノも見逃さなかった。

 

アカデミーに入る前から図書館に通っては難易度や会得ランク、基礎や応用問わずにありとあらゆる本を読み漁った。

しかし幼い少年が一言一句、一説一論正確に理解できる本は何一つ無い。

 

それでも本の挿し絵やアカデミー生の訓練風景を見ては夜中にこっそり見よう見まねで練習した。

結果は惨敗で当時の少年には術や体術の練習はレベルが高すぎた。

 

チャクラ性質なんて論外で全くの成果無し。

忍術もからっきし駄目、むしろ術を出す時の理論からチンプンカンプン。

体術も幼い体には厳しく、何一つまともな技は得られなかった。

 

しかし全くの成果なしと言うわけではなかった。

同世代より読み書きを覚えるのは早かったし、少なからず忍の知識は増え、かなり曖昧ではあるがチャクラの存在をなんとなくだが感じられるようになった。

体術や技こそ無理ではあったが筋トレにはなったらしく丈夫で柔軟な体作りには役に立った。

 

むしろ急激に伸びた力は【観察】の方だ。

集団で餌を狩る蟻、蜜蜂の群を単体で蹴散らす雀蜂、罠を張る蜘蛛、擬態する蟷螂、雀を狩る猫、魚を取る鳥、毒を持つカエル、蛇や蜥蜴の移動、暴力を振るう人と罵倒だけの人などありとあらゆるものを観察し少しずつで はあるがそれらの仕草や雰囲気等を学んだ。

 

さらに観察の一貫として少年は動物や昆虫など飼える範囲で飼育した。

結果、口寄せ獣と忍みたいな関係を築く事に成功した。

周りの人を観察したおかげでその人の性格、特徴、悪意などを見抜けるようにもなった。

 

 

とにかく様々な方法を使って少年は生きる方法を模索し、その為にもありとあらゆるモノを見て学ぶ事に可能な限り時間を費やした。

 

少年は思う。

完全じゃなくて良い。

今日や明日なんかじゃなく今この瞬間襲ってくる【恐怖】を乗り越えられればまた新しい何かを見て、真似て、学ぶチャンスができる。

そのチャンスでまた何かをモノに出来れば次にやってくる【恐怖】をきっと乗り越えられる。

 

そんな少年の努力はもう直ぐ報われる事となる。

 

 

 

 

所変わってここは火影邸

 

三代目火影であるヒルゼンは水晶玉に映る少年を、自身が守るべき里人を見て、かつて誰かが言っていた『人は弱く愚かである…』そんな台詞を思い出していた。

 

 

何故なら人は手を取り合い、助け合い、励まし合い、協力し合う事が出来る素晴らしい存在であるが、同時に殺し合い、憎み合い、苦しめ合い、怨み合う悲しい1面ももっているからだ。

 

 

「どうしたものか……」

 

 

水晶玉に映るのは里の人間に殴られ、蹴られるうずまきナルトの姿。

ヒルゼンは信頼出来る暗部を呼び、直ぐに現場に向かわせたがソレが一時凌ぎの対策にしかならないことに頭を悩ませた。

 

 

「入るぞ…」

 

 

「ダンゾウか……護衛も付けずに来る程の大事と考えて良いのか?」

 

 

「ああ…うずまきナルトの事だ。」

 

 

そんな時、火影室のドアが開いた……その向こうに居たのはヒルゼンの古くからの戦友であり友人でもあり、自国他国関係なく全ての忍が【忍の闇】と怖れ嫌悪する人物、志村ダンゾウだった。

この二人が1つの部屋に互いに護衛も付けずいる光景を他人が見たら目を丸くしたであろう。

 

だがヒルゼンにとって周りが自分達の関係をどう見ていようと関係なかった。

互いの立場ゆえ昔のように合うことも減ったが、今でも共に茶を飲み、里の未来について語り合う大切な友人だからである。

 

 

「アイツは鍛えて強くするべきだ。木の葉の戦力として人柱力として。それが何よりアイツのためになる…」

 

 

「『ナルトのため』とは忍の闇とまで謳われたお主らしくない意見じゃな…」

 

 

二人は第一次、第二次と最も激しかった大戦を経験し、生き残った……それ故に彼等の世代は国を問わず【平和】の有り難みをよーく知っている。

 

それでも大小様々な戦が毎日のように起こる……自国の繁栄、復讐、侵略、富に権力とその理由は様々。

そんな戦争を何度も経験するうちにダンゾウは【対話】により平和が実現する確率は限り無く零に等しいと学び、【平和】のために修羅の道を歩むと決めたのだ。

 

そんな彼が言った『ナルトのためになる』という一人の少年を安否を優先するかのような言葉にヒルゼンは少なからず驚いた。

 

 

「クシナとミナトは火影とその妻としての役目を十分過ぎるほど果たした……自分達の未来とナルトの平穏を全てを賭けてな。

これ以上あの一家から何を奪えというのだ…只でさえ人柱力となったナルトには過酷な運命が待つ。

貴様の言葉を借りるなら、あやつ等一家も木の葉の里の【家族】……里の為に命散らした二人の代わりにナルトを鍛えることが我等の勤めであり償いではないか? 」

 

 

「……………」

 

 

「何も同情や憐れみだけで言ってる訳ではない。

あまりにも不安の種が多すぎるのだ……尾獣を探してる謎の傭兵集団、他里との均衡、そして儂が一番危惧しているのは新たな忍界大戦………表面上は平和が続いているが火種は山ほどあるからな…いつ起こってもおかしくない。」

 

 

「確かにな……この平和は長続きはしないとワシの中の何かが訴えておる。」

 

 

「今の世の噂や憶測を全て事実として今回の九尾襲来を考えるとあの一件自体が怪しく思えてならん……」

 

 

「やはりな…ワシもあの九尾の暴走には納得いく理由が見当たらんかった。なにより……」

 

 

「クシナとミナトが易々と九尾を解き放つとは思えん……ならば可能性は1つ。」

 

 

「誰かがもしくは何かが九尾を狙った…」

 

 

「だろうな…人柱力の出産時は封印が著しく弱る。恐らくずっとクシナの様子を見ていたのだろう……」

 

 

二人はクシナが人柱力で有ることも妊娠していることも一部の者以外誰にも知らせなかった。

知っていたのはヒルゼンにダンゾウ、ミナトに自来也、里の相談役の二人くらいだ。

 

 

「昔からの言い伝えを理由の1つにあげるなら今回の九尾出現は「世の節目・変わり目ではなかった」」

 

 

かつてより尾獣の襲来、特に九尾は大きな変化の前触れとして現れ、暴れると言われている。

以前クシナの依頼で二人が調べた結果、『起こる事象』が何であれ『九尾の出現』はあくまで『前触れ』であり、出現によって発生…つまり今回であれば、里の壊滅や民の死等は『おこる事象』には入らないと言うことが分かった。

 

故にミナト、クシナの死は九尾が現れなければ起こらなかったこと。それが『節目、変わり目』で合った可能性は限り無く低い……あくまで伝承や言い伝えという不確かなモノを調べた結果ではあるが二人はソレを一蹴しなかった。

 

 

「貴様も違和感を抱いていたなら話は早い……そう遠くない未来に必ず何かが起こる。だからこそ何も起こっていない今から鍛える必要があるのだ……」

 

 

「そうじゃな……ワシ等は表だっては守れん。ならせめて力を与え、使い道を教えてやるくらいせねばミナトとクシナに顔向け出来んな……当の本人にも学び、力をつける意志はあるようじゃしな……」

 

 

水晶玉に映るのは暴力振るわれたナルトが里人が去ったのを確認してから立ち上がる姿だった。

 

 

「これ以上、先延ばしには出来んようじゃ……今からナルトに会いに行くがダンゾウ、主はどうする?」

 

 

「儂も行こう……お前に任せていては甘やかしそうだしな…」

 

 

「まぁ、教育には厳しさも必要なのは確かじゃな。」

 

 

二人はナルトが住む森へと足を進めた。

突然の来訪者に驚き、辛く当たられる理由を知り、親が居ない理由を知り、隠されてきた真実を知ったナルトは泣き続けた。

ナルトが二人を信じるのに時間は掛からなかった。

例え優しさの裏に何か思惑があろうと二人は初めて嘘偽りなく全てを話してくたからだ。

こうしてアカデミーに入るまでの長い年月掛けてナルトは世の【善し悪し】と人の【良し悪し】を二人から学んだ。

 

ナルトは二人の『じいちゃん』に見守られながら成長する。

そしてナルトは恩師に、ライバルに、食を愛する友に、破天荒な義姉に出会っていくこととなる。

 

ナルトの世界を広げ、一歩踏み出す勇気をあたえた二人は後に英雄と讃えられることとなる。

 

 




どうもナコです!
何から何まで下手くそですいません…
アドバイスや感想貰えるとすごく嬉しいです!
ただの誹謗中傷は困りますが『~~』はこうしたほうが伝わりやすい、分かりやすい、読みにくいから文は此処で区切ったほうが良い等のアドバイスはお待ちしてます!
全てのアドバイスを反映できるわけでは無いですがよろしくお願いします!

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