咲-Saki- とりあえずタバコが吸いたい先輩   作:隠戸海斗

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22染谷まこその4 目標と結末

第二試合

東二局0本場 親・文堂

 

「「聴牌」」

「「ノーテン」」

 

一手牌

 

{五六七⑦⑧⑨34678南南}

 

池田手牌

 

{③④⑤⑥⑦⑧1134789}

 

東二局、一も池田も引かずにリーチ合戦。

しかし偶然にも両者同じ待ちで、文堂とまこに当たり牌を押さえこまれたようで上がれず、流局となった。

 

 

 

東三局流れ1本場 親・一 ドラ{③}

 

一 56800

 

「・・・・・・」

 

配牌を受け取った一は暫しその配牌に視線を落として考え込む。

まずは{九}を捨てた。

そして次巡、ツモった牌を手に収めると

 

「・・・・・・決めた」

 

{7}を切り出す。

後ろで見ていた面子からざわめきが上がる辺り普通ではない打ち方のようだ。

そのまま手が進んで7巡目。

 

「リーチ」

 

一は聴牌を宣言する。

 

 

まこ 37800

 

{四五七(横六)八④[⑤]⑥⑦⑧⑨688}

 

同巡聴牌、赤1の平和手はリーチツモに裏ドラが乗れば満貫だ。

しかしまこは{6}に手をかけて止める。

 

一捨牌

 

{九74一三九} {横五(リーチ)}

 

パッと見、筒子の混一。

序盤に{47}が切られているところから見ても、まこの手牌から溢れる{6}は安全に見える。

しかし、まこは眉をしかめて考え込む。

 

(んー・・・・・・なんじゃ分からんが嫌な予感がしよる・・・・・・)

 

考えた挙句まこは聴牌に取らず、{8}を捨てた。

 

同巡、池田が切った{中}を文堂がポンする。

 

文堂 25600

 

{一一⑦⑧4東東南南南白} {横中中中}

 

{4}を切る。

 

次巡の一、ツモった牌はそのままツモ切り。

 

そしてまこ。

 

{四五六七八④[⑤]⑥⑦⑧(横6)⑨68}

 

(ん・・・・・・)

 

さっき手成りで進めていたら切っていた{6}が、喰いずらされた一のツモにあった。

こうなるともう偶然ではない。

 

(・・・・・・この{6}が国広さんの上がり牌。

 ほんで文堂さんが喰いずらさんかったら一発ツモじゃったか・・・・・・)

 

おー怖い、とまこは{8}を捨てて聴牌にとる。

 

結局。

 

「ロン」

「うにゃ!?」

 

まこが平和赤1を池田から上がってこの局は終わった。

ふぃー、と小さくため息をついた後、まこはちらっと一に視線を送る。

 

「国広さん」

 

そしてトントンと自分の手牌の{6}を叩きながら問いかけた。

 

「この辺、待ちじゃったかいの?」

「・・・・・・まぁね」

 

その言葉に一は残念そうに手牌を広げた。

 

 

{①②(ドラ)1234[5]789北北}

 

 

まこが思っていた以上に形になっている。

その手牌に池田と文堂も表情を変えた。

 

(そ、その捨て牌でその手牌って!)

(配牌はどんなだったんですか!?)

 

後ろで見ていた面子でもなければ分からない。

 

{一三五九②(ドラ)134477北} {北}

 

一の配牌がこんな形だったなんてことは。

一通まで持って行くと決め打ちし、そしてその通りにツモを呼び込むとは。

一回戦でトバされたとはとても思えない思い切りの強い打ち方だ。

もはや完全復活である。

 

 

ついでに、上がりにはならなかったが一の復活っぷりを喜ぶ透華が後ろで悶えていた事を追記しておく。

 

 

 

東四局0本場 親・まこ ドラ{南}

 

まこ 42800

 

{五五[五]六②④[⑤]⑧⑨1267} {8}

 

赤が2牌なのは嬉しいが、ペンチャン2つが伸びてくれるかどうか。

配牌を受け取ったまこは暫し考える。

 

(この試合が始まった時、わしの持ち点は48400。

 +20000点じゃから68400点まで稼がないと志野崎先輩の罰ゲームが待っとる・・・・・・)

 

跳満を2回ツモられてへこんだ点数を考えるとさっきの上がりも含めて3万点近く稼がなければならない。

でなければ・・・・・・。

 

(この面子の前で「あれ」はいかんて!

 常連の前でもかなりきつかったのに・・・・・・!

 最後の方は大分慣れとった気もするけど・・・・・・いや、それはそれでいかんじゃろ!)

 

うー、と頭を抱えて足をじたばたさせるまこ。

それを周囲のメンバーは怪訝な表情で眺めていた。

唯一秀介は遠目から面白そうに見ていたが。

 

(・・・・・・もうええ、やるだけやっちゃる!

 仮にダメでも咲もおるし、半分くらいずつ身変わりして貰おう)

 

咲がどのような結果に終わるかを知らない彼女は{②}から切り出した。

数巡後。

 

{五五[五]六④(横③)[⑤]⑧⑨12678}

 

面子が完成。

そして面倒くさいペンチャンが残った。

どうする?と考える。

どちらのペンチャンを処理するか。

もしくは逆に{五六}を捨てて両方の伸びに期待するか。

いや、それはない。

 

(・・・・・・えーい、出たとこ勝負じゃ!)

 

パシッと{⑨}を捨てる。

吉と出るか凶と出るか、手を進めて行く。

 

{五五[五]六③④[⑤]⑧126(横4)78} {1}切り

 

{五五[五]六③④[⑤]⑧246(横9)78} {⑧}切り

 

{五五(横四)[五]六③④[⑤]246789}

 

間に何度も無駄ヅモを挟みながらも何とか聴牌だ。

{2を切っての5待ちか、6か9を切っての3}待ち。

どちらにしろカンチャン待ちだ、上がりやすいとは言えない。

仮にリーチと行くなら{9}を切ってのリーチタンヤオ赤2が最善か。

 

しかしまこは{2}に手をかける。

 

(わしの今の状況、あんまり流れがいいとは言えん。

 高く上がろうとタンヤオに受けたら裏目を引く気がする・・・・・・)

 

そのまま{2}を横向きに捨てた。

 

「リーチじゃ」

 

その選択は、同巡。

 

一 55800

 

{六七八九九九①①3(横西)[5]6西西}

 

「リーチ」

 

{3}待ちにしていたら一が一発で切っていたという裏目に出たが、

 

池田 54200

 

{五六七七八⑥⑦⑧2(横四)3478}

 

「リーチだし!」

 

(二人リーチ・・・・・・カンチャン待ちじゃきつい・・・・・・あっ)

 

一と池田の二人がリーチをした後に上がり牌をツモるという形で結果オーライとなった。

 

「ツモじゃ、リーヅモ赤赤。

 裏・・・・・・乗らんね、3900オール」

 

まこはこれでトップとなった。

 

 

 

東四局1本場 親・まこ ドラ{東}

 

まこ 56500

 

{五八八⑧2335[5]78西中} {中}

 

一度上がって流れに乗れたか、まこ得意の染め手がたやすそうな配牌だ。

混一中赤なら鳴いて進めても一本場と合わせて4000オール、秀介のお題もクリアできる点数だ。

ならば混一以外狙う必要無し、と{⑧}から切り捨てる。

 

途中無駄ヅモも何度かあったが、6巡目に一の切った{中}をポン、そして8巡目に聴牌となる。

 

{233445[5]7(横6)78} {横中中中}

 

{7を捨てて2-5-8}待ちだ。

これを上がれれば一気に楽になる、そう思っていた。

 

「リーチ」

 

しかしそう簡単には行かない。

対面の文堂が聴牌を宣言する。

 

文堂捨牌

 

{南東96四②4} {横④(リーチ)}

 

ここまでくるとめくり合いの勝負だ。

ツモってそれを切るごとに、長槍で切り合う武将の如く!

通常、先程の局で上がったまこの方に流れがあると思われる。

しかし。

 

「チー」

 

一が声が、その通常の流れを突き崩した。

 

一 50900

 

{二四七九②④⑥1226} {横⑨⑦⑧}

 

{九}を切り出す。

一見何の意味も無いようにしか思えないチー。

だが。

 

(・・・・・・まさか!?)

 

チャッとツモったまこの牌は{⑥}。

自身の上がり牌ではないそれはツモ切るのが常識。

だがまこはそれを手牌に収めた。

 

通常、流れ的にこの局を上がるのはまこ。

しかしそれを喰いずらされたとなれば。

 

(喰いずらしてすぐに相手の上がり牌を引くとは思えん。

 が・・・・・・これが上がり牌で無いという保証もない)

 

文堂の捨て牌はあれから{南と⑨}が増えた。

萬子が少なくて危険そうだが、{③-⑥}待ちも安全ではない。

くっと思い悩んだ挙句、まこは{8}を捨てた。

混一は無くなったが、まだ中赤で聴牌は維持している。

が。

 

「ツモ」

 

同巡、そのまま文堂に上がりを取られた。

 

{一二三六六①②③④⑤123} {(ツモ)}

 

「リーヅモ平和三色・・・・・・裏無し、2100・4100です」

 

やはり{⑥}待ちか、とまこは手牌を崩しながら点棒を渡した。

 

 

 

南一局0本場 親・池田 ドラ{中}

 

池田 47200

 

{一二四六①⑥⑦1457西北} {白}

 

文堂 30000

 

{四六九①⑤[⑤]1[5]7東南北發}

 

まこ 52400

 

{一四七九③③④⑧3東白白(ドラ)}

 

(どうしよう? この手)

(・・・・・・上がれるんでしょうか? これ・・・・・・)

(こらぁ酷い、上がりの形が見えん・・・・・・)

 

うーん、と3人共頭を悩ませたくなるような配牌だ。

そんな中、一はただ一人好配牌を貰っていた。

 

一 48800

 

{一三四七八九②③④⑥⑧⑨西}

 

とりあえず全員不要な字牌や端牌を切っていく。

そして一のツモ番だ。

 

{一三四七八九②③④(横二)⑥⑧⑨西}

 

有効牌、切るのは{西}だ。

そしてさらに次巡。

 

{一二三四七八九②③(横⑦)④⑥⑧⑨}

 

あっさりと聴牌だ。

しかしドラも役も無いこの手、果たしてこのままリーチする価値があるのか。

 

(リーチをしたところで平和もつかないリーチのみの手・・・・・・まだ巡目は早いし、そんな安手を上がっても何の意味も無い!)

 

一はガッと{九}を手に取り、捨てる。

そこから捨て牌に、{九八七}と並んだ。

そんな捨て牌の異様さに、当然池田も文堂も気が向く。

 

(面子落としって・・・・・・)

(何を考えてそんな捨て牌に・・・・・・?)

 

そして、6巡目。

 

「リーチ」

 

一の捨て牌が横向きになった。

 

{西九八七東} {横一(リーチ)}

 

ふむ、とまこも一の捨て牌に目を向ける。

 

(早い巡目から面子落とし・・・・・・2巡で聴牌しとったんじゃないか?

 おそらく役が無い、もしくは形が悪いんで作り直ししたってところじゃろ)

 

そうなると良形の聴牌が予想できる。

点数もおそらくリーチを含めて満貫以上。

対してまこの手はまだこの形。

 

{七七③(横②)③④⑦⑧⑧33白白(ドラ)}

 

どうしようもないので七対子を目指してみたのだがまだ聴牌には至らない。

 

(この局はいかんか・・・・・・)

 

{七}を落とす。

池田と文堂も無理そうだと判断したようで安牌を切っていく。

そうして2巡後、一はツモ上がった。

 

{二二三四五①②③[⑤]⑥⑦⑧⑨} {(ツモ)}

 

「リーヅモ平和一通赤、3000・6000!」

 

 

 

南二局0本場 親・文堂 ドラ4

 

この局、最初に聴牌までこぎつけたのは池田だった。

 

池田 41200

 

{一一二二三四①②③(横三)(ドラ)58}

 

高め一盃口の平和ドラ1だ。

既に9巡目で他家にも聴牌が入っていておかしくないが、当然引く手は無いとばかりにリーチを宣言する。

 

「リーチだし!」

 

次いで聴牌にこぎつけたのは一、池田の3巡後だ。

 

一 60800

 

{四五五六六⑤⑦⑨5(横⑥)6777}

 

両嵌張(リャンカン)が埋まってこちらは高め三色だ。

やはり引く手は無い。

 

「リーチ!」

 

両者の視線が交差し、互いに負けるものかと笑い合う。

まこと文堂は両者ともまだ一向聴。

勝負に絡んで行けない事を悔しく思いつつ見送るしかない。

 

次巡、一が{一}をツモ切りしたことで決着がついた。

 

「ローン!」

 

安目だがトップからの直撃だ、遠慮なく手牌を倒す。

 

「リーチ平和ドラ1、裏ドラ1つ乗って5200!」

 

上がったはいいがさして高い手ではない。

差は詰まったが順位変わらずだ。

 

 

 

南三局0本場 親・一 ドラ{七五}

 

「「「「聴牌」」」」

 

一  54600

 

{四⑦⑦⑦⑧⑧⑧} {横一(横一)一一發發發}

 

まこ 49400

 

{二四②③④⑥⑦⑧2345[5]}

 

池田 47400

 

{六(ドラ)八②③④[⑤]⑥66 三四[五](ドラ)}

 

文堂 27000

 

{(ドラ)七七③④⑤⑨⑨北北 234}

 

この局は一先ず全員聴牌で終了。

親の一は100点棒を一つ積んで一息つく。

この一本場分の点数が最後に勝ち負けを分けるなんてフラグ的な事は考えたくないので、今のは気合いを入れ直すのにいい局だったと考えることにする。

 

(・・・・・・よし、負けないぞ)

 

それは一に限らず、この卓に座る全員の志だった。

 

 

 

南三局1本場 親・一 ドラ{七}

 

「あ、ツモ。

 平和ツモドラ1、1400オール」

 

{三三五六(ドラ)④⑤⑥56789} {(ツモ)}

 

この局、あっさりと一が上がりを取った。

タンヤオか三色を目指して黙テンに取っていたのだがそのままツモってしまったのだ。

点差は多くないがトップだし無理に高めを狙う必要も無いかとそのまま手を倒したのだった。

 

 

 

南三局2本場 親・一 ドラ{二}

 

まこ 48000

 

{(ドラ)①①②③④⑦⑧⑨36東白}

 

まこの目標とする点数は68400、あと20400点だ。

この手最低満貫以上で上がらなければ。

となれば・・・・・・。

 

(面前混一に役牌、もしくは清一。

 できればリーチなんかも加えて跳満で上がっておければ後が楽じゃけど・・・・・・)

 

とりあえず筒子の並びを一通に育ててリーヅモ一通ドラ1の満貫手もあり。

そう考えつつツモった第一ツモは。

 

{(ドラ)①①②③④⑦(横④)⑧⑨36東白}

 

何かに後押しされた気がした。

まこは自分の手牌から躊躇なくその牌を抜き、不要だとばかりに河に叩きつけた。

それを見て一同の表情が変わる。

 

捨てられたのは{二}(ドラ)だった。

 

(第一打がドラ!?)

(何を考えて・・・・・・?)

 

ちらっとまこの表情を窺う池田と一。

だがまこは揺るがない。

 

「・・・・・・ん、外すの忘れとった」

 

チャッと眼鏡を外すまこ。

 

(この手、必ず跳満で上がっちゃる!)

 

その表情からはまこの決意が滲み出ていた。

 

 

それから5巡。

 

{①①②③④④④⑦⑧(横③)⑨6白白}

 

あっという間に筒子に染まった。

同時に混一一盃口の聴牌である。

待ちは悪いがリーチをかけてツモれば跳満だ。

だがこの手{①か③}が引ければツモり三暗刻。

そうなればリーチツモと裏ドラで倍満まで見えるようになる。

仮に{②をツモってしまったとしても満貫確定、さらに④切りで①-④・白}の三面張フリテンリーチも選択肢に入る。

手変わりを待つ価値ありと判断し、まこは{6}を切るだけでリーチを宣言しない。

 

それからしばらく不要牌が重なる。

捨て牌からも明らかなまこの染め手を警戒し、誰も筒子を一枚たりとも出さない。

そしてさらに悪い事態。

 

「リーチ」

 

連荘して流れに乗っている一からリーチ宣言である。

くっとまこは手牌に視線を落とす。

こうなればいっそこの手ツモってしまいたい。

でなければ目標点数確保どころか更に点数を削られて順位を落とされてしまうだろう。

しかしまこの待ちカンチャン{②}は自分の手中に1枚、一の序盤の捨て牌に1枚。

さらにまこからは見えないが池田の手にも1枚あり、残るは山に1枚である。

それをツモってくる、何と難易度の高い事か。

 

だがそれを成し遂げなければならない、何としても。

 

(罰ゲーム回避の為に!)

 

それほどまでにまこを駆り立てる以前の罰ゲームとは一体・・・・・・。

 

そんなまこの想いに何者かが応えてくれたのか、途中何度も危険そうな牌をツモり悩んだ末に切り捨て続けた結果、まこの手に上がり牌が転がり込んで来てくれたのだった。

 

「つ、ツモ・・・・・・」

 

大きく安堵の息をつきながらまこは手牌を倒した。

 

「面前混一一盃口ツモ、2000・4000の二本付け」

 

このツモでまこはトップだった一を逆転した。

 

 

 

南四局0本場 親・まこ ドラ{南}

 

トップに立ったまこだが、まだ気を抜くことはできない。

まこの点数は57600。

目標の68400まで10800、つまり11600以上の上がりが必要なのだ。

ここまで来たのだ、何としても罰ゲームは避けたい。

 

そんなまこのオーラスの配牌がこれだ。

 

{一一四五九③③④⑥1677} {中}

 

(・・・・・・平和ツモくらいしか見えん・・・・・・)

 

翻数を稼ぐ為に便利なドラは使い辛い{南}。

来てくれれば役牌のドラとして使用できるが、この配牌で{南}を取っておいてもどうしようもないだろう。

裏ドラに期待しようにもリーヅモ平和裏1では2600オールで罰ゲーム回避はできない。

一先ず手成りに進めるしかないか・・・・・・とまこは{九}を捨てる。

 

そして6巡目。

 

{一一四五②③③④④⑥6(横7)77}

 

{⑥}を切り出す。

弱った、とまこは頭を抱える。

平和も消えてきたこの手、{一の対子を落として7}を頭にしてタンヤオに移行を目指すしかないか。

そうすればリーチタンピンツモで、赤か裏ドラで満貫にできる。

 

数巡後に{5をツモり、一}に手をかける。

そしてそこから無駄ヅモが重なり、ようやく手が進んだのは14巡目。

 

{一四五②(横六)③③④④56777}

 

リーチタンピンツモは高め一盃口、{[⑤]}、一発で満貫だ。

この局は流局を目指すというのも手だが次巡好配牌が来るという保証も無いし、そもそもまだ他家に上がられる可能性もある。

リーチをかければ足を止められたかもしれないのに上がられたとなっては悔やんでも悔やみきれない。

ツモも残り少ないが押していくしかない。

 

「リーチ!」

 

この手、必ず上がる!と気合いを入れて捨て牌を横倒しにする。

そしてチラッと秀介に目を向けた。

 

この手を上がって罰ゲーム回避、むしろ逆に秀介に罰ゲームを要求するのもありだ。

覚悟しときんしゃい、志野崎先輩。

いつまでも先輩に頭の上がらない染谷まこではないのだ!

 

 

タン、と上がり牌が手牌と共に倒される。

 

「ツモ・・・・・・です」

 

 

{三四[五]六七八223334[5]} {(ツモ)}

 

 

「タンヤオツモ赤2、2000・3900です」

 

 

上がったのは文堂、現実は非情であった。

 

 

 

池田 41800

文堂 32300

一  51600

まこ 52700

 

 

 

「んー、文堂の上がりかぁー。

 流局かと思ったんだけどなぁ」

 

池田はそう言いながらまだ聴牌に至っていない手牌を晒し、崩す。

一も同様にまだ一向聴だったようだ。

 

で、まこに視線が移る。

 

 

まこは手牌に手を添えたまま動かなかった。

 

 

「えっと・・・・・・染谷さん?」

 

一が首を傾げながら声をかける。

まこはまだ無反応だった。

トップで終わったというのに何やら落ち込んでいる?

実はものすごくいい手が入っていて、総合順位を大幅に上げるチャンスだったとか?

あれこれ考える中、もしやと文堂が立ちあがる。

 

「あ、あの、ごめんなさい、順位変わらずで上がってしまって。

 でも染谷さんが上がっても順位変わらずだったと思うのですけど・・・・・・」

 

この半荘で終わりではなく、総合順位というものがある。

その為に順位変わらずでも上がりを取るのは決して間違いではないし批判される事でもないはず。

それでも自分の上がりを怒っているのだろうか?と思って文堂は謝ってみたが、それにしてもまこは無反応過ぎる。

三人共顔を見合わせて首を傾げていると、不意にまこが立ちあがる。

 

「・・・・・・池田さん、国広さん、文堂さん・・・・・・」

「えっと、何かな?」

「・・・・・・?」

「は、はい?」

 

 

 

「・・・・・・これから何が起こっても三人だけは笑わんといてくれるか・・・・・・?」

 

 

 

そう言い残してまこはゆら~っと卓から離れて行った。

 

「・・・・・・えっと、何が?」

 

池田の呟きに全員が揃って首を傾げた。

 

 

 




今回はじめちゃんメインにする予定だったけど、まこちゃんいじってる方が楽しくて(

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