機動戦士ガンダムSEED Destiny 凍て付く翼   作:K-15

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更新が遅くなってしまい申し訳ございません。


第9話 罪の所在

地球連合軍所属、ファントムペイン部隊。

その隊員の1人であるスティングは借りたホテルのベランダから双眼鏡を覗き込みディオキアのザフト軍基地を偵察して居た。

 

「いつまでこんな事を続けてりゃ良いんだ。ネオのヤロウ」

 

成果の得られない偵察任務に嫌気が差し悪態を付く。

後ろを振り返ればベッドの上で寝息を立てるステラが見え余計にストレスが募る。

 

「あ……ウル……」

 

よく見ればそのまぶたからは涙が流れてる。

その事にスティングは気が付かなかったし、無意識にこぼれ出た寝言に関心を示す事もなかった。

握るレンズの向こうでは戦闘が始まる訳でもないのにモビルスーツが数機出撃して居る。

 

「何だ? 呑気にコンサートをやってたかと思えば次は何する気だ?」

 

基地内に現れる4機のモビルスーツ。

確認出来たのは今までにも交戦した事のある機体。

セイバー、インパルス、ザクウォーリアが2機。

自身のカオスに損傷を与え煮え湯を飲まされた相手にスティングの視線は鋭くなる。

 

「アイツラが居るって事はザフトの新造艦もこの基地に居るって事だな。ようやくネオにまともな事を報告出来る」

 

覗き見ながらモビルスーツの動きを観察してわかったのは握られてる武器が演習用のモノだ。

見た目はライフルでもビームも実弾も発射されず出るのはペイント弾だけ。

ビームサーベルをエネルギー供給をカットされておりデータ上で表示されるのみで今の状態では戦闘能力は全くない。

 

「こんな時に演習かよ。今攻め込んだらザフトの奴らを壊滅出来るかもな」

 

冗談を言うスティングだが、その背後から音もなく誰から飛び付いて来た。

 

「なっ!?」

 

「ネオ……ネオはまだ?」

 

「ステラか、驚かせるな。ネオならすぐ迎えに来させる。この事を報告して後は後方部隊に任せてディオキアから出ようぜ」

 

「帰る?」

 

そう言うスティングは暗号通信でネオに伝える為に双眼鏡をステラに渡して持ち込んだ通信装置に向かって行く。

受け取ったステラはつぶらな瞳を向けて立ち尽くすだけだったが、好奇心のままに双眼鏡のレンズを覗き込む。

拡大されて映るホテルの壁。

その場でグルグル回る彼女は外の風景も視界に収める。

青い空と海、人々が居る町並み。

でも見えるのはそれらだけでなく、少し前にスティングが偵察の為に見てたザフトのディオキア基地も当然目に入った。

瞬間、ステラの眼光が鋭くなる。

 

「あ……あぁっぁ……敵、倒さないと。敵、敵、うあああぁぁぁっ!!」

 

前回の戦闘で仲間のアウルが戦死した。

ネオの処置により薬物で一時的に感情を抑えはしたがここに来てそれが爆発してしまう。

エクステンデッド、コーディネーターに対抗する為に人工的に強化された兵士。

けれども非人道的に行われる強化により彼女らの記憶さえも操作されており連合からは戦う為の道具としか認識されてない。

ステラは握ってた双眼鏡を投げ捨てると全速力で部屋の中を走り抜ける。

 

「ステラ!! どう言うつもりだ!!」

 

声に気が付いたスティングは走り出す彼女の腕を掴み何とかして止めようとしたが、今のステラに現状を把握出来るだけの視野はなかった。

強引に手を振り払いホテルの部屋から出て行ってしまう。

 

「ナニをするつもりだ? まさか……冗談だろ!!」

 

///

 

ミネルバのモビルスーツデッキにはヒイロが搭乗するグフだけが残ってた。

パイロットであるヒイロもその場に残っており整備兵であるヨウランと共に機体の調整を行ってる。

 

「お前パイロットだろ? 自分の機体が大事なのはわかるけどこんな事してて良いのか?」

 

「演習をやる意味はない。そんな事をした所で戦えない兵士は死ぬだけだ」

 

「戦闘に対してクレバーな考えなのもわかったけどさ、議長が訪問されてるんだろ? ヤバイって」

 

「オイ」

 

ヨウランの言葉を無視してヒイロは片膝立ちのグフに握らせたビームサーベルの設定を終える。

連合のウィンダムが使用するビームサーベルをエネルギーケーブルでグフのジェネレーターに無理やり取り付けたモノだ。

 

「完了した。電力を流せ」

 

「ハイハイ、仰せのままに」

 

説得を諦めたヨウランは言われた通りにビームサーベルへ電力を供給させる。

握ったグリップからピンク色のビームが発生するがそれは一瞬で、ジェネレーター出力が大きすぎてエネルギーケーブルが途中で焼き切れてしまう。

ビームの発生も当然止まってしまった。

 

「あ~ぁ、ダメだこりゃ。なぁ、どうしてもビームサーベルでないとダメなのか? 標準装備のビームトマホークやテンペストビームソードでも充分だろ?」

 

「威力は高いかもしれない。だがビームサーベルの方がポテンシャルが良い」

 

「グフはビームサーベル使うように出来てないんだ。いっその事別の機体使うとか」

 

「だがインパルスは使えない。そうなるとこの方法で進めて行くしかない」

 

ヒイロの言い分が曲がる事はない。

こうなってしまった場合、折れるのはいつもヨウランだ。

 

「いつになったら出来るかわからねぇぞ。ソレまでは我慢してくれよ? 俺にだって他に仕事があるしな」

 

「わかった。後は任せる」

 

「サーベルグリップとケーブルは廃棄だな」

 

ヒイロは使えなくなった部品の片付けを任せるとペダルを踏んで片膝を付かせたグフを自立させる。

ゆっくりと進む機体は収納ケージまで来るとヒイロはバッテリーのエネルギー供給をストップさせた。

一方定刻通り準備を終わらせた他のモビルスーツ部隊は基地内に自身のモビルスーツの脚を付ける。

全員が演習用の装備を付けておりアスランが搭乗するセイバーも例外ではない。

周囲を見渡したアスランはコンソールパネルに指を伸ばし通信を繋げる。

 

「ヒイロのグフが見当たらない」

 

『モビルスーツデッキまでは一緒でしたがそこから先は』

 

レイの報告に確信を得たアスランは思わずため息を付いてしまう。

 

「まぁ良い、人数は足りてる。チーム編成は俺とレイ、シンとルナマリアだ。200秒以内に相手を殲滅させた方が勝ち。議長も傍で見てる、演習だからと言って気を抜いたりするなよ」

 

『了解』

 

3人の返事が通信越しに返って来る。

アスランは演習を始めようと操縦桿を握り締めるが突如としてレーダーに敵反応が映った。

そこには連合に奪われたガイアの姿。

 

「ガイアがどうしてここに!? 各員演習中止、1度基地に戻って装備を整える」

 

すぐに演習を中止させモビルスーツを後退させるアスラン。

だがシンはその指示に異を唱える。

 

「でもこのままじゃ街が!!」

 

「今のままでは戦う事も出来ない。気持ちはわかるが引くしかない」

 

「くっ!!」

 

シンの脳裏に蘇るのは目の前で家族が死んだ光景。

何も出来ず、髪の毛1本すら残さずビームに消し飛ばされた。

少し前にもインド洋基地での民間人虐殺を見たばかり。

アスランに力とは何かを問われ答える事の出来なかったシンだったが、確かなのは心の底から沸き上がる悲しみと怒り。

ガイアはメインスラスターを吹かせてジャンプしながら街の中心街から基地へと迫って来て居る。

踏み潰される街。

逃げ惑う市民。

血を流しケガをする人に泣き叫ぶ子ども。

感情を抑え切れないシンは力強く操縦桿を握り締めた。

 

「武器はなくても押さえ付ける事くらいなら出来ます。俺にはこのまま見過ごすなんて出来ません!!」

 

「止めろシン!! 防衛部隊もすぐに展開される。それまで――」

 

言い切るシンは声を無視してペダルを踏み込みメインスラスターを吹かしてインパルスを飛ばす。

武器のない状態でガイアに挑むのは無謀極まりない。

アスランは1人で先行して行くインパルスを止めに行く事が出来なかった。

街中を突き進むガイアはディオキア基地を目指して来る。

周囲の状況を全く試みない相手の行動にシンは怒りを燃やす。

 

「戦うだけならどこでだって出来る。何だってこんな所で!!」

 

「見つけた!! 敵、敵!!」

 

インパルスを視野に収めたガイアはビームサーベルを引き抜き飛び掛る。

武器を持たない今は真正面から戦う術はなく、インパルスはメインスラスターを吹かせ寸前の所で上空に飛び上がった。

ビームはアスファルトを溶かし灼熱の蒸気を上げる。

 

「くっ!! 逃げるな!!」

 

「そうだ、コッチに来い」

 

空を飛べないガイアはビームサーベルを戻し次はビームライフルを握った。

インパルスに照準を合わせようとするがシンはガイアに背を向けて街から離れて行く。

街の中では被害を大きくなるだけ、基地に被害を出す訳にもいかず誰も居ない海岸へ向かって飛ぶ。

ガイアは空のインパルスを狙いトリガーを引く。

発射されたビームは真っ直ぐに目標へ向かって飛んで行くがシンはスラスターで機体を制御してコレを避ける。

 

「当たれ、当たれ!!」

 

立て続けに発射されるビームに背を向けたままでは避けきれず、反転したインパルスはシールドでコレを防いだ。

ガイアとの距離は近づかれ過ぎないように、離れすぎないように調整しながら行き先を誘導して行く。

 

「上手くいってるけど、このパイロットは何なんだ? 周りがまるで見えてない。こんな簡単に引っ掛かるなんて」

 

疑問に思いながらもシンは被害の及ばない海岸に向かって誘導を続ける。

なかなかダメージを与えられない事と戦いにくい事にステラは更に逆上して居た。

 

「ぐぅぅぅっ!! 消えちゃえぇぇぇ!!」

 

「何だって言うんだ!?」

 

我慢出来なくなったステラはガイアをモビルアーマー形態に変形させ背中のウイング前面に展開されたビームブレードでインパルスに突っ込む。

予測出来ない行動にシンは反応が遅れてしまい、回避行動を取るが左脚部を持って行かれてしまう。

態勢を崩されるインパルス。

ガイアは瞬時にモビルスーツに変形し背部に組み付いた。

 

「こ、コイツ!! でもこれなら行けるかも。ガイアは飛べないからな。このまま援軍が来るまでこうしてれば機体を取り戻せる」

 

ガイアは無理やりインパルスに組み付くので精一杯な状況。

このまま攻撃しようと片手を離せば海へ落とされる。

そうなればステラにとって状況は益々不利になってしまう。

ステラは組み付いたまま頭部バルカンでフォースシルエットに至近距離から弾丸を直撃させる。

VPS装甲で作られてるシルエットだが内部パーツはそうはいかない。

弾丸は噴射口から内部を破壊し、青白い炎が黒煙に変わる。

 

「しまった!? パワーが上がらない!!」

 

シンはペダルを踏み込み必死に出力をあげようとするが機体は反応してくれない。

出力の下がったメインスラスターで2機を支える事など出来ず、インパルスとガイアはもつれ込んだまま海へ落下してしまう。

 

「離せよコイツ!! 機体の制御が!?」

 

「アウル、アウルゥゥゥ!!」

 

インパルスはまともに動く事もままならず海に流されて行く。

 

///

 

ミネルバはインパルスを追ってディオキア基地を出港する。

本来ならダーダネルス海峡で連合軍を迎え撃つ為に出港はもう少し先なのだが、ガイアと組み付いて海に落下してから機体の反応を探知出来なくなってしまう。

敵の増援が現れる事も考え充分な戦力を整えてからインパルス、並びにパイロットのシンの救出に向かった。

だが2機の反応は依然として見つからない。

バッテリーが両機とも失くなってしまいどこまで流されたのかわからなくなる。

日が沈めば捜索は更に困難になってしまうので時間との勝負。

だがそれらしき姿は見つけられず周囲は夜の闇に包まれてしまう。

そんな中、アスランは1人潮風のあたる甲板に居た。

 

(俺が無理にでも止めて置けばこうはならなかった。クソッ!! 俺はまた……)

 

両手を手すりにつけゆっくりと目を閉じると強い風が吹き髪が舞う。

頭の中に思い浮かぶのはあの時の言葉。

 

『コーディネイターにとってパトリック・ザラが取った道が唯一正しい物であった事が、何故分からん!!』

ユニウスセブンで戦ったテロリスト。

2年前、アスランは父であるパトリック・ザラの強攻策には反対した。

だがテロリストのその一言はアスランには重すぎる。

そのせいで大戦は泥沼化し被害は更に広がってしまった。

止められる立場に居ながら何もする事が出来ない。

今回のシンの事も重なり思い悩んでると甲板の入り口の開く音が聞こえる。

しかし今は振り向く気力もなく足音が背後に近付いて来た。

「ここに居たのか」

「ヒイロ!?」

 

声を聞き振り返る先に居たのはヒイロだった。

以外な人物が来たことに驚いてしまうがヒイロは気にした様子はない。

 

「何を迷っている。お前がしっかりしないと作戦に支障が出る」

 

「お前でも励ましたり出来るんだな。」

「そんなつもりはない。救出が成功すれば次はダーダネルス海峡で連合と戦闘だ。情報によればオーブも関与してるらしい」

 

「そうか、オーブも……」

 

カガリの国であるオーブともこのままでは戦う事になってしまう。

しかしコレを回避する方法などなく、自身の無力さを呪うしか出来ない。

 

「情けない話だがオーブと戦うことに少し踏ん切りがつかなくてな。俺は、ヒイロがこのミネルバに来る前はオーブに居た。そこで現代表であるカガリ・ユラ・アスハのボディーガードをしてた。前の戦争では英雄視されたりもしたがザフトに居続ける訳にもいかず、カガリの傍に居る事を選んだ。そう決めた筈なのに連合の宣戦布告で放って置けばプラントがまた戦火に巻き込まれる。只見てるだけなんて俺には出来ない。だからザフトに戻ったのに……」

 

「言いたい事はそれだけか? 戦えない兵士など軍には必要ない。だったらお前の敵は誰だ?」

 

「俺の……敵?」

 

「俺の敵は俺の命を狙うモノ、俺の命をもてあそぶモノ、そのすべてが敵だ。お前の敵はどこに居る。倒すべき敵が居ないのに何故お前は軍で戦う?」

 

「今の俺にはわからない……何でなんだろうな」

 

「それを見つければ良い。だが作戦開始まで時間もない。インパルスの捜索もある。戦力にならないようなら戦場に来るな」

 

突き放すように言うヒイロは出口に向かって歩いて行く。

優柔不断だった自身の心にナイフを突き立てるような言葉だが今のアスランには気力が沸いた。

 

「ヒイロ!! 俺の答えを探してみるよ。それと、隊長に向かってお前って言うのは止めろ」

 

「了解した」

ヒイロは静かに呟くと甲板から出て行ってしまう。

夜の闇に染まる空を見上げながらアスランは1人潮風に当たる。

 

「普段からあれぐらい話してくれると良いんだけどな。俺も人の事は言えないか」

 

1人で思い悩んで居た時よりは心が安らいだ。

///

 

波の音だけが聞こえる。

荒波に流された2機は絡み合ったままどことも知れぬ岸に辿り着いた。

バッテリー残量は底を突き指1本とて動かせない。

 

「クソッ!! レーダーも見れないって事は救難信号も出せない。どこだここは?」

 

コクピットのシートに座るシンは文句を言いながらもハッチを手動で開放させる。

シートベルトを外し拳銃を手に取り外の景色を覗くと辺りは夜に変わってた。

身を乗り出し機体から出たシンは海岸の砂浜に足を付ける。

振り返った先にはフェイズシフトがダウンしたインパルス、そして隣に横たわるガイアが居た。

 

「コイツもここに。なら……」

 

スライドを引き銃を構えるシンは動かないガイアのコクピットに走った。

ハッチに手を触れ外から開放させるべくパネルに指を掛ける。

装甲に身を隠しながらパネルを押すとガイアのハッチを開放させた。

中の空気と外気が入り混じる。

緊迫した空気の中で息を殺すシンは敵のパイロットの気配に敏感になるが全く何も感じられない。

呼吸を整え、シンはコクピットに銃口を突き付ける。

 

「え……この子は……」

 

ガイアのコクピットに座るのはシンとさほど年齢も変わらない少女。

パイロットスーツも着ずに気を失う少女はアーモリー・1で出会った少女と同じだ。

 

「う……ん……」

 

「っ!!」

 

口から漏れる声に再び緊張を走らせるシンはグリップを確かに握り締め銃口の先を正確に額へ向けた。

ゆっくりまぶたを開ける少女は虚ろな表情で目の前のシンを見る。

暫くは状況を理解出来ず可憐な姿のままだったが、数秒もすると意識を覚醒させシンの事を敵だと認識した。

途端に変わる表情。

敵意をむき出しにする彼女は両手をシンの首に掛けようと全力で伸ばす。

 

「う゛ううぅぅぅっ!! 敵!! てきぃぃぃ!!」

 

彼女の手はどれだけ伸ばしても空を掴むだけ。

シートベルトが体を押さえ付けてこれ以上は動けないが彼女はそんな事に気が付いてない。

思うのは目の前に居る敵を倒す事だけ。

目の前に突き付けられる銃口でさえも今は見えてない。

シンは少女の異常な行動に恐怖すら覚えトリガーに指を掛けるだけに留まる。

 

「普通じゃないぞ、コイツ。どうしてこんな子が!?」

 

「ぐぅぅぅっ!! あ゛あ゛あああぁぁぁ!! 敵は倒す!! 倒す!!」

 

「意思の疎通も出来そうにないな。だったら!!」

 

彼女が叫ぶように2人はついさっきまでは戦ってた敵同士。

シンはグリップを両手で握り照準を定める。

人差し指に力を込めトリガーを引こうとするが時間だけが過ぎ去って行く。

心の中の葛藤、脳裏に蘇るアスランの言葉と自分の過去の境遇。

次第に額からは汗が流れ指は震えて居た。

 

「ダメだ、無抵抗な人間を殺したら俺まで一緒になる。それにこの子を殺しても何も変わらない。この子は無理やり操られてるだけだ。精神状態が異常なのは薬物の投与か? どっちにしてもここまでするなんて普通じゃない」

 

「ウウウゥゥゥッ!!」

 

「俺は敵じゃない、キミの味方だ。今助けるから」

 

シンは銃を腰に戻し少女が伸ばす両手首を掴んだ。

同じ年代とは思いない力がシンを振り払おうとするが何とか押さえ付けるが姿勢が崩れてしまいコクピットに倒れてしまう。

 

「う、うわぁっ!?」

 

顔が少女の胸の上にぶつかり体が密着してしまう。

表情を赤面させるシンだが少女は気にする事もなく手足をバタつかせ暴れ回る。

 

「大丈夫、大丈夫だから!!」

 

「う゛うっ!!」

 

「もう戦う必要なんてない!! 大丈夫、キミの事を守るから!! 俺が守るから!!」

 

暴れる少女に叫ぶシン。

けれども言葉は届かず少女はシンの首元に八重歯を突き立てた。

 

「ぐぅっ!?」

 

肉を突き破る歯、流れ出る血。

シンは痛みに耐えながら何とか彼女に言葉を聞かせる。

 

「大丈夫だから。もう戦う必要なんてない!! キミは俺が!!」

 

必死の訴えを聞いてくれた少女はようやく腕の力を弱めた。

むき出しの殺気もどこかへ消えて2人の目線が交差する。

口元はシンの血で汚れてしまって居た。

 

「だい……丈夫? ステラの事……守る?」

 

「ステラ……あぁ、俺はキミを傷付けたりしない。大丈夫、キミを守る」

 

「ほんとうに?」

 

「本当さ、約束する」

 

「ありが……とう……」

 

言うとステラは意識を手放した。

力なくシートに体を預ける彼女の姿は歳相応の少女にしか見えない。

シンは体を固定してるシートベルトに手を伸ばし解除してからステラを抱え上げた。

狭いコクピットから這い出たシンは装甲を足場にして再び砂浜に足を付ける。




最近の活動報告は目に余る、ちょっとした愚痴です。
ご意見、ご感想お待ちしております。

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