機動戦士ガンダムSEED Destiny 凍て付く翼   作:K-15

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第5話 震える海

連合軍のモビルスーツ部隊の指揮を執るネオは紫にカラーリングされたウィンダムに搭乗しミネルバを待ち構える。

今までの戦闘でミネルバと搭載されてるモビルスーツの戦闘力はある程度まで分析出来て居た。

数の上では圧倒してるが機体の性能とパイロットの技量の差でどこまで縮められるかはやってみなければわからない。

 

「これだけの数を用意すれば大丈夫だと思いたいな。スティングは俺と一緒に前線、アウルはタイミングを見計らって海中に居る艦船を叩け」

 

『ネオ……ステラは?』

 

画面に映るのはガイアのパイロット、ステラ・ルーシェ。

パイロットスーツも着用しいつでも出撃する準備は出来てる。

ネオは彼女をなだめるように優しい言葉を掛けた。

 

「ステラはお留守番だ。俺達が帰る場所を守ってくれ」

 

『おるすばん? ネオ、帰って来るよね?』

 

「当たり前だろ。スティングとアウルもな。ステラにしか出来ない事だ」

 

『うん!! ステラ、ちゃんとお留守番してる。みんなの帰る場所を守るよ!!』

 

「良い子だ。ウィンダムは左右に展開。敵を挟み込め!!」

 

ステラの精神状態が落ち着いてるのを確認したネオは展開するウィンダムへ指示を飛ばす。

ミネルバを破壊せんと部隊は戦闘を開始するが、レーダーに表示される見慣れないモビルスーツの存在が2機。

 

「ザフトめ、やっぱり戦力を増やして来たか。1つは量産機、だがもう1機はデータにないな。こっちはおたくらから盗まないと新型なんて使えないってのにポンポン投入してくれる」

 

軽口を言いながらもマスクの奥にある瞳は目まぐるしく変化する状況を分析し、新しく投入されたモビルスーツの戦闘力も頭の中へインプットする。

ネオはペダルを踏み込み背部のフライトユニットのメインスラスターで機体を加速させた。

指をコンソールパネルへ伸ばし通信を繋げ、カオスのパイロットであるスティング・オ―クレーに指示を出す。

 

「スティング、お前は赤の可変機に行け。俺はトリコロールの方を攻める」

 

『了解。しくじるなよ!!』

 

///

 

レイとルナマリアのザクは発信後、前回の戦闘と同じ様にミネルバの甲板へ陣取りミネルバの護衛に付く。

前線へ行くアスラン達と敵部隊が接触するまでもう少し。

ルナマリアはコンソールパネルに手を伸ばすとレイのザクへ通信を繋げた。

「レイ、新しく来たヒイロの事なんだけど何か知ってる?」

『いや、艦長から聞かされた事しか知らない』

「前に1回だけ会ったんだけど、なんか近づきにくくってさ。それに来た初日から自分のモビルスーツにこもりっきりで顔も知らない人、結構多いわよ」

 

ヒイロの態度に不満なルナマリア、レイもヒイロの事は少し気にはなって居た。

 

『だがそんなことは言ってられない。これからは一緒に戦っていく仲間だ』

「わかっては居るんだけどさ、掴みどころがなくて」

 

『ヒイロはモビルスーツにずっと居たと言ったな? 俺の予想でしかないがアイツはグフに乗るのは初めてなんじゃないか?』

 

「えぇ~っ!? ウソでしょ!!」

 

『ウソか本当かはわからない。だが機体の感覚を確かめる為にその時はずっとコクピットに居たとも考えられる』

 

「そんなので実戦でちゃんと戦えるの?」

 

『さぁな。俺でも初めて乗る機体を完璧に使いこなそうと思えば3日は欲しい。アイツがどこまで出来るかはこの戦闘でわかる筈だ』

 

「撃墜されなければ、だけどね」

 

『そうならない為にも俺達はバックアップに廻る』

 

レイの意見に耳を傾けるルナマリア。

けれどもレーダーに表示されるアスラン達3機のモビルスーツは敵のウィンダム部隊と接触する。

戦いの火蓋は切られた。

ルナマリアは操縦桿を握りザクにオルトロスを構えさせ、ヘルメットのバイザー越しに空を飛び回るウィンダムへ狙いを定める。

 

「お喋りはここまでね」

 

『そうだな。前衛は3人に任せるしかない。ルナマリア、撃ち漏らすなよ?』

 

「する訳ないでしょ。アタシを誰だと思ってるの?」

 

///

 

数分後に作戦は開始した。

ウインダムの部隊にビームライフルを3発連射するインパルスだがソレを見る敵部隊は散開して攻撃を回避する。

次に来るのはインパルスに対する報復も込めた大部隊によるビームライフルの一斉射撃。

銃口から轟音が響きグリーンのビームエネルギーがインパルスを襲う。

 

「クソ!! 前と同じで数だけは用意しやがって!!」

 

文句を言いながらも各部スラスターを制御してビームの雨を潜り抜けるインパルス。

回避に集中しなければならず反撃すらもままならない状況。

左腕のシールドも駆使しながら1発たりとも直撃はしないシン。

それでも防戦一方の戦いはストレスが溜まる上に体力や集中力の消耗も激しい。

 

「何とかして攻めないと。このままやられるなんてゴメンだぞ」

 

正面から放たれたビームをシールドで受け止める。

アンチビームコーティングが施されたシールドのお陰でビームは全て弾かれ機体は無傷。

けれども立て続けに左下方からも発射されるビーム。

シンはシールドで咄嗟に横一閃し振り払った。

するとビームは弾かれるのではなく屈折して別機体に向かって反射される。

 

『な、なん――』

 

予想だにしない反撃に発射戦場のウィンダムのパイロットは反応するので精一杯でコクピットへ直撃を受けてしまう。

制御を失う機体は海に向かって落下して行く。

驚くのは敵だけでなくシンも同じだった。

 

「ビームを弾き返したのか? こんな使い方も出来るのか……だったら!!」

 

インパルスは振り返ると自身に向かって来るビームを同じ様にシールドで振り払う。

反射するビームは再び敵に向かって飛んで行き、ウィンダムの右膝を吹き飛ばした。

見た事のない攻撃に一瞬だけ攻撃の手が止まる。

シンはその隙を逃さず右手のビームライフルを向け躊躇なくトリガーを引く。

正確に発射されたビームは1発でウィンダムのコクピットを撃ち抜く。

 

「3機目、これなら!!」

 

ビームライフルを腰部へマウントさせバックパックからビームサーベルを引き抜く。

ペダルを踏み込み機体を加速させるシンは攻撃を躊躇した敵部隊に突っ込んだ。

戦闘画面に映る1機のウィンダム。

攻めに転じたインパルスの動きに反応が追い付かず、逃げる事も守る事も出来ずに棒立ちになってしまう。

 

『う、うあああぁぁぁ!!』

 

「落ちろォォォ!!」

 

ビームサーベルで袈裟斬り。

胴体を斜めに分断されビームが接触した所は高熱で赤く発光してる。

機体は完全に機能を停止し重力に引かれて落下するが、シンは推進力でまだ数秒だけ宙に浮く上半身の頭部をシールドで振り払う。

メインカメラのレンズにヒビが入りインパルスのパワーで強引に首の付け根が引きちぎられ、迫る3機編成の部隊へ吹き飛ばされた。

ボールのようにクルクルと回転する頭部は先頭の機体に目掛けて飛んで行き、構えたビームライフルの1射で爆散する。

だがそのせいで爆発の炎が視界を遮った。

シンはまたペダルを踏み込みメインスラスターから青白い炎を噴射させ爆発の中へ突っ込む。

 

「イッケェェェッ!!」

 

爆発の先にはライフルをウィンダム。

けれどもインパルスに照準は合わさって居らず、銃口を向けようとした瞬間にはコクピットにビームサーベルが突き立てられた。

 

「まだ!!」

 

次の敵へ狙いを定めるシンはビームサーベルを引き抜くとそのまま腕を振り被り敵機に目掛けて投げ飛ばした。

 

『なっ!? コイツ!!』

 

敵パイロットはビームサーベルに銃口を向けてトリガーを引くがビームは命中する事なく空へ消えてしまう。

マニピュレーターから手放された事で出力は少し低下してしまうが、ピンク色の残像を残しながら回るビームサーベルは銃口を切断し胸部装甲に突き刺さる。

確認したシンはマニピュレーターを腰部のビームライフルへ伸ばし銃口を突き付けトリガーを引いた。

轟音を響かせ発射されるビームに回避行動を取るウィンダムはシールドでコクピットを守り後退しながらもビームライフルからビームを発射する。

シンはシールドでビームを薙ぎ払おうと左腕で横一閃するが、ビームは反射する事なくシールドに直撃した。

 

「グッ!! 角度が合ってなかったのか? そう何回も上手い具合に出来ないか」

 

衝撃に顔を歪ませながらも操縦桿は握りしめたままインパルスはトリガーを何回も引き逃げる敵機にビームを発射する。

1発、2発、ビームは青空へ消えてしまう。

3発目、ウィンダムの右腕を吹き飛ばしビームの攻撃は止まった。

損傷したせいで満足に戦う事が出来ないウィンダムは背中を向けインパルスから離れて行ってしまう。

シンは深追いはせず、ビームサーベルを投げた敵機を戦闘画面に収める。

パイロットは意識を手放し、ウィンダムは只宙に浮くだけだった。

接近するインパルスは左手でビームサーベルを引き抜き頭部を振り払う。

6機目の敵機を破壊したシンは味方であるアスランとヒイロの動きをレーダーで確認した。

 

「状況はどうなってる? あの2人は……」

 

シンの活躍もありウィンダムの数は作戦開始時と比べて減っては居る。

けれども奪われたカオスと紫のカラーリングをした隊長機のせいでアスランとヒイロは思うように動けなかった。

アスランのセイバーはカオスに射撃戦を挑む。

 

「機体の癖はもう掴んで居る。後は2年のブランクだけだ」

 

『何だよ新型、この程度か!!』

 

カオスはビームライフルと背部に背負う機動兵装ポッドを駆使してセイバーを追い詰める。

重力のある地球でも使用する事が出来る機動兵装ポッドはドラグーンの発展兵器であり、カオスから分離した状態で縦横無尽に飛び回りセイバーを狙って居た。

内蔵されたビーム砲と誘導ミサイルは無視出来る威力ではなく、VPS装甲のセイバーでもビームの直撃を受けてしまえば簡単に破壊されてしまう。

ミサイルのダメージは通らないが爆発により動きが止まってしまった瞬間にビームによる十字砲火が待ってる。

カオスの射撃を回避しながら機動兵装ポッドを意識して動くのはストレスが掛かりアスランは満足に反撃も出来ない。

 

「クソッ!! 俺の腕が劣ってるのか?」

 

『どうなってんだよ!! 1発ぐらい当たれよ!!』

 

カオスはビームライフルと機動兵装ポッドによるビームの十字砲火を続けるが、アスランは機体を匠に駆使して機体に1発も当たる事はなかった。

一方的に攻めるスティングだが追い詰められてるのは連合側。

セイバーは一貫して回避に専念した故にバッテリーの消費は殆どないが、カオスはセイバーを落とさんと

数え切れない程ビームを撃ち、結局は今の拮抗状態に居たり味方のウィンダムの数も減ってしまって居る。

 

「逃げ回るだけではダメだ。何とか持ち直す」

 

セイバーはモビルアーマー形態へ瞬時に変形するとカオスから一気に距離を離す。

戦闘機形態になったセイバーの機動力は凄まじく、機動兵装ポッドではモビルアーマーの加速には付いて行けずカオスの背部に回収される。

 

『今度は逃げる気か? 行かせるかよ!!』

 

カオスもセイバーの同じくモビルアーマー形態に変形する事が出来る。

腰を折りコンパクトになったカオスは距離を離さんとするセイバーに大出力スラスターを全開にして追い付こうとした。

けれども距離は中々縮まらずストレスの溜まるスティングはカオスに搭載された高出力ビーム砲、カリドゥスのトリガーを引き赤黒いビームを発射する。

 

「来るか、なら!!」

 

迫るビームに反応するアスランは変形と解きモビルスーツ形態へ戻り発射線上から外れる。

同時に背部へ背負ったプラズマ収束ビーム砲を両脇から展開させ今度はカオスに目掛けて高出力のビームを発射した。

変形したままのカオスでは機動力は高いが小回りは利かず運動性能も下がって回避が間に合わない。

それでも独特な形態をしてるカオスはモビルアーマー形態でもシールドを使用する事が出来る。

スティングはビームコーティングが施されたシールドでセイバーから発射されたビームを受け止めた。

だがビームコーティングされてるとは言え全てを防ぎきれる訳ではなく、カオスはシールドごと左腕を破壊されてしまう。

バランスを維持する為にモビルスーツ形態へ戻る。

 

『ヤロウ!! やりやがったな!!』

 

頭に血が上るスティングは怒りを晴らさんと更に前に出ようとするが指揮を執るネオから通信が入る。 

『止まれスティング!! ここは撤退しろ!!』

 

『撤退だと? 片腕がやられただけだぞ!!』

 

『カオスは重要な戦力だ。落とされる訳にはいかない。撤退するんだ、イイな!!』

 

『チッ、了解。撤退する』

 

左腕を失ったカオスは損傷箇所から煙を上げながらも前線から撤退する。

アスランは背を向ける相手にビームライフルの銃口を向けるが離れてくのを見ると操縦桿を握る指の力を抜いた。

 

「逃げたか。いや、逃して貰えたが正しいか」

 

奪われた最新鋭機が相手、2年のブランク、様々な要素が噛み合った事もあるが満足に動かせなかった事を悔やむアスラン。

けれどもまだ戦闘は続いており安心出来る状況ではない。

 

///

 

ヒイロは初めて乗るモビルスーツにも関わらず思い通りに操り敵のウィンダム部隊を撃破して行く。

シールドを構えながら前進し右前腕部の4連装ビームガンで連射性の高いビームを連続で発射する。

相手もビームライフルで応戦するがグフのシールドにもビームコーティングが施されており何発かは防ぐ事が出来る為、ヒイロは構わず機体を加速させウィンダムの装甲にビームを浴びせた。

1発の威力はインパルス等のビームライフルに劣るが連射性能を高める事でその欠点をカバーしており、ビームの弾はライフルを弾き飛ばし胸部装甲をズタズタに破壊する。

 

「敵機の破壊を確認。次の行動に移る」

 

 

シールド裏からテンペストビームソードを引き抜き次に現れた敵機に狙いを定める。

敵はビームライフルのトリガーを引きながらグフに迫り来るが、ヒイロはシールドでビームを防ぎながら近接戦闘に移行した。

相手は近づかれまいと更にライフルのトリガーを引くが、ヒイロはシールドの構えを解くと左腕からスレイヤーウィップを伸ばしウィンダムが握るビームライフルを絡み取る。

そのまま腕を引き敵のマニピュレーターからライフルを奪い取りテンペストビームソードを胴体に突き立てた。

ウィンダムはビームサーベルを手に取ろうとするが間に合わず、切っ先は装甲を貫き背部まで簡単に貫通し機能停止する。

レーダーの確認するヒイロは自身に近づく敵増援を見つけるとテンペストビームソードで突き刺したウィンダムを海へ落とした。

振り向いた先には紫のカラーリングをしたウィンダムが高速で迫り来る。

 

「色が違う、データにあった敵隊長機か。速やかに撃破する」

 

ペダルを踏み込み加速するグフ・イグナイテッド。

ヒイロは加速させたままもう1度左腕のスレイヤーウィップを伸ばすと高周波パルスを発生させ通り過ぎるウィンダムに鞭を叩き付けた。

赤く発光するスレイヤーウィップはコクピット周辺を傷付けると同時に高圧電流がコクピットの電気系統にまで伝わり様々なシステムや装置がショートする。

また1機、動く事が出来なくなった敵機体が海へ落下して行った。

その様子を見たネオはヒイロの操縦技術に舌を巻く。

 

『ほぉ、初めて見る機体だが中々やるな。量産機でそこまで出来るか。けど俺を倒せるかな!!」

 

ネオのウィンダムもビームサーベルを抜いた。

ビームサーベルを振り下ろしグフへ斬り掛かるが、ヒイロはスラスター制御で機体を後退させビームの斬撃を避ける。

グフは右手のテンペストビームソードの切っ先をウィンダムへ向け素早く攻撃に転じるがネオもこれをシールドで受け止めた。

初撃を防いだウィンダムは右脚部でグフのわき腹に蹴りを入れたようとするが、ヒイロはパワー任せにシールドで振り払う。

 

『うおっと!? これを避けるか。なら!!』

 

ビームサーベルを戻しビームライフルに切り替えるウインダムはグフに銃口を向けトリガーを引く。

今までの戦闘でシールドの耐久が怪しくなってるがヒイロは構わずに使用しビームを防いだ。

そしてそのままメインスラスターを全開にしてウィンダムへ急接近する。

 

『ナニ!?』

 

接近するヒイロはテンペストビームソードで再び斬り掛かるがウィンダムの反応も早い。

ビームライフルが分断され瞬時に手放す。

充填されたエネルギーが爆発を起こし両者を襲う。

だがヒイロは更に振り払い横一閃、炎の先に居るウィンダムに斬撃を繰り出す。

シールドを構えるウィンダムはソレを受け止めるが発生するビームはジリジリとシールドを溶断して行く。

 

『あんまり良い気になるなよ、新参者!!』

 

ウィンダムは強引にグフを蹴り飛ばし何とか距離を離す。

けれども装備してたシールドの上半分は切断されてしまった。

 

『クッ!! 思った以上にやれるヤツだ。味方機の数も減らされたか』

 

互いにまだダメージはないが手間取ってる間に用意したウィンダムが撃破されてしまった。

状況が悪いと判断したネオは撤退を決意しグフに背を向け距離を離すとコンソールパネルに指を伸ばし味方全軍に通信を飛ばす。

ヒイロは撤退するウィンダムを追撃しようとはせず、小さくなってく後ろ姿を見るだけだ。

 

『聞こえるか? これ以上は分が悪い。全機撤退しろ』

 

『1機も落としてねぇのに撤退すんのかよ?』

 

ネオの指示に異を唱えるのは後方で待機してたアビスのパイロットであるアウル・ニーダ。

彼はまだ戦闘に参加して居らず攻撃の1発すら当ててない現状に納得がいかない。

 

『ウィンダムの数が減らされた。スティングのカオスも損傷したから撤退するしかない』

 

『なら俺がやってやるよ!!』

 

『止めろアウル!!  敵は――』

 

ネオは必死に呼び止めようとしたが遅く、アウルは通信を一方的に切るとアビスで出撃してしまう。

 

『チッ!! 間に合ってくれよ』

 

反転するウィンダムはアビスに追い付こうとメインスラスターを全開にする。

だが今からでは間に合う事はなく、アビスはモビルアーマー形態で海中を進みながら空中で静止するグフの背後を取ろうとした。

 

『所詮は量産機。ネオはこんなのも落とせないのかよ。折角奪い取った新型だ、性能を試してやる』

 

ネオが倒せなかった相手を倒す事で実力を示そうと考えるアウルはモビルスーツ形態に変形して海上に浮上した。

巨大な水しぶきを上げグフの前に現れるアビス。

両手に握るランスの切っ先からビームを発生させ大きく振り下ろす。

 

『沈めよ!!』

 

ビームランスはグフの頭部を撥ねようとしたが構えたシールドがコレを防ぐ。

アウルは完璧に不意を付いたと思った攻撃が防がれた事に困惑する。

 

『ナニィ!?』

 

「遅い!!」

 

『コイツ、艦艇じゃなくて自分が狙われてる事に気が付いてたのか?』

 

ビームランスを弾くグフは至近距離で4連装ビームガンをアビスに向ける。

胸部目掛けてトリガーが引かれビームの弾が高速で大量に発射さるが、アビスが両肩に装備する巨大なシールドが防いだ。

ビームコーティングが施されてるせいでビームガンは通用しない。

 

『へへん、ちょっと驚かされたけどやっぱり量産機だな。次は落とす!!』

 

メインスラスターを吹かしビームガンの攻撃を振り切るアビス。

攻撃が止むと胸部に内蔵されたカリドゥスのビームを撃った。

グフはすかさず回避行動に移り回避すると赤黒いビームは海にぶつかり大量の水分が蒸発し白い煙を作る。

ヒイロはすぐにアビスを照準に収めるが、既にアウルは機体に内蔵された全ての武器の銃口をグフに向けて居た。

 

『これで終わり!!』

 

両肩のシールドに内蔵された3連装ビーム砲と胸部のカリドゥスが一斉に放たれグフを襲う。

目前に迫るビームに対してヒイロは左腕にマウントしたシールドを投げた。

高出力のビームはアンチビームコーティングのシールドを貫き爆発の炎を上げる。

アウルは視界に映る爆発がグフ本体のモノではないと気が付く。

 

『アレは違う。どこに行った?』

 

視界を見渡すが敵の姿は見当たらない。

レーダーを確認するとアビスとグフの座法位置が一致した。

 

『上からか!!』

 

頭上から現れたグフは握るテンペストビームソードを突き立てるとアビスの首元に突き刺した。

可動部への直接攻撃。

切っ先は機体内部を貫くとコクピットにまで到達した。

 

『え……』

 

パイロットのアウルは逃げる事も出来ずに絶命する。

痛みも何も感じずに彼は戦死した。

アビスにテンペストソードを突き刺すグフの頭部には飛び散ったオイルのせいで血が付着したように汚れてる。

 

「俺を相手にすれば死ぬ事になる。性能を過信し過ぎたのがお前のミスだ」

 

動かなくなったアビスはテンペストソードから引き抜かれ海へ落ちて行く。

水しぶきを上げて落下した機体。

数秒後、更に大きな水しぶきが上がるとアビスの機体反応は完全に消えた。




アビスとアウルはアニメではもう少し先でブラストインパルスに負けるのですが早々に退場していただきました。
ストーリーには問題ないと判断してこのようにさせていただきました。
ご意見、ご感想お待ちしております。

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