機動戦士ガンダムSEED Destiny 凍て付く翼   作:K-15

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第27話 自由と正義

シンの眼前に現れた2機の新型モビルスーツ。

青い翼を持ち、内部フレームが全て金色に染められたソレは、細かな箇所は変更されて居るが紛れも無くフリーダム。

そしてミーティアとドッキングするもう1機のモビルスーツ。

赤い装甲、銀色の内部フレーム。

バックパックにマウントされた航宙・航空用リフターは、2年前の大戦で使用されたジャスティスを彷彿とさせる。

 

「良くも戻って来れたな。アスラン・ザラ!!」

 

「シン、お前は!!」

 

ペダルを踏み込みメインスラスターを吹かすシン。

アスランのジャスティスもドッキングしたミーティアから分離する。

加速するデスティニーは握ったアロンダイトを構え大きく振り下ろした。

眩い閃光が走る。

左腕の実体シールドに内蔵されたビームジェネレーターから発生するビームシールド。

発生したビームの膜はデスティニーのアロンダイトの刃を通さない。

 

「アンタが裏切るから!!」

 

「聞くんだ、シン!! 議長は――」

 

「うるさい、黙れ!!」

 

一旦引くシンは右肩にマニピュレーターを伸ばしフラッシュエッジを握る。

間髪入れず腕を振るいフラッシュエッジをジャスティスに投げ付けた。

ピンク色に光るビーム刃が回転しながらアスランに迫る。

それでも、歴戦の兵士である彼の反応も早かった。

 

「この程度なら!!」

 

実体シールドの先端からビームが伸びる。

横一閃するジャスティス、迫るフラッシュエッジをはたき落とす。

頭に血が上るシン。

攻撃を防がれても尚、ジャスティスへの攻撃は止めない。

光の翼を展開しアロンダイトを構え加速する。

瞬間的に迫って来るデスティニー、ジャスティスはまた左腕のシールドを前方に突き出す。

内蔵されたワイヤーアンカーが伸び、デスティニーの左脚部に食い付く。

 

「しまった!? ぐぅっ!?」

 

「性能もわからない相手に突っ込み過ぎだ。シン!!」

 

「いいや、まだだ!!」

 

食い付いたワイヤーは強引にデスティニーの姿勢を崩し、ジャスティスの元へ引き寄せる。

右手にはビームライフル。

密着して撃たれれば新型のデスティニーでも致命傷になる。

意識を集中させるシン。

怒りに身を任せて戦って居たが、途端に頭の中がクリアになる。

反射と反応速度が飛躍的に上昇し、突き付けられるビームライフルの銃口を半身を反らし回避した。

引かれるトリガー。

発射されるビームは闇に消える。

 

「なっ!? 避けた!?」

 

一時とは言えデスティニーと交戦したアスランはその性能をわずかではあるが知って居る。

そして乗って居るパイロットの動きや癖も熟知して居るつもりだった。

絶対の自信を持って居たが、予想を上回るシンの動きに舌を巻く。

伸ばされるマニピュレーターがジャスティスが握るビームライフルを掴んだ。

 

「っ!!」

 

瞬時に反応するアスラン。

握ってたビームライフルを手放した瞬間、パルマフィオキーナが炸裂する。

至近距離で起こる爆発、同時にワイヤーアンカーもデスティニーを手放してしまう。

ヴァリアブルフェイズシフト装甲が採用されて居る両機にダメージはない。

 

「今の俺なら、どんな敵にだって勝てる!!」

 

「何を!!」

 

「アンタは裏切ったんだ。俺の敵だ!!」

 

「俺はまだ、お前にやられるつもりはない!!」

 

匠に操縦桿を操作するアスラン。

膝からつま先に掛けて設置されたビームブレード。

デスティニーを右足で蹴り上げようとする。

だがソレよりも早く、シンはパワー任せに右膝をジャスティスの股関節部にぶつけた。

 

「ぐっ!!」

 

姿勢を崩す機体、激しく揺れるコクピット。

AMBACとスラスター制御で態勢を整える。

距離を離しつつ、リフターのフォルティスビーム砲と実体シールドのビームジェネレーターからビームを撃つ。

デスティニーも左腕のビームシールドで迫るビームを防ぐ。

 

「逃がすものか!! アスラン!!」

 

追い掛けようとするシンだが、レーダーにもう1機の反応が映る。

 

「フリーダム!!」

 

「アスラン、ここは1度引こう。ミーティアを。ザフトは僕が抑える」

 

「キラ、頼む」

 

デスティニーの相手をキラに任せるアスラン、放置したミーティアとドッキングしエターナルと合流すべく大型スラスターに火を付ける。

そしてフリーダムは迫り来るデスティニーに右手のビームライフルを向けた。

 

「どうして!? 僕達が戦う理由なんて……」

 

「お前にはなくても、俺にはある!!」

 

「くっ!!」

 

発射されるビームは左腕のビームシールドに防がれる。

光の翼を広げるデスティニーは接近戦を仕掛けるべく加速するが、フリーダムも背部のドラグーンを展開させると光の翼を展開した。

戦場を駆け抜ける2つの翼が交わる事はない。

縦横無尽に飛び回るドラグーンはデスティニーを囲み全方位攻撃で攻め立てる。

素早く動かす操縦桿。

AMBACと細かなスラスター制御。

シンは卓越した集中力でドラグーンの攻撃を避け続ける。

 

「クソ!! 近付けない。それに……」

 

視界に捉えるフリーダムの姿。

その動きは新型である筈のデスティニーよりも早い。

高い機動力と運動性能を見せつけながら、両手に握るビームライフルからビームが撃たれる。

 

「ただ改修しただけじゃない。こっちも新型に乗り換えて強気になってたけど、甘かったって言うのか!!」

 

「もう止めろ!! こんな事をしても意味はない!!」

 

回避ばかりで攻撃に転じる事が出来ないシン。

デスティニーの周囲を飛び回るドラグーン。

そこにまた、別の形状をしたドラグーンが飛んで来た。

 

「ドラグーンはまだ使い慣れてないようだな」

 

「レイか!?」

 

「シン、先行しろ。ルナマリアも居る」

 

入り混じる青と灰のドラグーン。

両機とも小型ではあるが、レイの方がドラグーンの動きが洗礼されて居る。

互いに発射されるビーム。

その中で灰色のドラグーンはビームを避けながらも、フリーダムのドラグーンを2機落とす。

武装が破壊されただけだが、キラの乗るフリーダムもロールアウトされたばかりの新型。

この段階でまだ機体にダメージを通す訳には行かなかった。

 

「ドラグーンが!? 右からも来る!!」

 

展開させたドラグーンを回収しようと意識を傾けるが、レーダーには更にもう1機モビルスーツの反応。

ルナマリアの乗るインパルスは、加速しながらビームライフルのトリガーを引く。

 

「新型だからって!!」

 

「3つの敵が!?」

 

右腕のビームシールドを展開するキラはインパルスのビームを防ぐ。

だがその間にも目の前からは接近するデスティニー。

シンは右肩のフラッシュエッジを掴み大きく振り払う。

回転するビームブーメランはフリーダムに迫る。

考えるよりも前に反射的に体が動く。

展開するサイドスカートのクスィフィアスレール砲。

高速で発射される弾丸はフラッシュエッジに直撃し爆発の炎を上げる。

 

「行ける!!」

 

瞬時に機体を反転。

両手に握るビームライフルを連結させインパルスの左腕を狙う。

構えて、狙い、トリガーを引く。

常人を超えるキラのスピード。

発射されるビームは通常よりも速度と貫通力が高く、アンチビームコーティングの施されたシールドごとインパルスの左腕を貫く。

まさに一瞬、1秒と掛かってない。

ビームにより爆発する左腕はインパルスからちぎれ飛ぶ。

 

「ぐぅっ!! でも、まだぁ!!」

 

「来るのか!?」

 

被弾しても尚、ルナマリアはペダルを踏み込みインパルスを加速させる。

ビームライフルのトリガーを引くが、高い運動性能とパイロットの技量の前に全て避けられてしまう。

それでも諦めずにメインスラスターを全開にして迫るルナマリア。

フリーダムに劣りはするが、インパルスも開発されて1年と経過してないモビルスーツ。

両者の間は一気に狭まり、射撃戦の出来る距離ではなくなって居る。

左サイドスカートにマニピュレーターを伸ばすキラ。

 

「メインカメラが失くなれば」

 

一方のルナマリアはビームライフルを投げ捨て、右腕を伸ばしフリーダムに組み付く。

フリーダムが握るビームサーベルの切っ先はインパルスの頭部を貫いた。

だが両機は完全に密着しており、切り離すには破壊するしかない。

 

「今しかない!! シン、撃って!!」

 

「味方ごと撃つのか!?」

 

「大丈夫ッ!!」

 

言われてシンは左ウエポンラックから大型ビームランチャーを展開し、照準を重ね合わさる2機に合わせた。

躊躇する事なく引かれるトリガー。

高出力のビームが一直線にフリーダムとインパルスに飛ぶ。

それを見たルナマリアはコンソールパネルに指を伸ばし、コアスプレンダーと各フライヤーとを分離させた。

発射されたビームが届くよりも早く、コアスプレンダーのメインスラスターを吹かす。

 

「っ!!」

 

目を見開くキラ。

右手に握る連結ビームライフルを手放し、両腕のビームシールドを全開にして迫る高出力ビームの方向へ向き直る。

電力供給が絶たれたインパルスの装甲がビームシールドに焼かれた。

そしてデスティニーの発射したビームは背部からインパルスを貫き、フリーダムの爆発に包み込む。

 

「グゥゥッ!! アークエンジェルは?」

 

メインスラスターを吹かし、爆発から脱出するフリーダム。

コクピットを激しく揺らしたが、白い装甲にダメージはない。

アスランのジャスティスとミーティアは戦闘領域から離脱しており、アークエンジェルとミーティアも近づいて居る。

レーダーで確認したキラはこれ以上の戦闘はせず、後方部隊と合流すべくデスティニーとレジェントから背を向けた。

当然、シンは逃げるフリーダムを追い掛けようとする。

 

「逃がさないって言ってんだろ!!」

 

「待て、シン。ここはミネルバに帰艦する」

 

「何で、邪魔しないでくれ!!」

 

「いいや、ダメだ。ルナマリアのコアスプレンダーでは戦力にならない。それにこのまま近付けば艦隊戦になる。今のミネルバには時間がない。帰艦してジブリールを追う方が先だ」

 

「クッ!! 目の前に居るって言うのに……」

 

苦虫を噛み潰した表情をするシン。

フリーダムから背を向けるデスティニー、レジェンド、コアスプレンダーはミネルバへと帰艦する。

 

///

 

廃棄コロニーが破壊されて暫くの時間が経過した。

ダイダロス基地のジブリール。

この基地に逃げ込んだ事はミネルバからの報告でザフトにバレており、時間と共に増えつつあるザフト軍をモニターで見て居た。

しかしその顔は、追い詰められつつあるというのに余裕の表情。

 

「ギルバード、全軍を率いてこの私を打ち倒しにくるか。だがそう簡単にはやらせんよ」

 

ジブリールは連合軍の司令官にレクイエムのチャージを急がせる。

突如として現れた新型のフリーダムとジャスティスにより、月からもっとも近い位置の廃棄コロニーは破壊されてしまった。

それでも残された廃棄コロニーの角度を軌道修正する事で、また狙った位置にレクイエムを撃ち込む事が出来る。

 

「この私を捕まえる事にずいぶん意気込んで居るようだがそれが命取りだ!! チャージが終わった瞬間、ザフトは宇宙の塵と消える!!」

 

月の表側のアルザッヘル基地、及び戦略兵器レクイエムを死守するべく、基地内部から大部隊が発進しザフト軍を迎え撃つ。

その中には、かつてシンを苦しめたデストロイが4機も居る。

 

「いいか、なんとしても守りきれ!! 今1度レクイエムを撃つ事が出来ればこちらの勝ちだ!!」

 

基地からはブースターを装備した艦艇が次々と基地から飛び出して行く。

月の表面にも展開される大部隊。

 

「エネルギーチャージ40パーセント充填」

 

着々とチャージの進むレクイエム、ジブリールはその瞬間を今か今かと待ち望んで居る。

 

///

デュランダルは自らが機動要塞メサイアの司令部に立ち、何としてもこの戦争を終わらせようとして居た。

ザフトも部隊が集結しつつある中、通信士からロゴスに動きがあったと報告を受ける。

 

「向こうが先に動き出したか。全軍に通達、これよりダイダロス基地攻略作戦を開始する。この戦いが終われば戦争は終わる。各員の健闘に期待する」

 

デュランダルの言葉は全軍に伝わり、同時に士気が向上した。

ミネルバもデュランダルからの指示を聞き、ダイダロス基地攻略部隊との合流を急がせる。

モビルスーツのパイロットはデッキで合流後の作戦会議をして居た。

アスランが居なくなってから作戦の指揮はレイが取る事になる。

 

「もうすぐ前線部隊と合流する。初手はヒイロのウイングゼロが出てくれ。バスターライフルで敵の防衛網に穴を開ける。その隙にシンと俺で基地に取り付く。ルナマリアはミネルバの防衛と俺達が突入した後のヒイロの援護をしてくれ」

 

レイが作戦の概要を伝えるが、それに対しルナマリアが意見する。

 

「でもヒイロ1人じゃ危険じゃない? それならアタシと一緒の方が」

 

「いや、レイの作戦は正しい。お前はミネルバの防衛に専念しろ」

 

ヒイロはあくまで一人で行こうとする。

ルナマリアは心配するがそれ以上は何も言わず、レイは作戦の説明を続けた。

 

「敵の戦略兵器のデータも回って来た。アレはゲシュマイディッヒ・パンツァーを搭載した廃棄コロニーを通す事でガンマ線を屈折させる。屈折を繰り返す事で狙った位置に撃ち込む事が可能にして居る。フリーダムが廃棄コロニーの1つを破壊した事で奴らも今はまだ使えない。でもそれも時間の問題だ。第1戦で月周回軌道の敵部隊を崩して突破する。補給した後、月面のダイダロス基地だ。シン、敵はデストロイも準備して居る。今のお前とデスティニーなら行ける筈だ」

 

「わかった」

 

力強く頷くシン。

作戦の説明が終わると放送でメイリンの声が流れて来た。

 

『コンディション・レッド発令。パイロットは搭乗機で待機して下さい』

 

「行こう、レイ。もう戦いを終わらせよう」

 

立ち上がる4人はモビルスーツデッキに待機する自分の機体へ向かう。

シンも自らの搭乗機であるデスティニーに急ぐ。

ハンガーに固定された機体を確認してシンは走ろうとするが、突然誰かに後ろから肩を引かれる。

振り向いた先に居たのはヒイロの姿。

 

「どうした? 時間がないんだぞ」

 

「デスティニーは俺が乗る。お前はゼロを使え」

 

「はぁ!? お前、何言って――」

 

「ゼロシステムがお前の戦うべき敵を見出してくれる。それと、他にやる事が出来た。デスティニーの方が動きやすい」

 

「やる事って……」

 

シンの言葉も聞かずにヒイロは言葉を続ける。

そしてそのまま本来のパイロットである筈のシンを置いて、1人勝手にデスティニーのコクピットに入り込んだ。

 

「操縦系統は他と変わらない。お前なら出来る筈だ」

 

「だからって!!」

 

ヒイロはそこまでしか言わず、強引に機体のハッチを閉鎖した。

残されたシンは言われた通りにウイングゼロに乗るしか道はない。

 

「何だって言うんだよ、アイツは!? クソォォォ!!」

 

///

 

アークエンジェルとエターナルも月のダイダロス基地へ向かって居た。

それでもザフトの進軍と比べればその速度は遅い。

ブリッジではこれからの動きに付いてマリューが頭を悩ませ、彼女の隣にはキラが居る。

 

「ザフトも必死か。メサイアと投入してでも、ジブリールを撃つ気で居る」

 

「戦力は増強しましたけど、過信は出来ませんね」

 

「えぇ、両軍の動きを見てからでないと。また、2年前と同じになってしまうなんて」

 

「あの時はそれしか方法がありませんでしたから。未来はどうなるかわかりませんけれど、今度こそ良くなるようにと願って僕達はココに居る」

 

新しくなったフリーダムとジャスティス。

合流したラクスのエターナルとミーティア。

戦力は増えたが、このまま突入すればロゴスとザフトの挟み撃ちに会い勝てる見込みは全くない。

迂闊に突入する事も出来ないが、両軍が交わり合うのも時間の問題。

すると、並走するエターナルから通信が繋がって来た。

モニターに表示された先には艦長シートに座るラクスの姿。

 

『マリューさん、そちらの準備は?』

 

「こっちは問題ありません。それよりも両軍の動きが気になります」

 

『ダイダロス基地攻略にはミネルバが来てます。なんとか共闘出来れば次の発射には間に合うかもしれん』

 

「残念ですがそれは無理でしょう。ですがアレをまた撃たれれば、また甚大な被害が出ます。こちらはこちらで行動に移りましょう」

 

マリューの言葉にラクスは静かにまぶたを閉じる。

そしてまたゆっくりと開き、鋭い視線でキラに目線を移す。

 

『キラ、アレをまた撃たせる訳には参りません。厳しい戦いでしょうが頑張って下さい』

 

「わかってる。アスランにも伝えて」

 

『えぇ、わかりました。では』

 

途切れる通信。

エターナルのブリッジでラクスはシートに座ったまま首を傾けた。

その先に居るのは、ザフトから逃亡したアスラン。

 

「アスラン、聞いての通りです。次の戦場にもミネルバが来ています。また彼らとも戦う事になるでしょう。ですがわたくし達は止まる訳には参りません。ダイダロス基地を制圧出来れば、次はミネルバと戦う事になるやもしれません」

 

「覚悟は決めた。ジブリールを止める、そしてこの戦争も終わらせる。例えまた、アイツラと戦う事になろうとも」

 

決意を口にするアスランに、ラクスは何も言わない。

ロゴスとザフト、両軍の決戦の火蓋は切られようとして居た。




戦闘シーンは入れたのですが、ストーリーが進んでない……
でも最終回まではもう少しですので、更新をお待ち下さい。


活動報告、更新しました。
意見を貰えると嬉しいです。

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