機動戦士ガンダムSEED Destiny 凍て付く翼   作:K-15

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第26話 闇に現れる光

「後ろにはミネルバ、月にもザフトのメサイアが向かって居るか」

 

シャトルに乗るジブリールはシートに座りながら不敵な笑みを浮かべる。

危機的状況にも関わらず不安を全く感じてない彼は、備え付けられた通信機を片手に月のダイダロス基地の司令部に繋げた。

 

「私だ。手筈通りレクイエムの準備は進めて居るな?」

 

『はい、問題ありません。エネルギー充填率70パーセントを超えました』

 

「80パーセントを超えたら発射しろ。権限は私が持つ」

 

『目標は如何しますか?』

 

「プラント首都、アプリリウス。これさえあれば一撃で仕留められる。その次は地球に向けろ」

 

『地球……ですか?』

 

「そうだ。第2射でオーブを撃つ。あの小娘共が、私をコケにした報いだ」

 

『了解です。第2射、目標オーブ』

 

「デュランダル……奏でてやるよ、レクイエムを」

 

通信機を戻すジブリールは再び不敵な笑みを浮かべる。

月のダイダロス基地司令部では、エネルギー充填が完了したレクイエムの発射態勢に入った。

基地地表面に建造された巨大なシェルターがゆっくりと解放され、蓄積されたエネルギーは今にも発射される。

司令官であるレゾン・クレブルはスクリーン上に表示される座標位置、数カ所に渡り配置されて居る廃棄コロニーの角度を見た。

 

「3番のスラスター制御を急がせろ。それが終わり次第、レクイエムを発射する!!」

 

前大戦で連合はプラントを直接攻撃した。

その時に破壊し、廃棄されたコロニープラントを改良し各所に配置させる事で、戦略兵器レクイエムは更なる力を得る。

ザフトも廃棄コロニーが兵器に使用されるとは考えが及ばず、ロゴスも小規模ながら廃棄コロニーを防衛する部隊も展開させており、今から発射を食い止める事は出来ない。

ジブリールの通信から数分後にはエネルギー充填率が80パーセントを超え、廃棄コロニーの角度も整った。

 

「1、3、5番コロニーの配置完了です」

 

「良し、レクイエムを発射する!! 青き清浄なる世界の為に!!」

 

司令官の一声と同時にレクイエムの発射ボタンが押された。

月に建造された巨大な戦略兵器がそのベールを脱ぐ。

全てを焼き尽くす光。

開放されたシェルターから強力なガンマ線となって、膨大なエネルギーが発射された。

けれどもその発射線上には何もない宇宙が広がるだけ。

無数に漂うデブリを飲み込みながらも進むガンマ線。

それは意図して配置された筒状の廃棄コロニーを通ると射角を変えた。

ジブリールはシャトルの窓から見える光の筋を見て勝利を確信する。

 

「そうだ、それで良い。コーディネーターは宇宙に漂う害虫だ。塵となって消えろ!!」

 

ガンマ線が生み出す憎しみの輝きはミネルバからも確認出来た。

廃棄コロニーを通過する事で屈折し、また次の廃棄コロニーを通過する。

ブリッジでは発射されたエネルギーがどこに向かってるのかを早急にコンピューターに計算させ弾き出す。

タリアは目の前の光景に思わずシートから立ち上がり、スクリーンに映る映像に目を見開く。

 

「この光は何なの? メイリン、目標地点は?」

 

「計算結果……出ました。これは……プラント首都!? アプリリウスです!!」

 

「まさか!?」

 

1度発射されたガンマ線を止める術はない。

狙われたプラント首都。

ブリッジに居るクルーはその光景をただ見る事しか出来ない。

副官であるアーサーの背中にも冷たい汗が流れ、目の前の事実に恐怖した。

 

「こ……こんな事までしてくるのか? ロゴスは? 急いでアプリリウスに通達を!!」

 

「無理、もう間に合わない」

 

「そんな!? 艦長!!」

 

「今は泣き言を言ってる時間はない!! 作戦変更、これより我が艦は敵戦略兵器の阻止に向かう」

 

「ですが、それではジブリールが!!」

 

「第2射が撃たれればプラントは壊滅的な打撃を受ける。その前に何としても阻止しないと。ここから1番近いのはミネルバだけ。行くしかない」

 

タリアの決断にアーサーは反論する事など出来る筈もなく、口を閉ざしスクリーンに映るレーダーを見る。

あれだけのエネルギーを充填させるにはそれなりの時間が必要となるが、それにどれだけ掛かるのか皆目検討が付かない。

次の発射を阻止するには今からの行動を迅速に行うしかなかった。

 

「廃棄コロニー、これに何か仕掛けてあるんだな。月のダイダロス基地から1番近い廃棄コロニーを破壊すれば、発射までの時間を更に稼ぐ事が出来る。艦長、指示を」

 

「コンディション・レッド発令、モビルスーツパイロットは各機のコクピットで待機。いつでも出られるように準備を急がせて」

 

タリアの指示に合わせて艦内に警報が響き渡る。

戦闘に備えてブリッジは遮蔽され、放送によりモビルスーツパイロットは出撃の為にパイロットスーツに着替えた。

デスティニーのパイロットであるシンもパイロットスーツに着替えるとモビルスーツデッキに急ぐ。

その最中、通路の合流地点でヒイロと対面した。

 

「ヒイロ、急ぐぞ。敵の新兵器みたいだ」

 

「わかって居る。新型のデスティニー、使いこなして見せろ」

 

「当たり前だ。俺は赤なんだぞ」

 

「そうだな。操縦マニュアルは見させて貰った。対モビルアーマー用に調整された機体だが、お前なら行ける筈だ」

 

「そうかよ」

 

2人は無重力の通路の床を蹴り、並走しながらモビルスーツデッキに向かった。

整備兵が慌ただしく動く中、新型のデスティニーとレジェンドの準備は既に完了して居る。

レイはもうコクピットへ入っており、ルナマリアもコアスプレンダーのシートに座り発進準備を完了させて居た。

シンも急ぎデスティニーのコクピットに搭乗し、コンソールパネルを叩くとコクピットハッチを閉鎖させる。

エンジン出力を全開にして前進するミネルバ。

ブリッジで指示を出すタリアは、艦尾両舷に設置されたトリスタンの砲身を迫る廃棄コロニーに向け高出力のビームを発射する。

 

「全砲門開放。トリスタン、イゾルデ、一斉射撃!!」

 

タリアの叫び声がブリッジに響く。

ミネルバの主砲、副砲が火を吹き、廃棄コロニーへと発射される。

けれどもロゴスは廃棄コロニーにも小規模ではあるが防衛部隊を展開させており、艦艇が一斉にミネルバの存在に気が付く。

ミネルバの主砲、トリスタンの高出力ビームはコロニーに直撃するが、艦艇を超える巨大な質量を前に数発程度ではビクともしない。

敵艦隊も主砲をミネルバに向け、ビームと砲撃の飛び交う艦隊戦へと移行する。

 

「モビルスーツ、全機発進させて。ミネルバ、微速前進。アーサー!!」

 

「了解です。タンホイザー、エネルギー充填開始します」

 

「ブリッジからパイロットへ。モビルスーツ全機発進。ハッチ開放、カタパルト準備」

 

インカムを通しメイリンの声がコクピットの各パイロットに伝わる。

それを聞いたレイは操縦桿を握り機体を移動させ、カタパルトに繋がるエレベーターに搭乗させた。

モビルスーツデッキからカタパルトに上昇する僅かな時間、レイの心にあるのは確固たる信念のみ。

 

「ここまで来て、ギルの邪魔を許す訳にはいかない」

 

『進路クリア。レジェンド、発進どうぞ』

 

「レイ・ザ・バレル。レジェンド、発進する!!」

 

脚部を固定したカタパルトは機体ごと高速で前進し、メインスラスターを吹かすと同時に開放、背部のエネルギーケーブルも切り離してレジェンドは一気に加速した。

もう一方のカタパルトからは、コアスプレンダーに乗り換えたルナマリアが初めての機体の感触を確かめるようにして、発進態勢に入る。

 

「シミュレーターは何度もやった。大丈夫、行ける……」

 

『進路クリア。コアスプレンダー、発進どうぞ。頑張って』

 

「メイリン……了解!! ルナマリア・ホーク、行きます!!」

 

右足でペダルを踏み込み、加速するコアスプレンダーは開放されたハッチから発進した。

続けて各フライヤーも射出され、ルナマリアはコンソールパネルを叩きガイドビーコンを照射する。

赤いレーザーに誘導されるフライヤーは、主翼を折り畳みコンパクトになるコアスプレンダーとドッキングした。

最後にフォースシルエットを背部にドッキングさせ、バッテリー電力を機体に供給させる。

灰色だった装甲はトリコロールカラーに代わり、右手にはビームライフル、左腕のシールドを展開させメインスラスターを吹かし加速した。

シンのデスティニーもカタパルトに脚部を固定させる。

開放されたハッチの先に見えるのは、ビームが生み出す幾つもの光。

 

「このデスティニーなら出来る筈だ」

 

『敵もモビルスーツを展開して来ました。デスティニー、発進どうぞ』

 

「シン・アスカ。デスティニー、行きます!!」

 

カタパルトから発進するデスティニー。

バッテリーと核エンジンのハイブリットで構成されたデスティニーとレジェンドは他の機体と比べ一線を越える性能を持つ。

ツインアイを輝かせ、背部の赤い羽を広げ光の翼を展開させるデスティニー。

3機は横並びで敵防衛部隊を補足する。

先頭に立つレイは通信を繋げると2人に指示を出した。

 

「俺とドラグーンで敵を撹乱する。ルナマリアは各個撃破、シンは先行して艦艇を叩け」

 

「わかった。シン、先に行って」

 

「了解。ヒイロの出撃、遅すぎないか?」

 

「今は3人でやるしかない。来るぞ!!」

 

展開したウィンダムとダークダガ―Lが装備したビームライフルのトリガーを引き、3機にビームの雨を浴びせて来る。

瞬時に散開する3人。

レイはレジェンドのバックパックに装備されたドラグーンを全機展開させ、迫る敵部隊の中心へ潜り込ませる。

ミネルバで1人出撃してないヒイロ。

ウイングゼロのコクピットには入ったものの、腕を組み目を閉じたまま動こうとはしない。

整備兵のヨウランはいつまで経ってもエンジンすら起動させないヒイロの所にまで急いで詰め寄って来る。

 

「何やってんだよ!! 出撃命令は出てるんだぞ!!」

 

「まだ俺が出る必要はない」

 

「はぁ? 敵はもう目の前なんだぞ!! 今出なくてどうする!!」

 

ヨウランは大声で叫ぶが、ヒイロは口を閉ざしこれ以上言葉を発しようとはしない。

どうしようもないと諦めたヨウランはハッチから離れ愚痴を零す事しか出来なかった。

 

「ガイアで勝手に出撃したかと思えば、今度は命令されても出ないと来た。やっと営倉から出して貰えたのに。次はどうなっても知らねぇかんな!!」

 

離れて行くヨウランにヒイロは見向きもしない。

見えて居るのはもっと先に起こる展開。

 

///

 

ミネルバを振り切るジブリールの乗るシャトルは月のダイダロス基地に入港した。

ジブリールは入港するとすぐに司令部に向かう。

扉のエアロックを解除し中に足を踏み入れると、司令官であるレゾン・クレブルが出迎えた。

 

「ジブリール様、よくぞご無事で」

 

「第1射はアプリリウスに向けたな?」

 

「はい、指示通りに」

 

「プラントはどの程度沈んだ?」

 

「アプリリウスに直撃。今頃、評議会は機能してないでしょう。周辺のプラントも3基まで大破。数分もすれば形を維持出来なくなり宇宙のゴミとなります」

 

「ふふふ、デュランダルの顔が目に浮かぶ。再充填までどれだけ掛かる?」

 

「残り10分です。ですが3番コロニーにザフトのミネルバが」

 

「たかが1隻でどうにか出来る訳がない。充填を急がせろ!! 終わり次第、地球のオーブに発射するんだ!!」

 

「了解です」

 

ジブリールは本気でコーディネーターをこの世から抹殺しようと企んで居る。

そして自分に歯向かう相手も全て。

レクイエム発射のエネルギーが充填されるまで、あまり時間は残されてない。

 

///

 

砲撃を続けるミネルバ。

装甲に砲弾が直撃し艦内が激しく揺れる。

シートに座るタリアは肘掛けで体を支えながらも各員に指示を出す。

 

「くっ!! 直撃を受けた、被害状況を知らせ!!」

 

「軽傷です、稼働に問題ありません」

 

「艦長、ダイダロス基地に高エネルギー反応!! 第2射が来ます!!」

 

「なんですって!? 廃棄コロニーの射角を調べて。それで大まかな狙いが掴める」

 

言われてクルーはレーダーに映る廃棄コロニーの角度から、レクイエムの着弾点を割り出す作業を急ぐ。

艦隊戦を行いながらも、数十秒後には着弾点が割り出される。

スクリーンに映し出される結果を見て、クルーの顔が青ざめた。

 

「これは……艦長!! 敵の第2射の目標は地球です!!」

 

「っ!? シン達に伝えなさい!! あの艦隊を早く突破出来なければ地球にも被害が及ぶ!!」

 

ミネルバのタンホイザーをここで撃つ事は出来ない。

モビルスーツの火力だけで廃棄コロニーを瞬時に破壊する事など到底無理。

タンホイザーを直撃させても破壊出来るかは怪しいが、この状況になってもヒイロのウイングゼロは出撃せず、それしか方法はなかった。

前線で戦うレイはビームライフルでウィンダムの胸部を撃ち抜くと、コンソールパネルに指を伸ばし通信を繋げる。

 

「わかったぞ、奴らの次の目標は地球だ」

 

「地球だって!? あんなのが打ち込まれたら、どれだけの被害が出るかわからないぞ」

 

「急ぐしかない。ルナマリア、シンを援護だ」

 

「了解!!」

 

3機のウィンダムを相手に、レジェンドのドラグーンが飛ぶ。

宇宙空間を自在に動き回る小型のドラグーンを並のパイロットでは見切る事が出来ず、発射されるビームに四脚を撃ち抜かれる。

更にはレジェンド本体からのビームライフルの砲撃。

レイはドラグーンでウィンダムの右脚部を破壊し姿勢制御が困難な相手に銃口を向け、コクピットに正確にビームを撃ち込む。

 

「お前達を相手にする時間はない。コロニーを!!」

 

レジェンドの前にはまだ2機のウィンダムが残って居る。

相手もビームを撃って来るが、新型のレジェンドにはビームシールドが装備されており、造作もなく攻撃を防ぐ。

敵の攻撃はビームシールドで防ぎながら、こちらはビームライフルとドラグーンで一方的に攻撃を仕掛ける。

全方位攻撃をそう何度も避け切る事も出来ず、片方はドラグーンのビームに手足を破壊され爆発に飲み込まれた。

射撃戦では勝てないと踏んだ相手はビームライフルを投げ捨てビームサーベルを抜く。

メインスラスターを全開にし、左腕のシールドを構えて一気に詰め寄る。

ドラグーンの追撃を振り切りレジェンドにビームサーベルを振り下ろすが、ビームシールドに防がれ眩い閃光が走った。

 

『レクイエムの邪魔はさせん!!』

 

「それはこちらも同じだ。議長の理想を実現する為に、障害となるモノは全て消し去る!!」

 

一旦引くウィンダム、そして続けざまにビームサーベルで横一閃。

レジェンドもAMBACとスラスター制御でこれを避け、距離を離そうとメインスラスターを吹かす。

だがウィンダムも逃がすつもりはない。

加速を掛け、ビームサーベルの切っ先をコクピットに伸ばした。

再び閃光が走る。

ビームシールドはその切っ先を通す事はない。

そして展開させて居たドラグーンはレジェンドのバックパックに戻ると同時にエネルギーを供給され、マウントしたまま前方に向きを変えた。

 

『っ!?』

 

「遅い!!」

 

ウィンダムは逃げる暇もなく、次の瞬間にはドラグーンの一斉射撃が白い装甲を貫いた。

両手足を吹き飛ばされ機能不全に陥る敵機に、レイはトドメの一撃を放つ。

先行するシンのデスティニーとルナマリアのインパルス。

当初の作戦通りには行かず、デスティニーは艦艇に取り付けずに居た。

 

「クソ!! 思ったよりも数が多い」

 

「時間がないってのに!!」

 

右肩にマニピュレーターを伸ばしフラッシュエッジを掴み、大きく振りかぶって投げ飛ばす。

回転するフラッシュエッジはブーメランのような軌道を描き、迫るダークダガ―Lの右膝から先を切断しデスティニーの位置を戻って来る。

態勢が崩れた所をルナマリアはすかさずビームライフルを向けトリガーを引いた。

 

「1機撃破。でもこんな事してたら撃たれる!!」

 

「もう少しだけ接近出来れば長射程ビーム砲が撃てる」

 

「だったらここはアタシが抑える。シンは早く行って!!」

 

「でもそれだと……」

 

「時間がないの。早く!!」

 

ルナマリアに急かされ、シンは艦艇に取り付く進行ルートを見出す。

光の翼を展開し、敵防衛網の中を一気に駆け抜ける。

 

「突破する。撃たせるもんかぁぁぁ!!」

 

先行するシンの背中を見守りながら、ルナマリアは残存部隊がデスティニーを追い掛けないように相手をしなければならない。

メインスラスターを全開にして、左腕のシールドを突き出しながら加速する。

背を向けるダークダガーLへ、突き出したシールドの先端をぶつけた。

 

「行かせないって言ってんでしょ!!」

 

ビームライフルの銃口を装甲に密着させてトリガーを引く。

背後から撃ち抜かれた機体は爆発し、インパルスは次の目標に照準を定める。

 

「あぁ、もう!! 右と左、上からも!?」

 

3方向からのビーム攻撃にインパルスは回避行動に移る。

発射されたビームは闇の中を通り過ぎて行くが、右舷からはダークダガーLが迫って来た。

ビームライフルの銃口を向けビームを連射。

発射されるビームは敵機に迫るがシールドに防がれてしまった。

それでもビームコーティングが施されてないシールドは一撃で破壊され、ルナマリアはトリガーを引き続けながら相手に接近する。

防ぐ手段のないダークダガーLはビームライフルを向けながらも回避行動を取るが、インパルスの機動力に追い付かれてしまう。

トリガーを引いてビームを発射するも、アンチビームコーティングのシールドに防がれてしまい、ルナマリアはそのまま左腕を横に振り払った。

シールドは敵機の頭部の装甲を歪ませ、特徴的なバイザーにヒビを入れる。

 

「落ちなさい!!」

 

頭部バルカンと胸部チェーンガンを一斉射撃。

大量に発射される弾丸は黒の装甲をズタボロに破壊し、ダークダガーLは内部から爆発した。

 

「次から次へと!!」

 

インパルスに迫る2機のダークダガーL。

ビームライフルを腰部にマウントさせ、バックパックからビームサーベルを引き抜き、ルナマリアはペダルを踏み込み機体を加速させた。

シンのデスティニーは後方をレイとルナマリアに任せて艦艇へ取り付ける距離にまで来る、

背部左ウェポンラックに装備された大型ビームランチャーを構え照準を敵艦に合わせた。

 

「艦隊を潰せばレイとルナも合流出来る。当たれぇぇぇ!!」

 

大型ビームランチャーから高エネルギービームが発射される。

赤黒く太いビームは艦艇に一直線に進むが、護衛に駆け付けたウィンダムがシールドを構えてこれを防いだ。

機体は一撃で爆散し、それでも残るエネルギーは艦艇に直撃するが破壊するには至らない。

 

「クッ!! なら接近して仕留める!!」

 

大型ビームランチャーを折り畳みウェポンラックに戻し、対艦刀アロンダイトをマニピュレーターに握らせる。

光の翼を展開し高速移動するデスティニーにビーム砲撃の雨と防衛部隊が立ち塞がった。

 

「邪魔だ、退けぇ!!」

 

大きく振り下ろされるアロンダイトは一太刀で敵機を両断し爆発の炎に包まれる。

 

「間に合わないと!! このままだと撃たれる!!」

 

シンの思いとは裏腹に敵部隊はデスティニーを阻止せんと展開する。

モビルスーツを相手にして居ては艦艇を破壊出来ない。

 

「全部で9機、抜けられるか?」

 

敵のモビルスーツは無視してでも突破を試みるシン。

だが迫り来る砲撃はデスティニーが先行するのを許さない。

ビームコーティングが施されたシールドでビームを防ぎながら、シンは決死の覚悟で防衛網の中に突入した。

 

「やるしかないんだ。デスティニーの性能なら行ける!!」

 

ペダルを踏み込み機体を加速させるシン。

一直線に敵モビルスーツ隊に突撃し、左マニピュレーターで頭部を掴む。

開放型のビームジェネレーターから発生するエネルギーがウィンダムの頭部を吹き飛ばした。

 

「いっけぇぇぇ!!」

 

1点だけ開いた穴から機体の機動力に任せて突き抜ける。

高い機体性能とパイロットとしてのシンの技能で、前後で挟み込まれビームを撃たれながらも、被弾する事なく敵艦艇に取り付いた。

 

「はぁぁぁッ!!」

 

全長を超える長さのアロンダイトで機首を横一閃。

激しい火花を飛ばしながら、モビルスーツによる一撃で艦艇を機能不全に追い込む。

そして大型ビームランチャーを素早く展開し、更にトリガーを引く。

高エネルギービームは艦艇を貫通し、巨大な爆発が発生する。

 

「もう少しでコロニーに!!」

 

『未確認の機体が接近してます!! 早い!? シン、気を付けて!!』

 

「未確認の機影!? 反応は2機、アレは……」

 

///

 

レクイエムの発射はいよいよ秒読み態勢に入る。

ほくそ笑むジブリールは今か今かと発射ボタンを押す瞬間を待って居た。

 

「これでオーブの忌々しい小娘にも一泡吹かせられる。そして次はメサイアだ。私はアズラエルのような小僧とは違う。今度こそ……コーディネーターを世界から抹殺する!!」

 

「エネルギー充填、完了しました」

 

「デュランダル!! 奏でてやる、貴様へのレクイエムをな!!」

 

ジブリールは今まさに発射ボタンへ指を伸ばしたその瞬間、通信士から慌てて報告が上がる。

 

「し、司令!! 3番コロニーが!?」

 

「どうした? もう発射準備は整ったのだぞ」

 

「それが……3番コロニーの機能が停止しました!!」

 

「そんな馬鹿な!! ミネルバもモビルスーツも接触出来る距離ではない筈だ!!」

 

「所属不明の機体が2機現れました。防衛部隊は壊滅状態です」

 

「すぐに状況を調べろ!! ここまで来て……」

 

///

 

どの機体よりも早く駆け抜ける白いモビルスーツ。

デスティニーが戦う戦闘領域に侵入したかと思うと、両手に握ったビームライフルとサイドスカートのレールガン、背部の翼に設置されたドラグーンを展開させる。

コクピットの球体型立体表示パネルが展開し、眼前に広がる敵機を1度にロックした。

 

「ターゲットロック、マルチロック。こんなモノはもう、必要ないんだ!!」

 

一斉に発射されるビーム。

正確な射撃は機体の武装とメインカメラなど、パイロットを殺さないようにして機能不全にする。

その中でもデスティニーだけはシールドを構えて攻撃を防ぐが、耐え切る事が出来ずに爆発し破壊されてしまう。

発射されたビームの先、シンの赤い瞳は目の前に突然現れた機体に釘付けだった。

 

「アレは……あの機体は……」

 

白い機体とは対称的に、もう1機現れた赤い機体は巨大補助兵装ミーティアを装備して廃棄コロニーに接触すると、モビルスーツの腕で操作出来るウェポンアームから巨大なビームサーベルを発生させコロニーを破壊して行く。

元々が廃棄されて居た建造物。

筒状だったコロニーは瞬く間に原型を崩し、発射されたガンマ線を屈折させる事は出来なくなってしまう。

 

「間に合った。でもアレはデータにない。ザフトの新型なのか?」

 

「デスティニー、パイロットはシンか」

 

突如現れた未確認機体。

それはシンの因縁の相手でもあり、裏切りの相手でもある。

 

「フリーダムとジャスティス!! 貴様らがぁぁぁ!!」




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