機動戦士ガンダムSEED Destiny 凍て付く翼   作:K-15

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第24話 雷光の夜

ミネルバ、そしてジブラルタル基地全域に鳴る警告音。

アスランの脱走により動ける兵は緊急事態に騒いで居るが、薄暗い営倉の中に居るヒイロは慌てる事もなくただジッとして居た。

そんな中で通路に繋がる扉が開放され強い光りが差し込む。

素早く視線だけを向けた先に居たのは、トレーに乗せられた食事を運ぶメイリンの姿。

彼女はそのまま檻の前にまで来ると床下に作られたわずかな隙間からトレーを中に入れる。

 

「ヒイロ、ご飯持って来たよ」

 

「そうか……」

 

「脱走者が出たんだって、お姉ちゃんも急いで走ってったよ。もうミネルバも基地も大騒ぎ。みんなで血眼になって探してる。でも逃げ出すなんて誰がしたんだろ? こんな事してもすぐに捕まっちゃうのに」

 

何も語らないヒイロはトレーを受け取り、置かれて居るパンを掴みひと口頬張る。

 

「だからって係の人まで行く事ないのにね。たまたま食堂でご飯食べてたら全員居なくなっちゃって。私も行くか迷ったけど、基地総出で探してるって聞いたからコッチに来ちゃった」

 

メイリンが話してる最中もヒイロは目すら合わせず黙々と食事を取る。

 

「でもまた営倉入りだなんて。やっぱり艦長、あの機体の事許してくれなかったの?」

 

「あぁ、そうだ」

 

「ヴィーノも言ってたけど、あの機体は何なの? 装甲が普通のモビルスーツとは違うって。でもそれを調べるだけの機材がないからミネルバではわからないって言ってた。ヒイロ、もしかして連合軍から……」

 

疑惑の眼差しを向けるメイリンに、ヒイロは初めて口を開く。

それでも、言える情報は極僅かだ。

 

「あの機体は連合のモノでもザフトのモノでもない」

 

「だったらどうしたの?」

 

「俺は譲って貰っただけだ」

 

「譲るって、モビルスーツだよ? 普通そんなの貰えないよ?」

 

「同じ事を2度言うつもりはない。俺はこれ以上の事は知らない」

 

「ヒイロ……」

 

だんまりを決め込むヒイロにメイリンはもう追求出来ない。

静かで薄暗い営倉では咀嚼する微かな音だけしか聞こえる。

暫く食べ続けるヒイロを眺めるメイリン、するとようやく向こうから口を開き話題を出す。

 

「ザフトは大規模作戦に打って出るか。アイツの言うようにロゴスを倒せば、この戦争は終わる」

 

「あの放送があってから各地で暴動が起きてるって。リストに上がってた人達が次々に捕まって、それでも逃げたメンバーがヘブンズベースに立て籠こもってる。でもあそこも大きな基地だから、急がないとどこかに逃げられちゃう」

 

「逃げるとしたら宇宙だ。地続きの地球では逃げる場所も限られる」

 

「だから絶対に失敗出来ないんでしょ。それなのに脱走者だなんて……」

 

「連合も戦力を強化して居る。またあの時のモビルアーマーが投入される可能性もある。そうなれば苦戦は免れない。だが、仮に上手く行って戦争が終わったとしても平和になるとは限らない」

 

「どう言う事? その為に議長はあそこまでしたのに。ならどうしたら世界は平和になると思うの?」

 

メイリンもギルバードの放送を聞いた1人であり、彼の言葉に感化されそれ以外に平和になる方法はないと信じて居る。

異論を唱えるヒイロは、過去の経験からプラントの未来を考えた。

 

「ロゴスと連合を倒す。その次はザフトだ」

 

「ザフトって、味方なのにどうして!?」

 

「この世にモビルスーツがある限り世界は平和にはならない。兵器がある限り、また俺達のような兵士が必要となって来る」

 

「だったらモビルスーツを失くすだけでザフトを倒す必要は無いんじゃない?」

 

「平和に必要なのは主義や主張ではなく平和を望む心だ。それが実現出来ればザフトは必要ない。この戦争が終わった後の事、少しは考えておけ」

 

ヒイロの言う通り、デュランダルは戦争後の統治をどうするのかを一切言葉にしてない。

けれども今の目標はロゴスを撃つ事であり、その後の事は誰にもわかる筈がなかった。

言われてメイリンはプラントで過ごす両親の事を思い出す。

 

///

 

警告音が響き渡る中で、デスティニーの調整作業を進めて居たシンはコクピットに乗り込んだ。

コンソールパネルに指を伸ばしOSを起動させる。

バッテリー電力を供給させ、司令部に通信を繋げた。

 

「こちらミネルバ隊のシン・アスカです。何があったのですか?」

 

『脱走者だ。今居場所を突き止めてる』

 

『脱走だって!? こんな時に!! それで、誰が逃げ出したのですか?」

 

怒りをあらわにするシン。

裏切り者をこのまま逃がすつもりはなく、許すつもりもない。

司令部に聞き返すが、突然他の通信が割り込んで来る。

繋げると戦闘画面に『SOUND ONLY』の文字が現れ、レイの声が聞こえて来た。

 

『シン、聞こえるな?』

 

「レイ、どうした? 脱走者が――」

 

『その脱走者はアスランだ!!』

 

声を上げるレイにシンは息を呑む。

考えは同調出来なかったがまさか敵になるなどとは想像出来ない。

自分達を裏切った事に怒りがこみ上げるシン、は操縦桿を強く握り締め歯を食いしばる。

 

『俺は地上から奴を追い掛ける。シンはもしもの為にモビルスーツの準備を』

 

「わかった。デスティニーを使う」

 

『頼む』

 

端的に言うレイは通信を切る。

シンも体にシートベルトを通すとヴァリアブルフェイズシフト装甲を展開させた。

灰色だった装甲がトリコロールカラーに変わり、ツインアイに光が灯る。

その瞳からは赤い血の涙が流れてるかのよう。

 

「司令部へ、ハッチを開放してくれ」

 

装甲の至る所に付けられて居たケーブルがカットされ、ゆっくり歩き出すデスティニーは開放されたハッチから格納庫を出る。

外は夜の闇に覆われ、雷光と雨が吹き荒れて居た。

 

『こちらB-19区画。脱走者を発見した。ゾノを強奪、海から逃げるつもりだ。至急、応援を要請する』

 

「レーダー確認、そう遠くないな。武器は……」

 

初めての機体に操作がまだ完璧ではない。

マニュアルを確認し、背部にマウントされた大型ビームソード、アロンダイトを選択しマニピュレーターを伸ばす。

グリップを掴み前に構えるデスティニー。

折り畳まれた刀身が展開され、全長を上回る刀身があらわになる。

シンはペダルを踏み込みメインスラスターを吹かし、赤い翼を広げデスティニーを空に飛ばす。

大空にはばたくデスティニーは海へ逃げようとするゾノを視認した。

 

「見つけた、アイツだな!!」

 

敵を見つけてからの行動は早かった。

加速する機体は雨を振り払い、空気を斬り裂くように突き進みゾノの頭上を取る。

アロンダイトを両手で握り大きく振り上げ、急降下と同時に振り下ろす。

 

「はあああァァァッ!!」

 

鋭い切っ先は空気を裂き、エネルギー刃は触れるモノ全てを焼く。

だがそれも、ゾノはスラスターを駆使して前方に飛び付くようにして何とか回避する。

頭部に付けられて居た白いアンテナは半分に切断された。

コクピットに座るアスランは、見た事のない新型機に舌を巻く。

 

「ヘブンズベース攻略用に開発された新型か。ともかく今は、海に逃げるしかない」

 

アスランにはこの機体で海に逃げる他選択肢がない。

何とか外を目指すが、目の前にはデスティニーが立ち塞がる。

 

「くっ!? もう少しの所で」

 

「抵抗せずに投降しろ!! もう逃げられないぞ!!」

 

「その声は……シンなのか!?」

 

外部音声から聞こえて来るのは一緒に戦って来た仲間のシンの声。

相手であるシンにもその声は届いて居た。

 

「アスラン!? どうしてアンタがこんな所に居るんだ!!」

 

「止めろシン!! 俺はもうここには居られない。議長の言葉には従えない!!」

 

「なに!?」

 

「俺はもうオーブとは戦わない。アークエンジェルともだ。本当の敵が誰なのかがわかった」

 

「本当の敵だって……」

 

「俺はザフトには居られない。お前だって、オーブとは戦いたくない筈だ。ロゴスにはオーブの政治家も関与して居る。また戦うかもしれないんだぞ」

 

その言葉にシンは息を呑み、そしてトダカに言われた言葉を思い出す。

 

(認めなくてはならない。オーブの理念はこの時代に必要なくなったのだ。だからシン君、時代を受け入れるんだ。強く--)

 

強く胸に刻まれた言葉。

彼の最後の声は今のシンを強く奮い立たせる。

怒りではなく、確固たる信念で。

 

「俺は自分の意思で戦って来た。またオーブと戦う事になっても、それが平和へと繋がるのなら誰だろうと戦う!! アンタとだって!!」

 

「くっ!!」

 

海へ逃げようとするアスランのゾノはアスファルトの上からスラスターを全開にして滑るように突き進む。

装甲と擦れ合い飛び散る火花は濡れた路面に消える。

足元へ突き進んで来るゾノに、シンは反射的にメインスラスターを吹かし飛び上がった。

加速し突き進むゾノは反転し視界を確保すると、両腕に内蔵されたビーム砲をデスティニーに向ける。

トリガーが引かれ、細かなビームが連続して発射されるが、左腕のシールドに防がれてしまう。

 

「アスラン。アンタが敵になるのなら、俺は撃つ!!」

 

戦いながら思い出すのは、ローエングリンゲート攻略作戦後に言われたアスランの言葉。

初めて乗る最新鋭機を動かしながらも、シンの頭の中にはその時の記憶が鮮明に蘇る。

 

(はい。でも1つだけ聞かせて下さい。俺がした事は本当に間違いだったんですか?)

 

(命令違反、規則として見たらキミの行動は間違ってた。事は政治にも関与してる。軽率な行動と言わざるを得ない。けれどもキミは言った、誰かを助けたいと。助ける為にやったと。その感情は絶対に忘れてはダメだ)

 

シールドを構えビームを防ぎながら加速するデスティニー。

最新鋭のデスティニーの機動力を前に、水陸両用のゾノでは相手にならず簡単に追い付かれてしまう。

ビームの中を掻い潜りアロンダイトで横一閃。

一瞬にして溶解する装甲。

ちぎれ飛ぶゾノの右腕は駐車されて居たエリカの真上に落下しボディーを押し潰す。

それでもまだスラスターを全開にしてアスファルトの上を滑るように移動する。

逃すまいとシンは機体を加速させ、右マニピュレーターをズングリしたゾノの頭部へ伸ばした。

 

「もう迷いはない!! プラントの平和の為に、俺は戦う!!」

 

「シン!! 議長は――」

 

裏切ったアスランの言葉がシンに届く事はない。

伸ばされたマニピュレーターは、残されたゾノの大型クローを掴んだ。

ビーム砲の銃口をアスランはデスティニーに向けようとするが、マニピュレーターに内蔵されたむき出しのビームジェネレーターから光りが発生し、ゾノの左腕を吹き飛ばす。

 

「ぐぅぅぅっ!! だが退路は見えた!!」

 

損傷するゾノにはもう満足な戦闘能力は備わってないが、損傷による爆発をも利用してアスランは機体を動かす。

残って居るスラスター出力を全開にし、装甲を擦り付けながら滑る先には、小型船舶の港がある。

ボロボロになりながらも、ゾノは海中へと逃げこんだ。

レーダーにも探知されず、真夜中の海ともなれば視認も出来ない。

デスティニーと言えども水中での動きは汎用機と大差がなくなってしまい、損傷してるゾノに追い付く事は出来ず、雨が吹き荒れる中でシンはずっと眺めて居た。

 

「アスラン……コレが俺の導き出した答えだ」

 

///

 

嵐は過ぎ、翌日にはデュランダルからタリアにアスランが脱走したと伝えられた。

原因は未だ不明だが軍として彼を許すわけにはいかず、アスランはザフトから除名される。

突然の事で混乱するクルーも居るが、そんな事を言って居る時間はない。

デュランダルはジブラルタル基地の戦力を集結させ、ロゴスの逃げ込んだヘブンスベースの攻略作戦を言い渡す。

けれどもミネルバはこの作戦には参加せず、マスドライバーで宇宙に上がる準備を進めて居た。

艦のモビルスーツデッキには2機の新型が運び込まれ、ハンガーに固定された状態で最終調整に入る。

デスティニーのパイロットはシン、レジェンドのパイロットはアスランの代わりにレイが任命された。

残るインパルスはルナマリアが搭乗する事となり、ヒイロは営倉に入れられたまま。

3人はデッキに集まり、今後の事に付いて話し合った。

 

「俺達はこの作戦に参加出来ないのか。ロゴスを撃てるかもしれないのに」

 

「シン、これも作戦の内だ。もしも逃げられた時の事を想定して宇宙にも部隊は必要だ。地上は気にせずとも他の部隊がやってくれる。今は目の前の事に集中するんだ」

 

「わかってる。この戦いでロゴスを撃てれば、世界から戦争は失くなるんだ」

 

「あぁ。この戦いが終われば、議長が導いて下さるだろう」

 

刻一刻と時間が過ぎる中で、ルナマリアは窓から外の様子を見た。

準備された100を超えるモビルスーツや艦隊を前にして、あまりの迫力に息を呑む。

 

「凄い!! これじゃ制圧されるのも時間の問題ね」

「だが向こうも戦力を整えてる筈だ。一筋縄では行かない。あの時のモビルアーマー、デストロイが配備されてる可能性もある」

 

「デストロイ……そう言えばシン、あの子はどうなったの?」

 

あの子、ステラ・ルーシェはミネルバに救助され医務室で眠って居る。

ネオが用意したデータのお陰で治療はスムーズに進んで居るが、それでも数日で治るようなモノではない。

今もまだ、呼吸器を付けた状態のまま動けないで居る。

 

「ステラはもう大丈夫。すぐには無理でも、体は確実に良くなってる。時期に動ける日も来るって先生は言ってた」

 

「そう。ロゴスを倒せは、ステラみたいな子も居なくなるよね? その為に戦うのは、充分な理由になると思う」

 

「こんな事は繰り返えさせちゃダメなんだ。絶対に」

 

敵を倒し、戦闘を失くし、世界に平和を呼び戻す。

3人は決意を新たにして宇宙へと上がる。

 

///

 

ジブラルタル基地から無事に逃げたアスランは、クライン派のメンバーに保護され海底基地で修理をしているアークエンジェルに行く。

アークエンジェルは今までの戦闘のダメージの蓄積と、フリーダムが動けない状態では戦力が圧倒的に下がる為に動けないで居た。

モビルスーツデッキには破損したままの状態でハンガーに固定されたままのフリーダムと、逃げ出す時に使用したゾノ、そしてストライクしか配備されてない。

 

「だいぶ酷くやられているな」

 

アークエンジェルの現状を把握するアスランはデッキで機体を眺めて居ると、奥から艦長であるマリューがやって来た。

久しぶりに見るアークエンジェルのクルーを見てアスランは安堵する。

 

「ラミアス艦長!! お久しぶりです」

 

「アスランこそ久しぶりね。でも急にどうしてこんな事を?」

 

「このまま議長の指示に従うのは危険だと感じました。確かに彼の言う事は正しい様に聞こえますが、その為に邪魔となるモノは強引にねじ伏せています。このままではまたオーブと戦う事になる。それが嫌で……」

 

「そう、わかった。でも見ての通り、今はどうする事も出来ない。デュランダル議長の宣言で世界の動きも気になるし、戦力が整ったとしても迂闊には出ては行けない」

 

「わかってます。だから出来る事から始めて行きます」

 

「なら医務室に行ってくれる?」

 

「医務室……ですか?」

 

素っ頓狂な声を上げるアスランに、マリューは意地悪く笑みを浮かべるだけ。

それ以上は何も言わずに、アスランは黙って医務室に向かうしかなかった。

久しぶりに歩くアークエンジェルの内部はどこも変わっておらず、アスランは懐かしさを噛み締める。

向かった先にある医務室の扉、壁に設置されたパネルを触りエアロックを解除すると中に足を踏み入れた。

中に居たのは親友であるキラの姿。

 

「ムウさん。水、持って来ましたよ」

 

「何回言えば分かるんだ? 俺はネオ・ロアノークだっつてんだろ!!」

 

「今はまだ思い出せてないだけです。暫くすれば元に――」

 

エアロックの音に言葉を切り振り返るキラ。

視線を合わせる2人は、久しぶりの再開に心から喜んだ。

 

「キラ、数カ月ぶりだな」

 

「アスランも。あの時より、少し痩せたんじゃない?」

 

「いろいろあったからな」

 

皮肉を込めて言うアスランにキラは微笑むだけ。

その様子を傍から見てたネオは、キラが持つ水の入ったチューブを奪い取り喉を潤す。

 

「あっ!?」

 

「フン、お前がさっさと渡さねぇからだよ」

 

アスランはベッドに座る人物を見て息を呑んだ。

それは2年前の大戦で戦死したと思われたムウ・ラ・フラガの姿だから。

驚きに目を見開き、そして早足で彼に駆け寄る。

 

「フラガ大尉、生きて居たのですか!?」

 

「あん、誰だお前? それとな、俺の名前はネオ・ロアノークだ。1回で覚えろよ」

 

「ネオ? 何を言って。アナタは――」

 

驚くアスランだが、そこでキラに肩を掴まれてしまう。

無言で頭を左右に振る彼に、アスランは口を閉じた。

 

「行こう。この事は部屋で説明するから。まだキミの部屋は残したままなんだ。ムウさん、飲み終わったらちゃんと自分で捨てて下さいね」

 

「チッ、わかってるよ。ガキじゃねぇんだぞ」

 

名前を間違われて舌打ちするも、諦めたネオは渋々返事を返す。

キラもそれを確認すると、アスランと一緒に医務室を出た。

通路を歩き向かう先は、昔と変わらない場所に割り振られたアスランの部屋。

エアロックを解除して、2人は部屋の中に入った。

 

「本当に何も変わってないな」

 

「そうだよ。それよりもさっきの事だけど」

 

「あぁ、まさか生きてるとは思わなかった。2年もどうやって……」

 

「あの後にどうなったのかはわからない。けれどもムウさんは記憶を失くして連合軍に入ってた」

 

「連合軍に?」

 

「うん、記憶が失くなっても操縦の感覚は残ってるのかも。それでパイロットを。今は自分の事をネオ・ロアノークだと思ってる」

 

「そうか、そんな事が」

 

ようやく現状を把握出来たアスラン。

生きて居た事を喜ぶも記憶の事はどうしようもなく、時間が解決するのを待つしかない。

アスランは動けないアークエンジェルでこれからどうするのかをキラに聞く。

 

「だいたいの事は理解した。フリーダムは大破、いくらお前でも旧型のストライクで戦うのは無理がある。これからどうする?」

 

「ラクスが宇宙に上がって新しい機体を準備してくれて居る。アスラン、キミのもね。でもロールアウトするのがいつになるかまでは僕にもわからない。ラクスも急いでくれてるけど」

 

「ザフトと言う強大な戦力を持っている議長が連合とロゴスを撃った後にどうするのか。強大な権力や力は人を狂わせる、議長もその1人なのかもしれない」

 

「ザフトはロゴスを撃つと世界に放送したけれど、リストの中にはオーブの政治家も居た。このままだと、オーブはまた戦闘に巻き込まれるかもしれない。悔しいけどどうする事も出来ない。カガリを信じるしか」

 

「カガリ……」

 

部屋の雰囲気が重くなり、それに気が付いたキラはなんとか場を和ませようと周囲に視線を巡らす。

アスランの部屋にはゾノのコクピットに入ってたカバンが持ち込まれており、キラはその中身が気になった。

部屋の隅に置かれたカバンに指を指す。

 

「ねぇ、アスラン。そのカバン何が入ってるの?」

 

「あぁ、たいした物なんかじゃない。ここに来る前に使った銃が入ってるだけだ。ロックは掛かってると思うが注意してくれ」

 

言うとアスランはカバンに近寄り中を開け武器を取り出した。

使用した銃、そのマガジン。

手榴弾も数個入って居た。

取り出した武器を床に並べていくが、その中で1つだけ異彩を放つ物が入って居る。

 

「これは……」

 

「クマの人形? どうしてこんなのが?」

 

「そもそも俺のカバンではないからな。誰のかもわからない部屋に入ったら置いてあったんだ」

 

無骨な武器ばかりが並ぶ中で、手触りも柔らかい人形がアスランの手に。

疑問に感じるアスランだが、あの時は必死でカバンの中に人形が入ってる意味は考えてもわからない。

部屋のインテリアにするつもりもなくどうするか悩んでると、キラはその人形を手に取った。

 

「ラクスはこうゆうの好きだろうから。貰っても良いかな?」

 

「あぁ、彼女なら喜ぶだろ」

 

「ありがとう、大事にするよ」

 

一時的ではあるが訪れる安息の時間。

それでも今、世界は激動の時代の流れに飲み込まれて居た。




おかげさまで一時ではありますがランキング一桁に入る事が出来ました。
これからも見てくれると嬉しいです。

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