機動戦士ガンダムSEED Destiny 凍て付く翼   作:K-15

22 / 33
第22話 真の敵

ウイングゼロのコクピットシートに座るアスランは操縦桿を握り、シミュレーターを起動させ戦闘データを取る。

多少の違いはあるが操作性は従来の機体とそこまで変化はなく、データ上で連合軍のモビルスーツ達と戦闘を繰り広げた。

 

(凄い機体性能だ。パワー、スピード、運動性能、どれも最高水準だ。ジャスティスやセイバーよりも遥かに強い。これならキラのフリーダムに勝てたのも頷ける)

 

両翼を展開しての大型バーニアによる加速は他のどんな機体の追随も許さない。

胸部のマシンキャノンを展開しトリガーを引けば、シールドを構えて居るウィンダムを数秒で粉砕した。

フェイズシフト装甲の備わってない機体では、強固なモビルアーマーでもない限り防ぐ事は出来ない。

 

(武装は少ないがポテンシャルが良い。今までに乗ったどんな機体とも違う。この機体なら俺もキラに……)

 

右肩に収納されたビームサーベルを引き抜き瞬時に加速。

目の前のウィンダムに袈裟斬りし右肩から切断するとそのまま横一閃。

更に振り返るど同時に左腕のシールドで相手のビームサーベルを防ぎ、右手に握るビームサーベルをコクピットに突き立てた。

瞬く間に2機のモビルスーツを撃破し、倒された機体は視界から消える。

 

(このビーム砲を使わなくても、量産機相手ならどれだけの数が居ても勝てる。次は?)

 

上空に現れる新たな機影、それは2年前のあの光景。

対艦刀を両手で振り上げるソードストライクがアスランに迫る。

 

(ストライクだと!? パイロットはキラなのか?)

 

振り下ろされる対艦刀をアスランはシールドで防ぐ。

艦艇やモビルアーマーをも破壊する事を想定して作られた武器だが、ウイングゼロは片腕で難なくソレを受け止める。

マシンキャノンを展開しトリガーを引き弾丸が連射されるが、フェイズシフト装甲のストライクにダメージはない。

それでも右腕の小型シールドで防ぎながら距離を取る。

 

(あの時のアイツは戦闘経験は俺達よりも浅かった。それなのに、優位な立場にありながら負けた。そのせいでニコルが……)

 

(アスラン、下がって!!)

 

声が聞こえる、あの時と同じ声。

右腕を失い、左手にランサーダートを握りソードストライクに走る。

それは未だに鮮明に残る記憶と全く同じ光景。

 

(ニコル!? 止めろ、ソイツは!!)

 

身を引くソードストライクの対艦刀のレーザー刃がコクピットに触れる。

だがブリッツの動きは止まらずに、そのままランサーダートを左脚部に突き立て組み付いた。

 

(今です!! 僕ごとストライクを!!)

 

(そんな!? だが、撃つなら今しか……)

 

左手のバスターライフルの銃口をブリッツとソードストライクに向ける。

だがトリガーに掛けた指は鉛が付いたように重く、アスランは2人を撃ち抜く事が出来なかった。

 

(俺の……俺の敵は?)

 

(アスラン、キミがトールを殺した!!)

 

(キラ!! だったら、だったらお前はどうなんだ!! お前だってニコルを殺した!!)

 

いつの間にか視界からブリッツは消えており、目の前にはエールストライクが立ち塞がる。

振り下ろされたビームサーベルはウイングゼロの左腕を切断した。

 

(グッ!! 俺はお前を……お前を!!)

 

アスランもビームサーベルを振り上げるとエールストライクの左腕を斬った。

態勢はそのままに、ビームサーベルを投げ捨てマニピュレーターでエールストライクの頭部を掴むパワー任せに引き上げる。

ツインアイのレンズが割れ、歪む装甲。

激しいスパークを上げながら伸びるケーブルごと頭部を引きちぎる。

 

(これなら!!)

 

(いいや、こう言う手もあるよ)

 

冷たく呟くキラ、エールストライクはウイングゼロに組み付くとコンソールパネルを叩くとハッチを開放してその場から離脱してしまう。

動けなくなるウイングゼロ。

 

(アイツ、まさか!!)

 

その意図に気が付いた時にはもう遅く、自爆装置の発動したエールストライクにウイングゼロは巻き込まれてしまう。

獄炎の炎の中、アスランは本当に死んでしまったような錯覚に陥る。

 

「あ゛あ゛あ゛あああァァァ!! はぁ、はぁ、はぁ!! 生きてる? 今のは何だったんだ? 俺は……」

 

システムに翻弄されるアスラン。

眼前には再び、フリーダムに乗るキラが現れた。

向けられるビームライフルの銃口、けれどもアスランは心の中で懸命に叫ぶ。

 

(違う、違う違う違う!! キラは敵じゃない!! 俺もアイツもただ戦わされて居ただけだ!! 俺の本当の敵はキラじゃない!!)

 

心でそう叫んだ時、自身に襲い来る幻影は彼方へ消えた。

だがコクピットに居る限り、システムはアスランに戦うべき敵を見定めようとさせる。

兵士として訓練を受けた彼でもゼロシステムに打ち勝つ事は難しい。

 

(言葉は信じれませんか? なら、ご自分でご覧になったモノは?)

 

(ラクス!?)

 

(戦場で、久しぶりにお戻りになったプラントで、一体何を見て来たのですか?)

 

(それはキミ達にだって言える事だろ? 2年前の大戦は何だったんだ? 俺達は平和の為に戦った筈なのに、どうしてこんな事をするんだ!!)

 

(信じるモノの為に。アスランが信じるモノは何ですか? 頂いた勲章ですか? それとも、今は亡きお父様の幻影ですか? 信じるモノも、守るべきモノもないと言うのに、どうして戦うのですか?)

 

(キミ達にはあるのか? 信じるモノ、守るべきモノが?)

 

(はい、それがなければキラは再びアナタの敵になるかもしれません。わたくしもそうです)

 

(敵になるのか? ラクスが敵?)

 

悩むアスランにラクスは微笑み掛けるだけ。

以前にも見た光景、アスランは無意識に右手を突き出すと握った銃をラクスに向けた。

でもそれは強がりでしかない。

威嚇のつもりで向けてるだけで本当に撃つつもりはなかった。

けれども震える指はフレームではなくトリガーに掛かっており、力んだ彼は引いてしまう。

閃光が視界に広がる。

 

(ラクス!? ウソだ、こんな……)

 

血に染まるラクスの体。

殺したのは紛れも無く自分自身。

混乱するアスランの元に武装した黒服達が現れた。

これも以前に見た事がある。

 

(アスラン・ザラ、よくぞやってくれました。彼女は国家反逆罪に問われる身。ザフトの障害です)

 

(違う、これは幻覚だ!! ラクスは生きて居る!! 俺は彼女を殺してない!!)

 

叫ぶアスラン。

すると黒服達の姿が霞みと消える。

場面は再び彼女と対面した時へと戻った。

 

(アスラン・ザラ。アナタは何を信じるのですか? 信じるモノがないのに戦うのですか?)

 

(俺はこの戦争を終わらせる為に、プラントの為に!!)

 

(では、わたくし達に手を貸して下さいませんか? キラも一緒です)

 

手を差し伸べるラクス、銃を突き付けるアスランの手は震えて居る。

だが一瞬の躊躇が、彼女の肌を再び血に染めた。

響き渡る銃声。

地面に倒れるラクス。

振り向いた先に居たのはかつての父、パトリック・ザラ。

 

(どうして、何故アナタがココに居る!?)

 

(未だに迷いを振り切れんか。哀れだな)

 

(クッ!? アナタにそんな事を言われる筋合いはない!! 2年前の大戦で、どれだけの人間が巻き込まれたと思って居るんだ!!)

 

(それがコーディネーターの、プラントの未来の為)

 

(戯れ言を!! そんな事では何も変わりはしない!!)

 

アスランの叫びにパトリック・ザラはギルバード・デュランダルに姿を変えた。

 

(ならば私に手を貸して欲しい。その為にキミをザフトに呼び戻したのだ)

 

(議長……)

 

(父上の幻影を振り払いたいのだろう? だったら私の言葉に耳を貸すんだ。プラントの真の平和を勝ち取る為に、敵を撃つんだ)

 

(敵……俺の敵……)

 

(そうだ。私達の真の敵は地球連合軍の裏に潜む闇の商人、ロゴス。そして、戦場をかき乱し新たな動乱を生むアークエンジェルとフリーダム)

 

(キラが……敵?)

 

(私達の前に障害として立ち塞がるなら敵として見るしかない。キミはその為にザフトに居る)

 

デュランダムの言葉が頭に響く。

もうろうとする意識に中で、アスランは1つの答えを導き出す。

 

「議長、キラは敵じゃない!! アナタがキラを撃つと言うのなら、俺はアナタを撃つ!!」

 

アスランはコンソールパネルに指を伸ばしシミュレーターを強制終了させ、機体のエンジンを起動させる。

活動を停止して居たウイングゼロのツインアイとサーチアイが緑に輝き、ハンガーに固定された状態がら強引に動き出す。

鉄の骨組みが軋み、鉄が擦れる激しい音が響き渡る。

傍で別作業をしてたマッドは突然の事に驚き、大声でコクピットのアスランに呼び掛けた。

 

「どうした!! 何があったんだ!!」

 

「俺は倒さなくちゃダメなんだ!! 俺の敵を!!」

 

「マズイぞ、コイツは!? 全員持ち場から離れろ!! 退避しろ!!」

 

他の技術スタッフに呼び掛けながら逃げるマッド。

ウイングゼロによって破壊されたハンガーは重力に引かれて落下し、激しい金属音と衝撃を発生させる。

動き出したモビルスーツ相手に生身の人間では手が付けられず、マッドは壁に設置された内線を取り艦長室のタリアに急いで繋げた。

 

『さっきの音は何事? 事故なの?』

 

「いえ、それが……」

 

『ハッキリ言いなさい!! 緊急事態なら人員をすぐに向かわせます』

 

「隊長さんがいきなり暴れ出したんだ!! ヒイロが持って来た機体のデータを取ってる最中に!!」

 

『どう言う事……アスランが? とにかく人を向かわせます。非戦闘員はその場から退避して!!』

 

「了解だ!!」

 

受話器を戻すマッドはとにかく現場から走った。

動き始めたウイングゼロはカタパルトに繋がるエレベーターに向かって歩き出す。

だがそこに、白いザクが立ち塞がった。

 

「やれ、ルナマリア!!」

 

「行っけェェェ!!」

 

コクピットに座るルナマリアはザクを操縦し、動くウイングゼロへ強引に組み付いた。

マニピュレーターで腕を掴み、動けないように機体を壁に押さえ付ける。

その間にコクピットハッチを開放させ、中からレイが現れた。

 

「そのまま押さえて居るんだ」

 

「わかってる!! でも何秒も保たないかも」

 

ルナマリアは全力で両手の操縦桿を押し込んで居るが、ウイングゼロは簡単にそれを押し返そうとして来る。

更には胸部のマシンキャノンを展開するとアスランは躊躇なくトリガーを引く。

 

「アスラン、ウソでしょ!?」

 

だがマシンキャノンは稼働するも残弾がなく、カタカタと音を立てて回転するだけだった。

 

「弾切れだと? クッ、ならビーム砲で!!」

 

ザクのマニピュレーターに押さえ付けられる左腕を動かすアスラン。

ルナマリアも懸命に操縦桿を押さえ付けたが敵わず、耐久限度を超えたザクの腕は根本から引きちぎられた。

 

「そんな!? 保たないなんて」

 

衝撃に倒れるザク。

レイは密着した距離から離れる前に開放されたままのウイングゼロのコクピットに飛び移った。

背後では倒れたザクの甲高い音が響く。

 

「アスラン、どうしてこの様な事を!!」

 

「敵だ!! デュランダル議長は俺の敵だ!!」

 

「何を言って居る? 気でも狂ったか!!」

 

「議長を倒す事が平和への道だ!! 父の思想をこの世から消す。お前もだ、レイ!! ラウ・ル・クルーゼをこの世界に残して置く訳にはいかない!!」

 

「何!? アスラン、何故知って居る!! 貴様は何を--」

 

コクピットに入り込みアスランを取り押さえようとするレイ。

けれども不意に、頭の中に情報が流れ込んで来る。

思わず動きを止めてしまうレイ。

そして彼も見る、システムが導き出す未来を。

 

(この感覚はなんだ? 俺は何を見てるんだ?)

 

レイにまで干渉するシステムの幻影。

しっかりと開いてる筈の目から見えるのはコクピットに座るアスランではなく、2年前の大戦で敗北したプロヴィデンス。

マスクを付けたラウ・ル・クルーゼの姿。

 

(ラウ!?)

 

(これが定めさ。知りながら突き進んだ道。どの道、私は長くはなかった。最後は自分にまとわりつく忌々しい輪廻を断ち切るくらいしか出来ない。だがそれも失敗に終わったがね)

 

(輪廻……俺を生み出し、そしてヤツへと繋がる遺伝子!!)

 

ラウ・ル・クルーゼが搭乗するプロヴィデンスはフリーダムのビームサーベルにコクピットを貫かれる。

そして発射されるジェネシスのガンマ線により機体は焦土と化す。

 

(それでも!! 力だけが、僕の全てじゃない!!)

 

(違うな、誰もそんな事をわかりはしない。やはり貴様は俺の敵だ!! 輪廻は俺が断ち切る、スーパーコーディネーター、キラ・ヤマト!! そして……)

 

レイが見る先に居るのは青い翼を広げるフリーダムと、寄り添うように立つジャスティスの姿。

 

(アスラン・ザラ!!)

 

レイはコンソールパネルに手を伸ばし、稼働したウイングゼロのエンジンを強制的にストップさせる。

倒れるザクにツインバスターライフルを向けるウイングゼロだが、突如として動きが止まりツインアイの輝きも消えた。

コクピットに座るルナマリアは背中から冷たい汗を流しながらも、ギリギリの所でウイングゼロが止まった事に安堵し、口から大きく息を吐く。

 

「止まった? はぁ、何とかなったわね。あんなの撃たれたらミネルバごと吹っ飛ぶわよ。でもアスラン、どうして……」

 

ルナマリアが見つめる先、ウイングゼロのコクピットの中でアスランは気を失って居た。

レイもまだ意識がハッキリとしないが、シートに座るアスランを担ぎ出しタラップへと出る。

 

「ルナマリア!! 無事か!!」

 

『コッチは何とかね。すぐに降ろすわ』

 

ザクを立ち上がらせ、残った右手をハッチに添える。

マニピュレーターに飛び移ったレイは、少しずつ遠ざかるウイングゼロの姿を睨んだ。

 

(あの機体に積み込まれたシステム……アスランがこうなったのはそれが原因か。そして俺も……)

 

片膝を付くザクはマニピュレーターを床に付けレイとアスランを地上に降ろす。

安全が確保されたのを確認した彼女もコクピットから降り、アスランを抱えるレイの元へ走った。

 

「レイ!! アスランは?」

 

「ひとまずは無事だ。だが医務室へ運んで検査をする必要はあるな」

 

「あのビーム砲、アスランは本気で撃とうとして来た。FAITHにも選ばれた人が裏切っただなんて考えたくないけれど……」

 

「詳しい事はまだわからない。取り敢えず出来る事から始めよう。俺はアスランを連れて行く。ルナマリアは艦長に報告だ。それと、あの機体には絶対に乗るな」

 

「それはわかったけど、どうして?」

 

「上手く言葉では説明出来ない。ともかく、あの機体に無防備に近づくのは危険だ。ヒイロに任せるしかない」

 

言うとレイはその場から離れて行く。

艦長室では事態の収拾を聞いたタリアが受話器を手に持つ。

ヒイロは未だに直立不動のまま、彼女の前に立ち続けて居る。

 

「えぇ、わかりました。調査は中断、指示があるまでは誰も近寄らせないで。彼の処分は追って連絡します」

 

受話器を戻すタリアはヒイロに向き直ると、鋭い視線を向けた。

 

「アナタが持って来た機体、ウイングゼロのデータ収集を行って居たアスランが突然暴れ出したみたい。今は落ち着いたけれど、あのビーム砲を撃たれて居ればこのミネルバは簡単に沈んだでしょうね。何か仕掛けでもあるの?」

 

「言った筈だ、俺は何も知らないと」

 

「ここまで来ても白を切るつもり? アナタがそう言うのならわかりました。艦長権限によりヒイロ・ユイ、アナタに営倉入りを命じます。従わなければ最悪の場合、銃殺刑も有り得る」

 

「了解した」

 

抵抗する事もなく、ヒイロはタリアの命令に従った。

この事件によりウイングゼロに触れる事は整備スタッフでも許されず、タリアの許可があるまでは何人たりとも近づく事すら許されない。

意識を失ったアスランから事情を聞くまでは。

 

///

 

ベルリンの戦いから数時間後、ギルバード・デュランダルはある決断をした。

地球圏、プラント全域の各メディアにジャックし、デュランダルは今起こってる戦いの根源を世界に流す。

無許可によるメディアジャックは許されるモノではなく、その後に多大な責任を要求されるが、それでも彼はソレを選んだ。

設置されたカメラのレンズの前に用意されたデスクに座り、デュランダルは声を上げる。

 

「皆さん、突然の無礼をお許し下さい。私はプラント最高評議会議長、ギルバード・デュランダルです。本来ならこのようなメディアの活用は禁止されております。ですが、このような愚行に打って出ても言いたい事がある。聞いて貰いたい事があるのです。我々プラントと地球連合軍は、現在対立状態にある。また2年前の悲劇が繰り返えされて居ます。ですが戦争と言えどもルールはある。数時間前、地球のベルリンが連合軍の兵器により破壊されました。今から流れる映像がソレです」

 

言うと、放送されて居る映像にはベルリンでデストロイが暴れる映像が映し出される。

あまりに突然の事に民間人は避難する時間もなく、灼熱のビームは建物ごと人々を焼き払った。

鳴り響く怒号、悲鳴、流れる血。

炎は街全体を包み込み、昇る煙は空を黒く染める。

ザフトのモビルスーツが防衛網を貼るも、デストロイの火力の前には無力。

 

「地球と宇宙、住む場所が違えば主義や考えが違うのは当然の事。それにより時には対立してしまう事もあるでしょう。本来ならそうななりたくない、ですが人間はそれ程万能ではない。その時の為に我々は力を、武器を手に取り、兵を、軍を作った。覚悟を持った人間が国の為に戦う。今と言う時代にはまだ必要な犠牲と考えます。ですが、コレはナンセンスだ!! 主義主張の為に関係のない人まで虐殺する事が許される筈がない!!」

 

声を荒げるデュランダル。

ミネルバに居るシンは、自室でこの放送を見て居た。

 

「地球連合軍のこの巨大兵器は、数時間後に大勢の犠牲者を出しながらも止める事が出来ました。勧告もなしに攻撃して来た地球連合、そして攻撃された場所は地球の都市です。何故今、我々は戦うのか? それは人類が地球から飛び立つ前の時のような、領土や権力争いとは違う。2年前の大戦、ナチュラルとコーディネーターとの違いでもない。我々プラントは、迫り来る火の粉から身を守りたいだけなのです。では戦いはいつまで続くのか? 地球連合の主張はザフトに占領された地域の開放と言ってますが、このベルリンの惨劇を見てもそう言えるでしょうか? 地球に住む、善良な一般市民を街ごと焼き払う事が、彼らの言う主張として正しいのでしょうか?」

 

映像は切り替わり、画面の向こうに映るのは星の髪飾りを付けたラクス・クラインの姿。

 

「確かに、この戦争の火種は私達コーディネーターの一部の過激派が引き起こした惨劇です。工業用プラント、ユニウスセブンの落下。幸いにも地球に落ちる事はありませんでしたが、この事件によりコーディネーターやプラントに不信感を抱く人も居るでしょう。これを事前に止められなかった事が、新たなる戦いの引き金になってしまいまったのかもしれません。ですが、今のような戦争を繰り返した先に何がるのでしょうか? 多くの血と涙が流される戦争で、一体何が残るのでしょうか? この戦いからは何も産まれない、残りません。それは2年前の大戦で、わたくし達は充分に理解した筈です。憎しみの感情を断ち切り、涙を拭い前を歩く。それが平和への第1歩だと思います。わたくし達にはそれが出来ます。それが、皆が信じる平和へと繋がる事を信じます。光りある、希望溢れる未来に向かって、共に歩んで行きましょう」

 

ラクスの言葉は絶大だった。

透き通る声から来るその言葉は人々の心を癒やし、そして希望を与える。

プラントでカリスマ的存在でもあり人望もある彼女だから出来た事。

場面は再びデュランダルへと切り替わる。

 

「ですが我々の言葉には耳を貸さず、どうあっても戦争を続けようと考えるモノが居る。コーディネーターは間違った存在だと忌み嫌うブルーコスモスも、彼らが作り上げた存在。地球連合、ブル―コスモス、その背後に隠れ戦いを牛耳り、戦争を商業として操って居る存在。利益の為に世界を戦いに巻き込もうとする存在。その組織の名はロゴス!! 彼らが居る限り、この戦争は終わらない。平和を望む我々の真の敵!!」

 

デュランダルの宣言と同時に画面にはロゴスに関係する人物達の顔写真リストが公開された。

それは地球連合にもプラントにも、世界のあらゆる国や地域で潜んで居る。

デュランダルは同じプラントでも身を切る覚悟だ。

 

「我々プラントが戦うべき相手は地球連合ではない。ロゴスこそ滅ぼさんと戦う事を、私はここに宣言します!!」

 

地球圏全土、プラント全土に流されたこの映像により、時代の影に隠れて居たロゴスの存在が浮き彫りになる。

ロゴスの一員であるロード・ジブリールは潜んで居た地球から逃げるべくいち早く動き出す。




舞台はもう少しで宇宙、物語もいよいよ架橋です。
システムにより未来を見たアスランとレイはどう動くのか?
そして営倉に入れられるヒイロ。
次回をお楽しみ下さい。

この作品とは違いますが、予定とは違う新しい企画を考えてます。
読者が少しでも参加出来るモノを考えてます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。