機動戦士ガンダムSEED Destiny 凍て付く翼   作:K-15

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第21話 ゼロ対フリーダム

レーダーに反応する機影に識別コードは認識出来ない。

けれどもメインカメラを通して見るあの機体をシンは見間違える事はなかった。

トリコロールカラーの装甲、背部に背負う翼と大型バーニア。

そして今さっき発射したユニウスセブンを消し飛ばし、陽電子リフレクターを貫ける強力なビーム砲。

あまりの光景に操縦するのも忘れて見とれて居ると、謎の機体から通信が繋がって来た。

シンはゆっくりとコンソールパネルに指を伸ばし、敵か味方かもわからぬ相手と接触を図る。

 

『インパルス、聞こえるな?』

 

「その声!? ヒイロなのか!!」

 

『話をして居る時間はない。目標のモビルアーマーを破壊する。邪魔になる、離れて居ろ』

 

ウイングゼロは上空から再びデストロイに狙いを定め、ツインバスターライフルの銃口をその頭部に向けた。

ツインバスターライフルの出力なら陽電子リフレクターを容易に貫き、強固だったデストロイに大ダメージを与える事も出来る。

それでも一撃で仕留められなかったのはバリアにより射線がズレてしまったから。

幾らヒイロといえども初めての機体や武装には反応や対応が遅れてしまう。

照準を合わせ、第1射の時の誤差も含め再び操縦桿のトリガーに指を掛ける。

だがシンはデストロイを破壊する事を良しとはせず、慌てて通信越しに叫んだ。

 

「待って来れ!! あの機体にはステラが乗せられてるんだ!! 本心じゃない!!」

 

『次に動き始めるまで時間がない。どうするつもりだ?』

 

「ステラは俺が止める!! 俺はただ助けたいだけなんだ!!」

 

シンの言葉は答えになって居ない。

それでもヒイロはその言葉を飲み込み、デストロイをツインバスターライフルの照準から外した。

 

『わかった。モビルアーマーはお前に任せる』

 

「ヒイロ……」

 

『だが余裕がある訳ではない。フリーダムは俺が何とかする』

 

言うと背中のバーニアから青白い炎を噴射してウイングゼロは急降下して行く。

進む先はフリーダム。

ウイングゼロの動きはシンだけでなくネオも捉えて居る。

突然の戦闘介入、けれども初めて見る機体の戦闘能力はあの一撃だけでも充分に把握出来た。

 

「フリーダムの次は……今度はなんだ? ややこしい事ばかり起きやがって!!j

 

操縦桿を握るネオは叫ぶ。

現状を把握出来てない為、インパルス以外の機体は敵として認識するしかない。

フリーダムがデストロイに接近して居る状態でシンは動きにくいと判断し、ペダルを踏み込み背後から加速を掛けて接近する。

左手でビームサーベルを握り、空中で静止するフリーダムに不意打ちを掛けた。

 

「悪く思うなよ!!」

 

「ッ!?」

 

振り下ろされたビームサーベル。

だがキラは卓越した反射神経だけでコレに反応しシールドで防いだ。

 

「そう簡単にはいかしてくれないか。ボウズ、早くしろ!!」

 

「やっぱりこの動きは!!」

 

トリガーを引くキラは頭部バルカンを発射し、ウィンダムのメインカメラをズタズタに破壊する。

レンズが割れ、装甲には穴が開きバラバラになった内部パーツがスパークを起こす。

思う所があったキラは機体を後ろに一回転させる事でウィンダムのビームサーベルが空を斬る。

そして回転が終わりかけの所で加速を掛け、通り過ぎざまにウィンダムの両脚部、膝から先を切断した。

姿勢を制御出来なくなるウィンダムに、キラはダメ押しでバックパックを蹴る。

 

「ぐあああっ!!」

 

損傷したネオのウィンダムは何も出来ず、重力に引かれて落ちてしまう。

衝撃を吸収するモノなどなく、落下による激しい衝撃がコクピットを揺らす。

シートベルトは制服の上から肌に食い込みながらも、ネオがシートの上から投げ出されるのを止めてくれる。

だが手は操縦桿から離れてしまい、意識も失ってしまう。

完全に戦闘不能になったウィンダムを上空から見下ろすキラは、コンソールパネルに指を伸ばしアークエンジェルに繋げる。

 

「マリューさん、ウィンダムの回収を」

 

『それは構わないけれど、今は連合のモビルアーマーを』

 

「わかってます。でも、感じたんです。あの機体のパイロット、もしかしたらムウさんかも」

 

『なんですって!?』

 

「ソレを確かめたいんです。だから回収を」

 

キラの言葉を聞いてマリューは目を大きく開けたまま、思わず固まってしまう。

2年前の大戦、アークエンジェルを守る為に自らを犠牲にしたムウ・ラ・フラガ。

戦闘が終結した後に大破したストライクを回収するもパイロットは乗っておらず、捜索するも広い宇宙でたった1人の人間を見つける事など困難を極め、彼はそのまま戦死扱いにされた。

戦いの中に生きる兵士には常に死が付き纏う。

その事をわかっては居るつもりだったが、マリューは愛した男が死んでしまった事に涙を流した。

そんな彼が生きて居たと聞いて、心の中から感情が溢れ出す。

 

「ムウが……生きて……」

 

「艦長、俺が行こう」

 

「バルトフェルドさん……」

 

「まだ戦闘は終わってない。新型とインパルスの動きも気になる。俺はストライクで出る」

 

言うとバルトフェルドはブリッジから出て行ってしまう。

デストロイは未だ活動を続けており、ベルリンの炎は広がるばかり。

 

///

 

片腕を失いながらも立ち上がるデストロイ。

再び攻撃を始めるステラにシンは懸命に呼びかけて居た。

けれどもステラは泣き叫ぶだけで、シンの声は届かない。

 

「ステラ、俺だ!! シン・アスカだ!!」

 

「うわぁぁぁーーーーー!!」

 

デストロイは胸部の3連装大口径ビーム砲をインパルスに放つが、メインスラスターを吹かし機体を上昇させるシンはこれを避けた。

だが反撃は一切せず、それどころか構えを取ることもなくデストロイに近づいて行く。

ウィンダムを退けたキラはインパルスの正気とは思えない行動に驚く。

「何をしてるんだインパルスは!? 死にたいのか!!」

 

キラはインパルスを守ろうとフリーダムで前に出ようとしたが、目の前から高速で接近する機体にレーダーが反応する。

 

「なに?」

「邪魔はさせない」

右肩からビームサーベルを展開し右手に握ったウイングゼロがフリーダムに襲い掛かる。

自らに攻撃して来た事で相手を敵と認識するキラ。

インパルスとデストロイは気になるがこのままやられるわけにもいかず、ウイングゼロに照準を合わしビームライフルのトリガーを引き、続けて背部のバラエーナを発射した。

正確で素早い攻撃は普通のパイロットなら避ける事は難しい。

ヒイロはペダルを踏み込み大型バーニアの強大な推進力を駆使してフリーダムの攻撃を回避した。

 

「避けた!?」

「今までの戦闘でお前の動きは読んで居る」

「どうして邪魔するんだ!!」

 

「お前は俺の敵だ!!」

 

ウイングゼロは握ったビームサーベルで横一閃、フリーダムはこれをシールドで受け止めた。

ラミネート装甲で作られたシールドは強固で、ビーム攻撃を受けても簡単に壊れる事はない。

それが相手のビームサーベルはジワジワとシールドを溶解させて行く。

 

「そんな!? シールドが!?」

 

普通では考えられないビームサーベルの出力に脅威を感じるキラは、ウイングゼロわき腹に蹴りを居れ距離を離す。

そしてその隙にクスィフィアスレールガンを撃つ。

高速で発射されるレールガンの弾は確かに命中するが、その機体には目立った損傷は見当たらない。

 

「実弾が通らない。フェイズシフト装甲か」

 

「障害は取り除く」

 

「くっ!! どうして、アナタはこのまま街が破壊されても良いんですか?」

 

「敵と話す舌は持たん。俺の前に立ち塞がるなら、お前は敵だ」

 

「今の僕達が戦う理由なんて、どこにもない!!」

 

キラの叫びにヒイロは全く耳を貸さない。

シールドにマウントさせたツインバスターライフルを向けると、躊躇なくトリガーを引いた。

発射される膨大なエネルギー。

フリーダムは翼を広げ必要最小限の動きで機体を上昇させビームを回避する。

右脚部のすぐ傍を通り抜けるビーム。

でもそれは、触れてもないフリーダムの足の装甲を溶かし、耐え切れなくなった右足は小さく爆発した。

陽電子リフレクターを貫いたその威力を知るキラだが、改めてその威力に舌を巻く。

 

「かすめただけで、なんて威力なんだ!?」

 

「戦場で、お前達の存在は無意味だ」

 

「僕はただ、オーブを戦闘に巻き込みたくないだけだ」

 

「だからこんな真似をして居るのか。そんな事では何も変わりはしない」

 

「何も出来ないよりは遥かに良い!!」

 

ビームライフルを腰部にマウントさせたキラはサイドスカートからビームサーベルを引き抜く。

翼を広げ、最大加速で詰め寄るフリーダムはウイングゼロにその切っ先を突き立てる。

ヒイロはシールドでビームサーベルを受け止め、なぎ払い、自らもビームサーベルを振り降ろす。

フリーダムの半壊したシールドで防ぐが2回は持たず、真っ二つに分断されると重力に引かれて行く。

 

「くっ!! でも!!」

 

キラは素早く右手のビームサーベルで袈裟斬り。

ヒイロのウイングゼロのそれに合わせてビームサーベルを振るう。

交じり合う2本のビームは両者を眩い閃光で照らす。

だが、勝ったのはウイングゼロだった。

 

「サーベルのパワーが負けてる!?」

 

ニュートロンジャマーキャンセラーにより実現した核エンジン搭載モビルスーツ。

フリーダムはそのお陰で他の機体とは違い、高出力のビーム兵器を事実上無限に使う事が出来る。

開発されたのは2年前だが、未だに他の追随を許さない。

そのフリーダムが一方的に負けた。

ウイングゼロのビームサーベルは、フリーダムのビームサーベルを物ともせずに、左肘から先を切断してしまう。

 

(負ける……このままじゃ、負ける!!)

 

あまりの性能の差にキラは意識を集中させ本気を出す。

プロヴィデンスとの戦い以来、キラは全力を出してウイングゼロと対峙する。

 

「強い、確かにアナタは強い。でも僕にも、譲れないモノがある!!」

 

「ヤツの動きが変わった」

 

「みんなの想いを守る為に、僕は戦う!!」

 

覚醒するキラは残された手にビームサーベルを握らせ再び接近戦を挑む。

一瞬で間合いを詰めるフリーダムは左腕を振り上げ袈裟斬りを繰り出す。

またもシールドに止められてしまうが、ウイングゼロが反撃に移るよりも早くに次の動作に入る。

機体をバレルロールさせ上を取るとバラエーナを展開し、至近距離から頭部に撃ち込んだ。

発射される高出力プラズマビーム、だがその先にウイングゼロは居ない。

 

「僕の反応速度に付いて来る!? でも!!」

 

「ゼロの予測よりも動きが早い。だが!!」

 

ウイングゼロはビームサーベルを振り上げるとフリーダムのバラエーナの右門を切断した。

だがフリーダム本体にはダメージは通ってない。

姿勢を瞬時に戻すフリーダムは左脚部で相手の胸部を蹴った。

 

「グッ!!」

 

態勢を崩すウイングゼロ、コクピットに伝わる衝撃にヒイロは歯を食いしばる。

ヒイロはツインバスターライフルの銃口を向けるが、まだ街で暴れて居るデストロイが放つビームの内の1射が飛んで来てしまう。

スラスター制御で機体の位置を移動させビームを避けるが、視界からフリーダムの姿が消えて居た。

 

「今だ!! 当たれぇぇぇ!!」

 

背後に回り込むフリーダムはウイングゼロの背後からハイマットフルバーストを繰り出した。

ヒイロでも避ける事は出来ず、フリーダムの攻撃を直撃してしまう。

巨大な爆発が機体を襲い、ウイングゼロは重力に引かれて落ちて行く。

それでも、ハイマットフルバーストの直撃を受けても尚、その装甲は原型を保って居た。

 

「なんて装甲だ、ダメージが通ってないのか? でも今は!!」

 

翼を広げ、フリーダムはデストロイを止めるべく飛ぶ。

一方のヒイロのウイングゼロは破壊された建造物の瓦礫に上に横たわって居た。

ガンダニュウム合金はまだ破壊されていない。

ヒイロは地上から飛び立つフリーダムの姿を見上げて居た。

 

「任務失敗か……ゼロの予測では、あの女に未来はない」

 

ゼロシステムが見せる未来には、デストロイのコクピットにビームサーベルを突き刺すフリーダムの姿が見えた。

 

///

 

「ステラ、キミは戦っちゃいけない!!」

 

「うるさァァァイ!!」

 

シンの説得も虚しく、デストロイは町を焼き払う。

それでもヒイロがフリーダムを食い止めて居る間だけはと、懸命に声を出し続ける。

 

「ステラ、止めるんだ!!」

 

「うわあああぁぁぁっ!!」

 

「僕だ、シン・アスカだ!! キミを守るて約束したろ!!」

 

シンの『守る』と言う言葉にステラはわずかに記憶が蘇り操縦桿を握る手の力が弱まる。

わずかな時間ではあるが時を共に過ごした事、約束を交わした事。

 

「シン? マモル……」

 

「そうだよ、約束した!! キミは俺が守る!!」

 

「ヤクソク……」

 

今まで猛威を振るって居たデストロイの攻撃が止まった。

その間は、ベルリンの街にわずかばかり静寂が戻って来る。

 

(意識が戻りかけてる!! もう少し……もう少しで!!)

 

インパルスはデストロイのコクピットのすぐ傍にまでゆっくり近寄る。

シンはステラを救うためコクピットのハッチを開放し、ヘルメットを脱ぎタラップに足を掛けると更に呼び掛けた。

灰に汚れた冬の風がシンの髪の毛を揺らす。

 

「そうだよ、キミを守るって約束した」

 

「約束……星……流れ星さん……」

 

「ステラ、一緒に行こう。一緒にまた星を見よう!!」

 

「シン!! 逃げて!!」

 

遂に記憶が蘇ったステラ。

だがウイングゼロを退けたフリーダムが、デストロイを止めようとこちらに迫って来た。

 

「今を逃したら、もうチャンスはない!!」

 

射撃武器の効かないデストロイにビームサーベルでトドメを刺すべく、フリーダムは翼を広げ懐に潜り込む。

 

「来るなぁぁぁ!!」

 

ステラはシンを助けようと残った右腕でインパルスを守ろうとした。

だが外から見たキラにはインパルスを潰そうとしているようにしか見えない。

 

「もうこれ以上は!!」

 

「フリーダム!? やめろぉぉぉ!!」

 

コクピットに戻るシンはインパルスのシールドでフリーダムのビームサーベルを防ぐ。

だがシールドにはもう耐久力は残って居らず、突き抜けたビームサーベルは左肘を切断した。

シンはバックパックからビームサーベルを引き抜くと同時にフリーダムに袈裟斬りする。

 

「インパルスは何を!?」

 

「はァァァ!!」

 

回避行動に移るキラだが、インパルスのビームサーベルは右脚部に届く。

片足も失い満身創痍の機体で、キラが取れる行動は限られてしまう。

このまま戦闘を続ければデストロイを止めるどころか生きて帰れないかもしれない。

 

「このままだと……え?」

 

突然、警告音がコクピットに鳴り響く。

下方から高出力のビームが発射され回避に移るも間に合わず、フリーダムの右翼が消し飛んだ。

見た先に居るのは戦闘に復帰したウイングゼロ。

 

「直撃を受けたのに、もう来たのか?」

 

「ゼロの予測を超えたか、シン」

 

「くっ!! もうフリーダムは戦えない……」

 

ツインバスターライフルを向けられキラはフリーダムでこの場から離脱を始めた。

ヒイロは背を向けるフリーダムをこれ以上追う事はしない。

戦闘領域から離脱するアークエンジェルとフリーダム。

戦闘は終結し、シンはデストロイのコクピットに乗り移るとコンソールパネルを叩きハッチを開放させる。

広いコクピットの中では、ピンク色のパイロットスーツを着用したステラがシートの上で意識を失って居た。

 

「もう大丈夫だから。ステラ」

 

シンは彼女のシートベルトを外し体を抱えると、足元に置かれたアタッシュケースを目にする。

ネオが言ってた通り、中にはエクステンデッドの資料とデータが入っている。

ステラと一緒にケースも持ち運び、インパルスのコクピットの中に戻った。

ハッチを閉鎖し、パイロットの居なくなったデストロイから距離を離すインパルス。

シンの胸の中で彼女は静かに眠って居る。

 

「終わったな」

 

「ヒイロ、ステラはもう戦わなくて良いんだ。治療が上手く行けば、普通の女の子に戻れるんだ」

 

「あぁ、そうだな。だがそのモビルアーマーは破壊しろ。邪魔になる」

 

「わかってる。こんなモノ!!」

 

操縦桿を握り右手にビームライフルを握らせるとコクピットに狙いを定めトリガーを引く。

エネルギーの続く限り、とにかくビームを発射し続ける。

パイロットが搭乗してないデストロイはもう、陽電子リフレクターは発動しない。

コクピットが破壊され、ビームの直撃を受けた箇所が次々に爆発する。

黒い巨人は音を立てて崩れ落ち、最後に響く地鳴りは断末魔の悲鳴のようにも聞こえた。

デストロイはベルリンの街に沈む。

 

「終わったんだ……もう……」

 

「任務完了。ミネルバに帰還する」

 

1つの戦いが幕を閉じる。

脅威の去ったベルリンで、フリーダムとアークエンジェルも撤退を始めた。

大破したフリーダムのコクピットの中で、キラはウイングゼロの圧倒的な性能に脅威を感じる。

 

「フリーダムでも相手にならなかった。あの機体……」

 

///

 

ミネルバのモビルスーツデッキには新たな機体が格納されて居た。

ヒイロが突然持ち出して来た機体、ウイングゼロ。

新型機に整備班のヴィーノとヨウランは興味津々でフォルムを眺めて居る。

 

「すっげー!! なんだよこれ!? なぁ、これヒイロが乗ってたんだよな?」

 

「そうらしいな。それより持ち出したガイアはどうしたんだよ? 許可もナシで使ったXシリーズを失くした、だなんて始末書で済むのか?」

 

そのコクピット内部には様々なケーブルが繋がれ、機体データを取る為の準備が進められて居た。

整備班の班長であるマッドは他の仕事を部下に任せ、最優先でこの機体の調査に当たる。

 

「良し、コネクターは全部繋げたな。テストはいつでもOKだ、隊長さん」

 

「わかった。シミュレーションのB16をやれば良いんだな?」

 

言うと赤い制服に身を包むアスランがウイングゼロのコクピットの中に潜り込む。

操縦桿を握り軽く動かすと初めて乗る機体の感触を確かめる。

 

「操縦性はそこまで変わらないか。だが変わったコンソールを積んで居る。ジャスティスのマルチロックオンシステムとは違うのか」

 

コクピットの構造に疑問を抱くアスランだが、実際にやってみない事には答えはわからない。

ハッチを開放したまま、マッドに言われたようにシミュレーターを起動させた。

 

「シミュレーター起動。データの採取、お願いします」

 

「任せときな。外で他にも分析を進めとくからよ。終わったらまた呼んでくれ」

 

マッドはコクピット付近から離れて別作業に移り、アスランも始まったシミュレーターに意識を集中させる。

その間、持ち主であるヒイロは艦長室のタリアに呼び出されて居た。

定刻した作戦時間に間に合わなかった事もそうだが、1番の問題はウイングゼロ。

艦長室で座るタリアにヒイロは直立不動で動かない。

 

「どう言う事なのヒイロ。あのモビルスーツは何?」

 

今まで数回遭遇した謎のモビルスーツ、そのいずれも接触する事は出来なかった。

それをヒイロが乗って居る事の納得出来る理由が必要だ。

張り詰めた空気の中でも、ヒイロの表情はいつもと変わらない。

 

「あの機体は譲って貰っただけだ」

 

「そんな言い訳が通じるとでも思っているの? 正直に白状なさい。でないと、アナタは評議に掛けられる事になる」

 

「事実だ、あの機体は譲って貰った。それより前の事は知らない」

 

言う事を変えないヒイロにタリアの表情は険しくなる。

話す言葉の口調も次第に強くなって行く。

 

「では何処で誰に譲って貰ったの? アナタの言う事が事実なら、説明が出来る筈」

 

その質問にヒイロは答えようとはしなかった。

緊迫した部屋の空気が更に重くなり、タリアは目を細める。

 

「答えられないの? ではこの件について正式に議長に報告させて頂きます。それまでは許可ナシにあのモビルスーツに乗らないで」

 

「了解した……」

 

意義を申し立てる事もなく、ヒイロは端的に返事を返すだけ。

すると突然、艦内部から轟音が響く。

数秒後にはモビルスーツデッキから内戦が繋がり、タリアは急いで受話器を取った。

 

「さっきの音は何事? 事故なの?」

 

『いえ、それが……』

 

「ハッキリ言いなさい!! 緊急事態なら人員をすぐに向かわせます」

 

『隊長さんがいきなり暴れ出したんだ!! ヒイロが持って来た機体のデータを取ってる最中に!!』

 

「どう言う事……アスランが? とにかく人を向かわせます。非戦闘員はその場から退避して!!」

 

『了解だ!!』

 

想定外の事態にタリアは頭を悩ませる。

ヒイロはその会話を聞いても尚、鋭い目線を向けるだけ。




無傷でフルボッコと言うのは嫌だったのでこのようにしました。
アニメではこの次にインパルスがフリーダムを撃破しますが、キラが生き残る事の説明がアニメ通だと納得出来ないし、それに変わるモノを考え付かないのでこの作品ではありません。
ストーリーも半分を過ぎてきました。
これが終わればクロスアンジュかなのはstsだ!!

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