機動戦士ガンダムSEED Destiny 凍て付く翼   作:K-15

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第15話 包囲網突破

ファントムペインの指揮官でもあるネオは自室で通信機と向い合って居た。

度重なる任務の失敗、更には金の掛かってるエクステンデッドを2人も失い強奪したザフトの機体も1機だけしか残ってない。

先日、突然ガイアに搭乗し出撃したステラは機体と共にザフトに奪われてしまった。

その事を報告するネオの表情は仮面に隠れて見る事が出来ない。

 

『私はキミに期待して居たんだ。だから任務の失敗を攻め立てる事もしないし、出来る限りの支援は行って来たつもりだ。だが無条件でこれまでの事を水に流す事はしない。キミの仕事はなんだ?』

 

通信機から聞こえて来る声。

その主こそ今回の戦争の引き金を引いた主犯格、反コーディネーター組織ブルーコスモスの盟主で、連合軍を裏で操る軍産複合体「ロゴス」の一員であるロード・ジブリール。

その彼に対してネオは従順に返事を返す。

 

「任務の遂行です」

 

『そうだ、それこそキミが成すべき事であり最優先事項だ。エクステンデッドとは言え、戦闘ともなれば死ぬ時は来る。機体も同じだ。その事に付いて今更言うつもりはない。だがこのままではこちらの計画にも支障が出る』

 

「それは理解してます」

 

『なら、さっさと言われた通りに任務を遂行するんだ。ファントムペインには金を掛けてる。ザフトのミネルバに手を焼くのはわかるが、これ以上好き勝手されては邪魔だ。なんとしても沈めろ』

 

「了解です」

 

『目障りなコーディネーター共は地球の害虫だからな。一掃せねばならん』

 

言うとジブリールからの通信は切断させた。

ネオは目前に迫るミネルバとの戦闘を前に、たった2人になってしまったファントムペインがこれからどう動くべきなのかを考える。

新型のモビルスーツを多数搭載したミネルバと正面切って戦うにはそれなりの戦力が必要だ。

だが現状では強奪したカオス以外は量産機しか用意出来ない。

 

「やれやれ、上層部は無理難題を言ってくれる」

 

ネオはいつもの様に軽口を叩くが、状況はそう単純ではない。

通信機に手を伸ばしパネルを触り、次はオーブ本国に通信を飛ばした。

数秒で回線は繋がり、小さなモニターには代表であるカガリとその後ろにユウナの姿がある。

 

「こちらは連合軍ファントムペイン部隊、ネオ・ロアノークであります」

 

『そっちではもうすぐザフトと戦闘だと聞いてる。何かあったのか?』

 

「いえ、ミネルバとの関係も因縁浅からぬものではありますが、次の戦闘では確実に仕留めて見せましょう。その為にオーブ軍にも来て頂いてるのですから」

 

『勿体ぶった言い方だな。他に言う事がないなら切るぞ』

 

「とんでもない、本題はここからです。ミネルバは次第に戦力を高めてます。こちらもそれの対策は取りましたが、戦いは拮抗するかと。当然、戦死者だって出て来ます」

 

『それは……』

 

モニターの向こう側でカガリは視線を反らした。

オーブの理念に反した行為、その為に戦死者が出る。

感情ではこんな事は止めさせたいと思うカガリだが、どうする事も出来ないのが現実。

連合と同盟を結んだ時点でこうなる事は見えてたし、指示に従えないのなら同盟を解かれる事も充分にある。

そうなればオーブの軍事力だけでは自国の自衛はままならず、再び戦火が襲い来るだろう。

理想と現実の狭間に葛藤するカガリだが、悩む暇もなく後ろのユウナが代わりにマイクを手に取ってしまった。

 

『戦闘になるのだろ? 当然だ。この戦いが後のオーブ、引いては世界の平和に繋がるのなら犠牲は止むを得ない。我が軍の兵士はオーブの平和を維持する為に居る。その為になら自らの命を犠牲にしてでも戦う覚悟がある。そうでなければ兵士になる資格はない』

 

「ユウナ殿はその辺りを良く理解してるようで」

 

『これが現実だよ。それよりもこんな事の為に専用回線を使ったのかい?』

 

「そちらの代表はまだ若い。だから前の戦闘でも艦艇に搭乗して前線を見ていましたね。ご自身の国の兵士が死ぬ事の辛さ。すぐに慣れる事は無理でも克服しなければなりません」

 

『何が言いたい?』

 

「我々も全力を尽くします。ですが、それだけ被害も大きくなると言う事です」

 

『変わった男だ。用が終わったのなら切るぞ』

 

カガリの返事を待たずしてユウナは一方的に回線を切断してしまう。

ネオは座ってたイスから立ち上がると、先程言われた事を染み染みと感じて居た。

 

「変わった男ねぇ。そうだな、俺らしくもない……俺らしい?」

 

ネオは自らの言葉に疑問を浮かべるが、答えはわからず喉に引っかかったような感覚は消えない。

 

///

 

医務室で眠るステラは酸素マスクを付けた状態で暴れられないようにベルトで手足を固定されて居た。

シンはあれから頻繁にステラの様子を見に来てるが様態は日に日に悪くなる一方で、軍医もエクステンデッドの知識はない為に手の施しようがない。

辛そうに呼吸する彼女の手を握るシンはただ祈る事しか出来なかった。

 

「先生、ステラは大丈夫なんですか?」

 

「正直言うと良くない。体は薬物投与のせいでボロボロだ。向こうに居た時は一定期間で何かしらの薬物を投与してたんだろ。でなければ体も精神も保たない」

 

「そんな……どうにもならないんですか?」

 

「出来る事ならしてやりたいが……こちらも万能って訳でない。これ以上は連合軍の研究データが必要だ」

 

突き付けられる現実にシンは愕然とする。

ようやく再開出来たにも関わらず、このままでは彼女と共に居る事は出来ない。

その時不意に、ステラのまぶたがゆっくり開いた。

 

「シ……ン」

 

「ステラ!? 大丈夫?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

「ステラ……」

 

シンの呼び掛けに応える気力すらなく、荒く呼吸を繰り返す事しか出来ない。

額には汗がにじみ目を開く事も辛かった。

連合から連れ出す事は出来たもののこのままでは死ぬ事すら有り得る状況に、シンは何も出来ない自身の無力さを呪う。

ステラの呼吸音だけが響く病室で、入り口の扉が開かれた。

視線を向けた先には緑色の制服に身を包むヒイロの姿。

 

「ヒイロ……」

 

「例の施設に残ったデータは全てプラントの研究施設に送られて居る。お前がここに居た所で何も出来ない」

 

「あぁ、わかってる。でも少しで良いからステラと一緒に居たいんだ」

 

「その女が気になるのか?」

 

以前のようにいきなり殺そうとする事はないが、ヒイロが向ける視線はいつもの様に鋭かった。

 

「このままだとそう長くは保たないかもしれない。非人道的な強化のせいで体がボロボロなんだ。遺伝子操作で生まれたコーディネーターはダメで、こんなのは許されるのかよ!! クソ……何なんだよ、ブルーコスモスって」

 

「反プラントを掲げる主義者か。シン、お前の怒りは人として正しい感情だ」

 

「何が言いたい?」

 

「遺伝子操作を受けてるコーディネーターだろうと人間には変わりない。ブルーコスモスの様に大義の名の下に思考を停止する事の方が在るべき人間の姿ではない。周囲の環境や状況に流されるな。自分の感情で行動しろ」

 

「それが正しい人間の生き方……」

 

「俺はそう学んだ。だからその感情を忘れるな。怒りも悲しみも抱えるのが人間だ」

 

ヒイロの言葉にシンは静かに頷く。

そして2人がこれだけ長く会話するのはこれが初めての事だ。

 

(そう言えばヒイロとまともに話するの初めてだな。無口で何考えてるかわかんないヤツだけど、こう言う事も言えるのか)

 

初めてヒイロの人間性を垣間見るシン。

だが状況はそんな2人を戦地へと誘う。

ミネルバ艦内に警報が響き渡り戦闘が開始する事を知らせて来た。

視線を合わせた2人は医務室から飛び出すとまっすぐにモビルスーツデッキに走る。

 

「また連合軍が来たのかよ!!」

 

「いいや、以前の様にオーブ軍が居る可能性もある。どちらにしても数では相手が有利だ」

 

ブリッジの艦長シートの上でタリアは敵軍の素早い動きに舌を巻いた。

当初の予定通りジブラルタルへ向けて発進したミネルバ。

だが進路上にはオーブ軍が待ち構えており、退路も抑えられており突破する以外に方法はない。

数だけを見ればヒイロが言った様に相手の方が多かった。

航行を続けるミネルバに、再び連合軍とオーブ軍の同盟軍が戦闘を仕掛けて来る。

 

「コンディション・レッド発令。これより戦闘態勢に入ります。モビルスーツ隊は順次発進して」

 

『コンディション・レッド発令。パイロットは搭乗機にて順次発進』

 

「面舵30、進路を東に」

 

タリアの指示を聞いてメイリンはインカムのマイクに復唱し艦内放送で各員に伝える。

ミネルバの前方に待ち構えるオーブ軍艦隊、その数は護衛艦を入れて7隻。

全ての主砲はミネルバに向けられており、射程圏内に入ると一斉射撃を始めた。

大気を揺らす巨大な弾はミネルバに向かう。

 

「敵艦隊より砲撃です!!」

 

「モビルスーツ発進停止、対空砲火急いで!! 面舵、更に10!!」

 

タリアの声に従いミネルバは機敏に動く。

対空砲火により撃ち落とされる敵の弾、だが爆散する弾の中からは更に散弾が発射された。

ミネルバの頭上で雨のごとく降り注ぐ散弾は広範囲で、容赦なく装甲をズタズタに破壊する。

 

「くっ!! 自己鍛造弾。被害状況は?」

 

「表面装甲第2層まで貫通、甚大な被害です。2時方向よりオーブ艦、更に6」

 

「インパルスとセイバーを出させて。トリスタン、イゾルテで迎撃。目標、敵艦郡。どこかに連合軍の艦隊も居る筈。索敵を急がせて」

 

ミネルバに設置された巨大な砲身がオーブの艦隊に照準を定める。

強力なビームは空気を焼き払いながら敵艦へ発射された。

敵からの攻撃を遠ざける間にモビルスーツ隊を発進させる。

コアスプレンダーに搭乗するシンは祖国であるオーブともう何度目かの戦闘に複雑な心境だった。

 

(またオーブか!! そうやってまた俺達の前に来るなら倒す!! 倒すしかないじゃないか!!)

 

今は悲しみを怒りに変えて、迫り来る敵をなぎ払うしか生き残る道はない。

コックピットに入り込み操縦桿を握り締めるとペダルを踏み込んだ。

 

「シン・アスカ。コアスプレンダー、行きます!!」

 

メインスラスターから青白い炎を噴射してカタパルトからコアスプレンダーは発進する。

同じくしてアスランのセイバーもカタパルトに脚部を固定させ発進態勢に入った。

「アスラン・ザラ。セイバー発進する」

 

発進したセイバーの装甲はバッテリー電力が供給されて色が変化する。

コアスプレンダーも各フライヤーとドッキングしフォースシルエットに変形するとメインスラスターを全開にした。

迎撃に出るオーブ軍のムラサメにビームライフルの銃口を向ける。

 

「落ちろ!!」

 

ビームライフルはモビルアーマー形態で空を飛ぶムラサメの胴体を正確に貫いた。

機体はコントロールを失い、黒煙を上げながら海に落下し爆発する。

シンは向かって来る敵に対してビームライフルのトリガーを引きまくった。

 

「こんな所で死ねるか、俺はステラを守るんだ!!」

 

次々に撃ち落とされるムラサメ。

だが敵の数は膨大で落としきれなかった無数の機影が後方のミネルバに向かって飛んで行く。

 

「クソ!! 数がいつにも増して多い!!」

 

その中でセイバーに搭乗するアスランもオーブ軍のモビルスーツを撃退して居た。

向けられた照準は正確でモビルスーツ形態に変形したムラサメの頭部を撃ち抜く。

メインカメラが破壊され視界が完全に効かなくなる。

次の敵に照準を合わせたアスランはビームサーベルを引き抜き機体を加速させ接近戦に持ち込む。

 

(またオーブか!! 俺に撃たせないでくれ!!)

 

プラントの為に戦うと言ったアスランだが、その心の中にはまだ甘さが残って居た。

接近するセイバーに銃口を向けるムラサメ。

発射されるビームは高速で迫り来るが、アスランは寸前の所で回避すると一気にメインスラスターを吹かして詰め寄る。

右手に握ったビームサーベルを振り上げ袈裟斬り。

高出力のビームは装甲を容易に切断し、頭部と右肩に掛けて破壊する。

 

(これなら帰れる筈だ)

 

戦闘能力を失ったのを確認したアスランは標的を切り替える。

レーダーに反応する連合軍の機体。

それはアーモリー1で強奪されたカオスだった。

アスランは背中のフォルトゥス砲を向けるが操縦桿のトリガーを引くのを躊躇してしまう。

 

「コイツはダメだ。強力過ぎる」

 

「寝ぼけてんのかよ!! 今日こそ落としてやる!!」

 

「クッ!!」

 

アスランの感情など知る由もないスティングはビームライフルの銃口を向けてトリガーを引く。

迫り来るビームに回避行動を取るアスランだが、カオスの機動兵装ポッドが死角から来た。

ポッド内蔵のビーム砲がセイバーを襲う。

 

「コイツ、使い慣れてる」

 

「オラオラ!! 反撃して来ねぇのか!!」

 

「このくらい!!」

 

スラスターで姿勢制御するセイバーは発射されるビームを匠に回避して行く。

そしてビームライフルのグリップを再び握り締め、照準をポッドに合わせた。

大型のスラスターにより空中を自在に動き回るポッドだが、アスランは先読みして動く先に向かってトリガーを引く。

発射されたビームはポッドの1つを貫いた。

 

「カオスは元々ザフト軍のモノだ。行動パターンは把握して居る」

 

「スラスターがやられた!?」

 

「あと1つ、そうすれば!!」

 

「やらせるかよ!!」

 

残るポッドに照準を合わせようとするアスランだが、スティングはさっきの動きを見てすぐに呼び戻した。

機体に回収される前に破壊しようとトリガーを引き続けるアスランだが、ビームが直撃する事はなくカオスの背面に取り付く。

機動力を確保したカオスはメインスラスターを吹かしセイバーに詰め寄りながらビームライフルを向ける。

アスランはシールドを構えて回避するだけで攻撃する意思を見せない。

 

(キラのように上手くは出来ない。こうするしか……)

 

オーブ軍の量産機相手ならパイロットを殺さずに無力化する事は容易いが、機体の性能も高くパイロットの技量も備わってる相手にはそう簡単にはいかない。

アスランはセイバーをモビルアーマー形態に変形させると瞬時に加速してカオスから距離を取る。

 

「逃げんじゃねぇ!!」

 

スティングは素早くトリガーを連続して引くが、発射されたビームは雲の中へ消えてしまう。

 

///

無数のモビルスーツが出撃しオーブ軍の空母からは砲撃の雨がミネルバに降り注ぐ。

 

「回避しつつミサイルを撃ち落して!! 」

 

タリアの指示に従い甲板上に居るレイとルナマリアのザクが動く。

ビームライフルとオルトロスの砲撃で迫るミサイルの雨とモビルスーツ軍を撃ち落とす。

ヒイロは今回は前線には出ずにザクと一緒にミネルバの防衛に入って居た。

モビルアーマー形態で高速で接近するムラサメにグフの4連ビームガンを向ける。

 

「戦闘レベル、ターゲット確認。排除開始」

 

 

バラ撒かれるビームの弾は1発では致命傷にはならないが、ビームライフルよりも攻撃が当たりやすい。

当たらずとも牽制には充分で、ビームは装甲をかすめてダメージは通って居た。

敵は容易に接近出来ず変形を解き、ビームライフルでグフを仕留めようとする。

だがモビルスーツ形態になれば機動力や運動性能は量産機止まり。

テンペストビームソードを引き抜くグフはムラサメ部隊に突っ込んだ。

 

『は、早い!?』

 

遺伝子操作を受けてない同じ人間でも戦闘技術はヒイロが圧倒して居る。

振り下ろされた右腕に敵パイロットは反応出来ず機体は両断され炎に包まれた。

ペダルを踏み込むヒイロは機体を加速させ次の敵に迫る。

 

『来るぞ!! 3機で囲い込め!!』

 

正面、左右からグフを囲むムラサメ。

だがヒイロは構わずに正面の敵に突撃する。

ビームをシールドで強引に防ぎながら攻撃が届く距離にまで近づき横一閃。

けれども切っ先は装甲に触れる事はなく、敵パイロットは寸前で後退する。

 

「甘いな」

 

すかさず次の攻撃を繰り出す。

左腕の4連ビームガンがムラサメの右脚部を捉え、連続して発射されるビームにより破壊されてしまう。

 

『しまっ--』

 

爆発により姿勢を崩す機体。

動けない隙を付きコクピットに切っ先を突き立てる。

搭乗してたパイロットは絶命し、制御を失った機体は海へ落下した。

 

『やってくれたな!!』

 

味方が倒された事に逆上したパイロットはビームサーベルを引き抜き加速を掛ける。

目前に迫る敵にヒイロは振り向くと同時に左腕からスレイヤーウィップを伸ばし振り払った。

高周波パルスの流れる鉄の鞭は赤く発光し、鋭くムラサメの胴体に叩き付けられる。

スレイヤーウィップが打ち付けられた装甲はえぐり取られ、パイロットは攻撃された事にも気が付かずに消し飛んだ。

 

「残り1機」

 

『コイツ強いぞ!! 新型でもないのに!!』

 

「逃がすか!!」

 

背を向けて逃げようとするムラサメにヒイロはメインスラスターの出力を全開にする。

恐怖に駆られるパイロットに冷静な判断は出来ず、追い掛けて来るグフに怯えるだけ。

 

『く、来るのか!?』

 

機体を追い抜くと同時にテンペストビームソードで斬り抜ける。

上半身と下半身に分断され、爆発がグフを包む。

 

「敵機撃墜確認。まだ来るか」

 

破壊してもまだ敵モビルスーツ部隊は存在する。

ミネルバから離れて居たヒイロは1度合流する為に敵軍に背を向けた。

 

「いっけぇぇぇぇ!!」

 

ガナーザクがオルトロスで高出力ビームを照射しモビルスーツ部隊の連携を分断させる。

散開する敵機、そこにレイがビームライフルで確実に撃ち落とす。

合流したヒイロもグフの両手を突き出しビームガンを連射した。

無数に飛び交うビーム、弾、爆発。

レーダーを確認したヒイロはミネルバで砲撃を続ける2人に通信を繋げた。

 

「敵機残り40機以上、奇跡でも起こらない限り勝ち目はないぞ」

「だがやるしかない。出来なければここで死ぬだけだ」

 

「そうよ、こんな所で死ねない!! このぉぉぉぉ!!」

 

『インパルス、敵を抑え切れません!! 右舷よりムラサメ5機、グフは迎撃を』

 

「了解、直ちに破壊する」

 

通信士のメイリンの声を聞くとヒイロはまた前線に向かって機体を飛ばす。

モビルアーマー状態のムラサメに真正面から突っ込むヒイロ、ぶつかる寸前に左マニピュレーターで主翼を強引に掴んだ。

 

『コイツは!?』

 

「無駄だ」

 

SFSのように乗る形となったグフは変形を解かれる前にテンペストビームソードを機体に突き刺す。

黒煙が吹き上がり高度が下がる。

機体が爆発する前に飛んだグフは4連ビームガンを向けビームを撃つ。

迫るムラサメにビームが直撃し爆発、もう1機に照準を合わせトリガーを引く。

無数のビームの弾が装甲を破壊し高度を維持出来なくなった機体は海へ落下し巨大な水しぶきを上げる。

だが残りの2機はグフを通り抜けてしまって居た。

 

「そっちに2機向かった」

「こっちは任せて!!」

 

ルナマリアがオルトロスでヒイロが撃ち漏らしたムラサメを撃ち抜く。

高出力ビームに直撃したムラサメは一撃で爆発し、その炎にもう1機も巻き込まれてしまう。

 

「ヒイロ、大丈夫?」

「問題ない。お前の射撃は当てにしてる」

「当たり前でしょ」

 

「そうだな、次が来るぞ」

連合軍から数え切れない数のムラサメが飛んで来る。

そして射程距離内に入ると大量のミサイルがミネルバに放たれた。

ブリッジでは余りの数にアーサーが冷や汗を流す。

対して艦長であるタリアは一瞬たりとも怯んだりはしない。

「トリスタンで撃ち落して!! 取り舵!!」

 

対空砲火が迫るミサイルを撃ち落とす。

だが全てを破壊する事など出来ず、撃ち漏らしたミサイルが直撃しミネルバから煙が上がる。

損傷したのはミネルバだけでなく、レイのザクもミサイル攻撃により左腕を失って居た。

「この程度、なんともない!! ルナマリア、ミサイルとモビルスーツは俺達でやる。敵艦を撃つんだ!!」

 

「了解!!」

 

レイのザクは残った右手でビームライフルを撃ち続けるがミネルバは完全に防戦一方になって居た。

さっきのムラサメ部隊が旋回しもう一度攻撃を仕掛けて来る。

 

「右舷後方からムラサメ、来ます!!」

「敵を寄せ付けないで!!」

ブリッジではタリアの激が飛ぶ。

だがモビルアーマー形態のムラサメは機動性が高く撃ち落すことは困難、ルナマリアでも1度に10を超える数は捌き切れない。

雨のようにビームと弾が降り注ぐ中、迎撃を掻い潜った1機がミネルバの眼前に来てしまう。

モビルスーツに変形したムラサメはブリッジにビームライフルを向けた。

 

(クッ!! 突破された)

 

顔を歪めるタリア。

だが上空から一筋のビームが飛んで来ると正確にムラサメの右腕だけを破壊した。

レーダーに反応するのは以前にも現れたあの機体。




鉄血の第4話、モビルスーツが映るだけで戦闘しない回があるのがガンダムの良い部分だと自分は思います。クーデリアはリリーナとディアナが歩んだ道を辿って行く感じですかね?
あと、この作品を書く上で1つだけ意識してる事があります。
そんなに大した事ではないのですがわかる人は出るかな?

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