バイト戦士なんだが、バイトしてたら初恋の子に会った。   作:入江末吉

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けれども湯たんぽには早すぎるし、譲る気もない。



穂乃果と同棲編
恋人が抱き枕(暖かいやつ)を所望していた。


 こんにちは、皆さん。バイト戦士です、いかがお過ごしでしょうか。

 近夏も終わりに近づいて、めっきり寒くなりましたが25度です、まだ25度ですえぇ。この寒さで寒いって言ってる辺り今年の冬はコタツから出られないかもしれませんね。

 

 なんでこんなに悟ってるのかと言いますと、横で穂乃果ちゃんが寝ているからです。

 あれから、かれこれ1ヶ月くらい経って穂乃果ちゃんとお店でこっそりイチャイチャしたりしていたんだけど、変わったことがいくつかある。

 

 1つは、俺たちのスーパーでのシフトが再び夜に戻ったこと。室畑くんは相変わらずのクールガイ、白石くんは久しぶりに会ったら飲み込みの速さを活かして、レジ真ん中に配置されるくらい対応が早くなっていた。先輩にして教導官としては鼻高々だし、また一緒に仕事出来るようになって嬉しい。相変わらず俺は穂乃果ちゃんと2人レジだけどな!

 本来、一人前になると1人でレジを回すのが普通だ。俺も室畑くんや白石くんも2人制をクリアして1人で働いていたわけだけど、穂乃果ちゃんと俺の希望で俺たちは2人制をクリアしてもコンビでやっている。給料は自給から40円引かれてちょっぴり痛いものの、2人で一緒に仕事してるんだから苦ではないし特に気にしてない、穂むらのバイトだってあるわけだしね。

 

 話が逸れた、もう1つは俺が穂乃果ちゃんの家に住み込みで働くことになったということ。住み込みで働くにしては夜別のバイトに言ってるわけだけど。

 相変わらず厨房には入れないっていうか、入ってもやることなくてホールやカウンターにいるだけなんだけど、穂乃果ちゃんのお父さんが「朝暇ならぜひとも準備を手伝ってほしい」とのことで、俺も引き受けた。

 まぁ本当の理由はお互い隠してるんだけどね、暗黙の了解って言うか利害の一致ってことでね! 俺は穂乃果ちゃんの部屋に厄介になっているわけで、そうなると当然。

 

「すぅ……すぅ……」

 

 穂乃果ちゃんがベッドを抜け出して俺の布団に潜り込んでくるわけですよ。そのことをお母さんに話したら、布団片付けて穂乃果のベッドで寝たら? と言われた。それも悪くないかも!

 いやーしっかし、穂乃果ちゃん本当良い匂いするなぁ。今や俺も同じ匂いがするんですよ、だって同じシャンプー使ってるしね!

 

 つんつん、と頬を突いてみる。穂乃果ちゃんはくすぐったそうに身体を揺する。はぁ~可愛いんじゃ~……もっと過度なスキンシップを取るべきか……取らざるべきか!

 取る? 取らない?

 

『→取る

  取らない』

 

「取るしかないよなぁ」

 

 穂乃果ちゃんの身体をゆっくり抱き締めて髪の毛に顔を埋めて深呼吸してみる。はぁ、良い匂い……もう死んでもいい。

 

「毎朝変態チックだよぉ……」

「起きてたんすか」

「抱き締められたら誰だって起きるよ、おはよう」

 

 おはようございます、返事を腕で返す。すると穂乃果ちゃんも俺の背中に手を回してとんとんと叩いてくれる。あぁ優しい手つき、蕩けそう溺れそう。俺どうせ死ぬなら穂乃果ちゃんで溺死したい。

 とまぁこのように毎朝ちょっとだけ度を越したスキンシップで目覚めるわけなんだけども。こうすると1日頑張れるし、穂乃果ちゃんもやる気出るらしいので朝の挨拶には必要不可欠ですね、はい!

 

「……キスは?」

「歯、磨いてからね」

「やだ、今すぐちゅーして」

 

 なにこの子、可愛すぎるでしょ。全世界可愛すぎるお嫁さん(予定)選手権でぶっちぎりで1位取れるんじゃないのこの子。

 どうする? しちゃう? キスすると我慢できなくなっちゃいそうだしなぁ、マジでどうすっかなぁ~!!

 

「ん」

「ちゅっ、ごちそうさま」

 

 お粗末さまでした、じゃあお兄さんは下半身の疼きを収めるために二度寝しますからね。嘘です、目が冴えて眠れません。

 

「こっち向いて?」

「無理、無理です。ちょっと今はマジで無理」

 

 布団の中に閉じこもると穂乃果ちゃんが上から圧力を掛けてくる。重い! 暑い! でも我慢だ、馬鹿が大人しくなるまで俺は穂乃果ちゃんの顔を拝まない! たとえそれが太陽に背を向けた日陰者の所業でも!!

 この住み込み生活で1番困ってるのは、この朝の生理現象だ。隣で穂乃果ちゃんが寝てるっていうか布団に潜り込んでくるから余計に暴れまわるこの愚息どうしようか、本当どうしてくれようか。

 

「ねぇ~、ねぇったら~!」

「ダメだ! 今抱き締められたらアカン!」

 

 四つん這いの箱状態にして愚息を庇うが、穂乃果ちゃんが布団を剥ぎ取って俺の上に圧し掛かってくる。あるとは言えないけど存在感はあるその双丘が俺の理性を荒めのヤスリでごりごり削っていく。

 

「ダメよ! 穂乃果ちゃんが傷物になっちゃう!」

「え~? もう貴方に唾付けられちゃったんだけどなぁ~」

 

 言うな! 大敗したあの初戦のことは言うんじゃない! 酒に酔った勢いで襲ったなんて、今思い出しただけで恥ずかしい。その翌朝の酒の残ってるニヒルな俺を思い出すだけで死にたくなって来るんだから!!

 あぁ、でも穂乃果ちゃんのおっぱい暖かい……揉みたいっていうか、吸いたい。たまにはつついてみたい、どことは言わないけど。

 

「収まった……あっぶねぇ……」

 

 どういうわけか大人しくなったので、ホッとしてベッドに横になると穂乃果ちゃんが待ってましたとばかりにマウントを取った。

 

「シちゃう?」

「しないよ! 節度を持って抱くって決めたの! いつもいつでも乳繰り合ってたら猿になっちゃうよ!」

 

 猿にはならない!! そう誓ったのだ、俺の魂にだ!! 本音言っちゃうと毎日でもキスしたいし、その先もしたい。けど、それって依存じゃないかな。

 依存、悪くは無いけど穂乃果ちゃんに迷惑かもしれない。俺が望んでも、穂乃果ちゃんが望んでなければ俺はしない。穂乃果ちゃんが望んでも俺がしたくないなら……あれ? これシちゃってもいいんじゃね?

 

「ダメです、ダメです。それはそれ、これはこれだァァァァァアアア!!」

「わわっ、びっくりしたぁ……」

 

 頭を抱えて転げまわる。それでも俺にしがみついて離れない穂乃果ちゃんのおっぱいの感触を堪能していると隣の部屋の扉がガタンと勢いよく開く音がした。

 まずい、俺たちは本能的に察してそれぞれの布団に潜り込んで瞼を閉じた。直後、破砕音にも似た爆音を戸が奏でた。

 

「お姉ちゃん! お兄さん朝から煩い!」

「……」

「……」

 

 ダメだ、まだ笑うな……堪えるんだ……!

 

 と、なんとか雪穂ちゃんをやり過ごそうとしてるときだった。なんだか背中の方が一瞬だけ涼しくなった、と思ったその時だった!

 

「うひゃあ!?」

「起きてるのは分かってるんだから、これ以上寝たふりするなら悪戯するよ」

 

 既にしてるだろ!! 頼むから腹を擽るのはやめろぉ! そこと足の裏は弱点なんだ!! 脇腹は、あっダメェ!

 

「おいやめろぉ!」

「やーだ、お兄さん成分補充するまで離れないもん」

 

 そうだった、この一月で変わったことがもう1つだけあった。それは雪穂ちゃんが、俺に対してさらに容赦無くなったということだ。どのくらい変化があったかというと、朝こうして布団に潜り込んで攻撃してくることもあるくらいには。

 

「俺成分ってなんだひゃははやめろぉぉ~!」

「お兄さんの匂いとか、お兄さんの温度とか、お兄さんのジャージとか作務衣とか?」

 

 なにこの子怖い、と思ったけど穂乃果ちゃんの妹だしもしかしたらそんな片鱗持っててもおかしくないかもしれない。穂乃果ちゃんああ見えて夜はそれなりに激しいのです、あっシッダウンというか寝てろお呼びでない。

 

「ちょっと雪穂!」

「なに?」

「なにじゃないよ! 今すぐ離れてよ!」

「お姉ちゃんは毎日毎晩補充できてるでしょ、パンクするから私に回してよ」

 

 あと、俺の取り合いが過激になってきました。穂乃果ちゃんの彼氏をこの子は玩具としか見てないんでしょうか、僕は時々気になります。

 

「ダーメだったら! 穂乃果だってまだ今日はチューしかしてもらってないんだから!」

「チューしてるじゃん! お姉ちゃんは夜までお預けでーす!」

「ほら、したがってるの私だけじゃないよ! あなたもいろんなことしたいでしょ?」

 

 したいけど……いや確かにしたいから、でも節度を持ってってことで……ってあれ? するとかしないとかそういう話だったっけ? 今って俺争奪戦の最中じゃなかったっけ?

 

「お姉ちゃんばっかりじゃ飽きるでしょ? たまには私とか、どう?」

「いやどう、って言われても俺穂乃果ちゃんの彼氏だし……」

「穂乃果、雪穂にだけは絶対とられたくないなー!」

 

 徐々にエスカレートして、なんだか俺争奪戦が過激になりはじめた。そしてついに俺を中間に添えての姉妹枕投げが始まった。持ち込まれた俺の私物も武器になってるらしく、俺のジャージやら私服やらが飛び交っていた。

 

「うへっ!」

 

 なんか顔に当たった、なんだこれ。

 

「うわぁダメ!」

「ぎゃあああああああ!! あったま打ったぁぁぁあああああ!! いでえええええええ!!」

 

 顔にぶつかった何かを確認しようとしたとき、ベッドの上にいた穂乃果ちゃんが俺に向かってタックルしてきて、俺はそれを受け止めきれず穂乃果ちゃんの机の角に頭をぶつけた、あの90度になってる足の角に思いっきりガンッてぶつけた、痛い痛い……痛すぎるって。

 

「これ、パンツか? いや、でも……穂乃果ちゃんのパンツにしては、大人すぎない?」

 

 だって黒だよ? 穂乃果ちゃんが黒の下着って似合わないわけじゃないけど……って、なんで雪穂ちゃんまで真っ赤になってるんですかね、と思ったら雪穂ちゃんはそのパンツをまじまじと見て一気に青ざめた。

 真っ赤になったままの穂乃果ちゃんが独白を始めた、その内容は恐るべきものだった。

 

「その、いつシても大丈夫なように……勝負下着、お母さんからこっそり借りてきて……」

「こっそり借りてきて……ってこれお母さんの!? うっわマジかお母さんエロすぎるでしょ」

 

 あの経産婦とは思えないほど若々しい見た目で黒下着? しかもなにこれ、朝日に翳すだけで端の方透けてるじゃん。なに、俺が渋ってるとき穂乃果ちゃんがこれ装備してたの? どうして今日の俺の分身はこんなに正直なのか、大人しくしてろって言っても聞かないです。

 

「お、お姉ちゃんまずいって。さすがにお母さんに返してきた方が良いって……」

「う、うん……後で返してお――――」

 

 く、と言い切る直前、俺たちが聞いたのは階段を気持ち踏み締めるように駆け上がってくる音。そして、再び開け放たれる俺たちの部屋の扉。

 

「穂乃果! 朝から煩い! ……ってあら? それは……ひゃっ!?」

「え? あ、いやこれは違いますよ!! 俺が盗ったわけじゃないです!!」

 

 部屋に入ってきたのは穂乃果ちゃんのお母さんなわけで、おはようございますを言うより先に俺はお母さんのパンツ、というよりこれはもうパンティーだ。それを持ってるところを発見されてしまったわけで……

 

 

 

 

 

「「「ごめんなさい」」」

 

「まったく、お父さんが知ったらカンカンよ」

 

 朝から散らかった部屋の中で正座させられている俺たち3人。いやぁ、でも俺関係なくないですかね、美味しい思い出来たとは言え頭ぶつけるしである意味被害者なんですけど……

 

「喧嘩は原因になった子が悪くないとは決まってないのよ、穂乃果と雪穂をそこまで夢中にさせる君にも罪はあるのよ」

「申し訳ないです……」

 

 返す言葉もございません、朝から穂乃果ちゃんの髪はしな垂れていた。あ、なんか撫で撫でしたいかも。

 

「とにかく、穂乃果は今日から3日間ウチでの晩御飯は抜きにします」

「えーそんなぁ!」

「朝とお昼は食べられるんだから、文句言わない! それに最近またふっくらしてきてるわよ」

「うぐ……はぁい」

 

 お母さん、女の子相手にそれはまずいですって。男に向かって小さいとか言うくらい残酷な台詞ですよ、身長的な意味で。

 そしてお母さんは雪穂ちゃんにも罪状を言い渡し、刑を言い渡すと朝ご飯だから早く降りてらっしゃいと言い残して先に降りていった。

 

「穂乃果、太ってるかなぁ……?」

「俺は気にならないけど、危機感感じてるならダイエットする? 手伝うよ」

「もうダイエットは嫌ぁ~……」

 

 どうやら過去に経験があるらしかった。まぁ、元スクールアイドルだし体型維持は全力だっただろうな、それにあのだちゃんがいたわけだしな。それはもうこってり絞られただろう。

 雪穂ちゃんは唇を噛み締めて部屋を出て行った。喧嘩、続かなきゃいいけど多分大丈夫だろう。

 

「あと、俺は穂乃果ちゃんがどんな下着つけけても大丈夫だから!」

「い、いいよそんなの言わなくて! 恥ずかしいから……」

 

 こないだのオレンジ色のパンツとか可愛かったし! これって彼氏彼女間でもセクハラだよな、うっす気をつけます……

 

「さて、じゃあご飯食べてお仕事しますかね」

「ふぁ~い……」

 

 気のない返事をした穂乃果ちゃんを引っ張り上げて、伸びをすると俺たちは揃って下へ降りていった。朝ご飯はザ和食って感じで、毎朝美味しく頂いてます。あぁ~やっぱり穂乃果ちゃんのお母さんとお婆さんの作る朝ご飯は美味えずら……これ和菓子屋じゃなくて定食屋でも十分やってけるレベルだと思うのね。

 

 朝の食卓の雰囲気は最悪ではなかったけど、どこかふわふわしていた。穂乃果ちゃんのお母さんはさっきのあれを気にしてるらしく、目を合わせると真っ赤になって目を逸らした。

 そして俺が苦笑していると、穂乃果ちゃんがいきなり俺の肩を小突いてきた。

 

「あっつぅい!!」

 

 小突かれた衝撃で残っていた味噌汁を落とし、半ズボンの上から見事に下半身が味噌汁塗れになる。熱い……熱い……熱い、だがそれでいい!

 それよりも俺は味噌汁を零してしまったことがショックだった、お昼の賄いで食べられるかな……もし食べられなかったら夜か明日の朝までお預けだぞ、味噌汁キチの俺にその仕打ちはあんまりだ!!

 

「はい、いいよ飲んでも」

「いいの!? 遠慮なく頂きます!」

 

 雪穂ちゃんからスッと渡された味噌汁を啜る、あぁ~美味しいのぅ……出来れば死ぬまでこの味噌汁啜って生きて行きたい。

 

 あ、そうか……これが母の味なんやな。この味をいつか穂乃果ちゃんや雪穂ちゃんが継いでいくんや……

 

「穂乃果ちゃん、雪穂ちゃん。幸せにするから、毎朝俺に味噌汁を作ってくれ!」

「ぶっはぁ!!」

 

 その時、穂乃果ちゃんが急に咽た。なんだ、今日の食卓は味噌汁噴き放題だな、忙しい。と思ったら雪穂ちゃんもご飯粒を器官に詰まらせたっぽい。すりすりと背中を擦ってあげるとお茶をググッと呷ってから満を持して、引っ叩かれた。なんでや、おかしいだろ。

 

「「朝から脅かさないで!!」」

 

 脅かしてないです、至ってマジですよお二人さん。そう思いながら、雪穂ちゃんがくれた味噌汁を啜る。

 

 

 あぁ、美味しい。

 

 




食事シーンはS○Xシーンの暗喩(上級者)←


仕事編は次回だよごめんね←
スーパーでの夜の仕事に視点を置いて、ぽちぽち書いていきたいと思います。

それと、例のあれ1話書きあがりました。もう少し書き貯めが出来たら投稿しようと思います、ですのでみなさん何卒相原末吉をよろしくお願いします!←

感想評価ぼんぼん待ってます! 返事遅れて申し訳ないです!!

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