復讐者の仲間のような感じの人   作:345

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オリキャラは難しいですね。


利用と幸運

博打は俺の勝ちだった。

有り得ないぐらいの大勝ち。

気味悪いな、クルタ族に生まれ変わって、世の中そんなに甘くないって、現実を叩きつけられたばっかりだ。

勘ぐるのは当然か、ご都合主義だから、ですんだらいいが。

クラピカの家の一室で、そんな事を考えていると、ゆっくりと扉が開き、クラピカが部屋に入って来た。

 

「夕御飯できたよ」

「おう」

 

クラピカの後を追って部屋を出ると、そこには男が2人いる。

出会ってまだ3日しか立ってないのに、堂々とした姿でくつろいで、クラピカ手作りの料理を食べている。

1人は身長2M以上ある筋骨隆々の大男だ。顔もめちゃくちゃ怖い、睨まれたら逃げ出しそう。

もう1人はこの場にそぐわない、目が痛くなるぐらいの明るい紫色の上下のスーツに紫色のハットを被った男だ。

なぜか、俺を見て薄気味悪い笑みを浮かべている。

少し間違えだな、俺を見ていない間もずっと笑っている、不気味な人だ。

 

「アルベル君、申し訳ありません。お先させてもらっていますよ」

「いえ、自分の事は気にしないで下さい。テルミさん」

 

全身紫の男がテルミ。

丁寧な物腰と話し方をして、一見好青年って感じなのだが。表情があまり変わらない、常に顔に貼りついたような笑顔が本当に気味が悪い。

正直この人にはまだ警戒がとけない、不思議な事だが、俺を観察してる節があるんだよな。

それに初めて会った時、俺を見て能面のみたいな顔が、ほんの一瞬驚いていたように見えたのだ。

 

「早く座らんか、嬢ちゃんが作った飯が冷めてしまうぞ」

「はい、あとクラピカは男ですよ。バレチノさん」

「……ああ、そうかスマンな」

 

巨体で髭面のオッサンがバレチノだ、口汚くなる時もあるが悪い人ではない。顔怖いけど。

俺も料理の置かれているテーブルの席に座る。

 

「クラピカ、いただきます」

「うん」

 

出された料理を一口食べる、相変わらず美味い。

俺の代わりに、毎日作ってるからな。

最初は交互に作ってたけど、俺がサボリまくってたら、自動的にクラピカが料理係りになっていた。

たまに文句言ってくるが無視、俺には料理の才能はないからな、無駄な努力はしないのだよ。

何だかんだ言っても、キチンと作ってくれるし。

 

しばらく4人で黙々と食べていると、クラピカが箸を置き、バレチノの方を見る。

 

「バレチノさん、話してください、父さん母さんみんなを殺した人の事を、今まで言ってくれなかったですけど、知っているんですよね?」

 

クラピカの嘘は許さない、といった視線に、バレチノは箸を止めてクラピカの目を見返した。

 

「気付いておったか、鋭い子供だな」

「はい」

 

バレチノは僅かに眉間にしわを寄せ、一度小さい溜め息を吐き言う。

 

「わかった、その前にせっかくの料理を食べ終わってからにしよう、気分のいい話しじゃないからの」

「……わかりました」

 

やっとか、やっと先に進むのか。

原作前の話しがわからないから、こんな賭けに出たんだ。

負けた事も想定して一応色々考えていたが、本当によかった、無駄になって。

俺の馬鹿げた妄想が、嘘みたいに見事に的中した。

最初の自己紹介みたいなので言ってたが、バレチノとテルミはハンターだ。

ハンター証も見せてもらったけど、初めて見たから本物かどうか分からないが、嘘を言ってる風ではなかった。

テルミは胡散臭い人だが、バレチノの知り合いらしく、一応ちゃんとしたハンターらしい。

 

バレチノがクルタ族の集落まで来たのは、俺の予想とはちょっと違った。

遺跡ハンターのバレチノは、世界中の遺跡があるところに、年がら年中飛び回ってるらしく。

数十年前、クルタ族の集落から一番近い街に滞在してる最中に、クルタ族の大人達と偶然出会い。

遺跡ハンターである、バレチノの古代の歴史や文化の知識の豊富さに、クルタ族の人間は知識欲の高さが多い者が多く。

バレチノの生で見た遺跡などの話しを聞き、すぐに意気投合したらしい。意外と単純な奴が多いな。

 

その仲良くなった者達と数年交流をとったりしていたら、自然と遺跡の調査や遺跡までのガードなどを、クルタ族に頼むようになったらしい。

バレチノ曰わく、下手なハンターより強いクルタ族は頼りになったとか。

そういうば数名の大人が街に下りて、数ヶ月帰って来ない時もあったな。

 

ある日、バレチノが知り合いのバイヤーから、クルタ族の緋の目が裏の競売で大量に流れている、と聞いたのが始まりで。

クルタ族の強さを知っているバレチノは驚き疑ったものの、ハンターの繋がりや情報屋から情報を得て、クルタ族を全滅に追いやった者達までたどり着き。

そうして1人でも生き残りはいないかと、クルタ族の集落を探しだしているところに

、どこからか聞きつけたのかわからない、テルミと合流しここまで来たのだ。

 

 

で、今は料理を食べ終え、バレチノは知り得た情報を全て喋った。隠す事なく全てを。

俺は知っていたが、人伝に聞いた事により、あの時の事を思い出し。嫌でも自分の【目的】を、必ず達成させねばならない事を再認識させられる。

俺の横に座ったクラピカを見る。

事実を聞かされた。

 

心まで抉るように、おぞましく、醜い人の欲望。

ただ緋の目を奪うためにクルタ族を殺した、吐き気がするまでの欲望。

 

クラピカは興奮状態になり眼は赤く染まり、体を小刻みに震わせ、あます事なく全身全てで怒りを表していた

クラピカは怒りのあまり拳を机に叩きつける。

 

「そんな事のためにっ! そんな事のために、みんな、みんなを殺したのか!」

 

目の前いないはずの相手に激情のまま言葉を吐く。

 

「許さない……、絶対に絶対にッ!」

 

原作のクラピカの怒りは知っている。

ここまでとは、原作とは違い、俺がいるからもう少し安定していると思っていた。

 

が、都合がいい、これでいい、これでいいんだ。

俺の目的にはクラピカが必要だ、これは決定事項なんだ。

俺がゲスなのはわかってる、自分の目的のためにクラピカを利用しようとしている。

罪悪感、そんな物いくらでも受け止めてやるよ。

そんな物で押しつぶされているなら、俺は目的を達成するまでに死んでしまうだろう。

これはクラピカのためでもあり、見殺しにしたクルタ族のみんなのためでもある。

俺は胸が痛むのを無理矢理振り払い、クラピカを見て声をかける。

 

「外に行くか」

「アルベル……」

 

俺の目を見返す瞳はまだ赤みを帯び、興奮状態は収まっていない。

 

「頭冷やすぞ」

「わかった」

 

席を立ち、クラピカの背を押すように、扉の前まで連れて行く。

 

「すみません、バレチノさんテルミさん、外で頭冷やすしてきます。

 気にせず、先に寝ておいて下さい」

「うむ、頼むぞ」

「テーブルは自分が片付けておきますので、ごゆっくり」

 

2人の返事を聞き、外に出た。

少し肌寒いが、今はそれが心地よささえ感じる。

無言で俺とクラピカは歩き、みんなが眠る広場まで場所まで行く。

広場に着き、墓と呼ぶにはお粗末な墓の前で俺とクラピカは立っている。

そのままどれくらいたったのだろうか、クラピカが落ちつくまで待った。

 

「ありがとう」

 

どうやら落ち着いたのか、クラピカが俺に話しかけて来た。

 

「何で礼なんだよ」

「何となく、かな?」

「なんじゃそれ? 気持ち悪い事言うな」

「そうだね、ごめん」

「いいよもう、謝んな」

 

クラピカは母親と父親が眠る墓の前まで行くと、その前で片膝を付く。

 

「父さん母さん」

 

月の光でしかクラピカの顔はよく見えないが、俺には泣いてるように見えた。

 

「クラピカ……、話がある」

「僕もあるよ」

「そうか、先に言ってくれ。俺は後でいい」

「うん」

 

一度考えるように、俺から視線をずらし、また視線を戻した。

 

「僕はみんなを殺した、幻影旅団は許せない。アイツらを必ず捕まえてやる」

 

クラピカは墓を見渡し、言葉を続けた。

 

「絶対にみんなの眼を取り戻す。どこにあるのか今はわからないけど、

 絶対に取り戻す、そしてここにみんなの眼を持って帰ってくる、

 いつまでかかっても絶対に取り戻してみせる、僕はそれでいい……」

 

原作通りか。

俺がいなかったら、間違いなく原作のままの道行きになっただろう。

だが俺がいるのだ、幻影旅団を知っている、どういう思考をして、どんな能力を持ち合わせているかを知っている。原作のままではヌルい、ヌル過ぎる。

俺には目的があるんだ、その目的のためには原作が始まる前までに、クラピカはもっと強くなって貰う必要がある。

 

「俺もその意見には賛成だが、足りない、足りないんだよ、クラピカ」

「アルベル?」

 

クラピカは俺を見て、戸惑っているように見えた。

 

「何が、足りないの?」

「生温いんだよ、俺は俺は……」

 

俺はゴミだ、理解してる。

クラピカは甘い、原作ではその甘さが仇になった。

必要はない、そんな物は犬にでも喰わせてやる。

俺の目的には幻影旅団は邪魔だ、邪魔何だよ。

邪魔なら消せばいい、どんな事をしてもだ。

 

 

「それだけじゃあすまさない、殺す例え命乞いしようと、何しようが殺す」

 

 

幻影旅団に復讐する。

は、そんな物に興味はない、あいつらは邪魔なんだ。

俺が目的を達成するためにあいつらの存在はあってはならない。

そう多分俺はあの時、1人でみんなを埋め、泥と血が手に付いたのを洗い流した時、人として大事な物まで、水で一緒に流してしまったのかもしれない。

 

「ア、アルベル?」

 

クラピカは俺ではない、別の何かを見ている目をしている。

俺が次に発する言葉は卑怯な言葉だ、クラピカは絶対に断らないとわかっているから。

 

「だから俺に力を貸して欲しい、ゲス共を殺すために力を貸してくれ。

 俺にはもうクラピカしかいないから、クラピカしか頼めない、お願いだ」

 

クラピカに2度目となる、本気のお願い。

答えはわかっている、俺にはクラピカしかいないように、クラピカにも俺しかいないから。

しばらく黙っていたクラピカが答えた、それは俺の予想通りの物であった。

クラピカの顔は見れなかった、どんな顔をしていたのか、どんな事を考えていたのか、少し怖くなってしまったから。

まだ捨てきれない感情が少し鬱陶しい。




正月休みも終わりなので投稿のペースが遅くなります。

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