復讐者の仲間のような感じの人   作:345

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幸せの価値と幸福の価値

夜眠る時よく考えるようになった事がある。

幸福とは何だろうか、幸せとは何だろうと。

何度も俺は考えた、自問自答し、襲ってくる罪悪感から逃げるように。

本で読んだ事がある気がする、幸せを実感する手っ取り早い方法は家庭を得る事だと。

本当にそうなのだろうか、所詮本で得た知識だ。

それに想像出来ない、自分が幸福になり幸せな生活を送っている姿を。

だが一つだけ思った事がある、俺が幸福になる方法、幸せになる方法。

そのためには目的が必要だ、目標を持ちそこまで辿り着く。

例え何を犠牲にしようとも。

なぜこんな事を考えたのだろうか、自分がよくわからなくなってきた。

 

 

 

 

クルタ族が俺とクラピカを残し滅びた日からおよそ1ヵ月の月日が流れた。

俺とクラピカも大分落ち着き、広場に花を飾り付け供え、クルタ族のみんなを弔った、生憎お経何て知らないしクルタ族にそんな習慣はない、手を合わせ祈るだけしか出来ない。

今は1人で広場に花を植えている。

 

自己満足なのはわかってる、死者は何も反応しない。返事などしない。

 

あれから村はそこそこ綺麗になった、クラピカと協力して村のあちこちを清掃し、ここで村人が大量虐殺された場所とは思えないぐらい片付けからだ。

流石に壊された民家などは直せないから放置してる、そんな技術は俺にもクラピカも持っていない。

これ以上もう死者に出来る事はもうないだろう。

俺は今ここに留まるかどうか迷っている。

俺の【目的】はここでは達成できない、だからこそ迷っている。

目的にはクラピカが必要だし、情も移った見捨てるつもりはこれぽっちもない。

当初のクルタ族として生活してた時とは、俺の思考は全く別物だ、生き残った後好きなようにこの世界を楽しむそういう生き方も否定はしない。

だけどもう止めた目的を達成しなくては、そういう風に生きたとしても俺は決して幸福に辿り着く事は出来ない。

だから今は下手に動けない、これからどう転がるかわからないからだ。

 

クラピカの過去は原作でもH×Hの主人公ゴンと出会う前までどういった生活をし、どういった経緯でハンター試験までたどり着いたかが書かれておらず一切不明。

懸念となるのはそれだけじゃないクラピカは今現在、クルタ族を滅ぼしたもの達が誰かすらわかっていない。

 

これは俺の存在で歴史が変わったと考えたが正直微妙。

俺がいないとしてクラピカがクルタ族滅亡が発生し生き残り、村に帰った後辛うじて生きていた瀕死の人間からこれを行ったのは幻影旅団と聞いた、だがこれは有り得ない。

闘い負け目玉をえぐり出された人間が生きていたとは思えないからだ。

女子供も容赦なく、ご丁寧にトドメまでさしている。

拷問までしている奴らだ。

 

ならどこでクラピカは幻影旅団の事を知った。

クルタ族以外の第三者から聞く方法しか残されていない、ならどこで、誰に、クルタ族が滅ぼされた事を知っているうえ、これが旅団の仕業と知ってる者、そんな奴がこの世界でに存在しているのか。

情報がなさすぎる、所詮俺の想像でしかない。

 

クラピカ行動を考えてみる。

俺がいなかった場合、クラピカはどう動いた。

まずクルタ族滅亡が終わった後、暫くここに留まり今と同じようにクルタ族のみんなを埋葬するだろう。優しい奴だ、みんなの亡骸をそのままに出来る性格ではない。

問題はその後だ、この懺劇を引き起こした犯人を突き止めようと行動するだろうか。

俺の推測だと時間を置きクラピカは行動に移すはずだ。

 

俺に黙ってはいるが怒りを心に秘めている、ただその怒りのぶつけ先が定まらず考えが纏まっていないだけ、どうするか決まったら行動を起こすのは間違いないと思う。

もしクラピカの考えが纏まり懺劇の犯人を追おうとして街まで下りる、これは現状不可能。

クラピカには街まで単独で下る程の体力はない、しばらくこの村で体を鍛えてこの場所を出る事になるのかもしれない。

仮に街におりてその後どうする、職もない稼ぎもないガキがそう簡単に街で生活は出来る程甘くない、ストリートチルドレンにでもなるのかクラピカが。

有り得ないあまりにも計画性がなさすぎる。

 

わかんらない事だらけだ。

関係なくね、クラピカの原作までの人生の道乗りとかもう関係なくね。

ダメだダメだ、少し思考がおかしくなった、落ちつかねば。

短絡的な思考や楽観的すぎる考えは身を滅ぼす。

もう学習した、反省する事は大事だ。

 

ん、待てそうか、クラピカが街まで行かずに幻影旅団の情報を聞ける方法はある。

先入観に捕らわれていた、可能性があるじゃないか、ゼロではないんだ。

この村に誰かが訪れる可能性が、クルタ族として12年この村にいたがこの場所にクルタ族以外の人間は来なかった。

だから頭から無意識に外していた、ありえなくはないんだ現に幻影旅団は現れた

ならそれ以外の人間が来る可能性はある。

だがそんな人間がここに来る理由はなんだ。

 

1、幻影旅団と同じ理由?

ありえなくはないが可能性は低い、もしそんな人間が来たらクラピカは原作に存在しない。

 

2、何らかの調査で偶然立ち寄る? 

今さらこのタイミングでクルタ族の集落の近くまで来る可能性はあるのか?

 

何か引っかかるぞ、見落としは何だ。

 

俺は鞄から、原作知識を書き綴った手帳を取り出し、幻影旅団の項目を読み直す。

 

ーーこれか。

だとしたら第三者が幻影旅団が殺したとは分からないものの、クルタ族が全滅したと推測する人間が現れるかもしれない。

 

かなり低い希望的観測。

クラピカの原作のあれに対する崇高のような考え。

合点とまで行かないが、あるかもしれない。

賭けるか? この可能性に。

 

「ふぅー」

 

溜め息が増えたな笑えないぞ、弱気になってる証拠か。

俺は弱気になってる暇はない、思考しろ考える事をやめるな。

 

つい頭をかきむしってるとクラピカが俺に声をかけてきた。

一月前よりクラピカは少しだが痩せてしまった気がするな、だが目からは何かしらの強い決意を持った強さが感じられる。

 

「手伝う事ある?」

「いいよ、こっちは終わったから」

「そう、ちょっと休もう」

 

広場で俺がやってた花を植える作業を手伝いにきたんだろう。

俺とクラピカは広場の片隅に行き腰をおろす。

木陰でひんやりと冷えた土の上が心地よい。

 

「アルベル……」

「どうした?」

「これからどうするか話し合おう」

「わかった」

 

いよいよか。

 

「クラピカはどうしたい?」

「僕はみんなを殺した犯人を許せないんだと思う……、ここは僕達の大事な場所だけど、ここにいても答えはないと思うから」

「それで」

「街まで行こうと僕は考えてる、アルベルは?」

 

やっぱりか、意外と早かった、どうする、ここに来て俺の存在が弊害を生んだかもしれない

 

「俺も同じ意見だけど、まだその時じゃない思う、ここで街まで2人共単独で街まで行けるようになるまで鍛えるべきだ、街までの道のりで死ぬのは絶対に避けたい」

「それだと、食料の問題とかどうするの? 家畜はあの時の騒ぎで全部逃げちゃたし、食料庫にある物を使ったとしても、もって2ヵ月、森の中で狩りをして過ごすにしてもいずれ限界が来るよ?」

 

そりゃあそうだ。

俺は賭けに出てるから今のところ、ここから離れるつもりはないこれはクラピカのためでもある。

どうやってクラピカを説得する、いっそ土下座するか。

 

「アルベル?」

「クラピカもわかってると思うが、今の俺達じゃあ2人で街までつく前に死ぬかもしれないのはわかっているだろ?」

「勿論わかってるよ、だけど……」

「クラピカの気持ちは分かる、だけど今は無茶をしないで欲しい、せめてお互い協力して街まで行けるぐらいまで鍛えよう」

 

クラピカはぐっと拳に力を込めている

 

「……」

「頼むクラピカ、俺はお前を失いたくないお願いだ」

 

初めてかもしれない、クラピカにこうやって真剣に頭を下げるのは。

 

「アルベル」

「頼む」

「顔を上げて、僕もアルベルを失いたくないんだ、気持ちは一緒だよ、鍛えようまた2人で一緒に」

 

頭を上げクラピカの顔をじっと見た。

 

「でも約束して欲しい、いずれここから出るって」

「ああ、約束する」

 

クラピカが俺を観察するかのように見た後、ゆっくりと立ち上がった

 

「何だよ」

「フフッ、何でもない」

 

久しぶりにクラピカが笑った顔を見た。

 

「つか腹減った」

「今日はアルベルの料理する番なんだから作ってよ」

「はぁ? クラピカが作れよ、俺料理苦手だぞ、前作ったらマズいって言ってたろ」

「順番は守るべきだよ」

「わかったよ、変な物作ってしまうかもしれんから、お前も手伝ってくれ」

「しょうがないな、まったくアルベルはもう……」

「何だその言い方ふざけるんじゃないよ、ワザとマズい物作ってやろうか?」

「はいはい」

「こ、こいつ……」

「早く行こう、時間がもったいないからね」

「ぐっ、わかったよ行くぞ」

「うん」

 

少しだけ前の日常が戻った気がして俺はホッとした。

これでいい何とか目的は達成できた、クラピカを失いたくないのは本心だしな。

 

多分だが俺の存在が原作前とはいえ弊害が出て時間が歪んだ。

おそらくだがクラピカの行動と気持ちの整理が早くなったはずだ。

俺がいなかったら皆を埋める作業、村を綺麗にする作業、皆が死に感情もままならない状況でこれを1人でやったら、倍の日数はがかかったはず。

 

だから合わせないといけない時間を、俺が賭けた博打に勝つために。

俺が賭けるか博打は手帳の幻影旅団の行動を読んで思い付いた事だ。

 

   『団長は一頻り愛でると全て売りはらう』

 

そう、幻影旅団は盗品は全て売り払うのだ。

盗品を全てだ、クルタ族の緋の目も例外ではない全てだ。

どういったルートで売り払われるのかわからないが、数十人分の眼球を売ったら間違いなく異変に気付く者も出てくるはず。

 

その原因を調べる者がいたとしたら?

馬鹿な考えだこれは推測でもないただの都合のよすぎる妄想にすぎない。

もしここに「ハンター」またはそれに通じる者が来ると言う妄想。

 

クルタ族という特殊な民族の事を知り、ここまで来れる知識と身体能力。

これは俺の希望であまりにもアホな希望的な物だが、これに賭ける。

原作でクラピカが死なない事実、クラピカが原作で見せたハンターの崇高な思い。

クラピカの崇高な思いはどこで見聞きしたか? その場にハンターがいたのではないかという妄想。

 

馬鹿みたいだが、俺はこれに賭けた。

あまりにも今の俺達はジリ貧だ、今の所街に行けない以上、俺とクラピカは動けないなら鍛えクラピカの本来の時間軸まで賭けて待つ。

 

まぁ来なかったら来なかったでしょうがないさ、諦める事はしない。

絶対に何が起きようとも。




主人公がもっと苦しんで性格も歪んで行くような感じにしたいです。

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