復讐者の仲間のような感じの人   作:345

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山籠もりと進歩

山に籠もって初日。

テルミから発の説明を受けている、原作知識を書き留めている手帳の通りの説明だ。

クラピカは俺の隣で感心しながら聞いている。

 

「発の習得はよく考えてやりなさい、でないと」

 

テルミがスーツの背中に手を入れ、球を取り出す。

 

「クラピカ君、動かないで下さい」

 

球がゆっくり動きクラピカの肩の部分に当たる、言われた通りにクラピカは抵抗する事はなかった。

球が直撃した事がある経験がある俺だが、今クラピカに触れた球は高速回転や明らかに敵を倒すような勢いもないフワフワとシャボン玉のように浮遊しているだけだった。

クラピカも初めてみる、テルミの能力がどういった物なのか観察している。

当たった肩の部分に僅かな変化が起きていた。

 

「えっ?」

「ん?」

 

俺とクラピカが声が上げた、確かにクラピカに変化が起きていた。

本来に注意して見なければ分から程だ。

 

「これは……」

 

なんとクラピカの肩の部分の常に身にまとっているオーラが少量だが減っている。

正確には消失しているのだ

フワフワと浮いている鉄球を見てクラピカが呟いた。

 

「相手のオーラを消す能力ですか?」

 

俺もそう思ったが、しかしこれはショボすぎる。

この程度のオーラが消えた所で何の意味もないし、まさかまだ何かしらの意味があるのかもしれない。

 

「正解です、本当ならもっと相手のオーラを消し去るつもりでしたが、

 これが限界でした、あと致命的な欠陥があります、なんと1人に付き一回までしか

 使えないんですよ、使いようによっては敵を混乱させる事ぐらいならできますが」

 

テルミの横に所定位置と言わんばかりに鎮座しているユリアンが俺達をギロリと睨んで来る。

テルミにバレないように顔は普段の猫被り状態だけど、目だけが鋭く殺気まで籠もっている。

 

「先生いいんですか?」

 

何がと言いたいが恐らくテルミが能力を簡単にバラす行為に言った事だろう。

 

「構いませんよ、この2人には失敗例を見せるべきですしね、

 口で説明するより実物を見た方が納得するものです」

「はい、先生」

 

笑顔でテルミに同意したけど、絶対に納得してないだろうな、また八つ当たりされるのか。

テルミは浮いている球を手に取り、背中にしまう。

 

「本格的に修行を始める前に言っておく事があります」

「はい」

「何でしょうか」

 

テルミが手を差し出すと同時にユリアンがその手にコーヒーの入っているカップを渡す。

持って来ていた水筒からいつの間にかコーヒーをコップに入れていた、以心伝心もここまで来ると、近くで見ている分には不気味としか言いようがない。

 

「修行内容は体術、念の知識になります、それだけです」

 

テルミが何を言いたいのか俺には分からない、今言った内容だけでも十分だが、それだけとはどういう意味なのだろうか。

 

「わかりませんか、ならハッキリ言いましょう、教えないのは精神的な事です。

 正直心構えとか覚悟とかそういう事を語る事自体好きではないですし、

 教えられる事なんかありません、まぁ自分も未熟者ですから人に対して

 これが正しいと言い切れる程自惚れてはいないんですよ」

「未熟者!? 違います! 先生は完璧です!」

 

ユリアンがいきなり大声を上げてテルミが言った未熟者の部分を強く否定する。

真面目な話しをしてるのに空気読めない奴だな。

 

「ははっ、そうですかありがとう御座います、ユリアン」

 

若干乾いた笑い声をあげながら、ユリアンの頭を撫でる、テルミは基本的にユリアンには優しい気がする。

 

「アルベル君クラピカ君、始めましょうか、長くなるので頑張りましょう」

 

 

山に籠もって2ヶ月目。

 

基本的にやっているのが念の修行と組み手だ、テルミは教えるのが意外と上手い。

ユリアンという前例があるらしく、細かい所まで念の修行を教えてくれる。

 

修行に問題があるとしたら俺だ、クラピカと一緒に修行開始したが、如何せんスペックの差が出てきた。

まず練のコツをキチンと掴むまでクラピカより1週間遅く、その1週間でクラピカは応用技の凝まで使えるようになっていた。

ユリアンに才能がないやら死ねとかゴミとかクズとかカスとかあらゆる暴言を吐かれたが、俺は気にしない比べるのが馬鹿らしい。

クラピカが遠慮したり気を使ってきたりしたら、説教してやろうと思ったけど杞憂で終わった。

ガンガン修行して先に進んでる、俺としてはそっちの方がありがたい。

ユリアンにバカにされている時に飛んくるクラピカさんはマジかっこいい。

飛んで来た所で2人ともボコボコにされるか、クラピカが俺を慰めて終了だ。

 

 

水が注がれ葉っぱが浮いたグラスに手を添える。

水見式と呼ばれる、自分の系統を調べる物だ、ちなみにクラピカは原作通り具現化系だった。

強化系がよかったと言っていたが、原作のようにそこまで悔しがっている感じはなかった。

原作みたいに独りきりで戦うという気負いが、俺の存在で少しはマシになっている。

 

見た目には水にも葉っぱにも変化は見て取れない。

指を水に付け舐める、確かに味がする、しかし嫌な味だ。

血を連想したくなるくらいの鉄分を含んだ独特の味、口にした瞬間嫌な気分になった。

 

「変化系か……」

 

自分でもまさか変化系になるとは思ってもいなかったし、想像もしてなかった。

しかし変化系か、正直微妙。

オーラを何に変質させるかが思い付かない。今は発の開発は後回しだ。

勢いに任せて変な物に変化させたら後悔しても遅い、俺の人生の全てがかかっている以上、じっくり考え慎重に決めなくてはいけない。

テルミもしばらくは基礎修行と練を維持していられる時間を伸ばす事。

それと俺が個人的にやってるのは神字の有効活用方法の模索。

 

山に籠もって3ヶ月目

 

新しい発見があった、以前クラピカから貰った籠手を身に付けると、僅かだが腕に回すオーラの移動がスムーズになり、籠手限定だが周を使っても負担が減った。

前に籠手の内側に書いてる模様を見て、ただのデザインと思っていたけど。今ならわかる間違いなくこれは神字だ。

まだ神字を理解出来ない部分も多いし複雑に刻まれた文字のせいで解読は出来ないが、籠手には神字によるブースト効果があると考えていいだろう。

但し副作用や何か他の特性を持っている可能性もある。

クラピカの親父さんが昔に愛用し、クラピカに渡した以上、装着した者に害を及ぼす確率は低い、未知の効果が合ったら厄介だが使える物は使っておこう。

 

4ヶ月目

 

山の暮らしがもう板についてきた、清潔感なんか微塵もない山菜を食べ獣を狩り、日々の栄養の足しにしている。山の幸に感謝。

テルミが仕事らしくこの場にいない、そのせいでユリアンが暴君の如く振る舞いで散々な目に合ってる。

 

「オラァァァアァァ! ぶっ飛べやぁ!!」

「ヌワァァァ!」

 

組み手と言うなの圧倒的な暴力行為が俺を襲ってくる。

今ユリアンを抑えられる人がいないから、俺とクラピカはボロボロだ。

しかしユリアンは強い俺とクラピカで挑んでも勝てない、闘い以前の問題だ。

傷一つどころか触れる事させ出来ない、攻撃も手加減されてるとはいえ一発一発が速く重い。

テルミの下でユリアンは小さな頃から修行を付けていたお陰で、11歳ながらとんでもない実力を持っている。

テルミの仕事を手伝いをして数々の賞金首を始末してるとか、捕らえるのではなく始末してるってところがこいつのイカれ具合を物語っている。

 

「立てコラッ! カスが弱すぎんぞ!」

「ちょ、ちょっと待て、もう体が動かないから」

「グダグダ言ってんな、死ねぇ!」

「ぐわぁぁあぁぁぁぁああぁ!!」

 

問答無用で叩きのめされる、手加減してるようだが常に死ぬ一歩手前まで痛め付けられ、実際何度も死にかけた。

ユリアンの念能力なのか、骨が折れてようが傷だらけの状態からでも復活させてくれる。

能力の詳細や使ってる瞬間は見たことない。理由は俺もクラピカも気絶してる時にしか能力を使わないからだ。

試しに教えて欲しいの言ったが完全拒否、自分の能力を教えるとか馬鹿のする事、先生の頼みさえなかったら、俺達に能力さえ使うのも嫌、身の程を知れボケが、と言われ半殺しにされた。

 

5ヶ月目

 

クラピカがテルミに発に付いて聞いている。

俺にも相談してきたが、やはり鎖使いになりそうだ、制約での能力の強化うんぬんは俺が止めた。

制約を付けるとしても時期が早い、原作では早々と制約を付けたがリスクがデカすぎる、原作クラピカは制約のお陰で旅団相手に無双出きるが。

それのせいで旅団以外の相手では劣る、中指限定とはいえ攻撃手段が減るのは致命的だ。

それにまだ鍛える時間はある、原作でおよそ1年間であそこまで強くなったキルアとゴンだが、クラピカの才能は俺の主観だが劣っていないと思ってる。

 

原作では半年で念を覚え、制約ありだが旅団の戦闘要員のウボォーを手玉に取り撃破した。

今のクラピカはこのまま順調に行けば、クラピカは制約なしでもかなりの実力を持つはずだ。

さらに俺もいる、幻影旅団なら念能力もある程度把握してる、負ける要素をドンドン削って行けば倒せない筈はない、所詮同じ人間。

それでも戦力が足りないのが致命的だ、12対2明らかに足りない、これはいずれ何とかしないといけない。

残念ながら、テルミとユリアンは自分達の復讐には付き合ってくれないだろ。

旅団に復讐したいと話したら、テルミはただ笑顔でやればいいとだけ答え、ユリアンはテルミに見えない所で鼻で笑い冗談は死んでから言えと言われた。

現状ではこの2人は手は貸してくれないだろう、クラピカは本来の優しい性格もあって、遠まわしに巻き込みたくないと俺に言って来た。

クラピカが言ってる事もわからなくはない、信頼できる人間以外の者を引き入れて内輪で問題を起こすぐらいなら、いない方がマシだしな。

むちゃな事だが、旅団の団長と戦いたいヒソカ辺りと今のうちに連絡をとったり、協力体制を取りたいが、繋がりがないしどこにいるのかもわからない。

天空闘技場で原作前に闘ってたりしてたけど、時期もわからないし人が多く目立つような事はしたくない。

とりあえず仲間関連は保留だ。

 

「近付くんじゃねーよ! キモいんだよカマ野郎!」

 

相変わらずのユリアンの暴言、俺に言ってると思いきや、今はクラピカを罵倒している。

クラピカは具現化する鎖をイメージするために鎖と戯れている、かじったり舐めたり臭いを嗅いだり体に巻き付けたりしてる。

正直俺もドン引きだ、四六時中これをやっている、飯食ってる時も喋ってる時もひたすら鎖と戯れている。

 

「クラピカぁ……」

「ん、どうしたの? ペロペロ」

 

純粋な顔で鎖を舐めている。

うわぁ……、これは何かもっとシリアスな感じがよかった、真面目なクラピカが戸惑いもなくこんな事するとは、いや真面目だからかもしれないが。

 

6ヶ月目

 

半年が過ぎた頃、相当な苦労もあり俺自身にもそれなりの成果は出た

ちなみにクラピカは半月程で鎖の具現化に成功した、今は鎖にどういった属性を付けるか試行錯誤している。

 

俺も能力が不完全ながら使用可能のレベルまでになった。

具現化と変化を両方の修行がしんどかったが、これと決めたらとんとん拍子にオーラを変質させる事が出来た。。

神字との組み合わせで俺の念能力は発揮する、ぶっちゃけ地味。

それとクラピカ同様に、緋の目の発動によって俺も変化系から特質系に変わる。

クルタ族の特有の力、最初はクラピカ限定かと思ったが俺も特質系に変わる事が出来た。

クラピカは既に緋の目のコントロールも可能になっている、俺はまだ無理だけど。

コツは掴んできたからもう少し訓練したら出来ない事はない。

しかしクラピカの天才っぷりは以上だ、俺が1を覚えてる間に5を覚え、俺が5覚えてる間に10覚える、主役クラスの補修にしても凄すぎる。

原作クラピカの奥の手"エンペラータイム"これは現在のクラピカはまだ使えない、それでも時間の問題だ時期に習得するだろう。

エンペラータイムのような能力開発もしてるが、緋の目の発動がまだ不安定なため一向に進んでいない。

 

7ヶ月目に突入する数日前

 

テルミから修行の第1段階が終了と言われ、テルミのホームまで戻る事になった。

いまいち自分の力がどれほどの物か理解出来ていない。

山籠もりする前よりかは強くなった気がしてはいるが、テルミ、ユリアン、クラピカ、ある種の化け物のせいで強くなった実感がない。

テルミにボコられ、ユリアンに殺されかけ、クラピカには組み手の素手同士なら勝てるが、能力ありなら高確率で負ける。

この場に俺が本気で戦っても勝てる存在がいないのだ、クラピカの成長はありがたいけどね。

自分の今の力量を把握したい、自分の力がどれくらいの物のかわかっていないほど愚かな事はない。

 

 

俺を含んだ全員が荷物を抱えている。

 

「それでは帰りましょう」

「はい! 先生!」

「了解」

「わかりました」

 

各々が歩き出す。

テルミの言う修行第2段階は実戦だ、命を懸けた本当の殺し合い。

テルミの仕事、賞金首の捕獲もしくは始末、これを俺とクラピカにやらしてくれるらしい。

最初に聞いた時は、もうやるのか? と思ったがテルミが言うには基本的な事は俺とクラピカは覚えている、後は実戦で勘を磨けと言われた。

 

実戦、本当の殺し合い、望むところだ。

邪魔になる奴らは徹底的に排除する、それが今の俺の目的のための過程に必要な事だ、例えどれだけの痛みが伴うとしてもやってやるさ。

 

 


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