復讐者の仲間のような感じの人   作:345

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旅立ちともう1人の弟子

テルミの弟子になり、その翌朝にクルタ族の集落から出発した

俺達4人は2日かけ、日が暮れる前に街まで辿り着く事が出来た。

余裕とまでは行かないが、昔に街まで下りて来た時と比べたら、マシだった事は確かだ。

道中、獣や魔獣に襲われたが、バレチノとテルミに片手間に追い払われた。

バレチノとテルミナの睨みだけで逃げて行ったのは驚いたな。

そのおかげで、俺とクラピカの体力の消耗は最小限に抑えられた事もあって、そんなに苦しくなかったんだと思う。

俺とクラピカだけだったら、かなり厳しかったかもしれない。

街に着くと、汗だくで息も絶えな俺とクラピカとは違い、バレチノとテルミはまだまだ元気だ、息一つ乱していない。

俺達の代わりに四六時中警戒して、まともに寝てる気配すらなかった筈なのに。

後で聞いた話しだとテルミとバレチノがその気になれば集落から街まで半日も掛からずに到着する事が出来たとか。

仮に街までの道のりが平坦な物だったとしても、俺とクラピカじゃあ半日では付かないだろう。

肉体的なスペックが違いすぎる、今更だがこのH×Hの世界の住人達に限界という物が有るのだろうかそれが不思議だ。

 

 

「うむ、到着じゃな、テルミはこれからどうするんじゃ?」

「自分はこの街のホテルに一泊するつもりですよ、さすがにこの状態での船旅は酷

 でしょう」

 

テルミは俺とクラピカを見やると、相も変わらずな気持ち悪い笑顔で、ワザとらしく溜め息を付いた。

ホテルに一泊か、助かった、この状態で船旅何てしたらゲロ吐いてる。

クラピカは俺にしかわからないような微妙な変化だが、ホッとしているようだ。

 

「バレチノこそどうされるのですか、ご一緒しますか?」

「そうしたいが、前の現場の遺跡の方も気になるしの、直ぐにでもここを立つつ

 もりじゃ」

「そうですか、寂しくなりますね」

「全然寂しそうには見えんが……、まぁよかろう」

 

ここでバレチノとお別れか、なんだかんだでこの人がいなかったら、俺達は今ここにいなかったしな。

 

「バレチノさん、ありがとうございました」

「本当にありがとうございました」

 

俺とクラピカがバレチノに頭を下げ、別れの挨拶をする。

バレチノは眉間にシワを寄せ、ジッと俺とクラピカを交互に見やった。

 

「アルベル、最後に一つだけ聞かせてくれんか?」

「何でしょうか?」

「お前の進む道はあまりにも険しい、覚悟はできてるんじゃろうな?」

「覚悟ですか?」

 

何を言ってるんだ。

いきなりの質問に俺は戸惑う。

覚悟、心の迷いなどない、諦めなんて思考はもう俺には存在していない。

目的は必ず達成する、なにがあろうともだ。

 

「その顔だと、わかっておらんようだの」

「え?」

 

バレチノは残念だ、と言いたげに、少し悲しそうな表情をした。

 

「クラピカ、支えてやるんじゃぞ、お前と違ってコイツは何も分かっておらん」

「大丈夫です、僕はアルベルのそばに居ますから」

 

クラピカを見て心配そうな顔をするバレチノにクラピカはハッキリと言い切った、

 

「……テルミよ、すまんな、この子達の事を任せるぞ」

「相変わらずお優しいですね、はい分かりました、なんて無責任な事は言いま

 せんが、やれるだけの事はしましょう。それでもこの子達次第ですがね」

 

わかってないとはどういう意味だ、なぜ俺だけに聞いたんだ、クラピカはバレチノの覚悟の意味を理解し、覚悟してると言うことなのか。

 

「いいかアルベル、見失なってはいかんぞ、お前にはクラピカがおる、

 お前の目的の先に何があるかは、俺にはわからんが、立ち止まりそうに

 なった時、決して振り向くな、そのまま引きずり込まれてしまうぞ」

「どういう意味でしょうか?」

「自分で考えるがいい、それがお前の成長を促すじゃろ」

 

抽象的すぎて意味がわからない、説明が出来ないが心に何か来る物がある。

何だかムカムカする。

バレチノは豪快にガハハと笑い、俺とクラピカの頭をグリグリと撫でた、手がデカいしゴツゴツしてるから気持ち悪い。

やめろ、と言えない空気だしされるがままだ。

 

「それじゃあ、俺は行くぞ、テルミ、クラピカ、アルベル、3人共達者での」

 

そう言うとバレチノは振り向く事なく、去って行った。

あの人は俺とクラピカの事を、本当に真剣に考えてくれてた気がする。

恩返しはするさ、俺の目的が全て達成した時に必ず。

 

「それでは、自分達も行きましょう」

「はい」

「わかりました」

 

俺とクラピカはテルミの後を付いて歩く。

この街は港が近いためそこそこ栄えている、文明的には前世の頃と比べても代わりはないと思うけど、色々文化が混じってるのか、道行く人の格好がバラバラだ。

俺とクラピカのクルタ族の衣装でも、結構街に溶け込んでいる。

問題はテルミだ、さっきすれ違った人がチラチラ見てたし。

そりゃそうか、全身紫の男だ、文化だから、で済ませていい格好じゃない。

奇異の眼差しで見られても、堂々としてるテルミは凄い人だ、絶対に真似はしたくないけど。

 

「着きましたよ」

 

10分程歩いてると、街に合わないぐらい結構デカいホテルの前に着いた。

俺とクラピカはテルミに全て任せている、ホテルに入ると、とんでもなく豪華だった。

俺はちょっと萎縮してしまう、村で育った田舎者の俺には色々場違いなのでは、と言いたくなるぐらいの空気が漂っている。

クラピカはこれくらいじゃあ、動じないのか、テルミがフロントで手続きをしてるのを黙って待っている。相変わらず通常時はクールだな。

 

「お待たせしました、これがキーです、なくさないように気を付けて下さい」

 

テルミが戻って来るとキーをクラピカに手渡す。

 

「いいんですか、こんな高級そうなホテル?」

「ええ、お気になさらずに」

 

俺とクラピカは一銭も払ってない、だってお金持ってないし。

それから、俺はクラピカと最上階の一室でくつろいでいる。ちなみにテルミは別室だ。

すげー豪華、飯とかもホテルマンが運んで来てくれたし。至れり尽くせりだ、VIP待遇の理由は、テルミがハンターでさらに結構名の売れた人間だからだとか。

不気味な人で心から信頼できなさそうだが、弟子になった事だし信用はしておこう。

もしテルミが何かをたくらんでいるようなら、ヤバいと判断した時点で逃げるしかない。

嫌な師弟関係だが、簡単に気を許す程、俺とクラピカは馬鹿ではない。

頭下げてお願いしたクセに、こんな事思うのもアレだが用心にこした事はないしな。

 

俺はクラピカに話すタイミングを失った事が一つある、念の存在をテルミに聞かされる前に、クラピカに伝えるかどうかだ。

テルミに修行開始する前に、先に念を教えて欲しい事を伝えたいが、クラピカと意志疎通してなかったら手間がかかる。

あらかじめ念の事をクラピカに話してスムーズに話しをもっていきたい。

しかし何て嘘を付く、昔みたいにクルタ族の大人の人みたいにぼやかす事は不可能だ。まず信じるかどうか怪しいな。

クラピカは冷静な奴だから、ある程度証拠を見せないと、信じてすら貰えない気がする。

前世でもそうか、もし人に「この世には超能力みたいな力があるんだぜ」なんか言ったら、鼻で笑われて冗談と思われ流されるか、病院に連れて行かれてしまう。

クラピカにそんな事されたら、俺は多分落ち込む。

だが、言わなくちゃだめか、もし信じて貰えなくても、若干手間取るがしょうがないか。

 

俺はソファーでくつろいでるクラピカに話しかけた。

 

「なぁ、クラピカ」

「ん、どうしたの?」

「ちょっと聞いてくれ」

「いいけど」

 

腹を括った、もし鼻で笑われたら枕に顔埋めて足バタバタして、心の均衡を保とう。

 

「ーーーーーーってな訳だが信じるか?」

 

話しきった、念はクルタ族の大人に聞いた事にしたけど、さぁどうなる。

真剣な顔でクラピカは聞いてくれてたが、不安だ。

 

「信じるよ」

「え?」

 

今信じるって言ったけど、本当か? 自分で言ったけど説得力がほとんどゼロだぞ、大人から聞いたとか、色々突っ込まれたらヤバい感じだったのに。

 

「何その顔、今の話し冗談だったの?」

「い、いや冗談でもなければ嘘でもないが、こんな簡単に信じて貰えると

 は思ってなかったから、ビックリしただけだ」

「そう、でも僕は信じるよ」

 

あっさりだな、疑う様子すらない、俺を信じきってるって事か、嬉しい事は嬉しいが、何か俺の適当な嘘でも信じそうで怖い

 

「なぁ、俺って実は女なんだ……」

「変な嘘付かないでよ、気持ち悪い」

 

さすがにバレバレな嘘はダメか。

 

「僕もアルベルに黙っていた事があるんだ……」

 

クラピカが真っ直ぐに俺を見つめてくる。

 

「僕、実は女の子なんだ」

「うっそ! まじで!」

 

いや、そんな筈は、確かに女性的な顔立ちだが、長年一緒にいたんだぞ。

気付かない筈がない、いや待てよ思い当たる節はなくはない、嫌やっぱりない。

仮にクラピカが女だったとしよう。

俺はクラピカの一点を集中的に見る、ぺっちゃんこじゃん、発育悪いってレベルではないだろう。

 

「どこ見てるの、嘘に決まってるでしょ」

 

呆れるような口調で言う。

 

「は、騙されてないし」

 

何だこの感情はちょっとガッカリしてしまった、これは屈辱だ。

 

「なに考えたか知らないけど、アルベルの冗談を話す時とか一瞬でわかるから

 何年一緒にいると思ってるの? まったく馬鹿だな」

「一言多くないか?」

「はいはい」

 

たまに酷い事言ってくるな。

おちゃらけた空気が一転し、俺達は真剣に話し出した。

 

「念か……、父さんや先生が強い理由はそれだとしたら、納得だけど、

 テルミさんはそう簡単に教えてくれるのかな?」

「また必死で頭下げるしかないだろ」

「そうだね」

 

頭下げるぐらいで念教えてくれるなら、いくらでも下げてやる

 

「もう寝る、明日は俺達には初めて船旅だ、今日の疲れも取れてないし」

「うん、僕も寝るよ」

 

俺とクラピカはバカみたいにデカいベッドに寝転ぶ、あまりの柔らかさに直ぐに寝てしまいそうだ。何という上質な羽毛布団。

 

「アルベル、お休み」

「おう、おやすみ」

 

極上のベッドの上で俺は意識を手放した。

 

次の日ホテルからチェックアウトして大型のフェリーに乗り

そうして俺達3人は船に揺られ3日程の航海は終了した。

初めての船旅は特に何のハプニングも起こらず、まったりしたものだ。

筋トレぐらいしかやる事もなく、とても暇な時間だった、体を全開で動かせないのが辛い。

クラピカは本を読むか、目を閉じて瞑想していた。

勿論俺とクラピカはテルミに、念の修行を付けて貰う事をお願いした。

テルミは自身のホームに着いてから、その辺りの事もキチンと話す、と言われた。まぁしょうがないか。

船を下りて、テルミのホームまで交通機関を利用して行ったけど、基本テルミもクラピカも口数が多い方ではなかったため、これまた暇を持て余していた。

クラピカに暇だなって言ったら、武器になりそうなぐらいの分厚い本を渡されたけど、興味すら湧いて来ない。

というか荷物が俺より多いと思ってたが、こんな物入れてたのかよ。

 

街の一角、明らかに高級住宅地に俺達は今いる、テルミその高級住宅の一軒の門に手をかけていた。

 

「ご苦労様でした、ここが自分のホームです、さぁ入りましょう」

 

一軒家って……。

怨みとか買われてる割に、隠れずに住んでるとか堂々とした人だな。

それだけ、自分の力に自信があるのか、この人は原作キャラでいう、どの位置に入るぐらい強いのだろうか。

 

「一軒家って凄いですね」

「フフーン、いいでしょう、男なら一国一城の主になるのは当然です」

「そうっすか……」

「それではどうぞ」

 

表情が読めないから、本気なのか冗談なのかサッパリわからない。

テルミは門を開けて進んで行く、庭とかもめっちゃ広い。

クラピカも珍しくキョロキョロと、あちらこちらを見ている。

テルミがドアノブを回し、玄関の扉を開いた。

 

「ただいま戻りました」

 

ドタバタと何かが、家の奥から走ってくる音だけ聞こえてくる。

 

「せぇんせーい!」

 

叫び声に近い声を発して、玄関にやって来た少女に俺は思わず、魅入ってしまった。

ライトブルーの鮮やかな髪の色、普通なら違和感すら与える筈なのに、それを一切感じさせない程に美しく、その艶やかな髪をツインテールに纏めている。

容姿もまるで生きている人形と、言いたくなるぐらい可愛いらしく、目はパッチリ、服装は白一色で、それがさらに美少女を映えさせている。

クルタ族の人間も容姿のいい人間は多かったが、自分の目の前にいる少女と比べたら霞んでしまうほどだ。

身長もクラピカ(12歳現在推定150cm)より小さい、見た感じでは俺達より年は下だろう。

 

「先生! お帰りなさいです!」

「ええ、ただいま戻りました、留守の間何か変わった事はありませんでしたか?」

「2日前にリッポーさんが来ましが、ちゃんと追い払って起きました!」

「ご苦労様です」

「ありがとうございます! 先生!」

 

テルミが褒めるように優しく少女の頭を撫でた、くすぐったそうにもじもじする少女が、親猫に甘える子猫に見える。

テルミは撫でるのをやめ、俺達の方を見る。手を離された少女は名残惜しそうにテルミの手を見ていた。

 

「2人共申し訳ありません、この子がユリアン、自分の弟子です、

 ほら、ユリアンちゃんと挨拶しなさい」

「はい! 先生!」

 

ユリアンと呼ばれた、少女が俺達の方を見てペコリと頭を下げる。

 

「私の名前はユリアン・シュミット、11歳! 偉大なブラックリストハンターで

 ある、テルミ先生の弟子です、2人ともよろしくお願いします!」

 

元気いっぱいの笑顔と挨拶に、さすがの俺もたじたじだ。

そんな事考えてたら、俺の横にいるクラピカに肘でつつかれ、睨まれた。

何だよいきなり、あっ、自己紹介しろって事か。

 

「俺はアルベル、先日テルミさんに弟子入りさせて貰いました、よろしく」

「僕はクラピカ、アルベルと一緒に弟子入りしました、よろしくお願いします」

「はい! よろしくです!」

 

年下の女の子って何か新鮮だな。

何かクラピカが少女をジッと見てるが、とうとうクラピカもそんなお年頃か……。

違うか、クラピカはなにかユリアンを観察してる感じか。

 

「自己紹介は終わりましたね、ユリアン、電話で言ったように、部屋の方は

 片付けて置いてくれましたか?」

「勿論です!」

 

ユリアンはテルミにめちゃくちゃ懐いてるな、テルミのどこがいいのやら、短い間だけど一緒にいたが、テルミの怪しさは未だに拭えないぞ。

 

「クラピカ君、テルミ君、2人の部屋に案内しますのこちらにどうぞ」

「先生! そんな事は私やりますので、休んで下さいです!」

「いえ、そろそろ夕食の時間なので、其方の方を頼みます」

「わかりました! 今日は先生の好きなご馳走いっぱい作りますね」

「ありがとうございます。クラピカ君とアルベル君の分もお願いします」

「……はい!」

 

ん、一瞬ユリアンに睨まれた気がするが気のせいか、きっと気のせいだな。

 

「どうされました? こちらですよ」

 

俺達は広めの一室に案内された、部屋には家具も一通り揃っており、全てが新品だ。

テルミにその事を聞いたら、家具の全てを前の街のホテルに滞在中に電話で注文して用意してくれていたらしい。

テルミって実はいい人なのでは? と一瞬思ったがそれはないか。

 

「この部屋はご自由に使ってくれてもかまいません、何か足りない物があったら、

 自分に言って下さい、来月にはお給料の方もお渡ししますので」

「きゅ、給料っすか?」

「いずれあなた達2人は自分の仕事を手伝って貰いますので、それの投資です。

 年齢関わらず、お金は必要ですからね」

 

この人常識人なのでは、いやいやそれはないか。

 

「テルミさん」

 

クラピカがテルミに話しかけた。

 

「はい?」

「あの子がそう何ですか?」

「そうです、クルタ族の村で話した弟子入りの条件の一つですが、アルベル君は

 勿論覚えてますよね?」

「はい、当然覚えていますけど」

 

テルミが弟子入りの条件で出した最後の一つ。

『テルミの弟子と仲良くする事』

とりあえず頑張ります、とだけ返事したが、なぜそれが条件なのかいまだに謎だ。

ユリアンの印象は悪い訳ではないし、同じ立場、テルミの弟子何だから、それなりに仲良くはするつもりだ。下心は一切ない。

 

「……頑張って下さい」

 

コイツ何か隠してやがる、ユリアンは何か問題でもあるのか。

クラピカはテルミが何かを隠しているのか察知して、鋭い目つきでテルミ見る。

テルミは何も答えない、どこ吹く風だ。何も言わないつもりだな。

 

「自分は荷物を片づけないとダメなので、それでは、後夕食はユリアンが

 呼びに来るまで待っていて下さい、それまでごゆっくりと」

「あ、ちょっと!」

 

結局テルミは何も言わずに出て行ってしまった。 

怪しい……、ユリアンに一体どんな秘密が。

 

「どう思う、クラピカ?」

「よくわからないけど、あの子何か違和感があるんだ」

「違和感?」

「うん」

 

違和感か……、さっき睨まれた気がしたが、あれは気のせいじゃなかったかもしれないな、でもなぜだ。

 

「はぁ、クラピカとりあえず荷物片づけようぜ」

「……そうだね」

 

疑問は残るが、同じ弟子何だし直ぐに疑問は解決するだろ。

俺とクラピカは荷物を片づけ、余った時間で雑談していると、ドアがノックされた。

 

「はい、どうぞ」

 

俺がノックに返事をすると、ユリアンが部屋に入って来た。

違和感、クラピカが言っていた違和感が、俺でもはっきりわかる。

まずさっき見せた笑顔なんて一切ない、明らかにダルそうな面倒くさがってる顔だ。

 

「おい、カス共」

「え?」

「飯が出来たぞ、本来ならお前ら何かに喰わせる豚の餌何かねーが、

 先生が作ってくれって言ったから特別サービスだ、感謝しろよ」

 

時間が止まったような感覚に陥った。

これがさっきの元気いっぱい、笑顔いっぱいの少女なのか……。

 

「聞いてんのか? 間抜け面しやがって、飯が出来たんだからさっさと来い

 お前ら如きが先生待たせてんじゃねーよ、ボケが」

 

辛口なんてレベルじゃないぞ、言葉全てに毒が入ってる。

心が弱かったら瀕死になりかねんぞ。

 

「ユリアン」

「あっ? 何だカマ野郎、いきなり呼び捨てか、コラッ」

「そういう言葉使いはよくないと思う、女の子なら尚更だ」

 

クラピカ真面目だな、つかそこかよ。

もっと言うべき事があるだろ、暴言とか暴言とか暴言とか。

ユリアンの顔が心底愉快そうな顔に変わる。

 

「ハハッ、女の子? 誰が? どこにいるんだそんなの?」

 

ユリアンが俺達をからかうような感じでキョロキョロ部屋を見渡す。

嘘だろ、まさかユリアン、まじか。

 

「……ユリアン、君まさか」

「先入観に捕らわれてんじゃねーよ、アホ共、俺が女なんていつ言ったよ、

 先生も言ってねーだろバカが、俺はれっきとした男だ、見せてやろうか? ん?」

 

俺とクラピカは何も言えない、言葉が出ない。

可愛いらしい顔でとんでもない毒を吐いたのが一撃。

見た目は完全に超美少女なのに、まさかの男だった発言で二撃目。

立ってられない程、精神に凄まじい衝撃を与えられた。

 

「3人共何しているんですか?」

 

テルミが一向に夕食を食べに来ない、俺達が気になったのか、それともこの光景を見に来たのかわからないが、何時の間にか開けっ放しのドアの手前にいた。

 

「先生、ちょっとお喋りしてました、ごめんなさいです」

「かまいませんが、せっかくユリアンが作った夕食が冷めてしまいます」

 

ユリアンは一瞬で、可愛いらしい笑顔に早変わり、もう完全に別人。

それだけ言うとテルミは先に居間の方に行ってしまった。

 

「……テメーラ、つまんない事を先生に言ったら、ーー死ぬぞ?」

 

この目はまじだ。

そう言ってユリアンも行ってしまった。

 

「僕達も行こう」

「あ、ああ、そうだな」

 

これから先、あれと仲良くしないとダメなのか、テルミの奴ろくでもない条件を出して来やがったな。

テルミ、やっぱり信頼はできなさそうか。




駆け足気味な展開です。

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