「参ったな。手で洗う時の身体の洗い方なんて、よく分からないんだけど」
それはそうだ、男が身体を洗うときは大体がタオルかスポンジでわしわし洗うのが通例だ。
肌に傷をつけないように手で洗うような事は、めったに行わない。
「しょうがないわね、私が教えてあげるわ。大神さん、手を出して」
仕方がないかと嘆息する曙。
先ずはボディソープを大神の手の平に出す。
「大神さん、手のひらの中でボディソープをよく泡立てて。ここで泡立てが足りないと洗うとき、泡立ってないボディソープが直接肌について肌を痛めてしまうの。だから良く泡立ててね」
「あ、ああ……こんなもんでどうかな?」
曙の言う通り手の中でボディソープを良く泡立てた大神は、自分の手を曙に見せる。
「うん、そんなものかな。じゃあ、後はその手で……私を……洗って」
再び曙は背中を大神に向ける。
「じゃあ、行くよ。曙くん……」
男の人に素肌を直接手で洗ってもらうような経験、曙にはない。
しかし女の子の素肌を直接手で触れるなどと言う経験、勿論大神にだってない。
背中を向けて大神に触れられるのを待つ曙。
そんな曙にゆっくりと手を伸ばす大神、どちらも顔は真っ赤だ。
そして、曙の肌に大神の指が触れた。
「ひゃんっ!」
背中に触れられた、それだけで曙は感じて小さく声を上げてしまう。
「ゴメンっ! 曙くん、爪でも当たったかい?」
「う、ううん……初めての感触だったから、びっくりしちゃって……大神さん、続けてもいいよ」
「分かった、じゃあ曙くんの背中を洗うから」
そう言って大神は曙の背中を手で洗い始める。
先ずは両手で円を書くように肩口から肩甲骨にかけて洗っていく。
「んっ……んぅっ……」
ただそれだけなのに、曙は感じてしまって仕方がない、必死に声が漏れるのを我慢していた。
自分の手で洗うときはなんでもなかった、何にも感じなかった作業なのに、それが大神の手でされるだけでここまで感じてしまう。
「特に気持ち悪い個所はあるかい? そこを重点的に洗うけど」
大神が耳元で囁くが、その声にすらクラクラきてしまう。
身体中から力が抜けていってしまう。
「う、ううん……だ、大丈夫だから……」
もう、背中に触られた気持ち悪い触手の感触なんてどこかに行ってしまった。
大神の手の優しい感触しか、今の曙は思い出すことが出来ない。
「よいしょっと」
そんな曙の状態に気付かず、慣れてきた大神は何度か手にボディソープを補充しながら、次第に背中の下のほうに手を動かしていく。
そして腰の辺りまで洗ったところで大神は一旦背中から手を離す。
「うん、これで背中は終わりかな?」
大神の手の感触が感じられなくなって、急に寂しくなった曙は後ろを振り向く。
「え? ええっ?」
「いや、だから、背中を洗うのは終わったよ、曙くん。一旦シャワーでソープを流すかい?」
「え、あ、ええと……そのまま他の場所も洗って……」
大神の手の感触を堪能する事に全神経を集中していた曙は反応が遅れる。
けれども、まだ粘液で汚れた所がある以上、全部洗ってからシャワーで流した方が綺麗になれる。
そう考えて、腕を横に上げる。
「次は腕をお願い……大神さん」
「分かったよ、曙くん」
続いて曙の両腕を片腕ずつ、大神は丁寧に洗っていく。
だが、ここでも大神は知らぬが故に容赦しない。
「ひゃうぅ……」
念のために指の間まで洗われたが、まるで恋人つなぎを何度も繰り返すように指の間を洗う大神の手の動きに、曙は大神と恋人になった気すらしてしまう。
それでも胸元には触れないように両腕を洗い終える大神。
「よし、これでオシマイかな?」
背中を向けて椅子に座っている曙をこれ以上洗う事は出来ない。
大神は一仕事終えた気になって一つため息を吐く。
だが、曙にしてみたら冗談ではない。
「な、何言ってるのよ! ここからが本番! 触手に嬲られたお尻とか、む、胸の辺りとか……」
「いいっ!? いや、流石にそれは不味くないか、曙くん!? 俺は男で、君は女の子、しかもとびっきり可愛い女の子なんだぞ!」
「えへへ……私が、可愛い、しかもとびっきり」
大神が常識に則った発言をするが曙は殆ど聞いちゃいない。
「もし、いや絶対にそんな事はしないけど俺が曙くんによからぬ事を考えたらどうするんだい?」
「大丈夫よ、私、大神さんの事信じてるもの……それに、大神さんなら、私、抵抗しないし」
曙の発言は最後のほうは消え入りそうな小さな声だったので、大神には聞こえなかったが、曙は大神がそんなえっちな事はしないと信じきっているようだった。
ここまで信頼されているのに、ダメだといったら、曙を傷つけてしまうかもしれない。
大神は観念して曙の全身を洗う事を決めた。
「はぁ、分かったよ。じゃあ、曙くん背を向けたまま立ってくれるかい? 足からお尻の方まで洗うから」
「うんっ」
その場に立ち上がった曙の足を、下から洗い上げていく大神。
流石に大神の手の感触に少しは慣れたのか、曙は若干くすぐったそうにしながらも大神の手を受け入れる。
「きゃっ」
「…………」
ところがどっこい、今度は大神の方がかなりテンパッていた。
何故なら少し視線を上に上げるだけで曙のお尻が超至近距離に見えるのだ。
大神とて完全無欠な聖人ではない。
身体が勝手にお風呂場に動いたり、身体が勝手にラブラブな合体技を発動させたりしているのだ。
曙がくすぐったそうに身じろぐ度、目の前でふるふると震えるお尻を目にするたびに、大神は自分の理性がガリガリとチェーンソーで削られているような感覚になってきた。
これを今から洗うのかと思うと、正直気が遠くなる。
そうこうしている内に曙の太ももまで洗い終えた大神。
もう一度、曙に確認を取る。
「本当にいいんだね、曙くん? 俺が君のお尻を洗っても」
そういわれると途端に恥ずかしくなってくる曙、いや性格には太ももの内側を洗われている段階でもう恥ずかしくて死にそうだった。
でもここまできたら、毒喰らわば皿までである。
「もちろんよ。大神さん、お願い!」
「分かった」
その答えに答えて、一旦太ももから手を離して、曙のお尻に触れる大神。
「きゃあぁっ!?」
やわらかい。
それが大神が曙のお尻を触って第一に感じた感触だった。
そして、曙の可愛らしい反応には極力心を乱されないように、背中と同じように円を描くように洗おうとするが、曙のお尻は背中とは違いふにふにと大神の手に合わせて形を変える。
「きゃん……ひゃぅ…・・・いやんっ!?」
オマケに曙はお尻を洗われる度に愛らしい声を上げて、大神の理性をさらにガリガリと削る。
もう俺、ゴールしてもいいよね?
そんなことすら考え始めようとしていた大神だったが、なんとか曙のお尻を洗い終える。
「はぁ……はぁ、これで終わりだよね?」
正直、大神の理性はもう限界に近い。
これ以上何かハプニングが起きてしまったら、暴発して曙を傷つけてしまうのではないかと気が気でなかった。
「あと、身体の前、胸の辺りも洗って……」
「ゴメン、流石に曙くんのおっぱいを見るのは、いくらなんでも出来ないよ!」
「じゃあ、後ろから抱きしめるように洗ってくれればそれで良いから……きゃあっ!」
そう言って再び椅子に座ろうとした曙だったが、足の指先まで洗われた状況では流石に風呂のタイルに滑ってしまう。
「曙くん!」
このままでは曙が後頭部を打ち付けてしまうと感じた大神は、曙を後ろから抱きしめる。
大神の腕は曙の胸に優しく触れていた。
意図せずして、大神は曙の胸の辺りを洗っていた。
けれども、曙にしてみたら、大神の凛々しい顔がすぐ傍にあることに気が行ってしまった。
このまま身体の前側を洗ってもらえば終わりなのだけど、大神にしっかりと抱きしめられたこの状況から離れたくない。
このままで居たい。
これからも大神とこんな風に過ごしたい。
そんな考えが止まらない。
「大丈夫かい、曙くん?」
「うん、大丈夫……大神さん、あのね?」
熱に浮かされたような気分で、大神の名を呼ぶ曙。
もう自分を止められない。
「私、大神さんの事が……一郎さんのことが……す――」
そうして決定的な告白の言葉を曙が口にしようとしたとき、
「曙ちゃん! 大神くんと一緒にお風呂ってどういう事ですか! それは私の専売特許です! って、二人とも何抱き合ってるんですかー!! お姉さんは許した覚えありませんよ!!」
「隊長ー! 私がダメで曙がOKだなんて納得いきマセンー! 私も洗ってくだサーイ!!」
鹿島と金剛がお風呂場に乱入してきた。
大神の帰還と現在の居場所を大淀たちから聞きだして突撃を敢行したのだろう。
告白を不意にされる曙だったが、
「あ、あ、あたしったら、なんて事を言おうと――」
自分が雰囲気に流されて、とんでもないことをしようとしていた事に気付き身悶え、お風呂場の外に走り出る。
「ねえねえ、なんて事ってどんな事?」
「それは――言える訳ないじゃない!!」
勿論、青葉や漣にからかわれる曙であった。
やっぱ流石にR-15タグは付けた方がいいですよね?
出来る限り直接的な表現とヤバイ個所は避けるように書いたつもりなんですが、無理でした。
それはそうと、これ他の艦娘に知られたら、曙も魔女裁判対象じゃね?www
P.S.活動報告で行っている閑話のアンケートですが、十五話が次回で締めとなりますので10/10 24時で締め切りたいと思います。
まだ、アンケートに回答されていない方が降りましたらお早めにお願いします。