それから数時間、作戦の詳細に付いての会議が行われた。
日時、準備期間など大まかなところは決まっていたが、詳細に付いての詰めは当然必要だ。
特に重要なのがどの艦娘を以ってどの作戦に当たるかである。
本来であれば強襲作戦にこそ自らの国の艦娘を当てたい。
それゆえに各国共に自慢の艦娘をこの会議に集めていたのだ。
しかし指揮官が日本人であり、艦娘が第二次世界大戦において就役していた艦の記憶・能力を受け継いでいる為、艦娘も日本と比較的なじみの深い旧枢軸国の艦を持って当たるべきだろうとの意見で固まろうとしていた。
だが、英国の将官は引き下がらなかった。
「基本的な考えはそれで良い。だが、我らの艦娘の中にもオオガミと好相性の艦が居るやも知れない。逆も然り。多少時間がかかっても、実測を以って決めるべきではないか?」
「そうだね、英提督の言うことも一理あるわね。わかったわ、欧州の全艦娘の調査は流石に無理だけど、ここに居る全ての艦娘とムッシュの相性に付いては霊力の実測を持って決定しましょう」
逆に騒然とするのは艦娘たちである。
この場での実測で強襲部隊への参加・非参加が決定してしまう、ビスマルクはアワアワしている。
だが、大神の隣に座っているイギリス艦娘だけは平然としている。
思わず問いかける大神。
「冷静だね、君は」
「私の名はウォースパイト。イギリスのクイーン・エリザベス級二番艦よ、よろしくお願いするわ、オオガミ」
「ああ、こちらこそ宜しくお願いするよ、ウォースパイトくん。それで、なんで君はそんなに冷静なんだい?」
「いいえ、なんとなくだけど、あなたをはじめて見た時に予感がしたの。ああ、私はこの人の下で戦うんだって。それだけよ」
そんな風にウォースパイトと雑談をしていると、
「ムッシュ、霊力計測の準備が出来たよ。イギリスのレディを口説きたくなる気持ちはわかるけど、時間と場所を考えてくれないかね」
グラン・マのツッコミに会議場が苦笑に包まれる。
そして、艦娘との相性診断が始まっていった。
やることは単純、大神と握手を交わした状態での艦娘の霊力を測定するだけである。
先ず参考値として川内・鳳翔の霊力を計測したときは、欧州において今まで艦娘から計測したことがないくらいの霊力が測定された。
その結果にどよめく会議場。
「まあ、ここまでの霊力値を目指すのは無理ってものだろうけど、霊力が高いものから選抜する。それで良いね?」
その後、順に艦娘の霊力を測定していく。
当然、川内たちほどの霊力が検出される筈もなく、測定結果に落胆する艦娘たち。
今度はドイツ艦娘たちの霊力測定が始まる。
と、ビスマルクはいきなり大神の手を両手で包み込んだ。
「イチロー、私は大丈夫よね? 私、あなたの艦隊に入れるわよね?」
下から見上げるような縋る視線で大神を見やるビスマルク。
まるで、ご主人様においていかれる犬のような、捨てられる猫のような心細い声を出している。
と、ビスマルクからも川内には劣るがすさまじいまでの霊力が検出された。
「これは決まりだね、ビスマルクは確定」
その言葉を聞くや否や、ビスマルクは威風堂々とその金髪を翻す。
「当然の結果ね。いいのよ、イチロー、もっと褒めても」
凛とした佇まいを見せるビスマルクだったが、先程の態度が態度なだけにもはやギャグである。
「ビスマルク姉さま、それじゃ説得力ありませんよ……」
そうして、ドイツ艦娘は潜水艦であるが故に強襲部隊には入れないゆーを除いて全員の部隊入りが確定した。
続いてイタリア艦娘もドイツ艦娘ほどではないものの一定の霊力値を検出し部隊入りが確定。
そのほかの艦娘の測定も終わり、最後に残ったのがウォースパイトであるが、
「よろしく頼むわね、オオガミ」
と、ビスマルクと同様に大神の手を両手で包み込んだ。
その親しげな様子にビスマルクのまなじりが釣りあがる。
先程自分を放っておいて、ウォースパイトと雑談していたことも気に食わないようだ。
と、霊力計の測定結果が出たらしい。
その値を見てグラン・マが感嘆する。
「これは、ドイツ艦娘並みの霊力だね。英提督の言うとおり調べた甲斐があるってものだよ。ウォースパイトも決定だね」
「これでちょうど15人か、ちょうど良い数だな」
自分の国から強襲部隊へ参加する艦娘が出たことに、英提督も満足そうな顔をしていた。
その後強襲部隊の展開、制圧対象に付いての議論を終え、強襲部隊に付いての議題は一段落する。
しかし、全体の作戦会議としては他方面の作戦についてなど、決定しなければならない事は山積みである。
作戦会議はその日の深夜まで続くのだった。
その中、艦娘たちは首脳たちに連れて来られた目的も終わったと言うことで移動していた。
強襲部隊に選出された艦は少しでも交流を深めるようにと同室になっている。
しかし現在の目的は同じとは言え、かつては対峙したことも、撃沈された過去を持つ。
そのわだかまりは直ぐに解けるものではない。
沈黙が部屋の空気に満ちる。
川内と鳳翔はこういうときこそ大神が居てくれたらと思うのだったが、あいにく彼は作戦会議の真っ只中であるし、グラン・マ以外の欧州首脳陣とも交流を深めなければいけない。
こちらの部屋に来る頃には全て終わってからだろう。
どうしたものかと川内たちが迷っていると、ウォースパイトが発言した。
「みんなでティーパーティーをしましょう!」
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