「大神さん! 大丈夫? 怪我してない?」
ビスマルクたちを霊力技にて回復し、各艦がその結果を確かめている。
そうしていると、川内と鳳翔がこちらの位置を把握したらしく、合流してきた。
敵の中に単騎で向かう大神が心配だったのか、海を駆ける勢いのまま、大神に抱きつく川内。
「ああ、こっちは大丈夫だよ」
「良かったー。さっすが私の大神さんだね!」
抱き合ったまま、言葉を交わす二人。
「あ……」
その仲は実に良さそうだ、それが気にいらないビスマルクは憮然とした表情で二人を見ている。
大神の腕の中は自分のものだったのにと、言いたげである。
これで大神の日本での、シベリア鉄道での日々を知った日にはどうなることだろうか。
「もう川内さん、ドイツの方々が驚いていますよ。ドイツの皆さんはご無事でしたか? 私たちは大神さんと共に派遣された艦娘の軽空母 鳳翔と――」
「軽巡洋艦 川内だよ、よろしくねっ!」
大神から離れた川内と、鳳翔がドイツの艦娘たちに挨拶を行う。
空母であるグラーフにとって鳳翔の名前は琴線に触れるものだったらしい、感嘆の声が上がる。
「鳳翔……世界初の航空母艦と呼ばれる貴方とくつわを並べ戦うことが出来るとは、光栄だ」
「ええ、私の持つ経験を全て貴方たちに伝えます、よろしくお願いしますね。私自身はもう旧型になってしまうので戦闘ではそれほどお役に立てないかもしれないけれど――」
「何言ってるのさ、鳳翔さん! 艦娘は、大神さんのことを好きになればなるほど霊力による能力補正で強くなれるんだよ! 今の鳳翔さんならそんじょそこらの空母に負けたりしないよ!!」
「なんだって? そんなことで――」
まだ理論として発表されていない、有明鎮守府での噂話の段階なのに川内は大々的に話す。
ドイツの艦娘の表情は驚愕に彩られる。
確かに今の自分たちは今までにないほど力に満ち溢れている、そうすると自分たちはもう――いや、ビスマルクを救った大神に好感情を抱くなというほうが無理があるのだが。
ドイツ艦娘たちの表情が俄かに赤くなる。
「ちょっと、川内くん! そのことは未だ不明な点も多いから――」
「何言ってるのさ、大神さん。響ちゃん、朝潮ちゃんのことといい、一航戦、二航戦のことと良い、明石さんのことと良い、もうバレバレだよ? 今更隠したところでしょうがないじゃない」
「確かにそうなんだけど……いや、その話は後にしよう。ドイツのみんな、まだ一戦できる余裕はあるかい?」
「イチローの霊力技で全快したから、私は大丈夫よ」
「ビスマルク姉さまが大丈夫というなら、私だって!」
「ボクも大丈夫だよ、もう、ボイラーの整備は要らないかな」
「私もいけるわ」
「鳳翔もいるのなら、未だ航空戦もいけるな。大丈夫だが、ということはアドミラル――」
グラーフの問いに大きく頷く大神。
「ああ、君たちが遭遇した深海棲艦を逆撃して叩く! もし、あれだけの数の深海棲艦を放置し離脱したならば、北海近隣の港が危険になる。北海に住まう全ての人々の為にも、深海棲艦を殲滅する!! グラン・マ、宜しいですね?」
『ああ、ムッシュの言うとおりだね。地中海奪還作戦における後顧の憂いを絶つ為にも、ここは離脱よりも逆撃すべきときだよ! ドイツ軍の了解は私が取った。少々早いけれど、ドイツの艦娘はムッシュの指揮下に入ってもらう!』
「「「了解!」」」
グラン・マの通信を受け、ドイツ艦娘が答える。
これから艦娘たちの逆撃が始まる。
戦闘までのクッション回なので短いです。すいません。
あと、これからの戦闘に付いてアンケートを活動報告で行っています。
宜しければ活動報告をご一読いただけると幸いです。