リメイク版:技術チートとロトムってどう思います? 作:4E/あかいひと
「うしっ、俺の勝ち! ありがとよホノオ!」
「ッシャーモッ!! (ヘッ、朝飯前よっ!!)」
自慢げな相棒の声に、さらに嬉しくなりながら、俺は握手をする為に対戦相手に近づく。
「楽しいバトルだった。ありがとう」
「こ、こっちこそ…………同い年に負けたのは悔しいけど」
まあこっちは既にある程度まで育ったメンツだったのと、多少は俺も慣れてるからついてしまった差があるからな。
「てなわけでコレ。今見た限りの君のヨーテリーの適性とかオススメの鍛え方とか纏めたの。良ければどーぞ?」
「え、いいの?」
「もち、ぶっちゃけ本職はトレーナーじゃなくて研究者だし。でも君は違うだろ?」
「あ、ありがとう! 参考にしてみる!」
「んじゃまぁ…………ポケセンまで気を付けて?」
まあ、そんなこんなでこんちゃー。初のトレーナー戦(チェレンは除外)で見事勝利を収めたトウヤですん。
「さあしかし、そろそろ日が暮れるでなぁ…………今日はここで野営すっか」
『トウヤのアレを使って、野営って言えるのならね』
まあ、そんな発言をロトがしてしまうのも無理はなく。
「えいっ」
一つ、カプセルを投げるとそこから煙と共にプレハブちっくな建物が現れる。
災害時の居住空間を提供する為に作って、それが野営に転用できると気がついてそっち方面で作り直した『どこでも寝れる君マーク2』原価1万円。俺やパルキアの力技を使うことなく今ある技術の応用で空間拡張をしているため、ガワで判断すると3畳ぐらいしかないように見えるが、1LDKのアパートの一室ぐらいの中身である。テレビは無いが、基本的な家電は揃っているし、風呂もトイレも完備。排水に対する浄水処理も完璧。発電設備もあるので不便ではないが、水に関してはまだ問題の残るところであり、近くに水源がないと満足にトイレができない。今ある技術縛りだと、やはり限界があるな…………ある程度進歩させることも考えようか。
「まあ今回は水だけ矢鱈に溜めた空間に接続して動かすけどね。どうしようかねぇ…………」
『最悪、ポケモン達に協力してもらうって手もあるけど』
「アホウ。確かに水ポケの技は無から水を生み出す技もあるけど、水ポケ自身の活動活力だって無限ではないんだぞ」
『そりゃそうだけどさぁ…………そういう非常事態だとポケモンのほうだって何か力になりたいはずだよ?実際水ポケの消防隊はいるし、彼らの業務の中には非常事態での水供給だってあるわけだし』
「うぬぬ…………」
しかしだな…………もっとこう、やるからには完璧を目指したいのが技術屋の性というか…………くそう、水ポケの無から水を生み出すあのメカニズムを現代の技術に落とし込めないのが悔しい。
『凝り性だねぇ…………とにかく、ちょっとお腹すいたし、クッキーバーもらえる?』
「あいよ。いつものビリビリペッパーレモンね」
技術チートの所為であまり出番のないクッキーバー生成チート。こういう相棒達のおやつに困らないのは助かるんだけど。タライチートは金属生成チートに変わり果ててはいるが大活躍だし。
『ん”ん”ん”ん”。この痺れる感じがおいしいよねぇ……♪』
『……毎度思うが、ロトはよくそんなの食えんなあ』
『激辛大好きなホノオには言われたくないね』
『どっちもどっちよ』
「…………あはは」
乾いた笑いを浮かべながら、トロピカルフレーバーのバーを口に放り込む。うむ、美味い。
『よし、エネルギー充填完了! じゃ、今から晩御飯作ってくる!』
「おー。張り切り過ぎんなよー」
ウチの炊事担当はロトさんである。キッチン家電にも取り憑くものだから、物は試しと料理について母さんと一緒に教えたら思いの外のめり込んでしまい、電化調理器具を完全に使いこなす素質と、ゴースト故にエスパーのように物を動かすその能力と、何より炎タイプ真っ青の熱意も合わさり、中々の料理の腕を持つに至ってしまったのである。
ともかく、そんな張り切ってプレハブの中に消えていくロトを見送り、俺たちは俺たちでそれぞれの仕事をしようと動き始めようとすると、
「…………変なところにプレハブがあると思ったら、やっぱりアンタ達だったのね」
「タージャ」
「んお? トウコにツタージャか。奇遇だねぇ」
いやまぁ、奇遇でもなんでもなく、普通はこのぐらいのペースかな? ってことだけど。
「それにしてもトウヤ、まさかこれで寝泊まりするつもり? この先ずっと?」
「まあ、実際の使用感とか手直しとか改良とか加えていきたいし、多分?」
「はっ! 旅の醍醐味もへったくれも無いわね! こういうのは、野宿して不便を楽しむのがいいんじゃない!」
「と言いつつ本音は?」
「ぶっちゃけ羨ましいわよ、風呂には入れなくてもシャワーは浴びたいし」
まあ、そうでしょうね。
「なんなら、使ってみる? まだ身内でしか試してないし、トウコの意見ももらえると助かるかな」
「本当にいいの?」
「ケチる理由も無いですし」
「分かった、ありがとうトウヤ。そうね、お礼はご飯でも作ってあげるわ」
そう言ってルンルンとプレハブに入り、目に入った光景に卒倒する5秒前のことだった。
◇◇◇
「…………美味いわね」
「そりゃあ、ウチのキッチン担当ですもの」
『それでもトウヤママの味には追いつけないんだよねぇ…………』
「サンヨウジムで厨房担当で勤務経験ありって言ってたし、ある意味その道のプロだから仕方ないんじゃ」
「あー、そういえばそんなこと言ってたわね。もしかして、ロトはトウヤのお母さんに?」
『だよー。一応最初はトウヤにも教えて貰ってたんだけど、もうトウヤより上手になっちゃったし』
「うるせ! 男の料理なんてな、多少雑でも味付けしっかりしてたらいいんだよ!」
あ、でもサンヨウジムのリーダーは男だよねって言う言葉は聞こえないからよろしく。
『そんじゃま、後片付けはお願いね。僕は外でみんなと遊んでくるから』
「おういてらー。今日もおいしかったぞ」
「ごちそうさまロト。ありがとうね」
『いえいえー』
そう言って、ロトはフヨフヨとその場から撤退していく。
…………おいコラ、そのニヤニヤを消せ。
「それにしても、一気に家に帰ってきた気分ね」
「内装は参考にしている上に、いつも通りお前と俺だもんな」
あと、ここにチェレンとベルがいたら大騒ぎが始まるんだけどな。
「んで、何が心配なのさ?」
いつもは饒舌、とはいかないまでも結構話すトウコがらしくなく口が少ない。
「…………嫌なものね、こうも簡単に察せられてしまうのって」
「それだけ付き合いが長いってことさ。ほれ、キリキリ話せ」
とはいえ、だいたいは分かるけど。
「正直に言うと、すっごい不安なのよね…………私、なんの目標も無く旅に出ちゃったから」
「なんの目標も無く、ってのはちげーだろ。まあ、達成しちゃったから次の目標が無いだけで」
元々、旅に出たいと口を酸っぱくしていたのはトウコ。今時な若い子らしく、田舎なカノコタウンを飛び出したいという気持ちが大きかったのは、彼女である。
で、そんな親友の声に賛同したから、同じタイミングで、同じ様に出発できる様に、俺らも目指したんだけど。
「チェレンには、目標があるでしょ? チャンピオンになりたいって言ってたし。昔みたいに強さに固執はしないけど、目標にしてる人の背中を目指すって、気合入れてたものね。ベルだって、たくさんのポケモンと一緒に冒険したいって言ってたから、これからその目標を達成する為にいろんな出会いを重ねていくはず。トウヤもこんな風に、便利なものを作ろうって頑張ってるし。私だけ、何も無いな…………って思うと、ちょっとね」
いつに無く弱った声で笑いながら、彼女は紅茶に口をつけた。ふむ…………。
「ぶっちゃけ俺にだってあの2人にある様な大層な目標があるわけでは無いんだけど。トウコにそんな風に見られてるなんて知らんかった。正直、相棒達と旅して、面白いものでも見れたらいいなってレベル。だから、その程度でいいんじゃない?」
「…………いいのかしらそれで」
「いいんだよ多分。あてのない旅だってある。自分探しの旅だってある。勿論、目標を達成する為の旅だってあるけど。人生と同じで、旅だってその人その人のものであるべきだと思う。だから、初っ端からそんなに不安にならなくても大丈夫だ」
一息ついて、俺も紅茶に口をつけ潤す。うん、我ながら美味い。
「全く、トウコちゃんは昔から心配症ですねぇ」
「うるさい。いつもやりたい放題のアンタよりはマシよ。…………でも、ありがと」
「お気になさらず」
他ならぬ親友の悩みですもの。聞いてあげるぐらいわけないってことよ。
「さて、明日も早いだろうしもう寝たら? 一応、ベッドあるからそれ使って」
「嫌よ、流石にアンタが使うべきよ。私は床で寝袋でいいわ」
「
「…………え?」
「なんでもねーよ。ほらほら行った! こちとらメンテが必要な機械がいくらかあるんだよ!」
そう言って、俺はプレハブの外へ、逃げる様に飛び出した。
「…………ヘタレ」
◇◇◇
レポート
場所:2番道路
見つけたポケモン:ヨーテリー
精神状態:真っ赤
感想:ノーコメッ!!
ロトの一言:やーい、超ヘタレー♪
To Be Continued…………
久しぶりの作品に手をつけるととても楽しい件について。
あとホノオと加速レッドが被って仕方が無い。