リメイク版:技術チートとロトムってどう思います?   作:4E/あかいひと

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元『忙人K.H』のレッドゾーンです。
この度は申し訳ありませんでした。
詳しくは、活動報告をお願いします。


レポートその1-モブ転生を希望してたのに『トウヤ』ってどう思います?

 

転生チートと聞けば、いろんなモノを思い浮かべる。

 

魔力最高だとか、伝説の武具だとか。他にも銀髪とかオッドアイとかニコポナデポとかetcetc…………。

まー、そんなのはどーでもいい。腹の底からどうでもいい。

 

で、なんでこんなことを言うのかと言いますとだね、なんかそんな状況になってんのさ、俺が。

 

…………あえて言おう。どうしてこうなった!!?

 

「さー早く座って座って。後がつかえているからね」

 

そんな俺の内心なんぞ知ったこっちゃねーと言わんばかりに、会社の最終面接みたいなセッティングをされた部屋で、灰色スーツを着た胡散臭い御仁が面倒くさそうに先を促した。

まあ、説明ぐらいはしてくれるのだろうから、おとなしく従うは従うけれどね。

 

「は、はぁ…………それでは失礼して」

「はいはい。それでは手短かに行きますからよーく聞いててくださーい」

 

そう言ってそのお方は何かの箱を『デン☆』と置いた。まるで漫画の効果音である。

 

「単刀直入に言うよ? 君は死んだんだ。で、善行を積み重ねたわけでも、悪逆非道でもなかったので、天国にあげるか地獄に堕とすかまよってんだよ。最近こういった人が多くて困るんだよね~マジで。お陰で僕の仕事が増える増える。せめて悪行でもして地獄に堕ちればよかったのに」

「は、はぁ…………」

 

いや確かに死んだぜ?

橋の上でバナナの皮で滑って川に落ちて溺死したって記憶はある。

別に、カナヅチだったわけじゃない。むしろ、人並み以上には泳げる。小さい頃にスイミングスクール通ってたし。でも、冬なモンで厚着してた。それが水を吸うという形で仇となり、さらに急に冷えたから両脚が攣るという不幸の連続パンチとでもいう出来事に見舞われ、為すすべなく僕は溺れて今に至る。

 

や、善行は言うほど積まなかったぜ? それに関しては認めるさ。人間として間違ってたんだろう。

だけど、悪行でもして地獄に堕ちれば? なんて言うのはどうかと思うぜ。あと仕事はちゃんとしなさい。

 

「んで、ただただもう一度生まれ変わらせてもツマラナイから、ほら、君らがよく妄想する創作物にチート持って転生するってなことをやらせているんだ。いやー、上になかなかコレのウケが良くてねー。観賞してるお偉いさんが増える増える。…………そのせいで僕らの仕事も増える増える」

「…………観賞、ですか」

 

まー見世物としては面白げな物であることは確かにそうだと思う。そういう二次創作の作品も読んだことあるし、面白いよね。やってることはそれと同じか。スケールが違い過ぎるだけで。

 

「そういうことそういうことー。僕ら…………ってか、僕らの上の人達は楽しめる。君達も、チートを使って楽しめる上に新たなチャンスが与えられる。ね、WinWinなシステムでしょ?」

「…………え、ええ」

 

…………うん、まあそうと納得しようかな。

 

「で、この箱からボールを取り出し、そこに書かれているチートを、君は得ることになる。ここまでは大丈夫?」

「はい、理解しました」

「よろしー! 物分かりの良い人は大好きだよ! 手間かからないし!」

 

…………そ、そんな輝く様な笑顔で言われても反応に困るというか、なんというか。

 

「あそうそう、言い忘れてた。判断のつかない微妙な君達だけど、その中にも3つの区分が存在してだね」

「…………?」

 

分からないので、空気で先を促す。

 

「えっと、微妙に善人枠と本当にど真ん中枠、そして微妙に悪人枠の3つだね」

「は、はぁ…………それで何か変わったりすることがあるので?」

「大アリだよ! 具体的には貰えるチートの数に差が出てくるの! 微妙な善人は3つ、本当にど真ん中なのは2つ、微妙な悪人は1つってね」

 

ほへぇ〜…………一応其処は差を付けるんだ。

 

「あ、あの…………因みに俺は?」

「君は微妙に善人枠さ。やったね、チートは3つだよ!」

 

…………微妙でも善人だったことに喜べばいいのか、微妙なことに悲しめばいいのか…………まあ喜ぶことにしようかな。お陰でチート3つだし。

 

「さて、じゃあそろそろ引いてもらおうかな?」

「分かりました」

 

落ち着いて、箱の穴に腕を突っ込み、直感に従ってボールを選ぶ。

 

「あ、そうそう。チートには当たりハズレがあるからね」

「ハズレ?」

 

あの、土壇場でそういうこと言うのやめてもらえませんかね? 結構冷や汗出てきたし。

 

「そ。例えば『涎が野菜ジュースになるチート』とか、『気合を入れると頭からお花が咲くチート』とか『3歩あるけば棒に当たるチート』とか」

「それはチートとは言わねえよ!!? 嫌がらせに近い、ってか嫌がらせそのものだよ!!!」

 

なんて宴会芸チックな特典なんだ…………涎が野菜ジュースとか勘弁だし、頭からお花とかもはやネタでしかねーだろ!!? ついでに言えば棒に当たるのは最早呪いだ!!! …………なんだろう、引くのが怖くなってきやがった。

 

「…………でもまあ、引くしかないか」

 

と、まず一発目。ドキドキしながらボールを取り出し、書いてある文字を読む。

 

「…………『栄養補助食品チックなクッキーバーを無から生み出すチート』」

「お、まーまーじゃない?」

 

…………食いっぱぐれるコトが無くなることを喜んだ方がいいのか? 口の中パサパサすることを除けば、別にその手の物が嫌いなわけでもないし。当たり枠とみて良いだろう。

 

まあいい、二発目。ハズレさえ来なければ良いやと、気楽に引いてみた。

 

すると、

 

「『技術チート』?」

「おおっ! 大当たりだよそれ! 資材と設備さえあれば、創作物や、自分の妄想の産物も含めてほとんどのモノを作れる頭と腕を得られるチートだよ。まあ逆に、資材がないと何もできないのが難点かな? まあなんにせよ最高クラスのチートだよ!」

 

おおう…………すげぇのきた。

よっしゃ、このノリで最後のもいいのが来い!

 

てなわけで三発目!!

 

「…………『種類、材質を問わないタライを、突如降らせるチート』」

 

…………What? タライって、あのタライですか?

 

「あー、それギャグ系では汎用性高目のチートだね。無限の剣○のタライバージョンとでも思っておけば」

「え、なにそれ。まさか『身体は盥で出来ていた』とかやっちゃうの?」

「『固有結界』じゃないから其処は安心して」

 

…………ネタ性は強めだが、『気合を入れると頭からお花が咲くチート』じゃなくてよかったと考えよう。いや、本当にその手のやつが出なくて良かった。

 

「さて、チートも決まったところで次は転生先の世界を決めてもらわないとね」

 

チートくじ引きを直し、今度は一回りデカい箱が『ドン!!!』と置かれた。

 

「さあ引きなさい、今すぐ引きなさい」

「ちなみに、中に入ってるのは」

「ごっちゃごちゃ。平和そうなところから死亡フラグが乱立するところまで」

 

…………死亡フラグが乱立は、勘弁して欲しいかな? まあくじ引きだからどうしようもないんだけどさ。

 

意を決して、箱の中に手を突っ込む。

そして、コレだ! と思ったものを引き上げた。

 

『ポケットモンスター:世代BW』

 

なんというか、安心した。

主人公やプラズマ団に関わらなければ、俺は間違いなく平穏に暮らせる。そんな確信を、抱いた。

 

少々ロボットとかが好きな以外極々普通の一般高校生だった俺のことだ、間違っても事件の大筋に関わるような位置に生まれ変わることはないはずだ。

 

それにしても、だ。

 

「……………………俺今の状況を受け入れ過ぎじゃね?」

「そうだね。まあ僕としては仕事が楽で助かるけれど」

 

なんというか、ねえ? 精神異常者のような気がしてくるから嫌だ。

 

「あ、そこは問題無いよ。多分場の雰囲気に流されやすいだけだから」

「あ、さいで」

 

それはそれで問題がある様な気がしてならないけれど。

 

なんにせよ、ポケモンだ!

とりあえず、ルカリオに会いたい!

バシャーモとチラーミィでも可!

 

「心の準備はできたかい?」

「はい!」

「じゃあ、いってらー」

 

瞬間、床が開いた。

 

「あははははっ! 君の次の一生が良きものになりますようにー!」

 

穴に落ちる僕の顔を覗き込む例の御仁は、何故か勝ち誇ったかのようにニヤニヤしていた。

 

だがしかしこの様なテンプレ、俺が予測していなかったと思ったら大間違いだ!

 

「わぁ───落ちるぅ───(棒)」

 

そもそも、死なないと分かっていたらこういうのはあまり強くないのだ。スピード狂だし、高いところもまあまあ好きだし。

 

そんなことはともかく、落ち着いた一生を送ろう。また転生するとか嫌だから、なるべく善行をしながらね。

 

そう決意しながら、意識が薄れるまで僕は落下を楽しんでいたとさ。

 

 

◇◇◇

 

 

「な、なんかツマラナイね…………じゃあ少し嫌がらせをしようかな?」

 

 

◇◇◇

 

 

信じてたんだ。

 

チートはともかく、平穏に過し、ポケモンと戯れる人生を。

可愛いポケモンに囲まれて、なんかの工具店でも開いて、平々凡々と暮らす予定だった。

 

だが…………これはどういうことだ?

 

「トウヤー、朝ごはんよー!」

「…………いまいくー」

 

下からトウヤ君の母さんの声が聞こえる。

と言うか、今は混乱しているけれど落ち着いて情報と記憶を整理して行くうちに、俺の名前はトウヤであることが判明。

 

確か、トウヤって……………………。

 

「…………主人公?」

 

 

 

 

…………嫌な汗が吹き出た。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

レポート

 

場所:カノコタウン

 

見つけたポケモン:なし

 

精神状態:異常

 

一言:たすてけ

 

 

To Be Continued…………

 


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