特殊船団護送艦隊 船団護衛戦記 第四次北インド洋海戦   作:かませ犬XVI

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序章

 かつて、世界を二分する地球規模の戦乱があった。後に第二次世界大戦と呼ばれるその戦乱において、日本国、旧名大日本帝国もまた、その戦火の真っ只中に馳せ参じていた。だが、ドイツ第三帝国と組み、国力の全てを賭けたその一世一代の大博打は、四年にも及ぶ永く辛い戦いの末、惨敗。都市が更地になる手酷い損害を受け、無条件降伏する形で幕を閉じた。

 それから、百年。再び世界大国の地位にまで上り詰めた日本国は――否、世界は、人類は、未曾有の危機に曝されていた。

 その始まりがいつの事だったのか、人類は未だ特定すら出来ていない。当初は、民間船の難破が、遭難が、増えてきたという兆候だけだった。しかし、やがてその被害の大きさに世界が調査に乗り出そうとしたその時、突如として世界は、人類以外の何かから攻撃を受け始めた。

 何処からともなく出現し、そして瞬く間に勢力図を広げていった謎の海軍勢力、深海棲艦。それらの猛攻に、人類は瞬く間に地球上の大半の海域で制海権を失い、そして海から陸上へと蹴り出された。

 それは、大航海時代を経て産業革命を経て、人類が海洋の覇者として海を支配し、我が物顔で海を航行していた時代を一気に過去のものとしてしまった瞬間でもあった。

 無論、人類側とて必死に反撃した。世界各地で、各国海軍による激しい海戦が繰り広げられた。

 しかし、深海棲艦は、電子機器を狂わせ、誘導装置を無効化し、世界の主力兵器である誘導噴進弾を無力化してしまう未知の存在。とうの昔に大砲という武器を廃し、電子機器の塊である誘導弾で戦う現在の人類では、ろくに歯が立たなかった。

 

 海の奪還は、叶わなかった。

 結果、世界の海運は潰滅的大打撃を受け、物流は遮断された。そして、その損害と問題の大きさ故に、世界は大混乱に陥り、各国の足並みは揃わなかった。

 特に、世界各地に大艦隊を派遣し、それ故に深海棲艦と最も激しく激突を繰り返したアメリカ合衆国の疲弊具合は凄まじかった。数多の海戦で戦力を削られた挙句の果て、最終的には深海棲艦の一大侵攻作戦を受け、ハワイ諸島すらをも失落。世界に散っていた全戦力の本土撤退を余儀なくされた。

 

 だが、転機が訪れる。この絶望的な状況の中、人々は最早頼るものを失い、そして最後の手段として、神に縋った。

 そして、その神頼みに――神霊召喚に応じて呼び出されたのが、後に艦娘と呼ばれる、先の大戦を戦い抜いた艦霊達を基にした意思ある兵器群だった。


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