【GE作者合同投稿企画】アニメ化ですよ、神喰さん!   作:GE二次作者一同

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題名・作者名:馴れ初め・エルバーク

投稿作品名:男主とエリナをイチャイチャさせる小説

登場キャラ:エリナ、男主、ナナ、コウタ、フラン、ヤエ(セリフがあるキャラで左から活躍度順)

ジャンル:R-15(一応)、男主×エリナ、残酷な描写、オリ主、オリジナル設定、オリジナル展開、ヒロインはエリナ、戦闘、恋愛、



※本作はエルバーク様の『男主とエリナをイチャイチャさせる小説』でも公開されてます。
 



馴れ初め (作:エルバーク)

グッ……

神機を握る手に力を込めた。

 

「ふぅ~……がんばらないと……私だって、ゴッドイーターなんだから……!」

 

訓練場にて、私は模擬戦闘用のアラガミを前に気合を入れる。

ついこのあいだ、ブラッドとかいう第3世代の神機使いの部隊が極東にやってきた。

確かに戦力増強はありがたいことなのだろうけど……なんか悔しい。

 

「今までここを守りきってきたのは私達なんだから……っ!」

 

とは言っても、私自身は実戦経験も数える程しかないのだが。

 

「ふっ…!」

 

構えたチャージスピアを大型アラガミのヴァジュラを模した訓練用ターゲットに深々と突き刺す。

 神機の扱いに慣れていなかった最初に比べれば、だいぶマシな動きになっている筈だ。

 

「えいっ! えいっ!」

 

そのまま何度も何度も標的に矛先を突き立てる。

 コウタ隊長には前に出すぎだ、とか怒られちゃっているけど、アラガミを根絶させたい想いが強すぎて自分でも突撃思考を抑えられなかった。

 エリックを……お兄ちゃんを私から奪ったアイツらだけは絶対に許さない……!

 

「……っ!」

 

ブシュッ!

 

 怒りを込めて訓練用ヴァジュラの顔面を貫くと、結合崩壊まで再現されているらしくアラガミの顔が割れて崩れる。

 

「覚悟してなさいよアラガミ……私が、絶対……!」

 

ガチャ

 構えた神機をおろす。

 今日は、もういいだろう。

 疲れたし、明日は仕事だ。

 部屋に帰って休もう。

 

「あ」

 

そういえば明日の仕事はブラッドとの合同任務だって言ってたっけ?

 

「私の力を見せるチャンス……」

 

ブラッドの中にも、まだゴッドイーターになって間もない人もいると聞いた。

 たぶん私と入隊時期も大差ないはずだ。

 第3世代だかなんだか知らないけど、私だって、できるってところを見せつけてやらなきゃ……。

 

「……ん?」

 

部屋の入口へ歩き出すと、扉が開いて誰かが入ってくるのが見えた。

 

 あれは確か……

 

「あなたは……ブラッドの」

 

「ん? あ! こんちわ~っと……エリナ、だったよね?」

 

こちらに気がつくと、ニコニコと人当たりの良さそうな笑顔で手を振りながら近づいてきたその人は、確か……ブラッドの副隊長とか言われていた

 

「ええ。こんにちは」

 

この人も入隊年月は私と変わらなかったはず。

 ……なのにもう副隊長を務めている。

 私は少し悔しくなって、むすっと頬を膨らませてしまっていた。

 

「訓練してたの?」

 

「はい」

 

見ればわかるでしょ!

 という言葉はなんとか飲み込んだ。相手はエミールじゃない。

 いきなりそんな態度をとるのは流石に失礼すぎる。

 ……私だって嫉妬心で本能のまま発言するほど子供じゃないもん……。

 

「へー……チャージスピアか~。俺あんまり使ったことなくてさ」

 

頭を掻きハハハと笑いながら私の神機を見てくるブラッド副隊長さん。

 

「と、言っても実戦経験はそれほどないんだけど」

 

そう言って彼が背後から取り出したのは、大きなバスターブレードだった。

……ソーマさんと同じバスター使い。

 

「でも副隊長なんですよね? あなた」

 

「あ……うん。でも大したことなんてしてないんだ。マルドゥークを追っ払った時だって必死で神機を振り回してたら偶然って感じで」

 

「マルドゥーク……?確か最近見つかった『感応種』とかいうアラガミで、通常のゴッドイーターでは神機がまともに動かなくなるから相手にできないっていう……?」

 

そういえばエミールがフライアに行ってる時に遭遇した! とか言って大騒ぎしてたのがうざかったけど、その時にマルドゥークを退けたのが彼、ということだったのか。

 

「そうそう! 詳しいねエリナ」

 

瞳を見開いて驚く彼に、少しだけ得意げになって胸を張った。

 

「こう見えて私、座学には自信あるんですよ」

 

「まじ!? スゲーな! 俺まだまだ知らないこと多くてさ」

 

パシパシと馴れ馴れしく肩を叩いてきたけど、不思議と嫌な感じはしなかった。

 

……むしろ褒められてちょっと気分がいい。

 

「じゃあ……今度予定空いてる時に、勉強会でもします?」

 

「あ~気持ちはスゲーありがたいんだけど、座学も含めてトレーニングの予定が結構組まれちゃってるんだよな……だから合わせられる時間あんまりないかも」

 

「……そうですか」

 

……ちょっとがっかり。

私の得意分野を見せつけてやるチャンスだったのになぁ……。

 

「まぁでも、確か明日は合同任務だよな? 楽しみにしてるぜ、エリナ」

 

「こちらこそ、よろしくおねがいします」

 

「おぅ! 動き参考にさせてもらうから、よろしくな!」

 

「え? ……あ、はい……」

 

……あれ?

 もしかして私、めちゃくちゃ期待されてる?

 

「さーて! じゃー俺も訓練始めるかな」

 

大きな神機をブンブンと振りまして構える彼を見ながら、私は少しだけ緊張してしまっていた。

 流石に実戦で人のお手本になれる動きがとれると思ってるほど自惚れてはいない。どうしよう……ちょっと座学の成績がいいからって、調子に乗って優等生面しすぎちゃったかも……。

 

「うぉおおおおおぉぉおりゃあぁぁぁああ!!」

 

……そんな私の心配をよそに、彼は新たに出現した訓練用ターゲットを相手にバスターブレードを叩きつけていた。

 

 ガッシュゥン! というものすごい音が響いて、対象が真っ二つに……って、うそ!?

 

「……すごい……!」

 

思わず声が漏れてしまった

 ここの訓練用の敵は、実戦データを元に耐久力も忠実に再現されているはず。

 ……でも、今この人はたったの一撃でアラガミを確実に絶命させる攻撃を放って見せた。

 いくら一撃が重いバスターブレードだからって、こうも上手くいくものなの!?

 

「あはは! 全然凄くなんかないって。コイツ動かないから当てるの楽だし。実戦じゃ全然攻撃当てらんなくて、ジュリウス達の足引っ張ってばっかりさ」

 

謙虚に言いながら額の汗を拭う彼を見て、私はなんだかゴッドイーターとしての実力だけではなく、精神的にも負けている気がしてならなかった。

 

「で? エリナはもう訓練終わり?」

 

「え……あ、うん……今から帰ろうと思って……」

 

「そか! じゃー今度一緒にメシでも食おうぜ! 改めて、明日はよろしくな!」

 

「は、はい! お疲れ様……です」

 

彼を直視出来なくて、私はすごすごとその場を後にするのだった

 

 ……負けてられない……!

 

 私だって、もっと強くなって極東を守り抜いて見せるんだから……!

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

 

 

 

 

 

 任務の前にラウンジで集合した私達、第一部隊とブラッドの面々で、チーム分けが行われた。

 ちょうど3人1組で分けられるため、私達第一部隊は必然的に全員バラバラということになる。

 ……じゃないと合同任務の意味がないしね。

 

「よーし。じゃー、チーム分けはこんな感じでどうだ?」

 

コウタ隊長がテーブルにヒラリと落とした一枚の紙に、私達は注目した

 

 えーっと私のチームは……

 

「お? 俺と同じチームだな! よろしくエリナ!」

 

「あ、昨日の……!」

 

そっか

 この人と同じチームなのか。

 昨日の訓練場での出来事を思い出す。

 ……ちょっと安心。

 って、ダメダメ! なに他人頼りの思考してるのよ私は!

 

「……エリナ? どうした?」

 

「っ! い、いえ! なんでも……よろしくお願いしますっ!」

 

「お、おう。よろしく」

 

 ぶるぶると頭を振って、弱気な考えを捨て去る。

 しっかりしなさい私!

 

「あ! 副隊長! 私もそっちのチームみたい! よろしくね!」

 

にゅいっと彼の背後から顔を覗かせた女性が、にこっといい笑顔でこちらに手を振りながら挨拶をしてくれた。

 彼女の名前はナナさん。

 私とほぼ同期だったはずだ。

 

「はい。よろしくお願いします」

 

「あっ! そうだ!」

 

ぺこりと頭を下げると、ナナさんは一旦先輩の影に引っ込み……一体どこから取り出したのか、大きな袋を持って私の目の前に『それ』を置いた。

 

「えっと…………これは?」

 

「ナナ。お前ホント好きだなこれ」

 

「まぁね~! おいしいじゃん!」

 

副隊長の方はこの中身が分かっているようだが。

 

「じゃーエリナちゃん! はいこれ! お近づきの印に!」

 

彼女が取り出したものは、小型のコッペパン……に、何やら挟んである食べ物だった。

 

「……えっと……何ですか、これ?」

 

ニコニコと笑顔で差し出してきたので、無視するのもはばかられた私はそっと例のパンを受け取った。

 

「お母さん直伝おでんパン! おいしいからぜひ食べてみてよ! おかわりもいっぱいあるよー!」

 

ドサッという重そうな音を立てながら置かれる袋の中身が全ておでんパンとやらだということを理解して、私は開いた口がふさがらなかった。

 

「おいおい。これから任務だってわかってるのかナナ?」

 

「え? だからこそ、お腹いっぱいにしなくちゃだめでしょー? ハラが減ってはなんとやらっていうじゃん」

 

「……まぁお前ならそう言うと思ってたけど」

 

いつものことなのか、副隊長さんは呆れたように首を振り私の方へ苦笑いしたまま顔を向けた

 

「エリナ……嫌だったら無理せず断ったっていいんだぜ?」

 

「い、いえ!ちょっと驚いただけで……あ、ありがとうございます」

 

 ぱくっ…とりあえず一口食べてみる

 ……思ってたよりおいしい……!?

 

「えへへ! おいしいでしょ!」

 

笑顔でピースをするナナさんに私も頷いて同意を示した。

 

「よし! じゃーそれぞれ軽い交流も済んだみたいだし、しゅっp……ってエリナ。お前なに食ってんの?」

 

「っ!?」

 

どうやら他チームも一通り挨拶などを終わらせたみたいで、コウタ隊長がまとめに入っていたみたいだ。

 そこでおでんパンを咥えている私に気づいて……。

 彼に名指しされたことで、周囲の視線が一斉にこちらに集まり私は恥ずかしさで頬を染めながら俯いた。

 

「あ、いや……これは……!」

 

「コウタさん。これはおでんパンって言ってナナのお気に入りの食べ物で……こうやって知り合った人にまず渡しちゃうクセがあるんですよ」

 

すっ、と私を周囲の目から守るように移動して、ブラッドの副隊長さんがコウタ隊長に説明をしてくれる。

 

「そうそう! とってもおいしいからコウタさんも食べませんか!?」

 

そして人の視線を全く気にしない様子のナナさんが、大きな袋からおでんパンを取り出し、ずいずいとコウタ隊長の目の前につき出す様子を……副隊長さんの影越しにちらりと見る。

 

「え……? あ、ありがとう……」

 

「せっかくだから、みんなもどうぞー! お腹すいてたら力が出ないよー!」

 

「お、おい!? ナナ!?」

 

勢いに押されて受け取ってしまったコウタ隊長に続いて、結局その場にいた全員がおでんパンを受け取ることになってしまったのだった

 

 ……うん……おいしい♪

 

 

 

 

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 チームごとに別れたあと、私達はミッション現場である『鎮魂の廃寺』へ向かうためのヘリに乗っていた。

 とりあえずさっきの件に関してお礼を言っておいたほうがいいかなーと、向かいのシート席に座って端末を見ている副隊長さんに視線を合わせる。

 

「あ、あの! ……さっきは……どうも」

 

 ……でも、面と向かうとあの程度で恥ずかしくなってしまったことが情けなくて、ちゃんとお礼を言えなかった。

 

「え?さっきって?」

 

「だ、だから…! さっきのチーム分けのとき…」

 

「???」

 

不思議そうな顔で首をかしげる彼を見て、私の方が焦ってしまう。

 ……も、もしかして、あれぐらいのことでお礼言われると思ってない……とか?

 

「……と、とにかく! ありがとうございました!」

 

だからと言ってここで下がるわけにもいかず、お礼の言葉だけは伝えておく。

 ……別に理由なんて分かんなくてもいいもん。

 

「お、おう……?」

 

しばらく怪訝にこちらを見ていた副隊長さんだったが、しばらくするとまた端末に視線を戻してしまった。

 

「ごめんねーエリナちゃん~。うちの副隊長、すっごくお人よしでさー」

 

「え?」

 

私の様子を隣で座って見ていたナナさんが、ヒソヒソと耳打ちをしてきた。

 

「最初の実戦でも私を庇おうとして敵に背を向けてたし、シエルちゃんが赤い雨の中に取り残されたときも神機兵に乗って無茶するしー」

 

 えっと……

 

 

 つまり?

 

「その時もね、私あとでお礼言ったんだけど『え? なんのこと?』って言われちゃって……理由話しても『大したことしてないから』ってさ」

 

チラッと彼女は副隊長に視線を向ける。

 

「大したことしてなくないよね~! 下手したら自分が死んじゃってたかもしれないのにさ~」

 

「……うん」

 

そっかぁ……。

 同じ部隊の仲間を助けるために自分の命を危険に晒してまで行動する……そういう人なんだこの人は

 ……そう、だよね。それに比べたらさっきのなんてとても些細なこと。

 

 あーあ、お礼を言うのに緊張してた私がバカみたいじゃない……。

 

 

「ところで副隊長~、さっきから何見てるの?」

 

「ん? あぁ、今日の任務の詳細だよ」

 

ナナさんの問いに、視線を上げて彼が答える

 

「標的はラージャ1体。だけど、周囲に小型アラガミの反応も無数、ってね」

 

「へぇー……真面目だねぇ~。出発する前にも確認してたでしょ?」

 

「そりゃ真面目にもなるさ。ナナとエリナに『もしも』のことがあったらいかんからな」

 

表情を引き締めたまま私達を見る副隊長さん。

 でも、私達だけじゃないでしょ?

 

「あなただって気をつけてくださいよ? ブラッドだからって不死身じゃないんだから」

 

まだちょっとしか関わったことないけど、この人が仲間を助けるために自分を犠牲にすることを……ためらわない人だというのは、話を聞いてなんとなく分かった。

 

 だから、こっちも念を押しておく。

 

「ははっ! 心配してくれてありがとうエリナ」

 

「そ、それはこっちのセリフです! ありがとうございます!」

 

にっといい笑顔を向けられて、私はため息を吐きながら身を乗り出して副隊長さんに言い放つ。

 

「え? あ、あぁ…」

 

きょとんとしながらこっちを見るブラッド副隊長。

なんでだろ……ちょっとムキになっちゃった。

 

 

……この人にはお兄ちゃんみたいに死んで欲しくないな……。

 

 

 

 

 

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『作戦エリア内への到着を確認。任務を開始してください』

 

今回オペレーターを勤めてくれるフランさんの声が聞こえる

 

「了解! 準備はいいか二人共?」

 

出撃地点。

 静かに降る雪と満天の星空が幻想的な『鎮魂の廃寺』に到着。

 だが、この景色に見とれているヒマはない。

 

「はいっ…!」

 

グッと神機を握る手に力を込めて、私は昨日の訓練で得た感覚をしっかり思い出していた。

 

「だいじょうーぶだよ! 副隊長! ……ちょっと寒いけど」

 

「あのな~。だからあれほど厚着しろって……まぁいいや。それじゃー今回俺は指揮を執るってことになってるから、もう一回作戦を説明するぜ」

 

副隊長さんの作戦では、安全を考慮してまず集団で行動し小型のアラガミから排除する、ことになっていた。

 小型アラガミぐらい単騎でも倒せます! って私は言ったんだけど、彼はお互いの動きがまだ掴めていなからとりあえずザコを狩りながら仲間の動きを見たい。とのこと。

 一理あるし、私も賛成せざるを得なかった。

 

 その際に聴力に優れているヤクシャに合流されないように敵の位置に常に気を配る。

 幸いこの場所は建物のおかげで地形が入り組んでおり、簡単には敵の合流を許さない場所だ。

 ただし、その分狭いので、万が一合流された場合一度引いて体勢を立て直す。

 そして小型が片付いたら、全員でヤクシャを集中攻撃

 ……まとめるとこんな感じ。

 

「っと、作戦はこれでどうだ?」

 

私とナナさんの顔を交互に見る副隊長さんに、頷いて合意を示す。

 ……緊張してきた。

 手が震える。

 

 ……な、情けないわよエリナ!

 これは寒さのせい! そう! 寒いから!

 

 そう自分に言い聞かせて、恐怖をごまかした。

 

「よーし! 頑張ろうね! 副隊長! エリナちゃん!」

 

 笑顔でおー! と手をあげるナナさんが、真っ先に戦場へと降りていく。

 

「おいおーい! あんまり先走るなよ!」

 

「りょーかいりょーか…あっ! 標的はっけーん! 食べちゃうぞ~!」

 

 高台から見下ろすと、ナナさんは近くにいたオウガテイルにさっそくブーストハンマーを掲げて突進していた。

 

「やれやれ……じゃーエリナ、俺たちも行こうか!」

 

「は、はい!」

 

 声が震える。

 

「……安心しろって。俺達がついてる。仲間がいれば怖くなんてないさ」

 

怖がってることがバレてしまったのだろうか

 ポンポンと頭を撫でられた。

 

「ばっ……! 私はひとりだって、こ、怖くありません! そ、そっちこそ! 足引っ張らないでよ!?」

 

それが悔しくて、せっかくの厚意に生意気な返事をしてしまった。

 やばっと思っても言ってしまったことは……取り消せない。

 気まずくて俯いていたら、またポンと頭に手を置かれた。

 

「はは! そうだな! わりぃ。でも、俺たちが危なくなったら助けてくれよ? 期待してるぜ」

 

優しい笑顔のままでそれだけ言うと、副隊長さんは私の頭から手を離しナナさんに続いて戦場に降りていく。

 

「…………ごめんなさい」

 

私はあなたが思ってるほど強い人じゃないんです。

 

 

 彼の姿が見えなくなってからしか謝罪ができない自分が情けなかった

 

 

 

 

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「うりゃぁ~!」

 

 

ゴスッ!

 

 ナナさんが振り上げた神機がオウガテイルの顎を打ち砕き、空中に飛ばし上げる。

 ドサッと頭から地面に墜落する頃には、完全に生きてる気配はなかった。

 

「おーしまい!」

 

作戦通り、ヤクシャに気づかれぬようエリア内を団体で移動し私たちは小型のアラガミを順調に倒していたのだが……

 正直ブラッドの二人は、とても私と同期とは思えないほどの身のこなしだった。

 

「やるなナナ! よしっ! 俺も負けてられないぜ!」

 

前方でフワフワと浮遊していたザイゴートを発見。

 今度は副隊長が大きなバスターブレードを担いで一歩前に飛び出す。

 ……のが見えた次の瞬間、彼は空中で神機を振り上げていた。

 

 悲鳴を上げる暇すらなく真っ二つになる標的。

 

「速い!」

 

私では、目で追うこともできないほどに

 の差をひしひしと感じる。

 

 ……私だって……私だって……っ!

 

『油断しないで! まだ近くにアラガミの反応があります!』

 

「っ!? ……エリナ! 後ろ!」

 

「え?」

 

笑顔で振り返っていた副隊長さんが、フランさんの通信を聞いて私の背後に視線を向ける。と、同時に焦りの表情へと一変し、ぞわっと背筋に寒気が走る。

 

「くっ!」

 

「エリナちゃん!」

 

慌てて振り返ると、目の前にキラリと光るオウガテイルの牙が……見えた。

 こんな至近距離じゃ躱しきれない……!

 

「うそ……でしょ……」

 

 絶望。

 頭によぎるのはその二文字。

 やだ……死にたくない……死にたくない……!

 死ぬのは……

 

「いやぁぁぁあぁあぁああ!!」

 

静かな夜空に私の悲鳴が響いた。

 ……こんなところで……私は終わるの……?

 ブンッ! という空気を切り裂く音が耳を通り過ぎた。

 意味はないと分かっていても、瞳を閉じてグッと身構える。

 

 ………………。

 …………。

 ……?

 

 

 しかし、いつまでたっても痛みは襲ってこない。

 

「副隊長……?」

 

「っ!」

 

ナナさんの震え声に嫌な予感がして、私は恐る恐る目を開けた

 まさか私を庇って……

 

「あ、あぶねぇ……! 大丈夫かエリナ!?」

 

あれ? すごい元気そう……。

 慌てた様子ではあるが両手で私の肩を掴んで揺さぶる彼に、怪我の類は見当たらない

 

「神機を迷わず投げつけるなんてー! 流石副隊長!」

 

ナナさんがパチパチと拍手しながら笑っている。

 

「こら! 笑い事じゃないだろ!」

 

神機を投げつけた……?

 周囲を見渡してみると……あった。すぐそばの建物に、副隊長さんの神機が近接形態のまま突き刺さってる。

 ……オウガテイルを縫い止めながら。

 もしかしてさっきの空気音は神機を投げた時の?

 

「どうやら、ホントに怪我はないみたいだな……よかったよかった!」

 

『エリナさんに怪我がなかったのは確かに安心しましたけど、ブラッド副隊長、くれぐれも無茶な行動はなさらないでください』

 

「わかってるって」

 

仕留められたアラガミをポカンと見つめる私に怪我がないことを確認すると、彼は神機を引き抜きに行く。

 とっくに絶命してるオウガテイルがドサリと地面に崩れ落ちる音で、やっと私は現状を把握した。

 

「あ、あの……」

 

ブラッドの実力に嫉妬して、集中力をとぎらせた自分に非があることは明らか。

 

「あぁ、気にすんな。仲間なんだから、助け合うのは当然だろ?」

 

神機を担ぎながら、彼は私の頭を帽子越しにワシャワシャと撫でる

 

 ……助け合う?

 ……違う、私はこの人に助けられてばかりだ……。

 助けになんてなってない。

 むしろ……

 

「……ごめんなさい」

 

「だーかーらー……まぁいいか。この話はこれでおしまいだ。いいな?」

 

「……うん」

 

ポンポンと最後に手の感触を残して、私にくるりと背を向ける。

 ……お兄ちゃんに、撫でてもらった時とはまた違う。

 

「……暖かい」

 

「え?」

 

「っ! な、なんでもない!」

 

思っていたことを口に出してしまったことに気づき、私は慌ててブルブルと頭を振った。

 

 ……次の瞬間。

 

 ドスンっ!

 

 大きな音が鳴り響く。

 

 なに!?

 何の音!?

 

「あ! 二人共! ラージャ、きたよ!」

 

私達の成り行きを見守っていたナナさんが指さした方向を見る。

 

「っ! かわせ!」

 

こちらに向かって砲塔を構えるラージャを見るやいなや、副隊長さんの掛け声。

 反射的に私も左側へと転がった。

 

 右半身に、勢いよく風が吹く感覚が通り過ぎる。

 

 振り返ると、雪が積もっていたはずの道が抉られていて茶色の地面が露出していた。

 ……こんなの直でくらったら、いくら頑丈なゴードイーターでもひとたまりもないだろう。

 

「っ!」

 

よそ見しちゃダメよエリナ!

 敵から目を離すな……!

 

 ラージャの方に視線を向ける。

 今はこちらに背を向けて、副隊長さんと交戦中だった。

 彼は次々と繰り出される砲撃をかわしつつ、反撃の機会を伺っているみたいだ。

 

 トンっ

 

 肩に手を置かれ振り返ると、ナナさんがにやっと親指を立ててからラージャの背を指差す。

 ……不意打ちしようってことかな。

 

 無言で頷いて合図を返し、私は神機を握る手に力を込める。

 いくよ……オスカー!

 

 近接形態のチャージスピアを構え、一気に踏む込む……!

 標的の背中がグングン近づき、攻撃圏内に入る!

 

 もらった!

 

「くらえぇぇえええっ!」

 

昨日の訓練の感覚を思い出し、アラガミの体に神機を突き刺した。

 肉を抉る感触が手に伝わり、血が飛び散る音が耳にこびりつく。

 

「グォアァアオオォアア!!」

 

ラージャが声にならない叫び声をあげるが、容赦はしない!

 こいつらがこの程度で倒れないのは百も承知だ。

 

「はぁあああぁあ!!」

 

 グサッ!グサッ!

 

 私が集中して狙っていたのは標的の右足。

 動きを止めることが目的だった。

 

 ガクッ!

 

 度重なるチャージスピアの一点集中攻撃に耐えられなくなったラージャは中途半端に振り返りこそしたが、ガクリと片膝をついてスキだらけになる。

 

「ナイス! エリナちゃん!」

 

そこですかさず、背後から駆け寄ってきたナナさんが跳躍して私を飛び越え……。

 

「ドッカーンっ!」

 

振りかぶったチャージハンマーに体重を乗せた彼女の一撃が標的の頭に炸裂する。

 

 グッシャァア!!

 

 高所からの重力も加わっているその攻撃の威力は言うまでもない。

 

『対象のオラクル反応消失! お見事です』

 

 断末魔の叫び声をあげることすら叶わず、ラージャの頭は粉々に砕け散り、残った体も静かに崩れ落ちた。

 

「おぉー! スゲーな二人共!」

 

私達が戦っている間その様子を油断せず見ていたブラッド副隊長さんも、決着がついたとわかると笑顔で拍手してくれた。

 いつの間にか銃形態に持ち替えているところをみると、端からサポートに専念するつもりだったみたい。

 

「でしょー! はいエリナちゃん! タッチ!」

 

「ふふん! 当然の結果よ!」

 

ナナさんとパンっとハイタッチ!

 やった! 少しはいいとこ見せられたかな?

 副隊長さんの方へ振り返ると、グーサインを送って褒めてくれた。

 ……ちょっと嬉しい

 けど、まだまだ!調子にのっちゃダメなんだから……!

 

「そんじゃー、コアを摘出してこの任務もしゅうりょ……」

 

『き、緊急事態です!』

 

彼がラージャの残骸を捕食した直後だった。

 フランさんからの連絡が入る。

 

『想定外の大型種が作戦エリア内に侵入! 位置情報、送信します!』

 

うそ!?

新手!?

 

「了解だ。迎撃する」

 

通信内容を確認したとたん、副隊長さんの顔はまた油断なく引き締まる。

 

 私も慌てて神機を構え直した。

 落ち着け落ち着け……極東じゃ新手の乱入なんて珍しくないじゃない。

 

 

「副隊長! 近いよ! すぐそこに……いた!」

 

送られてきた位置情報を見ていたナナさんが指差した方向へと目を向ける。

のっそのっそとゆっくりだが、確実に距離を詰めてくるアラガミがいた。

 

「ヴァジュラ……!」

 

電撃を扱う大型のアラガミ!

 昨日の訓練用ターゲットのモデルだが、実物の迫力はこの遠目でも全然違う。

 震える体に力を入れて、グッとこらえる。

 ビビってる場合じゃないんだから……!

 

「こりゃまた大物だな……」

 

副隊長さんがバスターブレードを正面に構えた。

 向こうもこちらの存在に気づいたのか。

 威嚇するように身を屈めている。

 

「……エリナ、こいつとの交戦経験は?」

 

「……ありません」

 

 ……そう。

 実はコイツと実戦で遭遇すること事態が初なのだ。

 

 今までまだまだ私の実力では、ヴァジュラとは戦わせてもらえなかったから……。

 

「よし。じゃー無理はしないで、まずは動きを見るんだ」

 

「わ、わかりました……」

 

視線で一歩後ろへ下がるように合図を送られる。

 正直悔しかったけど、私が前にでたら足を引っ張ってしまうことは明らかだ。

 ここは素直に言うことを聞いておく。

 

「ナナも、さっきみたいにスキをつけるタイミングを見計らってくれ」

 

「了解!」

 

そう言ってナナさんも下がらせると、一人ジリジリとアラガミと距離を詰める副隊長さん。

 

 ピリピリとした緊張感が空気を震わせ伝わってくる。

 対峙していない私まで冷や汗が浮かぶほどの……!

 

「っ!」

 

一瞬の静寂の後。

 先に動いたのは副隊長さんだった。

 

 さっきも見せてくれた目にも止まらぬ速さの踏み込み。

 

「うぉりゃぁ!」

 

ブンっ!という空を裂く音と共に、ヴァジュラの顎をめがけてバスターブレードの強烈な一撃が振り上がっていた

 ……が、相手はそれを紙一重で交わし、両手の爪で彼に襲いかかる。

 

 ガンッ!

 

「っ!」

 

それを弾いてそのまま背後を取ろうとする副隊長。

 ……視線の合図が来た。

 おそらく先ほどのラージャ戦のように片方に気を取られているうちに挟み撃ちしようという魂胆なのだろう。

 

 任せてください!

 そのぐらいなら、私にだって……!

 

 彼にコクリと頷く。

 

 ……だが、当のヴァジュラはいつまでたっても後ろに回り込んだ副隊長の方へは意識を向けず、そのまま私をじっと見ていた。

 もしかして……!

 

「狙いは私……っ!?」

 

その考えにまで至って、再び背中がぞわっとする感覚。

 神機を握る手が震える

 どうしようどうしよう……!

 どうすればいいの!?

 頭が完全にパニックになり、思わず半歩下がってしまった

 次の瞬間。

 

「エリナちゃん! こっち来てる!」

 

ナナさんの声を聞くまでもなかった。

 ……ヴァジュラは私めがけて走ってきていたのだから。

 

「っ! くそっ! エリナ! 装甲を構えろ!」

 

副隊長さんの声がやけに遠くに聞こえる

 自分の心臓の音がうるさい。

 

ドンっ! ドンっ!

 

 彼がヴァジュラの背後から射撃による援護をしてくれているのが見えるが、敵は右へ左へと複雑なステップでそれらを躱し私との距離をドンドン詰めてきていた。

 

 ドスンッ!

 

「あ……あっ……!」

 

 そして……。

 

 目の前に……!

 

「はぁあ!」

 

ナナさんが横からハンマーで殴りかかるのが見えたが、ヴァジュラはその行動を読んでいたのか爪でいとも簡単になぎ払ってしまう。

 

「うわぁっ!」

 

「ナナさん!」

 

彼女が吹き飛ばされても、それを追撃する素振りは見せず、コイツは私に狙いを定めていた。

 

「……っ」

 

 こわい……!

 体が、動かない……!

 

 ヴァジュラが口を開ける動作がやけにゆっくり見えた。

 …そして噛み付く瞬間も。

 

 ブシャァ!

 

「……え?」

 

 痛みは……。

 無かった。

 

 けれど、私の目の前は血飛沫で赤く染まっている。

 

「ぐあぁっ! ……くっ……そ……エリ……ナ……! 大丈夫……か……っ!?」

 

 副隊長さんがいた。

 彼の左腕が……私とアラガミの間に……

 ヴァジュラの……口のなか……に……っ!!

 

 

 

 

------------------

 

 

 

 

 極東支部の病室前。

 

 私は、自分の無力さを呪っていた。

 あの後、なんとか起き上がってきたナナさんがスタングレネードを使ってヴァジュラから副隊長さんを引き離し、何とか救出。

 撤退要請を出したことにより、救護班も来て最悪の事態は免れた。

 

 ……そして、そこでも私は……何の、役にも立たなかった。

 

 ぐっと拳を握り締める。

 ……何が

『極東を守ってみせる!』だ……。

 

 同行者の足をひっぱりあげくに怪我まで負わせてしまって……そのうえ自分自身は無傷ときたもんだ。

 

 本来の目的は達成していたため任務の失敗という扱いにはならなかったものの、情けなくてブラッド隊の人にも第一部隊のメンバーにも合わせる顔がなかった。

 

 想定外の乱入だったし仕方ない。

 任務に危険は付き物。

 

 別チームで任務を終えていたメンバーは、私が頭を下げて謝ってもそう声をかけてくれたけど……。

 それが余計に辛かった。

 

「……エリナさん」

 

「っ! は、はい!」

 

病室の扉が開き、ヤエさんが顔出す。

 

「彼の容態ですが、少し落ち着いてきたので……面会しますか?」

 

「…………はい」

 

副隊長さんにもちゃんと謝らなくちゃ……。

 室内に入ると気をきかせてくれたのか、ヤエさんはお辞儀をして部屋の外に出る。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

扉を閉めてくれる前にお礼を言って、私は部屋の中を見渡した。

 病室はひっそりと静まり返っており、奥のベッドに腰掛けているブラッドの副隊長以外の姿は見えない。

 

「……あの」

 

「ん……あー、エリナか」

 

にこっと笑顔を浮かべて、彼は右手をひらひらと振りながら私を見ている。

 ……正直、声をかけたら嫌な顔をされるんじゃないかと思っていた。

 

 その左腕の怪我は私のせいなんだし……。

 包帯でぐるぐる巻きにされている患部を目の当たりにして、ズキンと罪悪感で胸が痛む。

 

 ……これ以上は……近づけない。

 私は部屋の入口に立ったまま、ベッドに座る副隊長さんを見ていた。

 

「おいおい。なに泣きそうな顔してんだ?」

 

「っ!? べ、別にそんな顔……」

 

言われて初めて気が付く。

 いつの間にか潤んできてしまっていた視界。

 慌ててゴシゴシと腕で目をこすった。

 

「そんなに気にするなって! エリナのせいじゃねーよ。それにこの程度の怪我、ゴッドイーターだったら傷跡も残らず完治できるって!」

 

はははと笑い声まで上げるブラッド副隊長。

 

「……どうしてよ」

 

 なんで私を責めないの?

 なんであなたは笑って接してくれるのよ……!

 

「え?」

 

「あなたがいなかったら、そもそも私はヤクシャと戦う前に死んでた!」

 

オウガテイルに喰い殺されて。

 

「ヴァジュラの攻撃までかばってくれて、それで気にするなってのが無理な話よ……!」

 

なのに……

 

……なのに……っ!

 

「どうしてよ……なんで笑ってるのよっ! 出発前日に大口叩いてこのザマだったんだよ!? 怒られても……しょうがないのにっ……!」

 

……分かってる。

……私は甘えてるのだ。

 誰にも、怒られもしない、責められもしないのが……逆に怖くて耐えれらなくて……

ホントに自分で自分が嫌になる。

 

「……エリナ」

 

ほら、またそんな優しい声で私を呼ぶ。

 

「……もうちょいこっち来てくれないか? そんなところからじゃ話しにくいだろ?」

 

ちょいちょいと手招きされて、仕方なく私は顔を俯かせたまま近づいていく。

 

「よし、あのな」

 

「……なに?」

 

「俺は、もっと強くなりたい」

 

「え?」

 

予想外の言葉に、私は面食らって顔を上げてしまった。

 ふっと柔らかい笑みを浮かべたままの副隊長さんが、そのまま優しく頭に右手を乗せてくれる。

 

「俺のそばにいる人を誰も傷つけないぐらい……強く」

 

「何言ってるんですか! 私の方こそ……強くなりたい……ううん。強くならなくちゃいけないっ!」

 

あなたはもう十分強いじゃないですか。

 実際ナナさんは軽傷、私に至っては無傷なのだから。

 

 そう思って彼の顔を見ると、なにやらにやりと意味深な笑顔を浮かべていて……

 

「そうか、エリナもか……ほうほう。俺たちどうやら目標が一緒みたいだな!」

 

「え? ……え?」

 

頭の撫で方が若干乱暴になり、ワシャワシャしながら彼は一つ提案してきた。

 

「昨日は、ああ言ったけどさ……時間合うとき、一緒に訓練でもするか? 任務でもいいけど」

 

「あ……」

 

私を覗き込むその瞳は優しさに満ち溢れていて、こっちの思惑なんか全部見透かされてる気がして。

 

「……ありがとう……それから」

 

そっと彼の左手を痛めないように優しく取る。

 

 

 

 

「ごめんなさい」

 

 

 

 

「……あぁ」

 

今度は謝罪の言葉を否定せず、ただ短く返事をして頷くだけだった。

私の気持ちを汲んでくれてるってことがよく分かって、ほんとに嬉しくて……。

 

「えっと……これからよろしくお願いします。副隊長さん」

 

自然と笑顔が浮かぶ。

 

「ははっ、こちらこそ」

 

最後にポンっとあの温かい感触を私に残して、彼の手が離れた。

 正直名残惜しかったが、いつまでもここに居座るわけにはいかない。

 

「またお見舞いきますね」

 

「おぅ。ありがとな。まぁすぐに退院してやるけど」

 

「無理はダメだからね!」

 

「分かってるって! 心配すんな!」

 

「……うん」

 

副隊長さんは包帯ぐるぐる巻きの左手を強がって振りながら、退室を見送ってくれた。

 

 ……今、思い返せば、私はこの時からすでに彼に惹かれていたのかもしれない。

 

 その後、部屋の外で待機していてくれたヤエさんにお礼を言って、さっそく訓練室まで向かう。

 

 まだもうちょっと余裕がある。

 この時間を使って少しでもあの人に近づくために。

 

 

 

 

 

 頑張るんだから!

 

 

 

 

 

 

END




後書き


うちで書いてる主エリ小説で現状時系列最古の話
最初にこういうやりとりがあったらな~…という妄想ですw

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