【GE作者合同投稿企画】アニメ化ですよ、神喰さん!   作:GE二次作者一同

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題名・作者名:極東は未来でも地獄でした・てんぞー

投稿作品名:極東は今日も地獄です

登場キャラ:アナグラ勢、オリ主、ブラッド隊、ラケル、感応種

ジャンル:ギャグ、ほのぼの、残酷な描写、キチガイ



極東は未来でも地獄でした (作:てんぞー)

 

 ―――西暦二〇七四年。

 

 赤い雨が降り注ぎ、

 

 特異進化したアラガミが出現し始めた。

 

 地は裂け、天は赤く染まり、そして人々は笑顔で武器を握った。

 

 ―――極東は今日もいつも通り地獄だった。

 

 いつもの事すぎて特に感想も生まれなかった。

 

 

                           ◆

 

 

「アラガミだ! 殺せ!」

 

「貴様の血の色は何色かなぁ!」

 

 目の前、正面、そんな事を叫びながら前へと突き進んで行く二つの姿がある。雨宿りの意味で崩れた建造物内に対比しているが、引率で連れてきた二人は違ったようだ。赤い雨の中、目の前にはアラガミがいるのを確認すると、黒蛛病のリスクを一切気にする事無くアラガミへと突撃した真正のキチガイ、真なる極東民。フェンリル極東支部が生んでしまった怪物たち。

 

 その姿を見る。

 

 視線の先には金色のハンニバル種が存在する。記憶がたしかであれば、最近発見されたアラガミで感応種と呼ばれ、神機使いを無力化する事の出来る凶悪なアラガミの一種だ。その金色のアラガミのそばにいるのは白い、狼の様なアラガミ。此方もまた感応種であり、神機使いを殺す為だけに生み出されたような生物だ。ハンニバルの方が名をスパルタカス、狼の方をマルドゥークと呼ぶらしい。どちらも感応種としての能力のほかにオラクル細胞の捕喰強化、小型アラガミ招来なんて卑怯な力まで持っている。

 

 普通に戦えば支部でさえ全滅しかねない地獄のコンビネーション、どう足掻いても勝てない絶望。

 

 それをまるで兎狩りの様に突撃していく馬鹿な先輩が二人いた。

 

 片方は完全にキグルミだった。愛らしさと凶悪さを混ぜた兎の様な生物、もはやキグルミとしか表現する事の出来ない凶悪なフォルム。右腕に装着している大きな腕輪が神機使いである事を証明し、背中に背負っているショートソード型の神機が寂しそうに哀愁を漂わせていた。ヒャッハー、とキチガイ染みた声を上げながらキグルミに包まれた手を持ち上げ、それを振りかぶっていた。そのアクションはどこからどう見ても”殴る”というアクションでしかなく、”これからアラガミ殴りに行くぞわぁい”という楽しそうな気配さえ感じられた。先輩、人生がホント楽しそうで羨ましいっすわ、という感想を抱きながら視線をもう片方へと向ける。

 

 もう片方はパーカー付のロングコートで全身をすっぽりと覆っている褐色の青年だ。片手で白い神機を握り、キグルミと同様赤い雨の中、一切気にする事無くアラガミ、それも感応種へと向けて全力疾走していた。何処からどう見ても自殺、これから地獄へ向かいます! という感じにしか見えない光景だが、そんなルールはこの一人と一匹の組み合わせには適応されない。されていない。

 

 その証拠に、二人を目撃した瞬間、スパルタカスとマルドゥークが目に見えて逃げる体勢に入った。アラガミも学習して散るんだなぁ、何て感想を抱きながら自分の神機を、感応種の干渉によって動かないチャージスピアのそれを握る。やはり反応はない。という事はヒャッハー状態の先輩型を見るしかない。暇だなぁ、何て思いを抱きながら適当な石に腰かけ、一瞬の油断も慢心もしない様に気配を探りつつ体を休める。

 

「センパーイ! ナマモノー! 華麗に頑張ってくださいー」

 

「ヒャァ!」

 

 それ、返事なの? そんな事を思っている間に、

 

 逃げようとしているスパルタクスの顔面をキグルミの愛らしい拳が捉えた。そのまま指を目に突っ込み、眼球を抉り出す動作は間違いなく良い子が失禁する光景だった。これだけは断言できた。何故なら自分にもそういう良い子で失禁する時代があったからだ。これは恥ではない。あのナマモノと常識ブレイカー共が悪いのだ、と断言しておく。

 

 ともあれ、そうやって昔の事を振り返りながら戦場を見ていると、凄まじい光景が繰り広げられていた。

 

 おそらく極東一アラガミに近いであろうギリ人間的な生物、元ホムラ、現フェンリル極東支部アナグラマスコット、自称腹パン妖精で他称腹パン大邪神の”キグルミ様”はそのままスパルタクスを地面に叩きつけ、これまた他の支部のゴッドイーターが見たら失禁確定な様子で返り血を浴びながらマウントを取り、執拗に腹にパンチを繰り出している。

 

 神機が駄目なら暴力に訴えればいいじゃない。

 

 理論は解るが、一切理解したくない言葉だった。

 

 完全にアラガミに近いという特性を生かして暴力的に血の宴を繰り広げているキグルミと違い、もう片方、褐色の青年――ソーマ・シックザールの戦闘方法はまるで違った。彼もまた感応種によって神機を機能停止に追い込まれてはいるが、それを一切気にする事無く技術でマルドゥークの足を切り刻んで転ばせ、マルドゥークが呼び寄せたアラガミ達からの攻撃を掠らせて受け流し、それをマルドゥークへと命中させる事でほとんど力と体力を使う事無くマルドゥークを数の暴力で圧倒していた。

 

 いったいどういう事なんだろう。

 

 まるで理解できないし、理解しようとは思わない。極東とはこういう場所だと認めるのが一番楽だった。ただ最近、そういう先輩方の動きを見て理解してしまう辺り、どう足掻いても同じ生物だと自覚してきている自分がいる。そういえば極東育ちだったなぁ、何てことを思っていると、ソーマから逃げ出してきたアラガミ、オウガテイルが九匹程こちらへと向かって来る。

 

 飛びついてくるように襲い掛かってくる一匹目のオウガテイルに対して稼働していない神機を突き出し、オウガテイルの重量でランスの穂先に突き刺さる様にその姿を確保する。

 

 そのままオウガテイルの突き刺さったランスを重量と円の回転で振り回し、遠心力を加える事で神機が稼働していない状態でもオウガテイル付きの鈍器として扱えるように加速させ、襲い掛かってくるオウガテイルをそれぞれ先輩達の方へと殴り飛ばす。

 

 落ちてくるその姿を先輩達が片手間に駆除する。やはりアイツらキチガイだな、と確信しつつ、

 

 一分もしないうちに感応種のミンチが出来上がっていた。それを祝福するかのようにソーマとキグルミが真っ赤な状態で雨の中、拳を天に掲げている。

 

 頼むからそのまま天に帰ってくれ。世紀末覇者の如く。

 

 そんな願いが叶うはずもなく、アラガミに近いナマモノが黒蛛病にかかるわけがなく、そして半分アラガミであるソーマが黒蛛病を気合で克服した訳で、

 

 赤い雨や感応とか知った事ではないブラザーズがこの程度で死ぬわけがなかった。

 

「ふぅ、スッキリしたな」

 

『あぁ、やっぱ一方的な暴力って素敵だな』

 

「あの、そこのナマモノ、急に思い出したかのようにカンペに言葉を変えてキャラ作らなくていいんですよ」

 

『守りたい子供の夢があったんだ』

 

「過去形かよ。そんな姿で守れる夢があってたまるか」

 

 そんな事を言って溜息を吐くと、キグルミがカンペに笑い声を書いて、そしてソーマが軽く体をほぐしながらここへ来るために乗ってきた装甲車を確認し、その運転手席に乗り込みながらエンジンを入れ、そして視線を向けてくる。

 

「研究材料も手に入れたし、帰るぞエリナ、邪神」

 

『待遇改善を求める』

 

「その前にキャラ直せよ。あと先輩達バグ共と同じようにナチュラルに雨が平気だとか思わないでください」

 

『え、無理なの? お前流行に乗り遅れてるぜ……』

 

 キグルミにローキックを叩き込みながら溜息を吐き、空を見上げる。

 

 赤い雨は降り注ぎ、黒蛛病で人は死に、感応種によって神機使いは狩られていた。しかし何故だろうか、極東では全く関係なくアラガミの狩猟ペースは減る事がなかった所か、極東四天王が育ったとかいう理由で逆にペースが上がっているとか。その理論でペースが速くなるのか。一体どういうことだ、まるで意味が解らんぞ。

 

「……」

 

「エリナ?」

 

 改めて思う。何故兄はこんな環境で第一線で戦い続けられるのだろうか。やっぱりアレなのか。順応しちゃったのか。やっぱりそうなのだろう。

 

 まぁ、ともあれ、

 

「ホント常識が通じませんよね、ここ」

 

『それな』

 

 今日も無言でキグルミへとローキックを叩き込む私は絶対に悪くない。

 

 

                           ◆

 

 

 アナグラはゴッドイーターにとっては家と言ってもいい場所。

 

 ここで休み、暮らし、研究し、鍛え、そして備える。そうやって極東各地へと向かってアラガミを殲滅するのだ。数年前までは少々狭く、暗い所だったが兄、エリックの手によってロビーの改装、および拡張工事を行ったおかげで非常に広く、ラウンジやバーまで搭載される様になった。そこに付け加え、結婚して極東へと移り住んだラケル・クラウディウス博士が愛が足りない、とか言う超理論を展開した結果、本格的なシステムキッチンや遊技場まで追加され、もう完全に最高級ホテルという様子に変貌していた。

 

 なお遊技場に関しては酔ったゴッドイーター六名が暴れた結果完全に潰れて消えた。誰かはおそらく、言葉にしなくても解ると思う。

 

 任務から一日、アナグラに帰ってくると、真っ先にオペレーターから”お帰り”の言葉が普段は存在するが、

 

「エリ―――」

 

「ふんっ」

 

 その前に割り込んでくる兄のサングラスを拳で砕きながら、そのままジャーマンスープレックスを決めて床に叩き込む事で帰還が完了する。

 

 もはやこれをやらないと帰ってきた気がしない。

 

 視線を入り口近くのオペレーター席へと向けると、そこにはヒバリの姿がある。片手を上げて挨拶をすると、ヒバリが頭を下げてお帰り、と言ってきてくれる。その言葉に感謝しながらも邪魔な兄を横へと蹴り転がす。

 

「もう―――私の人生の邪魔よ兄ちゃん」

 

「お兄ちゃん、今の一言で死にたくなったよ……」

 

 自殺するかどうかを真剣に考案し始める兄の事は無視し、一旦神機の保管室へと移動する。そこで神機―――オスカーを預け、再びフロントへと戻ってくる。そこで道具屋のおじさんと話している兄を確認してから、ロビーを横切って反対側へ、扉を抜けてラウンジへとやってくる。バンダナを被って料理をしているアナグラの料理担当、ムツミが一生懸命作業しているのを確認し、邪魔をしては悪いと声をかけずに奥へ行く。

 

 奥、窓際の席には複数の姿が見える。どれも女子だ。

 

 一人目はピンク色の服装がベースの、肌色率が多すぎてこいつ正気か、と疑いたくなるナナ、二人目はゴスに近いドレスのシエル、三人目が世紀末砲撃女王カノン、そして妊娠している為お腹が大きくなっており、完全にゴッドイーターを引退しているサクヤの姿だった。やっほ、と手を振って挨拶をすると、手を振り返してくる。

 

「エリナちゃんお疲れー」

 

「馬鹿筆頭二人と任務って疲れたでしょ? なんか貰ってこようか?」

 

「あ、お構いなくー。帰って来る途中で休憩入れたんで大丈夫です。まぁ、あとで何か食べるかもですけど」

 

「そんな時はおで―――」

 

「ゲテモノはなしで」

 

 真顔でそう言うと、ナナがカウンターテーブルの上で倒れる。その姿を確認してからシエルへと視線を向けると、シエルが首を傾げる。

 

「……しかしエリナも凄いですね。あの人外達と一緒に任務に出れるとは……」

 

「待ってシエル。アレらと一緒にしないで。訴訟も辞さない」

 

 そう言った直後、ラウンジの扉が開く。その向こう側から良く知る一団が出現する。金髪の青年で立場的には今は上官に当たるジュリウス、そして不思議と神薙ユウの事を思い出させるブラッド隊の副隊長さん、影の薄いロミオ、ツンデレが激しいおかげでネタにされまくっているギルバート、他のキチガイたちを比べれば若干頼りないがおそらくは一番安定しているコウタ、そして煙草を咥えながら歩いているリンドウに大邪神と呼ばれているキグルミだ。

 

 男共で集まって一体何事をするんだ、と思いつつ視線を向けていると、何やら誰の筋肉が一番すごい、とか語り合い始め、それを証明する為にここで脱いで女子たちに決めさせよう、とかいう狂気の発想に至っていた。そしてその場で上着を脱ぎはじめていた。

 

 なんなんだあいつら。正気か。

 

「私、超興味あります」

 

「一番貧弱だった奴は今年中”モヤシ”がコードネームで決定ね……」

 

 シエルとサクヤのつぶやきを聞き、コウタとロミオと副隊長さんが一瞬で逃げ出そうと走り出すが、それをジュリウスとキグルミが腹パンで行動不能に追い込んで剥き始めた。慈悲のかけらもない行動にげらげらとカノンが笑っており、ナナは興味深そうに眺めながらスケッチブックを取り出していた。

 

 混沌としているなぁ、なんて現実逃避をしていると、

 

 再びラウンジの扉が開く。

 

「エリナァ―――ごふっ」

 

「はい、おひとり様追加ぁ―――! あぁ、脱がすのめんどくさいからもう行動不能組は全裸でいいよな。誰かソーマも気絶させてつれて来いよ」

 

「っしゃあ!」

 

 シエルがガッツポーズを浮かべていた。極東に染まり切った仲間の姿に合掌しつつ、着々と全裸に剥かれて行く憐れな兄の姿を眺め、そして溜息を吐く。

 

「極東は今日も地獄ね。いや、ホント」

 

「寧ろ外での戦いよりも、身内でのノーガードのネタ的殴り合いの方が遥かに酷いわよね、これ」

 

 サクヤのその言葉にうなずきつつ、激しくいつも通りのアナグラを生きる。

 

 

                           ◆

 

 

 ―――なおその後、登場したラケルが笑顔のまま”ポークビッツ”と発言し、それが原因で一部男性陣が発狂、全裸コンテストは閉会した。

 

 本当にいつも通りの極東だった。

 

 




ドーモ、テンゾー=サンです。

現在インドにいますが、出国前に面白い企画を聞かされたのでぜひぜひ、という事で参加させていただきました。

 テーマとしては:何時もの極東

って感じですね。えぇ、アニメとは全く関係がありません。アニメになんかかけようかな? と思いもしましたけど、結局は何時も通り、という感じで極東の未来を描きました。生命の樹がたぶん来る日はないでしょう。ですがラケルは裏切りませんし、フライヤで腹パンの謎現象は発生しますし、グレム局長は発狂してくれるでしょう。

 つまりは平和って事です。えぇ。

本編はアレで完結しているので、ケッコー時間を飛ばさないと蛇足感強いかな? という感じで”GE2になったらどうする?”という感じに、GE2時系列絵も結局は何時も通りの極東、ってな感じに書きたかったところで。

 ともあれ、皆さん、アニメですよアニメ。極東動物園が開園するそうですよ。テレビで。

 私はインドにいて見れないですけど。悲しいので誰か録画送らないかなぁ……。

 と、も、あ、れ、

 若干蛇足感のあるお話ですが、原作が終われど、お話は語られないだけで続いて行くものです。きっと、そんな風にアニメにもまた続く世界があるのです。

 どういうシナリオ、どういう世界、どういうお話であれ、「GEコンテンツ」という事で純粋に楽しめれば、それはそれで素敵ではないのでしょうか? これもまたそんな感じで楽しめたら、という事で。

                    
  インドから、てんぞーより、牛肉食べながら


※このあとがきは7/2以前に書かれたものです

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