【GE作者合同投稿企画】アニメ化ですよ、神喰さん!   作:GE二次作者一同

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題名・作者名:祭りの後・無為の極

投稿作品名:神を喰らいし者と影

登場キャラ:極東組、ブラッド、クレイドル

ジャンル:ほのぼの



※この作品は無為の極様の『神を喰らいし者と影』の『第 参 部第150話&151話 馬鹿騒ぎ前後編』のこぼれ話になります。本編と合わせてお楽しみください。




祭りの後 (作:無為の極)

 異様とも取れたFSDは大盛況の内に幕を閉じた。結果的には当初の見込んだ売上を大幅に超えた事に上層部、特に榊の表情は珍しい程の笑みを浮かべていたが、それとは対照的に無明とツバキの表情は微妙な物となっていた。

 売上そのものに関しては当初の計画通りではあった為に、本来であれば何も問題は無かったはず。にも関わらず、こうまで微妙な表情になったのはある意味当然だった。

 

 

「しかし、極東の住人は何を考えているんだか。少し頭が痛くなりそうだ」

 

「でも、結果的に売り上げにも大きく貢献できたんじゃないのかな。我々の当初の目的もしっかり果たせてるのであれば問題ないと思うよ」

 

ツバキの頭痛の種はそこにあった。着物や服の売り上げだけで当初の収益を大幅に超えていたのではなく、問題だったのは、その副次的な内容だった。今回の売上で一番貢献したのは、有償のカタログ。

 

 単なるカタログなら問題無かったが、そこには事前に誰が何を着るかと言った簡単な物が紹介されていた事だった。ショー当日はそれ以上の点数が出ていたが、事前に何をするのかが分からなければ集客は危ういと考えた結果、グラビアレベルで掲載した物だった。

 

 

「ツバキさんの気持ちは分からないでもないが、我々の想定した金額を超えたのであれば良しとした方が良いんじゃないか?」

 

「それを言われれば確かにそうなんだが…」

 

ツバキとて無明の言い分には理解できる。しかし、これとそれは別物では無いのだろうか? 当初弥生からの提案には確かに許可したのは自分だが、まさかこんな結果になるのは想定外。

 恐らくは各個人にも多大な負担がかかるのではないのだろうか? そんな懸念がツバキにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今年もか~。何で俺にはこう……もういいや。考えるだけ無駄だな」

 

ラウンジでは第一部隊長でもあるコウタが人知れずしょげている光景がそこにはあった。気が重くなる原因はテーブルの上に置かれたダンボールにあった。

 FSDは基本的には神機使いと話をした事が無い人間が多く来場する事もあってか、その後に何かと手紙やメールが多数届く。もちろんプライバシーの関係上、各個人に対して直接届く事はないので、この時期に関してだけは個別用の暫定アドレスが公表され、それを職員が振り分ける作業に追われる事が多かった。

 

 

「どうした?また子供からしか来なかったと嘆いてるのか?」

 

「なんだソーマか。その通りだよ。何で俺にはこう……言ってて自分が情けないから、これ以上は止めとく」

 

「そんな事は3年前から今更なんだろ? イチイチ気にするからこうなるんだろうが」

 

コウタのしょげた原因は正にそれだった。当時に比べればコウタも落ち着きが出てるが、どうしても外部居住区の、近所に住んでる人間からすれば当時から何も変わっていないと思われているのか、そのイメージを引きずったままだった。

 

 

「ソーマこそどうなんだよ?」

 

「俺の事はどうでもいいだろうが? 何でそんな事を気にするんだ?」

 

コウタとてこの状況に甘んじたいと考えてはいないが、それでも他人の評価が気になるのか、目の前に居るソーマに確認をせずにはいられなかった。

 

 

「どうせ、何言っても無理なんだろ? ほら、これが俺に届いた分だ」

 

簡単に確認できる物と言う事で、ソーマは個別に届いた内容をコウタに見せていた。当初は何をどう突っ込もうかと考えていたが、見れば見る程顔色だけは悪くなる。ソーマはまだ何も確認してなかったからなのか、内容は何も知らない。

 しかし、コウタの表情がそんな内容に関して雄弁に語っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これがハルさんが言ってたやつか……」

 

コウタとソーマの反対側でギルもまた戸惑っていた。ハルさんに以前に言われた言葉がここにきて漸く理解出来ていた。そもそもギルは何か目立った事をしたつもりは何も無い。ただ焼きそばを焼いていただけにも関わらず、送られたメールの内容は好意の塊だった。

 

 

「ギルの所はやっぱり多いな。何々……キリッとした顔が素敵でした。私と是非一度……」

 

「ロミオ、なんで声に出すんだ。いちいちそんな事を口に出して読み上げるな」

 

背後からの音読に驚いたのか、ギルは一度開いた画面を直ぐに消し、声の持ち主でもあるロミオを睨みつけていた。

 

 

「情熱的な文章じゃん。メアドもあったから、これを機会に考えてみたらどう?」

 

「俺なんてまだまだここでは半人前も良い所だぞ。どうせ冷やかしか何かじゃないのか」

 

「ギル。女性からの想いを伝えるのは勇気が必要な事です。蔑ろにするのは送ってきた女性に対して失礼なのでは?」

 

シエルの唐突なツッコミにギルとロミオは驚愕の表情をしていた。今まであればこうまで会話に食い込む事は無かったが、今日のシエルはどこか何時もとは違っていた。いつもであれば冷静な判断を下すにも関わらず、今のシエルの表情には困惑と言う言葉がピッタリの表情を浮かべている。一体何がシエルのここまでにするのか理由が分からなかった。

 

 

「シエルちゃん大変だよ。この前のショーの写真集が発売されてるって話、知ってた?」

 

「ええ知ってます。と言うよりも私の所にもそんな内容のメールがきてましたから。ショーだけでも困ってるんですが、まさかここまでやるとは想定外でした」

 

以前にヒバリが何気なく放った一言が思い出されていた。ショーだけで済めばいいんですがの言葉が脳裏によみがえる。あの時のヒバリの表情はまさに諦観の表情。その意味をここで体験するとは思ってなかった。

 

 

「私の所にもかなり来てたんだよ。全部見てないんだけど、こんなに沢山。どうしよっか?」

 

ナナの所に来ていた件数はギルやロミオの件数を大幅に超えていた。シエルも何気に見れば同じ位来ている。まさかとは思うがこれの全部に返事を出そうと考えれば任務のレポート以上の労力が必要となる。

 この現状を打開するにはどうすれば良いのだろうか?そんな考えが2人にはあった。

 

 

「そうだ。アリサさんなら何か良い手があるかも!」

 

「そうですね。一度確認した方が良いかもしれませんね」

 

先ほど任務から帰ってきたのか、クレイドルはまだロビーに居るはず。そう考え2人はロビーへと急いでいた。

 

 

「あれ? どうかしたんですか?」

 

「実はFSDの件で大量のメールが届きまして、どうすれば良いのかと……」

 

任務帰りのロビーには珍しくシエルとナナがアリサを待っていた。理由についてはともかく、先ほどのFSDの言葉にアリサも何となく納得した部分があった。

 

 

「ああ~。それですよね。私としては毎回の事なんですけど、合同で謝辞を述べてますね。全員が全員期待して送っている訳ではありませんから、私はそうしてますよ。と言うか、私の事よりももっと重要な事があるので、それ所では無いんですが……」

 

アリサはどこか遠い目をしながらも、自分の事よりももっと大事な事があると言っている。この時点で2人には何となく想像は付いているが、それを口に出せば確実にトバッチリだけが待っている。これ以上の事は一旦時間を空けてから再度アリサに確認した方が良いだろう。

 今はそんな事よりも、この場をいかに戦略的撤退するかに全力を注いでいた。

 

 

結果的にはシエルとナナはアリサが言っていた案を採用する事にしていた。とてもじゃないが、この日一日だけ来る訳では無い。この公開アドレスは一週間程ある以上、一つ一つを確認する事は出来なかった。

 ロミオに関しては、何か真剣に考えているのか、じっくりと呼んでいるが、ギルに関してはいくら突っ込まれようとも軽く流し読みし、最終的には全体としての謝辞に留まっていた。

 

 

「そう言えば、ジュリウスの所って何か来たのか?」

 

「俺の所は各支部の重鎮が大半だったから、そんな事は無いと思うぞ」

 

「って事は確認してないのか?」

 

「ああ。まだ仕事が片付かなくてな。すまないが、ロミオが見ておいてくれないか?」

 

まだ見ていない事に驚きを隠せなかったが、これはこれで興味深い物がある。ギルの様な熱烈な内容は無いにせよ、もしそんな物があればそれが話の種になる。そんな考えだけでロミオはジュリウスのメールを開いていた。

 

 

「なあジュリウス、本当に見てないんだよな?」

 

「さっきも言ったが見てないぞ。見れば既読になると思うが?」

 

ジュリウスが言う様に、確かに全部が未読になっているから、一度も見ていないのは間違い無い。しかし、ロミオが驚いたのはそんな事ではなく、その内容だった。

 極東全体に来た内容は、それこそ本人が書いたであろう内容だったが、ジュリスの物に関しては何故かお見合いの釣書き。写真添付から始まり趣味など多彩な事が書かれている。軽いノリだと考えたつもりだったはずが一転し、何か申し訳ない様にも見えていた。

 

 

「ロミオ先輩どうしたんです?」

 

「い、いや。これってさ……」

 

「流石はジュリウスだね。写真やプロフィールまで書いてあるよ。皆やっぱり神機兵には関心が高いのかな?」

 

どこか場違いなナナの言葉には誰もツッコむ事が出来なかった。来ているのは各支部の重鎮であれば、間違いなく見合いのメール。ジュリウスはまだ気が付いていないが、この事態の収拾をどうやって図るのだろうか?

 一人気が付かないナナは横に置いても、これを対処できる術がどこにも無かった。

 


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