【GE作者合同投稿企画】アニメ化ですよ、神喰さん!   作:GE二次作者一同

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題名・作者名:拝啓、私へ・終幕ノ余興

投稿作品名:GOD EATER The another story. 

登場キャラ:神楽(オリ主),ソーマ,リッカ,その他回想の人々

ジャンル:シリアス,オリジナル設定多数,原作設定改変多数,本編ネタバレあり,ソーマ×女主


前書き

始めましての方が大半となりますでしょうか。終幕ノ余興と申します。
亀更新、原作大改編の元で書かせて頂いておりまして、最近は完全オリジナルの小説にも手を出し、挙句の果てにはゲームシナリオや歌詞その他諸々、あちこちで文字書きとして(ry

さて。前述の通り、私のこの作品では改変部分が多々御座います。また、小説内における無印編終了時までのネタバレも含んでおりますので、その辺りにはご注意ください。
これらが問題ないという方、拙い文章ではありますが、どうぞお楽しみください。


拝啓、私へ (作:終幕ノ余興)

 

神と人と、その隙間

 

「はあっ!」

 

久しぶりに、一人きりで任務に出ていた。

いつもソーマに預けている背中が少し寂しい。耳に張り付くほど何度も聞いた声が、その時はそこになかった。

……すごく単純な話。あと一月くらいで、私はユーラシアに飛ぶ。一緒に行くのはリンドウさんとツバキさん。ソーマはいないし、きっと私一人で戦う機会も増えるだろうと思っていた。

もちろん、誰とも知らない神機使いに後ろ指を指されながら。アラガミの分際でと罵られながら。

それは私の心や意志や、その他全てを無視して放り投げられる流言飛語と罵詈雑言と、幾分かの真実。暴走したら危ない。いつアラガミ側に付くか分からない。

 

《……荒れてるね。》

 

言われて初めて、気付いたかも知れない。

 

【そうかも。】

《やっぱりさ。ソーマも来てもらうように頼んだら?戦力ダウンは分かるけど、渚もいるんだし……》

【ううん。大丈夫。ありがとね、イザナミ。】

 

彼女の名前をこうして呼んだのは、一体いつぶりだっただろう。呼ぶ度に人でないことを自覚する名前。だけど、家族と同じ暖かみを持った名前。

私は、自分を受け入れられていないのだ。そう感じた。

私の周りに転がった無数のアラガミの死骸。もうしばらくすれば、きっと綺麗さっぱり霧散していくそれらを、岩の上から俯瞰する。

もし死んだとしたら。私はそこに残るだろうか。

私を形作っているこの体は、ちゃんと灰になることが出来るだろうか。

それともアラガミみたいに、霧散して、またどこかで寄り集まって、完全なアラガミとして生き返るのだろうか。

そして、近場の集落やハイヴでも襲って、最強のアラガミとして世界を滅ぼすのだろうか。

……はたまた、彼に狩られるのだろうか。一匹のアラガミとして、私を抱きしめてくれたあの手に。

思考だけが、空回りしていた。

 

   (中略)

 

アナグラに帰り着いても、皆のように整備を頼むことはない。ああ、やっぱり私は人でも神機使いでもないんだと、自然と感じる瞬間だ。

 

「お帰り。ちょっといいかな?」

「え?」

 

珍しいな。リッカさんにここで呼び止められたのも、ずいぶんと久しぶりだ。

 

「複合コアのことなんだけど、実は大きく進展したところがあってさ。それについて聞きたいんだ。」

 

あの日。私の体に入り込んだもの。それの論文やレポートは、原本の形でリッカさんに手渡された。ううん。手渡した。きっとリッカさんなら、お父さんの意志を継いでくれると思ったから。

私を引き取ってくれたおじさんからはデータ化された論文を、ある日突然届けられた遺留品から、発表すらされていなかった論文とレポートを、お父さんが遺したものは、全部読んでいた。

お父さんの夢に少しでも近付きたくて、必死で勉強した。そうすることが、生き残った私の使命だとでも言うように。

おかげで、それに関する……どころか神機のことだって、知識だけならリッカさんと張り合う自信があった。

でも結局、私に出来ることはこれだった。敵討ちみたいにアラガミを狩ること。あの日誰も救えなかったことの罪滅ぼしを気取って、アラガミを狩り続けること。その力があって、その覚悟があって、その意志があった。

そうすることしかできない事への、諦めもあった。

 

「とりあえず、その進展の良い部分からね。これまで作ったコアは何日かすると結合が弱くなって霧散しちゃってたけど、ようやく半永久的に保つのが出来たんだ。」

 

頷く。

 

「で、そのコアなんだけど……これまではなかった欠点があってさ。」

「欠点?」

「そう。簡単に言うと、ものすごく変異しやすいんだよ。次々に遺伝子情報が書き換わっちゃって……一秒前に適合していた人と、次の瞬間には適合できなくなる。」

 

これがなかなか克服できなくってさ。そう続きそうな口振りだ。

そういえばものすごい数のコアを作っていたな、と、もういつだかも定かでない、多すぎて重すぎる記憶の中のお父さんを想っていた。私が見て、覚えているだけでおそらく数十個。レポートや研究ノートには、その何十倍もの数が書かれていたな、と。

その中で、最終的にお父さんが作り出せた完成品はわずかに八個。お父さんと、お母さんと、怜と、私。それぞれのDNAを組み込んだコアを二つずつ。

 

【の、内の一人がここと。】

《いきなりどうしたの?》

【ううん。何となく。】

 

……榊博士とお義父さんに頼み込んで、一度だけ遺されたレポートを元に複合コアを作ろうとしたことがある。私のDNAを組み込んだものだ。

結果は大失敗。原因はとても簡単だった。

その作り方の、汎用性が非常に低いこと。

私のコアを作る過程と、怜のコアを作る過程は、何カ所か違っていた。各々のDNAによって、それを変える必要があったから。

私のコア……つまりはイザナミを作ったときの私と、今の私。いくつもの遺伝子配列が違っていたのだろう。

 

「たぶんあの作り方だと、適合させたい人のDNAが必要なんだと思う。」

「神楽のコアみたいに?」

「うん。」

 

十何体かのアラガミから採取した、状態のいいオラクル細胞を組み合わせて作る、アーティフィシャルCNSの模造品。誰にでも使える神機のコアを作ろうとして、お父さんは研究していた。

結局生きている間に確立したのは、その人のDNAを組み込んでやっと、ある程度を安定させられるコア。昔の私の神機はその最終目標に近いものだったけど、研究ノートによれば偶然の産物でしかなかったらしい。

その夢を引き継いで、叶えて欲しい。リッカさんがこの研究をすると聞いたとき、私が言った言葉だ。

 

「ってなると、別のやり方を探す方がいいか……」

「そうかも。」

 

アラガミだからコアのことが分かるだとか、オラクル細胞の一つ一つまで把握しているだとか、そんなことは全くなくて、むしろ自分の体のことが分からない恐ろしさに駆られるだけだった。自分に何が出来るかはある程度分かるのに、この体は分からない。自分と他人の違いは知っているのに、この体は理解できない。

けど、それでも良いかなって。そう思うこともある。

 

「うーん……どうするかな……」

「何人かで試して、共通部分を抜き出す……とか?」

「まだ神機使いじゃない人のが必要なんだよ。それで適合したりしたら、そのまま神機使い行き。提供者がいないんだ。」

「……そっか。」

 

何が出来るとか何が出来ないとか、人だとか人じゃないとか、アラガミだとかアラガミじゃないとか。何一つ関係なく、私が私でありたい。……それだけ。本当に最近になってから、そんな風にも考えられるようになってきた。

逃避だって言えばそれまでなんだろう。見たくないものから目を逸らし、聞きたくないことに耳を塞げば、世界はずっとずっと綺麗に映り続ける。

逃げて、逃げて。逃げて逃げて逃げて逃げて。嫌なこと全部忘れ去って。それだけで、私はずいぶんと生き易くなる。

でも、その横でソーマが笑っていた。生まれたときからアラガミと一緒にいて、神機使いになることを運命付けられて、ただただアラガミを倒す兵器として見られていながら、私の横で笑ってくれた。他の人がどう言おうと、それだけは変わらない。彼がいる世界で、みっともない生き方はしたくない。

だから絶対。絶対に逃げない。それが逃避と映ろうと、私は私であるために生きて、私が私であることを肯定し続ける。

……なんて言えば格好いいけど、どちらかと言えば割り切った、に近いんだろうなあ。

 

「ひとまずは、ヒバリみたいな人に協力を仰ぐ感じだよ。」

「適合率はあるけど適合する神機がない人?」

「そういうこと。それでも少ししか集まらないと思うけどさ。」

 

……昔、こう言われた。

 

『為すを成せ。為せるを成せ。為すべきを成せ。』

 

お父さんに研究者になった理由を聞いたとき、お父さんのお爺さん、お前の曾お爺さんに言われたんだ、と前置かれてから教えてもらった言葉。正直なところ、その意味はよく分からない。ずっと言葉通りのものを捉えたまま進んできただけの、変に格好良く見えるよう調整された発言でしかない。

……それが今なら、少しだけ分かる。

 

「研究っていうのは失敗の連続だからね。いろいろやって、いろいろやらかしてみるよ。」

「やらかすのはちょっと……」

「あはは。冗談冗談。」

 

出来るからやるんじゃない。やるって決めたから、私はやるんだ。

敵討ちみたいにアラガミを狩ること。あの日誰も救えなかったことの罪滅ぼしを気取って、アラガミを狩り続けること。

それらが出来る力を、誰かを助けるために使うって。いつだかも忘れるくらい昔にそう決めたから、私はやるんだ。

……そしていつか、神として潰えよう。

 

   (中略)

 

「進路クリア。あと二時間くらいは大丈夫です。」

「分かった。そこで待っていろ。十分後に回収する。」

「はい。」

 

アラガミを喰らえば。というより、残り少ない人の部分に有害でない、或いはそこまで辿り着かない程度でしか有害でないものなら、右腕から摂取することで傷が治り、体力が回復し、疲れも取れる。見事なアラガミだ。

……便利だけど、その方法を使う気はない。

もちろん、アラガミの能力を使う祭に必要になるオラクルは……こういう言い方をして良ければ、アラガミ由来だ。私自身が作り出すことも出来るけど、正直なところ、それでは足りないことが多々あるから。戦闘中に喰らったアラガミから抽出したオラクル細胞を体内に取り込み、それを放出する形で使用している。そういった意味では便利に利用しているわけで、事実使っていることにはなる。

私が言いたいのは……

これ以上、アラガミにはなりたくない。残り少ない人の部分を、ただ人で在るまま過ごしたい。

死んだ後に絶対に残る部分を、ほんの少しは持っていたい。

 

《……神楽がそうしたい、って思うなら、私はいつでも離れられる。神楽も……神機使いじゃなくなるけど、人に戻れる。ソーマともっと平和に暮らせるかもしれない。だから……》

【ううん。そういう意味じゃないんだ。そもそもアラガミじゃなかったら、ソーマとも会えなかったから。】

《でも……》

【今の私はアラガミで、だけど人で、やっぱりアラガミ。それが私で、だから私なんだって。最近になってやっと、そう思えるようになってきたから。】

 

……出来る事なんて、ほんの少ししかないだろう。やって良いことだってほんの少ししかないだろう。それでも私は

 

   *

 

「……」

 

なるほどな、と、机に放り出された膨大な文章を見て思う。以前より幾分か書き進んだようだ。

ソーマが暴走しちゃったら、絶対に私が止めてみせるね。

ああ。俺もだ。

何とはなしにでありながら、互いに決死の覚悟を持って交わしていた言葉の重さを、今改めて実感させられたかのような気分だ。

 

「……分かってるさ。」

 

書いている内に寝てしまったのだろう。暖かみのある色の木に突っ伏す神楽の頭を撫でる。寝ていても撫でられていることは感じているのか、元々気持ちよさそうだった顔が更に和らいだ。

にしても、自叙伝とでも言うのだろうか。意外ではないが……せめて俺の表現をもう少し軽くしろ、と言いたいところだな。

……慰霊碑が見える小屋。

第一ハイヴ跡に建てられたここは、神楽が無理を言って親父に認可させたものらしい。表向きはここの観察小屋として。実際には……まあ、分かり易いか。

この辺りで任務があったときは、帰投まで時間をもらってここに来る。特に一緒に過ごすというわけでもなく、俺は第一ハイヴ跡の特異な状態の研究を。こいつはその間、何かしらで暇を潰している。……専らこの自叙伝のようなものを書いているか、俺を眺めているか。その二択だが。

 

「神楽。そろそろ戻るぞ。」

「……や……もうちょっと……」

 

……この机は、彼女の家。彼女がアラガミになったその日に壊された家で唯一残された、玄関のドアを使っているらしい。使える部分だけを再利用しているのか、それは机として使うには少々小さく、薄い。俺のように資料を置いていては、下手をすれば割れてしまうほどに。

だからだろうか。どれだけ何かをその机でしていようと、自然と寝入ってしまっていることがままある。今となってはどこからも得られなくなったものを、必死でかき集めようとするかのように。実の両親と弟との間で、その日さえなければ築けていたはずの何かを感じようとするかのように。

 

「ったく……風邪ひくぞ。」

 

コートを脱いでその肩にかけてやると、またさっきと同じ表情を浮かべた。

 

「おと……さん……ばんごは……できた……よ……」

 

寝言。ここ以外で、俺はそれを聞いたことがない。

眠りが浅いからと神楽は言う。だが、俺はそれが嘘であると知っているし、彼女もそれを気付かれていることを分かっているだろう。

不安なのだ。どうしても。また誰かがどこかへ行ってしまいはしないだろうか、と。

誰より早く起き、部屋のロックで誰もがいることを確認し、誰よりも早く帰り、誰もが帰ってくるのを迎える。誰もいなくならないように。自分が大切だと思う全てが、消えてしまわないように。

……悲鳴を上げて飛び起きるようなやつが、眠りが浅いだの何だのと言うものか。

 

「……ゆっくり寝てろ。起きるまで側にいてやる。」

 

心なしか、また表情が和らいだ気がした。

ああ、アナグラには言っておかないとな。それを思い出したのは、神楽の寝顔を眺め始めてから十分ほど経ってからだった。






後書き

ここまで読んでくださりました読者様、ありがとうございました。
これを読んで興味を抱いてくださったのであれば、ぜひぜひ本編の方も読んで頂きたいと考えております。あまりにも原作改変が多いもので…
↓当作品頁
http://novel.syosetu.org/14028/

このような素晴らしい企画に招待してくださりましたウンバボ族の強襲様へ、この場を借りてお礼申し上げます。
また、同じく本企画でご一緒してくださりました作者の皆様、ありがとうございました。私自身の欠点を見つける良い機会となりましたし、何より素晴らしい作品を拝見する等、得がたい経験をすることが出来ました。
そして読者の皆様、繰り返しとなってしまいますが、ここまでの読了、ありがとうございました。

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