【GE作者合同投稿企画】アニメ化ですよ、神喰さん! 作:GE二次作者一同
投稿作品名:ゴッドイーターになれなかったけど、何とか生きてます。
登場キャラ:オリ主、オリキャラ、ブラッド、アナグラ勢
ジャンル:ギャグ、ほのぼの
新兵訓練 (作:ソン)
「と言う訳で、新兵のお世話を頼めるかな」
「はい?」
榊博士はニンマリとした笑顔を僕に向けて、そう口にした。
その隣には少年と少女の姿。二人とも赤髪でどこか顔つきが似ている事から肉親のような関係だろう。
そして腕輪の存在とその色から恐らく、新型神機に適合したゴッドイーター。にしても、兄妹で新型神機適合とは珍しい。
「榊博士……。あの、僕戦闘訓練とか出来ないんですけど」
「ブラッドに対しては、だろう? 彼らは戦いのプロだからね。セン君にお願いしたいのは、新兵の教育さ」
よく見れば新兵の少年はふてぶてしい顔で僕を見ている。うん、若々しくて良い反応だと思うよ。
士官学校の生徒に比べればマシだ。いや、本当に。あれはもう、この世の疑心暗鬼を箱詰めしたような空間だった。
「あのさ、支部長。せっかく極東支部にいるんだから、ブラッドとかクレイドルのようなスゲェ人達から教わりてぇよ」
「兄さん……! あのセン・ディアンス博士だよ。そんな事言ったら失礼だよ」
あっ、兄妹なんだ。年も近いように見えるけど、齢が近い血縁者同士がゴッドイーターの適性を持つのは本当に珍しい。
兄の方は、まぁヤンチャで向こう見ず。恐らく少女はそんな兄を支えるために気配りに長けた……と言ったところだろうか。
説教しても仕方ない。何とか上手く載せてみようか。僕個人の感情で二人を振り回す訳にもいかないし。
「榊博士。とりあえず、クレイドルやブラッドに行っている訓練メニューで良いですか?」
「教育に関しては全て任せるよ。そちらに関しては私より君の方が適任だからね」
「了解です。それじゃあ二人とも。これから一時間後に下の出撃ゲート前で集合して。そこで自己紹介するから」
僕の言葉に、兄の方はムスッとした様子で、妹はまた申し訳なさそうに頭を下げた。
出撃ゲート前では、朝、職員達による朝礼がある。とは言っても、そこまで厳格では無く、単なる情報交換のようなモノだ。
僕の背後には例の二人が控えていて、あの時の様子はどこへ消え去ったのやら、神妙な面持ちで朝礼を見ていた。
ゴッドイーターからの報告、研究開発からの報告、オペレーターからの報告、螺旋の樹調査委員からの報告――あれ、これ大半僕が喋ってね?
……まぁ、いいや。とりあえずやる事やっちゃおう。
「それと本日付で新人が二人配属される。それじゃあ、自己紹介お願い」
その言葉と共に敬礼の姿勢を取る二人。
あー、何かそんな教育あったなぁ。ホント、士官学生時代が懐かしい。けど、もう二度と戻りたくない。
「本日付でこちら、極東支部に配属となりました赤崎キョウです!」
「同じく本日付で配属となりました赤崎シノです! よろしくお願いします!」
挨拶もこなせてるから、神機使いになって天狗と言う訳でもないらしい。それに礼儀も何だかんだで出来てるから。きっと教官担当となった僕自身を疑ってるのだろう。
……バグの固まりみたいな存在だからなぁ、僕。
「一応、今日からしばらく訓練期間に入って、実戦に出れると判断したら実地演習に出て貰う形になる。
皆も先輩だから、色々教えてあげて欲しいんだ。よろしくね」
さて、ひとまずこの後ある新人歓迎会をどうするかが鍵だ。
はっきり言って、アレはヤバい。何て言うか色々とマズい。ここのイメージが確実に崩壊するからである。
見て貰ったら分かる。
で、肝心の新人歓迎会は予想通りの有様である。
酒に酔っぱらった男どもがモニターに映るシプレに対して、合いの手を合唱すると言う何とも珍妙な光景が展開されていた。
その誰しもが一騎当千の実力を持つゴッドイーターである。
シプレの曲に合わせて、空気が揺れると言うのは一体どういう事なのだろうか。
ちなみにここは極東支部。世界中で最も激戦地区であり、かなりの猛者或いは実力者しか入れないとも呼ばれている。
そう、呼ばれている。
『アーユーレディゴー!』
「フォォォォォゥ!」
『走り出そう!』
「フォォォォォゥ!」
これを見て、一体誰がそう信じるだろうか。
本当に何だコレ。
ちなみに肝心の僕は酒に弱いので、それを遠目から見るだけである。あのテンション、酒入ってないと無理だ。
手拍子やタンバリン、マラカス、そして喧しい合いの手がリズムに合わせて鳴らされる空間。そして奇声を上げる屈強な男達。
これ、新人歓迎会だよね?
「いやー、こうして騒ぐってのもいいもんだよなー。セン博士」
完全に酔っぱらってるリンドウさん。果たして新人の誰が、今のこの人を凄腕のゴッドイーターだと思うのだろうか。いや、実際戦闘だと凄く粘り強い人だけど。
「いいもの……なんですかね」
僕の呟きに答える人は、どこにもいなかった。
その後、酔ったロミオに絡まれシプレ談義を一時間。そして完全に酒にやられたネルちゃんを介抱している間に体の骨を何本か持っていかれた。
……酒って怖い。
あの新人歓迎会から翌日、訓練場にはキョウ君とシノちゃんの姿がある。どうやらキョウ君はバスターを、シノちゃんはショートを選んだらしい。互いにカバーしあえるチョイスと言う事だろうか。
「じゃあ、二人とも。ダミーアラガミを出すから自由に動き回ってみて」
ダミーアラガミが出ると早速戦闘が繰り広げられる。ダミーアラガミだから、戦闘不能になる事は無いけど噛まれたりタックルされると普通に痛い。
これが初めての戦いなのか、二人は危なげながらも立ち回っている。
「どう見る? ジュリウス」
「……筋は悪くない。基本に沿った立ち回りが出来ている。――今のところは問題無しだな」
「今のところは……か」
「――見ろ、セン。変わるぞ」
突然、キョウ君の動きが悪くなる。その隙を突くようにダミーアラガミが連携しながら攻撃を重ねていく。
シノちゃんが援護しようとするも妨害されてしまい、上手く捌くことが出来ない。
ここまで見て、僕は訓練中止のボタンを押した。それと同時に、ダミーアラガミが消滅する。
「訓練中止。今の二人の動きは映像として記録しているから控え室で見るように。それじゃあ三十分後、またこの場所に集合。以上」
僕の言葉と共に二人は去っていき、僕は小さく息を吐いた。
せめて僕が神機使いであれば、二人に色々と教えられたのだろうけれど。
極東支部にいるゴッドイーターの中で、最もスタンダードな立ち回りを行っているのはアリサさんとリンドウさん、そしてジュリウスとギルくらいだ。他のゴッドイーターはどうしても個性が全面的に出ている。
特にネルちゃんの戦闘スタイルとか、絶対に真似できるものじゃない。アレは未来予知に等しい直感があって初めて実現できるものだ。
けど、時間が取れるのがジュリウスくらいで、クレイドルは現在サテライト及び螺旋の樹の調査。そしてブラッドも同じく螺旋の樹の調査や感応種の残党処理を行っている。
何とか確保できたのはジュリウスしかいなかった。
「……何か分かる? ジュリウス」
「キョウはどうも神機に振り回されているように見える。アラガミに振るうので精一杯でそれ故に周りが見えなくなる。
シノはフォローに拘り過ぎてしまい、上手く攻め切れていない。結果として一番攻撃頻度の高いキョウにターゲットが集中してしまう。
――実戦はまだまだ当分先だろう」
ジュリウスの分析は僕以上に鋭い。何よりゴッドイーターとしての経験がある以上、どうしてもそこは僕の適わない領域となる。
僕と言えば、せいぜいオペレーターとしてのアドバイス程度だ。本当に、何故僕なんかが戦闘教官を……。
「セン、お前は少し休憩してくるといい。整備は俺が行おう」
「なら、お言葉に甘えて」
「フッ……丸くなったな、お前は」
「ジュリウスこそ」
ラウンジのソファに座り、水を口に運ぶ。――うん、少しは落ち着いた。
あの二人の教導だけど、果たしてどうするべきか……。全く戦闘スタイルも異なるのだ。個人指導もいいけれど、それだとどうしても時間が掛かる……いや、掛かってもいいんだけれど、どうしてもどこかで焦ってしまう。
「センさん、お疲れ様です!」
「ネルちゃん」
ブラッド隊隊長、そしてこの極東支部が誇る最強の一角――それを象徴する存在が彼女だ。
神機どころか体術でアラガミを怯ませる超攻撃的な戦闘スタイルに敵の攻撃と間合いを常に頭に入れながらの高速移動。なおかつスナイパーでの精密射撃―シエル並とは行かないけど―を兼ね備えている。
ちなみに普通のゴッドイーターはそこまでではない。一撃離脱を繰り返す者もいれば、懐に潜り込んで主導権を握りつつ戦闘を展開する者も居る。多分、多いのは後者だ。
「新兵の事で悩まれてるんですか?」
「うん、当たり。とは言っても、二人が悪い訳じゃないんだけど」
当然と言えば当然の事だ。あの二人はまだまだ新米だから、何もわからない。命の削り合い何てした事すらない。
寧ろ、成果や結果なんて期待する方がナンセンスだ。
「訓練ばかりだったら、いざと言う時に実戦の雰囲気に戸惑ってしまう。……現に神機使いのPTSDは目立った問題になっているからね。
だからと言って、実力が伴っていないのに実戦に連れ出すと言うのも違う。そんな荒削りじゃ、早死にする。それも意味が無い」
よく考えてみれば、ネルちゃんもジュリウスが強引に実戦へ連れ出したケースだった。
――まぁ、あのジュリウスが見込んだのだから当然と言えば当然だけど。
「うん、やっぱり僕だけじゃダメだ」
「?」
「ネルちゃん、明日ちょっと付き合える?」
「へっ?」
で、翌日。訓練場にはネルちゃん、キョウ君とシノちゃんの三人。僕の隣には昨日と同じくジュリウスが立っている。
「なるほど、確かにこれならば最も実戦に近い形式で教えられる」
「――それにね、やっぱりモチベーションが一番大事だと思う。そういった意味じゃ、ネルちゃんはこの極東支部でも有数の実力者だ。
ほら、二人の目の色が昨日までと違う」
凄いキラキラしてる。いや、まぁそうなんだろう。
ネルちゃんの実力は、ブラッド隊ならトップ。極東支部においてはトップクラスだ。僕らの支部におけるジョーカー的存在。
それに性格も穏やかで容姿端麗だから人気も出る。アリサさんとツートップを占めているらしい。ちなみに次点でレア博士だ。その愚痴を僕はラケル博士にこの間、三時間近く聞かされた。……あ、これ今はどうでもいい話か。
「……マジ?」
ネルちゃんが腰を落とし神機を構える。どうやら実際に見せるらしい。
いや、まぁいいんだけれど、実力差に唖然としないだろうか。……まぁ、そこのフォローは僕が行おう。
ダミーアラガミを出した途端――ネルちゃんは凄まじい勢いで踏み込み、一閃。瞬く間に一体を消滅させた。
その勢いを殺さずに、側転しながら体を反転させすぐに次の狙いへ。地を蹴って、弾けるように跳ぶ。そのまま体を独楽のように反転させ、ダミーアラガミを纏めて屠る。
ここまで僅か二秒。その二秒でダミーアラガミを五体近く撃破している。
「……」
おかしいな、いつから僕はハリウッドのSFを見ていたんだろうか。
ネルちゃん、徐々にゴッドイーターの動きをやめていってないかな?
あのマガツキュウビとの一戦以降―僕はあの時、生死を彷徨っていたから見れていない―その傾向にさらに磨きが掛かっている。
それにブラッドレイジと言う強力な能力も合わさるのだから、尚更だ。
「――効果はあったようだぞ、セン。見てみろ、二人の神機を握る手が強くなっている」
「……そうじゃなきゃ困るよ。極東支部最強の一人なんだ。生の動きなんてそうそうお目に掛かれる物じゃない」
「フッ……。そうだったな。
それとセン、ネルへの埋め合わせはちゃんとしてやれよ?」
「あー、勿論。ちゃんと考えてるよ」
実は今回の事をネルちゃんに頼む際、無償で引き受けてもらったんだけれど埋め合わせを頼まれた。
何でも装備の整備を一緒にして欲しいとの事。――リッカさんから教わって、僕もある程度の整備なら出来るようになったけれど、それでもリッカさんのような本物の整備士には適わない。
そう言おうとしたら、笑顔のネルちゃんに押し切られたから仕方ないけれど。うん。
ネルちゃんが訓練に協力してくれた後、どうやら他のゴッドイーターにも話が届いたようで、様々なゴッドイーター達が訓練に協力してくれた。
で、キョウ君とシノちゃんも触発されるように、メキメキと腕を上げつつある。
もうすぐ二人は実戦だと言うけれど、ジュリウスとアリサさんが同行するから心配はいらないだろう。
だが、どうしても分からない事が一つ。
「……何で榊博士は僕に」
訓練の教官なんて任せたんだろうか。
ゴッドイーターから教えて貰った方が早いと思うんだけれど……。
「っと」
こんな考え事をしている場合じゃなかった。次の実地訓練の申請に行かなくちゃならない。
さて、その書類を二人に書いて貰わなくては。
榊は手元にある報告書を見て、満足げに頷いた。
内容は新人二名の実戦許可申請であり、訓練での二人の行動や傾向について事細かに書かれている。
「うん、やはり君に任せて正解だったよセン君」
榊が、センに対し様々な役職を与えているのは気まぐれでは無い。榊なりの経験則にのっとった判断の下で行っている。
彼の能力――それは与えられたモノに対して全力を尽くす事。決して、中途半端にはしない。それ故に彼の能力はあの領域にまで研鑽されたと言ってもいい。
「大事なのは実力ではない。そんなモノは生き残っていれば、神機使いとして自然について来る。
けれど、心はそうもいかない。良い人格者に巡り合えると言うのは、滅多に無い事だ。
――セン君。君は君の価値を決して理解しようとはしないだろうね。だが、それでいい。それがよい。
ありのままの君だからこそ、神機使いは信頼出来る。このご時世で薄れてしまった信頼と言う物を、君に託すことが出来る。
――君が味方でいてくれて、本当によかったよ。セン・ディアンス君」
そういって、榊は小さく笑った。
後書き
今回、合作に参加させて頂きましたソンです。合作のお話の際、こちらのオリ主であるセンが他の作者様のオリ主と肩を並べていけるかが、ちょっとした不安であります。
RBもアップデート1.30が来るので非常に楽しみです。追憶のケイトとか使えないかな……。
それでは皆様も良い神喰いライフを!
(※こちらの文章は6/28以前に書かれたモノであり、公開日の7/2現在、GE2RBアップデートver1.30は配信されております)