キャスター奥さんを好きになったのはhollow ataraxiaから。
底辺は、ハサンとその次にアーチャーかな。アーチャーが苦手な少数派ですw
fate/zero なら逆でアーチャーが好きです。ギル様ですね。
底辺はゾーンは断トツでキャスターで、セイバーが割と嫌いになる事もあった。
物語りが違うだけでこんなにも印象は変わるのかと。
そりゃそうだ。書いてる人違うんだもんw
「名案があると言っていたハズですが……?」
「え!? 駄目ですか!? 完璧な作戦だと思ったんですけど!?」
ラスボスのいるラストダンジョンに見えなくもない城を前にして1組のサーヴァントとマスターは作戦と呼べるか分からない作戦の確認をしていた。
ヴァッシュがバゼットに進言した名案というのはこうである。
1.ドーナッツ(30個入り)を菓子折りとして持参する。
2.喜んで食べてくれている間に、バゼットがシロウを探し救出。
3.こんなに良い人たちなら戦わなくて良いかも! と思わせたところでお邪魔しました。では、と退散。
「大前提として、ドーナッツで喜びそうなのはあなたとセイバーだけです! それにドーナッツなんていつの間に用意したんですか!!」
「細かいこと気にしない気にしない♪ じゃあマスターはシロウ君をお願いしますね~♪」
「本当に一人で大丈夫なんですか? 令呪による魔力のブーストも無いんですよ? それに相手はヘラクレスですから、命がいくつあっても足りないんですよ?」
「ん~大丈夫ですよきっと。ほら、逃げる事だけなら僕自信ありますから~」
「それは……そうですね。では!」
「はいは~い♪」
ヴァッシュはバゼットと別れ、極めて楽観的に扉を開いた。
「あら、いらっしゃい。真正面から来るなんて大した自信ね。私のバーサーカーに一瞬で殺されちゃうのに」
「いやぁ~殺されたくないな~。仲良くしようよ~なはははは~♪」
「初めましてね、ガンナーのサーヴァント。イレギュラーな存在のあなたには今脱落してもらいましょうか。やっちゃえバーサーカー」
「■■■■■■■────!!」
「まぁまぁそんなに急がなくても、ドーナッツ買ってきたからさ。少し食べながら話そうよ。ね?」
「■■■■■■■────!!」
しかし、命令を受けたサーヴァントが止まる事は無かった。一直線にヴァッシュへと接近し、巨大な岩のような斧剣を振り下ろす。事前に立てたザルな作戦は当然失敗に終わった。
ブォンッ!!
「……こ、怖~っ! 」
風圧を感じて顔を歪ませるヴァッシュは完璧にかわしたと思っていた。しかし、風圧だけで左腕に巻きついている革バンドが数本切れた。
「なるほど、かわしてもコレっすか……」
「どう? 降参する? 降参するなら出来るだけ苦しまずに殺してあげる」
「って、あ゛ぁぁぁぁぁぁぁーッ!!?」
「な、何!?」
突然のガンナーの悲鳴にイリヤスフィールはたじろいだ。ガンナーの視線の先にはバーサーカーの足がある。その下には踏み潰されたドーナッツがある。どれも原形を留めている物はなく、ガンナーはその欠片を手に乗せて会話の通じないバーサーカーに泣きながら詰め寄った。
「僕のドーナッツが! 酷いじゃないか!! まだ一つも食べてないのに~! もうこんなボロボロに……どーしてくれるんだ!! 僕のドーナッツ~!!」
「な、何を言ってるの? バーサーカー殺しなさい!」
「■■■■■■■────!!」
しかし、バーサーカーの斧剣が振り下ろされた場所にはもうヴァッシュはいない。バーサーカーの身体にしがみ付き、ドーナッツを返せ。弁償しろと泣きながら呪詛の様に泣いて這いまわる。
「何て動きなの……バーサーカー! 引き剥がして殺しなさい!」
命令は的確かもしれないが、ヴァッシュはバーサーカーの捕まえようとする腕を高速でかわしている。どの様な動きをしてもヴァッシュを引き剥がせないでいる。バーサーカーは身体を壁に天井に打ち付けもするが、ヴァッシュは時には離れ、這いずり回りバーサーカーに食らいついていた。
「ガンナー! 撤退しますよ!!」
「もう一人いたの!? くっ! お兄ちゃんまで!!」
もう撤退しようと言うところだった。しかし、ガンナーは撤退を決め込まない。
「何をやっているのですかガンナー!!」
「良く分からないけど、それならアッチの方からやっちゃえバーサーカー!」
「■■■■■■■────!!」
その巨躯はバゼットと助け出されたシロウへと向かった。ヴァッシュはバーサーカーの頭部に回り、銃を抜き取る。そして、バーサーカーの右手である剣を持つ指に向けて撃った。しかし、バーサーカーは手を引いて斧剣で銃弾を受け止める。
「■■■■■■■────」
「……それでも、僕は殺さない」
ズシャーンッ!!
ダンダンダンッ!!
ガキンッギギンッ!!
ダダンッ!!
ギギィィィンッ!!
銃弾はリボルバーから無くなる。ヴァッシュはすぐさまスピードローダーでリロードする。殻になったローダーには魔力で補充が掛かる。瞬間瞬間のその光景を呆然と見つめる二人の仲間にヴァッシュは声を上げる。
「逃げろ!」
「ガンナー! お前も一緒に……!!」
「……生きて帰りなさい。いいですね?」
「おいバゼット!?」
スチャッ
「必ず戻るよ」
ガンナーはサングラスを掛け直すと頭上に向けて銃を連射する。バーサーカーが突貫して脆くなっていたそこに弾丸が着弾すると、もう屋根と言うモノが存在しなくなった。見えるのは星空だ。
そして、バーサーカーが一瞬上を見上げ、視線をガンナーに戻した時、そこに先程までのガンナーの姿は無かった。
アインツベルンの城の正面ロビー。そこには最強のサーバントのバーサーカーがいる。イレギュラーのサーヴァントのガンナーがいる。
バーサーカーの斧剣が振り下ろされる。ヴァッシュの銃弾が斧剣を握るバーサーカーの指に撃ち込まれる。バゼットの魔力が込められた銃弾は何度か同じ個所に当たればバーサーカーの指が吹っ飛ばすが、すぐに再生してしまう。
「こりゃ大変だ……不死身の狂戦士か……」
「ふふふ、何を考えてるか知らないけど無駄だよ。バーサーカーは強いんだから」
そうマスターに言われて突撃して来る狂戦士。ヴァッシュはリロードすると真っ直ぐに銃を構えて連続して撃った。
1発目、左肩に当たる。掠り傷程度の傷が入る。
2発目、同じく左肩に当たる。掠り傷が少し範囲を広くする。
3発目、また左肩だ。掠り傷が斬り傷になる。
4発目、正確に同じ場所を狙い撃つ。肉が抉れる。
5発目、ここまで同じ場所に狂いなく当たる。支点がずれ、バーサーカーはその巨体をヴァッシュでは無く、壁にめり込ませた。
一瞬の出来事だった。銃声が1発に聞こえたわけではないが、1発1発が途切れたように聞こえたわけでもない。
英霊として召喚される以上、名声による付加価値がある。―――例えば、死してなお消える事のない王と臣下の忠義。例えば、その槍を投げれば敵を必ず殺す。例えば、その英霊は弓の一撃で9つを同時に射殺す。―――様々な英雄の様々な逸話。聖杯に願う願望。それを叶える聖杯は、召喚される英霊に神話であれ逸話であれ、それをこの現世に実話として与える。
ならば……逸話が実話になるのだとしたら……きっとガンナーは拳が人間大の様な15mにも届く大男を銃弾5発で止め―――。
「そ、そんな! 鉄砲6発なんかでバーサーカーのバランスが崩れるなんて!?」
「違うよ。まだ一発残ってる。スペシャルなヤツがね」
―――6発で沈めることが出来る。
ヴァッシュはリボルバーのシリンダーを外し、空の薬莢を飛ばした。残りの一発を残し高速回転させる。
カチャッ
シリンダーを銃に固定し、バーサーカーのがら空きになった背中にバゼットが魔力を大目に込めた弾を撃つ。
ドンッ!!
「■■■■■■■■■■■────!!」
その銃弾は炸裂し、凄まじい魔力の光を放つ。
魔力と銃弾と言う組み合わさったモノを微かな傷口から身体にねじ込まれ、バーサーカーは叫び声を上げる。
―――しかし、それを乗り越えてこその英雄ヘラクレス。試練は受けてきた。ならば眼の前にある試練に倒れるのか。否。耐えてこそのヘラクレス。乗り越えてこその神話。
眼の前にいるサーヴァントは傷を負った程度。ヴァッシュは自分の銃を見ながら考えた。アレを使うしかないのかと。そして、その考えはすぐさま実行する事になる。
ガンナーの武具は銃。銃に真名があるわけではない。ただ、誰にでも使えるような代物ではなく、ニンゲンではないから使えるモノ。その光を見た者は少なく、その光を放った男を憎しみを持って応える。
―――
「何なのよ……何なのよアイツ! 殺しなさいバーサーカー!!」
イリヤ・スフィールは息も切らさずバーサーカーの攻撃をかわし続け、更に急所を外し、再生されるのを知りながら指を吹っ飛ばす銃弾を放つ目の前の金髪の男に苛立ちを覚えていた。まるで、わざと殺さないでいるかのような施しを受けているようだった。
「■■■■■■■■■■■■■■─────!!」
バーサーカーはマスターの命令を酌みガンナーに突貫する。
ヴァッシュは銃をバーサーカーに向ける。しかし、あの銃はあのような形だっただろうか? ガンナーの腕はあのような形だっただろうか? いや、更に変化して行く。
それはヴァッシュの宝具【エンジェル・アーム】だった。腕は銃と同化し、白い片翼の天使の羽が生えて行くようだった。その輝きは美しく、全てを照らして行く悪魔の光だった。
「サーヴァントシステムのおかげかな、何とか……制御できるか……威力も抑えて……」
「な、何よそれ!? 戻りなさいバーサーカー! アイツ何か変だわ!!」
「■■■■■■■────!!」
しかし、突貫して行くサーヴァントは止まれない。クラスはバーサーカー最狂を冠するサーヴァントである。
そして、光がバーサーカーを包み込んでいく。
城から撤退して行くバゼットと士郎は城の方で輝く光に振り返った。
「な、何だあの光……!?」
「初めて多くの魔力を使用しましたね。恐らくガンナーの宝具です……シロウ君。近くにセイバーや凛が来ているはずです。もうここで大丈夫ですか? 私はガンナーの下に戻ります」
「あ、おい……!! あぁくそっ!」
士郎は再度走り出す。セイバーを連れて戻ってこようと考えていた。あの男は死んじゃ駄目だ。そう考えての行動だった。
衛宮士郎の中でのガンナーは異質とは言え、ある意味で自分の理想と言える考えを実践している男であった。
誰も殺さない。
全てを救う。
正義の味方。
仮に自分が傷ついたとしても平和を求める男に見えた。日常の中ではヘラヘラ飄々として、Love & Peaceと言っているが、その軽口を叩きながら、実践している男に思えた。
そんな男だからこそ死んでほしくないし、助けたいと思った。そんな衛宮士郎自身には助けられる力は無いに等しい。力無き者が力を必要とする正義の味方になりたいと言っても戯言だ。戦うために力がいるのではない。守る為に力がいるのだ。害を成す者を倒すために力が欲しいのではない。止める為に力が欲しいのだ。
そんな考えを持つ衛宮士郎が、お前には戦わせないと言い続けているセイバーに力を借りてでも自分の憧れに近い男を救おうと思っていた。
「死ぬなよ……死ぬなよ!」
瓦礫に覆われて行く城のロビー。そこには蹲る巨体のサーヴァントと、赤いコートの金髪のサーヴァントがいた。
「な、何なのよあなた!! バーサーカーが防御の姿勢を取るだなんて……」
「今のは威力を抑えて撃ったんだけど、今の数十倍は撃てる……もう降参しない?」
バーサーカーは呼吸を整えるように傷付いた個所の再生に集中している。
「数十倍!? う、嘘よ……バーサーカー! 早く再生してこんな奴壊しちゃって!!」
ヴァッシュはイリヤの声を聞き、仕方が無いと溜め息をついて、イリヤのいる階段の踊り場へと進んでいく。
「な、何よ?」
ゆっくりと歩み寄って来るイレギュラーにイリヤは怯む。
人であったモノが生前に英雄となり、英霊となったサーヴァントを殺すのは難しいが、サーヴァントを使役しているマスターを殺せばサーヴァントは自然と消える。それがバーサーカーであれば尚のこと容易い。自立型では無いバーサーカーが消えるのはすぐだ。
イリヤスフィールはそれを直感し、バーサーカーに救いの視線を向ける。しかし、未だ再生をしている巨漢のサーヴァントは蹲ったままだ。令呪を使用してでも目の前の男を消すべきか?
「君は……こんな事をすべきじゃない」
「ちっ……つまらんぞ道化が」
「だ、誰っ!?」
突然聞こえてきた声。それは頭上からだった。
顔を上げた先には無数の剣を浮かせているスタイリッシュな格好をした男が一人いた。
「敗者は殺さんと聖杯には成らんぞ?」
パチンッ
男が指を弾く。そして、無数の剣が蹲るバーサーカーに突き刺さって行く。
「■■■■■■■────!!」
「ば、バーサーカー!?」
「や、止めろ!!」
雨の様に降り注ぐ剣にバーサーカーの咆哮だけが響き渡る。バーサーカーは暴れる。再生よりも反撃を優先し、狂戦士として、斧剣を振り回す。何本かの剣は払い落とすが、それでも何本かの剣はバーサーカーを貫いて行く。
ヴァッシュも何本かを撃ち落とす。左腕の義手も変形させマシンガンも放つ。それでも剣の雨はやまない。
「ふんっ、天の鎖よ!!」
バーサーカーに鎖が巻かれる。
「ふはははは! その鎖は例え神であっても逃れることは叶わぬぞ」
反撃の術も無くなり、首に締まる鎖により咆哮も出ない。バーサーカーが振り払える分がそのままバーサーカーに突き刺さっていく。ガンナーも飛び出すが肩と片足に剣と槍が突き刺さる。
「ぐがっ!」
そして、バーサーカーは光の泡沫となり消えていった。
「そこの道化、バーサーカーを消さずにその差を見せつけ、マスターを殺すかと思いきやつまらん最後だったな。思わず我が手を出してしまったぞ」
「どうして殺したんだ……」
「殺した? 今、殺したと言ったか道化、ふはははっ 何を言っている。サーヴァントとは既に死人よ。死んでいるモノを殺すとは不思議な事を言うな道化。セイバーが来ると思ったのだがな、いないのなら我は帰るぞ。ではな道化、そのまま行けるところまで行くがいい」
傷だらけのサーヴァントを殺さず余裕を見せ、最後に勝つのは我だと決めつけるようにそのサーヴァントは去っていく。
イリヤスフィールは終始無言だった。
「ガンナー! 無事ですか!?」
「あ、マスター……戻ってきたんですね。ちょうど良い、この子を……」
衛宮士郎はバゼットに教えてもらった合流地点に辿り着いた。
「シロウ! 無事だったのですね!? ガンナーはどうしましたか!?」
「アイツはバーサーカーと戦ってる。セイバー頼む、一緒に来てくれないか?」
―――少し走ったところで声が掛かる。
「あれ、どっか行くのかい?」
そこにいたのは赤いコートのガンナーとバゼットだった。
「無事だったの? バーサーカーは!? ……って、イリヤスフィール!?」
そう、そして敵で自信満々だった記憶に新しい少女。イリヤスフィールは意気消沈させて無言でヴァッシュに手を引かれていた。
「……」
「どう言う事?」
凛の当然ともいえる質問にバゼットは、ガンナーと帰りながら聞いた事を答える。
「バーサーカーは謎のサーヴァントの介入により消えました。イリヤスフィールはその時点で脱落と言う事になりますが、ここで保護するのが妥当と判断しました。シロウ君どうですか?」
「あ、あぁ、俺は願っても無いし、イリヤともちゃんと話したかったし……」
「せ、先輩は小さい子が、その……好きなんですか?」
「はいはい、こんな時にボケないで桜。それで? 謎のサーヴァントって誰なのよ? 残ってるのはアサシンとキャスターとランサーだけのはずよ?」
「私は見ていないのですが……」
「無数の剣を放出して来る偉そうな感じだったよ。セイバーちゃんを探しているみたいではあったけど……」
ヴァッシュのその答えに、セイバーは青ざめる。
「無数の剣を放出……あ、アーチャーだと……そう言うのですか?」
「アーチャー? アーチャーならあっちの建物の屋根にいるでしょ。どうしたのよセイバー」
「それは……そのサーヴァントは前回の聖杯戦争でアーチャーのクラスだったサーヴァントです」
―――そして、セイバーの口から第4次聖杯戦争が語られた。