Fate/love&peace   作:フリスタ

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お気に入り200件突破、評価までしていただけている方は本当にありがとうございます。ネタの膨らむ感想なども面白おかしく読ませていただいております。
後書きでテキトーなの書かせて貰います。本編に関係ありませんがね。




06 誘拐事件

「ちょっと待ちなさいよ! あんたサーヴァントじゃないッて言うの!?」

 

 凛はガンナーの胸倉を掴んで足を卓袱台に乗っけている。

 

「おわぁぁぁ! 違う違う! サーヴァントとしてマスターと契約してるよ? してるんだけど、正規契約ではないというか、どういう訳か令呪とかマスターの負担になる様な事はほとんど無いから」

 

 そう、バゼットにヴァッシュを使役する絶対命令権である令呪は無い。令呪は確かにあるのだがガンナーに対するモノではないのだ。そして正規契約では無いにしても契約は契約なので、改めてバゼットと正規の手順で契約を結ぶ事が出来ない状態だった。

 

「バゼット、それは本当なのか?」

 

 家主の衛宮士郎は困惑しながらガンナーのマスターに問う。そして、帰ってきた答えは肯定だった。

 

「私もおかしいとは思っていたのです。パスは繋がっていて魔力も多少は供給しているのに、多くを必要とせず、それでいて……ガンナー用の令呪がない事に。この令呪は機能していないのです」

 

「どうなってるのよ……」

 

 凛はガンナーを離すと座り、お茶を一口飲み再び考え始める。

 

「ガンナーおかわりは無いのですか?」

 

「無いよ、食べちゃったじゃん……」

 

 空になったドーナッツの入っていた箱を折りたたみ、ガンナーは溜め息をついた。

 

「あの、もしも私を契約させると言うのでしたら、希望したい人物がいます」

 

 今まで諦めムードだったライダーが遂に口を開いた。

 

「どう言う事? 前のマスターと再契約したいって事?」

 

「いえ、ちょうど仮のマスターがウザかっ……本来のマスターに戻せるいい機会かと思いますので」

 

「今、何か凄く黒いモノが見えた気がするけど……仮って、ライダーちゃんの本来のマスターって?」

 

「慎二がマスターじゃなかったのか!?」

 

 衛宮士郎はガンナーを遮り驚く。それもそのはず、つい先ほどまでは衛宮士郎・遠坂凛の認識では『ライダーのマスター=間桐慎二』だったからだ。間桐の家と言う事と、少しの違和感などから凛は一度桜に令呪がない事も確認した。その直後と言っていいタイミングで何かの魔術書を持ちライダーと連れた慎二が現れた。ガンナーと休戦協定を結ぶ直前の事だった。

 

 しかし、今のマスターではない。その前のマスターがいるという眼の前のライダーの話しを信じるとすれば、サーヴァントと令呪を魔術書という形で間桐慎二に譲渡した者がいるという事になる。凛はすぐにその考えに至り嫌な汗が出るのを感じた。

 

「ま、待って……嘘でしょ? もしかしてマスターって……桜なの?」

 

「え? お、おい嘘だろ? だって令呪はなかったんだろ?」

 

「ほへ? 桜ちゃん?」

 

 凛は顔を青くする。士郎は信じる以前に飲みこみ切れていない。ガンナーはお茶を片手に、『サクラ』とは夕飯を作りに来てくれる可愛い娘だと理解した。

 

「なるほど、昨日の彼女は間桐の人間でしたか」

 

 バゼットも自分の手にある令呪の事は今はどうでもよくなったのか、頭を切り替えた。

 

 静寂が居間を支配する。

 

「良いんじゃないの?」

 

「ガンナー、私達が口出しして良い事ではありません」

 

 

「ちょっちょっと待って! 大丈夫だってマスター。確かに桜ちゃんはマスターっぽくないけど、戦わせるためじゃなくて、ライダーちゃんと仲良く平和にしてもらえるように契約するだけだって。ね? 何もそんな真剣に悩む必要なんて無いって~。ほらライダーちゃんも桜ちゃんと一緒にいたいみたいだし」

 

 ガンナーは両手を上げたまま殴りかからんとするバゼットを止めつつ、思いつく限りの問題点がない事を並べる。しかし、結局は不戦の流れを説明するだけのガンナーにバゼットは更に怒りを表す。

 

 

「これは聖杯戦争なんですよ!? いい加減に真面目に戦わないと多くの死者が出てしまうんですよ!? ガンナーここはライダーには脱落して貰うのが最も早くこの戦争を終わらせる―――」

 

 バゼットは普段からのヴァッシュのサーヴァントとしての姿勢を正そうと説得を試みるが、イレギュラーな彼を縛る事が出来るモノは何もない。絶対命令権の令呪は無いのだから。

 

「だ、大丈夫ですって~。ね?」

 

「私に振らないでよ……士郎は?」

 

「え? あ、うーん……とりあえず桜に話しを聞いてみないと……」

 

「仮にも戦争だと言うのに桜を巻き込む様な事は避けるべきだと思いますが……」

 

 ライダーは事の成り行きを見守ることしか出来ないで黙っている。しかし、叶うのならば桜に再びマスターとして受け入れてほしい気持ちであった。

 

「じゃ、ちょっと行ってくるよ」

 

「ガンナーどこに?」

 

「ちょっとそこまで、すぐ戻るから」

 

 

 

 そして数分後……。

 

「ただいまー」

 

「おかえり、確かに早かったけど一体どこに……って桜!?」

 

 ―――【偽臣の書】それが桜がライダーの権限を慎二に委譲した結果現れた本である。使用した令呪は1つ、残りの令呪はこの本に移された。キャスターによって契約が切れたことにより、本に令呪だけが残り、慎二はまだ何も知らないでいた為、ガンナーは間桐慎二のところへ向かった。

 

「ちょーっとお話して、この本を貰って来たんだよ。帰りに桜ちゃんに会ったから一緒に帰って来た」

 

 偽臣の書を手に持つガンナーは大体の事は桜に話してある事を伝えて、本を桜に渡した。

 

「せ、先輩も聖杯戦争のマスターだったんですね……」

 

「当り前だけど俺は桜と戦うつもりはないからな? 俺はこの聖杯戦争を終わらせるために戦ってるんだ。それでなんだけど桜、ライダーが今家に居てな……」

 

 

 

「うんうん。良かった良かった」

 

「本当に……何を考えているんですかあなたは?」

 

 ドーナッツが大量に入った茶色の大きい紙袋を抱える様に持ち、ヴァッシュは一つ、また一つと口に放りこんで行った。ついでにドーナッツも買って来たらしい。

 

「ガンナー! 私にも下さい! どうして意地悪するんですか!?」

 

「意地悪って、僕が買って来たの。だからこれは――」

 

 

 ギランッ!

 獅子の獲物をロックオンした眼はガンナーへと移って行った。

 

「――これは一緒に食べようか?」

 

「望むところです!!」

 

 

 

 

「全くセイバー、あなたには食べると言うことしか頭にないのですか?」

 

 少しばかりの話し合いの結果、再契約を終わらせたライダーは居間でドーナッツを食べるセイバーに溜息をついた。

 

「む、ライダー。協定を結び仲間になったとは言え線引きは必要かと思いますが?」

 

「私は近々桜に一般人の服を買ってもらい商店街の骨董品店でアルバイトを始める予定です。もちろんこの家に住まわせてもらう生活費の為です。あなたは食べるだけですか? さぞかし食費を湯水のように流して行っているのでしょうね?」

 

 少し勝ち誇った笑みを浮かべる長身の眼隠しサーヴァントの言葉に効果音が付く幻聴が聞こえるほどにセイバーは膝から崩れ落ちた。

 

「わ、私だけが……働いていない?」

 

 セイバーはここに来て、味方がいない事に気が付いた。日常の味方と言うモノがいない事に。

 

 

 

 こうして衛宮邸には聖杯戦争参加者の内、半数に当たる4組のマスターとサーヴァントが協定を結んでいた。しかし、実家も近い上にリフォームをしているわけでもない桜まで衛宮の家で生活するわけにもいかないという結論から、慎二にはライダーは脱落したという事で隠し通すことにし、桜は通いで衛宮邸に来ることになった。

 

 ここまで殺し合いというモノがなかったわけではないが、聖杯戦争のサーヴァントは未だ1人も欠けることなく既に5日が経過していた。

 

 衛宮邸に集うのは仮に戦うというのならば最強戦力の陣営だった。バーサーカーは無傷とはいかないだろうが、攻め込まれても処理に手間取る事は無いだろう……と思いたい戦力だ。

 しかし、これは聖杯戦争。この数で協定を結んだままでは聖杯は現れず、聖杯に注がれる魔力もまるで足りないのは明白だ。この中で協定を壊せるものがいるとすればアーチャーもそれを後押しする遠坂凛のみと言える。

 その他の面子と言えば、戦いたくないという男と、そんな男に戦えと訴えるバゼット。こちらはマスターに半ば諦めの色も見える。そもそも拾った命と言う事もある上にガンナーへの絶対命令権も持ち合わせていない。口うるさく言う事しか出来ないのだ。

 

 ガンナーの考えに割と近い家主の衛宮は戦う必要があれば戦うが、聖杯戦争で他者への被害が出なければいいのだ。今のところキャスターが最も民間人への人的被害を出している事から、早めに何とかしたいと思っている。バーサーカーに関してはマスターのイリヤスフィールが気になっている。初めて教会に行った際の帰りに出くわした女の子のマスター。死にかけたが、衛宮の事を「お兄ちゃん」と呼び、矛盾しているがどこか憎しみに似た優しげな笑みを向けてくる事に疑問を抱いている。

 そんな素人マスターを持つセイバーはいざ戦闘となれば切り替わるが、周りの環境にサーヴァントという事をたまに忘れてしまうほどに浸かってしまっていた。最近ではその考えを払拭しようと衛宮を相手に早朝に道場で鍛錬を行っている。精神統一後の食事でまたサーヴァントである意識は薄れ始める。

 そして、協定組に新たに加えられたライダーはマスターを守れれば構わないという気持ちが強い。桜は衛宮といられれば戦わない気持ちでいた。

 

 

 

「と言う訳で!」

 

 スパーンッ!

 

「何がと言う訳なんですか? これだけ引っかき回して今のところ何も成果がないではないですか!」

 

「話す前に叩かないで下さいよぉマスター。……とりあえず次はバーサーカーを落とすべきだと思います」

 

 空気は一気に日常から戦場へ。そうここは聖杯戦争をしている冬木の街。最後の一人まで戦い抜き願いを叶える為の戦争である。一人、また一人と倒し、今目の前でお茶を飲み合っている者達も倒さなければならないのだ。いざとなれば殺すと心に秘めている者。反対に守ろうとするもの。停戦を願う者。心根はそれぞれ違えども、彼らの瞳は日常から切り替えられた。

 

「―――落とすって……アンタは戦う気ないんでしょう?」

 

「いや、今回は流石に戦わないと僕が死んじゃうかも」

 

 アーチャーは「ほぅ」と小さく声を挙げるが誰に届くでもなかった。その他と言えば少し驚いていた。初めて戦うと言い出したのだ。戦わなかったわけではない。しかし、飄々と自分勝手に行動するガンナーがバーサーカーに挑む気でいるのは理解できた。しかし、何故その気になったのか、殺す気はあるのか。その辺りは理解に至らないが。

 

「ま、まぁまぁ。昨日の夜ガンナーにイリヤの事話したらなんか乗り気でさ……な?」

 

 

 そう、ガンナーであるイレギュラーサーヴァントのヴァッシュは次なる標的をバーサーカーに定めていた。それを落とすというのはどうするかは読めない。

 

「まぁシロウ君に聞いた通りのマスターなら何とかなると思うんだよね。まずは話し合いさ」

 

「この前、衛宮君が殺されかけたわよ……」

 

 

「それから今回は僕だけで行くよ」

 

「なっ 私達を置いて行くと言うのですか!? キャスターのところへ行く時もその様な事を言っていたが、ガンナーいい加減にその考えを改めるべきだ。相手がバーサーカーなら尚のことです」

 

 セイバーは喰ってかかる。いつもは戦わないと言っていた男が戦うと言い出すのは良かった。だがそこまでだ。協定を結んで4組いるというのに自分一人だけで敵陣に乗り込むと言い出したのだ。セイバーだけでは無い、ここにいる全てのサーヴァントが軽視されていると頭の片隅で考えつつ、ガンナーに苛立ちを覚えていた。

 

 

「でも、今回は何でそんな事を言い出したのかしら。イリヤは女の子、まだ小さいわよ? ロリコン趣味もあったの?」

 

「……そう言うんじゃなくてさ」

 

「そう言う事でしたら、私はついて行きますよ? 仮にもマスターですからね」

 

 ガンナー専用の令呪も無いマスターのバゼットはそう告げる。

 

 しかし先ほどから言われている通り、不殺・ラブ&ピースと戦争中に詠うサーヴァントが何故戦うと言い出したのか? ヴァッシュの考えはこうだ。

 

 バーサーカーはこの聖杯戦争の中で最強を誇ると言えた。それはサーヴァントだけでなく、マスターも魔力を潤沢に有しているためだ。普通なら魔力供給のコストパフォーマンスも含めて考えると、バーサーカーはかなり燃費が悪いため、セイバーが最も良いとされるが、今回のマスターが衛宮士郎ではマスターとしては正直言ってヘボ。魔力供給も出来ない。恐らく宝具を使用すれば即座にリタイアするのではないかと言う予測があった。

 

 では遠坂・アーチャーのコンビはどうだろうか? 未知数の能力を持つアーチャー。そして、魔力に申し分はないと思われる遠坂凛。バランスの取れているコンビだろう。しかし、バランスが取れているだけでバーサーカーを相手にするとなると生きて帰れる可能性は薄い。

 

 では、ガンナーというイレギュラーであるヴァッシュ・ザ・スタンピードが戦ったことも会ったこともない、最強と言われるバーサーカーのサーヴァントには死ぬ危険性が無く、剰え勝てるのか? その答えはNOだ。やってみなくては分からない。だが、自分以外が行けば死ぬ可能性があると判断した瞬間にヴァッシュの意思は決まった。誰かが死ぬ可能性が有るならば自分が行くと。

 

 

「とりあえず、もう少し考えたら? またキャスターに動きがあるかも知れないし、今のところ言峰のランサーだって動いてないわ」

 

「……うん。そうだね」

 

「じゃ、じゃあ買い出しに行ってくるか。今日は何食べる?」

 

 少し間があったものの納得したであろうガンナーを見た家主、兼コックの士郎は立ち上がる。

 

「シロウ、この前食べた肉じゃがと言うモノは難しいのでしょうか?」

 

「分かった。じゃあ今日のメインは肉じゃがにするか」

 

「先輩。私も手伝います」

 

 

 士郎は買い物に出かける。桜は米を研ぎ、今ある材料の下ごしらえを始める。

 

 そう、また今日と同じような明日が来る。みんなそう思っていた。短い時間だという事は分かっていても、今の空気がどこかで気に入っている者達だった。

 

 

 しかし、それは衛宮士郎が誘拐されるという事件から覆ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

【アインツベルン城】

 

「くっ! イリヤ! 俺はウチに帰って食事の支度を……!」

 

「私のサーヴァントになるって言うまで帰してあげないわ。気が変わった頃にまた来るからねお兄ちゃん♪」

 

 と言った会話をしたのが数分前。数十分前には衛宮士郎はイリヤと商店街近くで会い、催眠魔法をかけられ攫われていた。今の士郎は椅子に座らせられ、後ろ手にロープで縛られ身動きが取れないでいる。

 

 

 

 

 

 

「と言う訳で!!」

 

 スパーンッ!

 

「天丼はいりません」

 

「(さすりさすり)マスター、そんなこと言ってる場合じゃないですって~。攫われたんですよ~? 僕らの士郎君が」

 

「私のマスターです。私も行きます」

 

「当然私達も行くわよ?」

 

「わ、私はどうすれば?」

 

 凛は行く気満々で、桜はオロオロしている。しかし、ヴァッシュはそれを静止させて言った。

 

「どう考えても罠だ。どうしても来るって言うなら……安全なところまで離れていてくれ」

 

「なっ それじゃあ行く意味がないでしょうが!」

 

「そうです! それに私はサーヴァントですよ!? 私のマスターが攫われているのに助けに行かないサーヴァントがありますか!」

 

 

「宝具を使う事になるかもしれない」

 

 オレンジ色のレンズの銀縁のメガネをかけ、ヴァッシュは言う。その口調にいつもの軽口を叩く雰囲気は微塵も感じられない。絞り出すような苦しい声。

 

「ガンナー、あなたの宝具はそれほどまでに被害が出ると言うのか……」

 

 サーヴァントシステム。聖杯戦争中におけるマスターの能力は、他者のサーヴァントでも能力や数値がある程度視る事が出来る。しかし、遠坂凛の眼には最初に出会った日からほぼ一緒の生活空間にいても何も変わらないでいた。

 

クラス :ガンナー

真名  :ヴァッシュ・ザ・スタンピード

性別  :男性

属性  :善

筋力:B  魔力:E  耐久:C  敏捷:A  幸運:E 

騎乗:E

 

 それぐらいしか視えない。宝具をいくつ持っているのか、ランサーに勝る銃のスピード(早撃ち)と、ライダーに身動きの速さでも勝っていたところしか見ていない。

 アーチャーは凛に念話を飛ばす。『今が切り時だ』と。バーサーカーが倒されるならばよし、倒せずとも衛宮士郎とガンナーは敗退させる事が出来る。更に追い打ちをかけてバーサーカーも落とせるかもしれない。

 凛は『そんな事は分かってる』と答える。衛宮邸の居間に流れる重苦しい空気の中、凛は少し考え、何にでも対応が取れるように妥協点を提示した。

 時間制限と最悪の場合は令呪を使用してでも合流するとして、安全圏での後方待機を了解した。

 霊体状態のアーチャーは歪んだ微笑を浮かべた。

 

 

 

 そして、数十分後。アインツベルンの森の奥にある城にガンナーとマスターであるバゼットは到着していた。気配を消し、夜の森と一つになる様に二つの影は薄れて行く。

 

「さて、行きますかぁ」

 

「大丈夫なんですか? あなたはバーサーカーと戦ったことも、見たことも無いでしょう?」

 

 その当然とも言えるマスターの問いにヴァッシュは苦笑いで答える。

 

「多分……でも、基本的には士郎君助けるだけだから」

 

 

 

 




前回といい今回といい、犯罪的なサブタイトルのお話でした。

さてさて、前書きに書いたとおり、感想欄で『fate/zeroでケリトゥグと出会う』的な流れ面白そうと思い。書いてみた。






「舞弥さん」
「申し訳ありませんマダム……私はここまでの様です」

 ダァンッ!
 深い森に響く重厚な破裂音。鳥が鳴き飛び立つのが遠くに聞こえる。
 それが銃声だとは分かっていた。聞きなれた音だ。しかし、少し音が違うと思ったのは久宇舞弥だけだった。
 それにおかしい。ここには主人である衛宮切嗣は居ないはずだ。いるわけがない。

「お前は、何者だ……」

 言峰綺礼は黒鍵を手にしゆっくりとした足取りでやってくる赤いコートの男に問う。

「女性の扱いが酷過ぎる。君はそれでも聖職者か。少し待っててくださいねーマスター」

 その赤いコートの男の少し後ろには少女がいる。少女は何も言わずに近くの木の根に座った。マスターと呼ばれたことから聖杯戦争のマスターだと思われるが、それは有り得ないと言峰は思った。
 アサシンを使用し既に全てのサーヴァントは確認済みだ。こんな風貌の男はいなかった。ならば、この男は何だ。あの少女は何だ。

 アイリスフィールは言峰から視線を外されると同時に舞弥に駆け寄った。多く血を吐いている事から、内臓がやられている可能性が高い。治癒魔術を行使しながら眼の前の光景にも注視する。

「切嗣以外に拳銃を使う人がこの聖杯戦争にいるなんて……」

 一瞬赤いコートの男に眼をやると、男は視線を合わせ、ニンマリとした表情で軽く手を振って来た。その行動から、言峰は手にあった黒鍵を投げ、一気に距離を詰め、赤いコートの男に接近戦を仕掛けようとした。

 銀色のリボルバーが投擲された黒鍵の数だけ火を吹く。それだけで言峰の足は止まった。早すぎる。アレの懐に潜り込む時は死体になって滑り込んでいる時だと思わされた。

「……ここは退くとしよう」

 銃で言峰に狙いを付けたまま、男は見送った。

「……あなたは、サーヴァントなの?」

 アイリスフィールが当然の疑問を放つ。それに男は答えた。

「そうらしいです」

 何とも曖昧に。



 話してみると8人目という認識は本人も持っているらしく、善のサーヴァントだという事は分かった。アインツベルンの城も近かった事もあり、そこで休みながら会話をすすめた。
 少女の名前は桜。サーヴァントはガンナーと名乗った。

「ガンナー……」


―――物語は始まったばかりだった。





【偽劇場版予告】

「キリツグ!! 何故撃った!!」
「……」

 結ばれたばかりの休戦協定に走る亀裂。


「我は征服王イスカンダルである!!」
「あ、どもヴァッシュ・ザ・スタンピードです」
「お、おいライダー!!」

 ウェイバー陣営と始まる戦い。



―――そして、遂に殺し合いにまで発展していく。

「令呪を持って命ずる。ランサー全力で殺せ」
「令呪を持って命ずる。ガンナー、負けないで」



「ガンナーは、正義の味方だね」

 傷だらけの悪魔に少女は微笑んだ。



かみんぐすーん。






……ケリトゥグ全然でてこないじゃんw 喋ってないしw
zeroで書いても面白く書けそうですね。

はい! とゆーわけで、次回は士郎を助けに行きます。

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