Fate/love&peace   作:フリスタ

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2週間ほど使って漫画本を段ボール12箱分ぐらい売って本棚がガラガラになった。無料で段ボールも送ってくれるし引き取りにも来てくれるし楽な時代だ。外に出なくて済む(引きこもり奴どすえ)

それでも売りたくない本はいくつかあるわけだ。TRIGUNとか花の慶次とかね。他にも漫画としてはそこまで面白くないけど、その作者さん好きだからとか、そんな理由で残している本とか。絵がアレだけど話の展開とか台詞回しで大好きなんて本もあるのだ。

これはアレだね、ブサイクだけど心が綺麗とかと似ているよね(なんか違う)





04 理想を抱いて溺死してしまえ

 衛宮邸は少し古めに映るが、立派な日本家屋を思わせ、更に広い。そんな家にやって来たのは赤いコートの金髪の男とスーツ姿の女性だった。

 

「や、ども~」

「ガンナー、あなたでしたか。今日は何を持って来てくれたのですか? またどーなっつですか?」

 

「いや、セイバーちゃん。僕の隣にいる人見えない? 普通気付くのこっちが先だよ?」

「あなたがセイバーですか。私はこのガンナーのマスターのバゼットです。あなたのマスターはいますか?」

 

「シロウなら学校です」

「なっ!? マスターともあろう者が学校に通い続けているのですか!?」

 

「はい。私も進言はしたのですが、逆に敵が『裏があるやも』と考え、まず手出しはしないと言う事でその様に……」

「確かに一理ありますね……では中で待たせて頂いても?」

 

「私にそのような権限は……」

「ちなみに今日のお土産は前回の3倍のドーナッツ」

 

「どうぞ中で話しましょう」

「……これが本当にサーヴァント……?」

 

 

 

 

 

 ヴァッシュは次々に消えていくドーナッツを見ながらお茶を用意していた。

 

「よく勝手が分かりますねガンナー。湯飲みや茶葉がある場所まで」

「凄く綺麗に整頓されていたからね~。あ、僕の分残しておいてよ?」

 

「なっ! ガンナー、あなたは自分で持参した手土産を食べると言うのですか!? これは既に私のです! どうしてもと言うのでしたら……」

 

 セイバーはもう滅茶苦茶な事を言いだした。立ち上がり重心を前に置き、今にも騎士甲冑を身に纏いそうな勢いだ。しかし、ヴァッシュは両手を顔の横にまで上げて首を横に振った。ソレを見てセイバーは満足げにドーナッツに貪り付いた。

 

 

 

 

 しばらくして、家主の衛宮士郎。そして、既にここに下宿していると言う遠坂凛が帰って来た。

 

「ただいま~っと、セイバー今日は誰か来たか? ってガンナー!? それから……どちら様?」

「あなたが衛宮士郎君、セイバーのマスターですか? 私はこのガンナーのマスターで、バゼット・フラガ・マクレミッツと言います。以後よろしくお願いします」

 

「あぁ、ガンナーの……どうも」

「あら? 甘い香り……あぁ、ガンナーじゃない。そちらがマスター?」

「バゼット・フラガ・マクレミッツです。あなたは?」

 

「私はアーチャーのマスターの遠坂凛よ」

「遠坂の……なるほど。では、昨日お話があったという休戦協定についてもう一度確認させてもらいたいのですが」

「あぁ、そうだな」

 

「まず、私達の情報から行くわね? 今のところ、この聖杯戦争で一番厄介そうなのはバーサーカーのサーヴァント。英霊【ヘラクレス】よ」

「ほう、真名まで判明しているのですか」

 

「と言うか、相手のマスターが言って来たのよ。それだけの自信があると言うことね。それに魔力もかなり余裕があるほど、バーサーカーを使役するのも問題ないみたいだから自滅は期待できない。ちなみにマスターはイリヤスフィール・フォン・アインツベルン」

「アインツベルンがバーサーカーを……なるほど」

 

「一度戦ったけど、シロウが死にかけたわ」

「それにしては……怪我など無い様に見えますが?」

 

「私にもよく分からないんだけどね。セイバーから治癒の魔力が流れ込んでる可能性が考えられるの。シロウは逆に未熟だからセイバーに魔力供給することが出来ないけど」

「正規のマスターではないのですね。なるほど。では、私からは2点です知っているかと思いますが、ランサーはケルトの英雄【クー・フーリン】です。そして、私はその元マスターです」

「元……マスター? アンタはガンナーのマスターじゃないのか?」

「前に言ってた事は本当なのね? 言峰綺礼がランサーのマスターだって」

 

「えぇ。言峰は私の腕を切り落とし、令呪の移植をしたと思われる」

「言峰、アイツ……そんな事を!」

「でも私達が気付いてるって事は、まだ知らないはずよ……時間の問題でしょうけどね。聖杯戦争自体そう長いものでもないでしょうけど」

 

「あぁ~僕のドーナッツがぁ……」

「ふぅ、御馳走様でした。ガンナー」

 

 ヴァッシュの持ってきたドーナッツは全てセイバーの胃袋の中へと消えていった。マスターたちが真面目に聖杯戦争について話している中、サーヴァントの2人はそれぞれ満足気な顔と、項垂れる顔を見せていた。

 

「……コホンッ。このガンナーは、私にも不可解ですがイレギュラーな召喚だったのでしょう。【ヴァッシュ・ザ・スタンピード】この名前に偽りはないと、マスターとしてのリンクで分かりますが、聞いたことのない名前です。様々な文献を調べても何も出て来ない」

 

 ヴァッシュは体育座りをして、指をのの字に何度もなぞらせている。

 

「で、でも悪い奴じゃないんだろ?」

「そんな事は見りゃわかるわよ……はぁ、じゃあまず最初に叩く敵を決めましょう。バーサーカーは避けたいわね。ライダーかアサシンかキャスターか……でも私達も会った事があるのは、ライダーだけ。シロウが会ったんだけどね」

「私を呼ばなかった時ですね? 学校で襲われたという……シロウ、やはり私も学校に連れて行くべきだ!」

 

「女の子に戦わせられるか! 何度も言わせるなよ」

「シロウ! いい加減に私を侮辱するのは止めていただきたい!」

 

 ガシッ

 と、掴まれたのはシロウの肩だった。

 

「そう! 戦うなんて良くない! 怪我したらいたいもん! 誰とも戦わなくて良いと思います!!」

「ガンナー……少し黙っていなさい」

 

 黒い革手袋をギュギュッと鳴らしバゼットは手に嵌めた。立ち上がり足を運ぶのは金髪の男に向けたものだった。

 

「ごめんなさいごめんなさい!」

 

「……あれは本当にサーヴァントなのかしら……?」

「サーヴァントに生身の人間がマウント取ってるぞ……人間がサーヴァントに勝つなんて無理じゃなかったのか?」

「あんなに易々と上を取らせるとは……何を考えているのだガンナーは?」

 

 

 

 

 

「あ~落ち着いたかな?」

「えぇ、失礼しました。では攻撃対象はどうしますか?」

「ライダーか、アサシンか、キャスターか。シロウの話だとキャスターは柳洞寺に陣取ってるらしいわね」

 

「ライダーから聞いたんだ。魔女がいるって」

「魔女か……。士郎君、ライダーと言うのは……どんな奴だった?」

 

 ヴァッシュの顔が真面目になる。周りの空気もつられるように引き締まる。

 

「え、えっと背が高くて、髪が凄く長くて、えっと膝裏以上は長かったと思うな。それで、女で武器は……」

「顔は?」

 

「いや、マスクをしてて分からなかった。アイマスクって言うか、目隠しと言うか……」

「ガンナーどうしたんです? ライダーと知り合いとか言うんじゃないでしょうね?」

「マスター。ライダーとキャスターは、とりあえず僕に任せてくれないか? 会って話がしたい」

 

「どうしたんだ? 凄い真面目な顔になって」

「戦いたくない~とか。ラブ&ピース~とか言わないのね」

 

「だって綺麗な女性だとしたら会ってみたいじゃないか!!」

 

「……シロウ。お腹が空きました」

 

 夕日に染まる居間。そこには静寂がうまれていた。

 

「……ガンナー。もう少し寝ていなさい」

 

 ギュギュッ

 

「ごめんなさいごめんなさい!!」

 

 そして、拳を振り下ろされゴングとなり、すぐさま喧騒を取り戻した。

 

 

 

 

 

 ガララララァ~!

 

「たっだいま~!! さぁ、桜ちゃんも入って入って~♪」

「はい」

 

「おかえりなさい藤村先生」

「おかえり藤ねえ、桜も」

 

「ただいま~今日は何かな~。おぉ~揚げだし豆腐か~!」

 

 居間に勢いよくやって来た藤村大河の目の前には、セイバーが正座して晩御飯を今か今かと待っている。そして、見慣れない赤いコートの金髪の男と、スーツ姿の女が目に入った。

 

「僕のドーナッツは……」

「いつまでいじけているんですか……全く」

 

「って誰だー!!? シロウ? 遠坂さんは家を改装中で、セイバーちゃんは切嗣さんの外国の知り合いで、この二人は!? 今度は何だー!!?」

「お、落ち着け藤ねえ!」

「これは申し遅れました。私はバゼット・フラガ・マクレミッツです。実は少し離れたところにある洋館で、改築後に住む予定だったのですが、改築が進んでおらず、こちらの士郎君に助けて頂いたのです」

 

「ま~た人間を拾って来たの!? シロウらしいけど、いい加減にしないと、無料ホテルとか言う噂が立って、ホームレスも集まってくるわよ!?」

「そ、それがだな藤ねえ……」

 

 トンッ

 机の上に置かれたのは通称【一本】。帯付きの100枚束の1万円だった。つまり100万円様なのだ!!

 

「生活費は入れさせて頂きますので、どうか」

「な、な、な……そ、そんなお金で解決するなんて人は認めないんだからー!! そこの金髪を逆立てた人もピアスしてるし学生のシロウと一緒に暮らすのは不健……ぜ……ん」

「僕? そこを何とか~。何にも悪いことしないよ? お願いプリーズ」

 

 ヴァッシュの顔をまじまじと見つめ始める未婚の虎は頬を赤らめ始めた。明らかに何らかの保護フィルターが張られた眼で見つめている。

 

「い、いや、でもまぁそこまで言うなら……そりゃあ困ってるみたいだし? 部屋も空いてるし……な、名前は何て言うの?」

「ヴァッシュ・ザ・スタンピードですけど……?」

 

「ヴァッシュさん……あ、揚げだし豆腐如何ですか? 私が腕によりをかけて作ったの……」

「おい藤ねえ。帰って来たばかりだし、それ作ったのは俺……ガッ」

 

 竹刀で叩かれる士郎を見ながら、本名を名乗ったヴァッシュは汗を一筋垂らしながら「い、いただきます」と言った。

 

「シロウ、あの程度の攻撃を避ける事も出来ないとは、やはり私も学校に……」

「今はその話をするな……あーもう! 飯だ飯!!」

「あ、手伝います先輩。私食器出しますね」

 

 

 

 

 

「へ~砂漠の荒野から来たんですか~。ガンマンみたいですね~!」

「みたいじゃなくてガンマンなの!」

 

「あははははははは~面白い人ですねヴァッシュさんて~」

 

 軽く酒が入った藤村大河は隣の赤いコートに寄りかかる様に飲んでいる。最初は照れ照れしていたが、酒が無くては会話すらできないと一口また一口と酒をすすめる内に、戦いの中で戦いを忘れるゲリラ屋の様な状態になっていた。反対側の席ではバゼットが隣にいる大食いに何気ない質問をしていた。

 

「セイバーはよく食べるのですね?」

「シロウのご飯は美味しい。それに魔力供給が無い以上、他で補えるものは補わなければ守るものも守れない」

 

「なるほど、確かに供給が無いとなると、サーヴァントとしても厳しいですね。しかしセイバー」

「何でしょうか? バゼット」

 

「この家の供給は間に合うのでしょうか?」

「この家の? どういう事ですか?」

 

 バゼットは家主の衛宮士郎に視線を投げて続けた。士郎は食後のお茶を飲みながら、家計簿を睨みつけていた。

 

「タダで料理が出てきているとでも思っているのですか?」

「そんな事は当然思っていません。シロウはそのためにアルバイトというものをしているのですから」

 

 自信満々に答えるセイバー。しかし、桜も凛も士郎を不憫そうに見つめている。

 

「セイバー……良いですか? 学生のアルバイトと言うモノは、あなたの食費を賄えるほど賃金は高くありません。士郎君を見ると良い。辛そうでしょう?」

「シロウは食後になるといつもあのような顔をしていますが?」

 

「働かざるもの食うべからずという言葉があります。アレだけ食べて、いえ、今も食べ続けて食費を入れないとは何事ですか? 鬼ですかあなたは!」

「なっ! あなたにそのような事を言われる筋合いはない! あなただってご飯を食べたではないですか!」

 

「あなたの目は節穴ですか!? 私は食費を生活費として先程お渡ししています」

 

 その言葉に士郎は思い出したようにパァッと明るい表情になり、先ほど手に入れた100万円を戸棚から取り出し家計簿の修正を始めた。

 

「むっ! 見てみるといいバゼット! シロウは幸せそうな顔をしているではないですか!! 何も問題ありません!」

「ですから! あなたの目は節穴ですか!?」

 

 

 

 

 ―――また対面側。

 

「何だか一気に賑やかになったわね~……」

「遠坂先輩。ヴァッシュさんとバゼットさんも衛宮先輩の家に住むんですか?」

 

「そうね。改築とか言うのが1カ月弱かかるらしいから、最低でも2週間はいるんじゃないかしら? あ、私も同じぐらいになるかな」

「そ、そうなんですか……あ、藤村先生。飲み過ぎですよ」

「あ~もう! 桜ちゃんは優しいな~。士郎のお嫁さんになればいいのに~―――そんで私はヴァッシュさんと~、あれ? ヴァッシュさーん?」

 

「―――わ、私が先輩の……!?」

「桜、なに真に受けてるのよ。あら、ガンナーは?」

「あぁ、さっき外に出て行ったぞ? 夜風に当たってくるとかで」

 

 

 

 

 

 衛宮邸の屋根。

 

 屋根には誰もいない。様に見える。しかし、霊体化している者がいる。遠坂凛のサーヴァントのアーチャーだ。あれから少しの時を置き、全快では無いにしても、戦闘以外は問題ない程度まで戻っていた。

 

「よっと……あ、いたいた~」

「貴様か……」

 

 霊体化していても同じサーヴァント同士なら、その姿は見えてしまう。よじ登って来たのはアーチャーと少し被る赤いコートに身を包むガンナーだった。

 

「お酒は?」

「……」

 

「……あ、そ」

 

 会話が無く、ヴァッシュは酒を飲み始めた。グラスに液体を注ぐ音と、風の音、瓶の蓋を閉める音、液体を喉に通す音が聞こえる。その沈黙とも言えるモノを破ったのは直立不動のアーチャーだった。

 

「……貴様は何が目的なんだ? 本気で誰も殺さない気か?」

 

 そう、サーヴァントである以上、戦うのが目的になる。しかし、横で酒を飲む男が「戦う」と言ったところを見た事がない。

 

「だって……誰も死にたく無いじゃん?」

「偽善か……」

 

 反吐が出る。そう言わんばかりにアーチャーは鼻を鳴らす。

 

「ん~でも。君も同じような考え持ってるでしょ?」

「私が? ふんっ。私は凛の命令に従うだけだ。凛が戦わないと言えば従うが、アレも魔術師だ。聖杯を取りに行くだろう。休戦協定が解ければ真っ先に仕留めに行くぞ」

 

「士郎君と同じ匂いがすると思うんだけどなぁ……あ、怒った?」

「……生憎と私はあのような理想は持っていない。一つ聞いておこう。貴様はイレギュラーかつ、それなりの力を持ったサーヴァントの様だ。しかし、誰も殺さずにこの聖杯戦争を終わらせられると言うのか?」

 

「生き方は変えられないからね~。あ、もう空だ……」

「大方、どこぞの小僧と同じように誰も傷つけず、全てを背負いこみ自分が犠牲に傷付けば良いとでも思ってるのか。貴様の様な奴にはあの小僧がマスターであった方が幸せだっただろうな? 貴様等はおめでたい連中だ。無意味な理想はいずれ現実の前に敗れるだろう。それでも振り返らず、その理想を追って行けるか?」

 

「まぁ何とかなるよ。出来そうなら力貸してよね?」

「ふんっ勝手に―――」

 

「あ、それから!」

「……なんだ?」

 

「そろそろ服装被らないようにしてよね!」

「……」

 

「ガンナー、どこですか?」

「あ、マスター? 上です~。今おります~……あ、ノ~~~!!」

 

 踏み外すようにヴァッシュは屋根から落ちた。同じサーヴァントとは思えない姿だった。病み上がりのこの身でもアレは無いとアーチャーは視線を夜空に向けた。

 

「あいたたたた……ん?」

「ガンナー……どこを触っているんですか!!」

 

「ごめんなさいごめんなさい!!」

 

 屋根に残るアーチャーは下に落ちたサーヴァントと、それに跨り拳を振り下ろすそのマスターを見て溜め息をついた。

 

「……溺死してしまえ」

 

 

 

 





この作品で感想初めて頂きました。本当にありがとうございます。
モチベに上がるます。とてもうれしいます。がんばるます。

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