でも、小野坂さんの声がたまらなく好きなんだよねぇ。
「趙子龍、参る!」あ、これは合ってるけどちげーや。
(ここは……? 僕は確かナイブズと戦って、街に連れ帰って……)
街の宿で、疲れ眠っていたはずの金髪の男。
目が覚めて気がついた時は暗闇の中。
視界が急に明るくなる。そこは砂漠だった。
太陽は照りつけ、汗が滲む。
この砂漠に何もないのか? と思えばそうでもない。
地面には廃墟と化した建物と思われる残骸が埋もれて見えている。
(ぼ、僕がやったのか……? )
『いいえ、違います』
目の前に現れたのは聖職者の格好をした女の人。しかし、実体ではない透けた姿をしている。
『ここはあなたの記憶に残るモノを集約した世界。現実ではありません。あなたは選ばれたのです。ヒューマノイド・タイフーン』
一陣の風が吹く。
熱砂にはためく赤いコート。都市を灰に変える悪魔の使い。
ヒューマノイド・タイフーンの異名を持つ伝説の賞金首。その額600億$$。
人の身でありながら、人類初の局地災害指定となった伝説の男。
その名はヴァッシュ・ザ・スタンピード。
箒のようにツンツンに逆立てた金髪がトレードマークで、左耳には金色のピアスが輝いている。過去に数千万人規模の大都市ジュライを一瞬の内に消し去り、巨岩の都市を消し飛ばし、月に地上から確認出来るほどの巨大な穴を穿った人物だ。
(選ばれた? 僕が……何に? 聖杯戦争? なんだ? 頭の中に―――)
『聖杯戦争は、聖杯によって選ばれた七人のマスターが、サーヴァントと呼ばれる聖杯戦争のための特殊な使い魔を使役して戦い合う形をとります。あなたはそのサーヴァントに選ばれました。最後の一人になるまで戦い抜き、サーヴァントの魂を聖杯に捧げた時、願いは叶います』
(願い……僕には願いなんて……)
『でも、選ばれちゃいましたから』
急にラフな感じの口調になる女の人。
(こ、断ったりとかは……?)
『出来ませ~ん。イヤなら召喚された瞬間に自殺してくださいまし』
(自殺? それは僕が一番嫌いな行為だ……)
突然、ヴァッシュの足元が白い光に包まれる。
『強制召喚されましたね。頑張ってください。あなたのクラスはガンナーです。8人目のサーヴァントさん。あ、そうそうコレを持って行くと良いわ。必要なモノが入ってるから』
(説明は頭に入ったけど『ガンナー』なんてサーヴァントはいなかったぁぁぁぁぁ~~~……)
叫びながらもヴァッシュと一緒に投げ込まれたカバンは光の中へと消えて行った。
ある意味、奈落の底に引きずり込まれたと言っても良いかもしれない。
―――冬木市。
バゼット・フラガ・マクレミッツは歴代最強とされる「封印指定の執行者」だ。そして、今回の聖杯戦争ではランサーの本来のマスター。そう、ランサーのマスター“だった”。バゼットは聖杯戦争の監督者である言峰綺礼に協力を求めるが、騙し討ちにあって左腕ごと令呪を奪われ、今はマスターでは無い。既に瀕死の状態となっている彼女は、生きる事を諦める直前であった。
そこへ白い魔法陣が浮かび上がる。召喚の魔法陣だ。しかしそれを描いた者も起動させた者も誰もいない。では、一体誰が? 血で描かれたそれはバゼットの血であった。自覚も無く、意識も消えかけそうな彼女から流れ出る血がソレを喚んでいた。
薄れゆく意識の中で彼女は赤いコートを見た。
ヴァッシュは召喚された。目の前にはマスターと呼ばれる人物がいる。召喚者だと、マスターだと、身体の奥底で認識する。しかし、マスターは血まみれだ。左腕が無かった。
「ほぁぁぁぁ!? えらいこっちゃ~!! 止血するもの!!」
ゴンッ
頭に落ちてきたのは大きめのカバンだ。召喚される直前に一緒に投げ込まれたモノだ。
「いたたたたぁ~……くぅ~使えるモノ入っててくださいよぉ~?」
カバンの中には左腕が入っていた。義手とかではなく、生身の腕が入っていたのだ。肌の色は眼の前の人物と合っているが、これでいいのだろうかという疑問が浮かぶが、時間もない事は目に見えていた。
「……ぇぇぇ~……でも状況的にコレしかないんだよな~……多分さっきの人が用意したんだろうから……お願いしますよ~?」
左腕をスーツ姿の女性にあてがう、それに布地を少し切り固定布としようとするが、繋げた腕が光り出す。
「な、何ですと~!?」
光が収まると腕は接合していた。水たまりの様に広がっていた血も無い。まるで腕に吸い取られたか、地面に綺麗さっぱりしみ込んだかのように。
「……ぅ」
「ほわぁぁぁぁぁぁ~♪」
ヴァッシュは起き上がる女性マスターを見て手を祈る様に組み、歓喜の声を上げた。……無事助かったという点もあるが、脳内のほとんどは綺麗な女性だったからという理由が占めていた。
「あ、あなたは?」
「ども、サーヴァントのガンナーですぅ。マスターのお名前は~?」
「ま、マスター? 私はランサーの……ランサー……言峰……いや、しかし腕が……失礼ですが、私の腕はどの様に?」
まだマスターと呼ばれる事に疑問を覚えるバゼットは目の前の赤いコートの優男に礼儀正しく質問をした。
「いや~流石はマスターです。腕を添えたら勝手にくっついちゃうんですもん。無事でよかったですねマスター。で、お名前は?」
「くっついた? 寝てる私にそんな力は……っ!?」
そして、バゼットは少しばかり落ち着きを取り戻したのか、目の前の優男と確かにパスが繋がっている事に気がついた。
「ほ、本当にサーヴァントなのですか?」
「ヴァッシュ・ザ・スタンピードと言います~!! お近づきのしるしに熱い口付けを~!!」
「け、結構です!! しかし……危ない所を助けてもらったようで……私はバゼット・フラガ・マクレミッツ。……あなたのマスターという事でよろしいのですね?」
「バゼットちゃんかぁ~よろしく~」
「バゼットちゃん!? ……ンンッ!! よろしくお願いします。ヴァッシュ。ですが、あなたは先ほど聞き慣れない事を言いました。ガンナー何て聞いた事がありません」
「僕もそう思ったさ~。でもきっと運命だったんだよ。僕とバゼットちゃんが出会うのは運命だったのさ~」
駄目だ。会話が成立していない。バゼットは額に手をあて、軽い優男から視線をずらす。そこにはカバンがあった。
「ヴァッシュ。それはなんですか?」
「あぁ、何だろうね~? コレは……」
カバンの中に入っていたのはヴァッシュのゴツいリボルバー式の銃と、スピードローダー(※)と弾丸だった。
※スピードローダー:リボルバー式の拳銃に一発一発、弾を手で込めるのではなく、一気に6発補充できるリロードの器具。
「本当にガンナーなんですか……では早速、あなたの力を見せてもらいましょうか。他のサーヴァントの位置を探ってください」
「あ、それ無理。僕戦いたくないもん」
「いや、無いもんって、サーヴァントでしょう!? あなたも叶えたい願いがあって召喚されたのでは!?」
「生きているのに殺し合うなんて駄目だって、この世はlove & peace だよ。バゼットちゃん」
「……ならば、私だけでも行きます!!」
「ちょっ! バゼットちゃ~ん!? ……ふぅ仕方ないかな……聖杯戦争か」
バゼットが部屋を後にしたのを見送り、ヴァッシュはその軽い表情を変えた。サーヴァントとして召喚された以上ヴァッシュも理解はしていた。聖杯戦争。とどのつまり殺し合いだ。自分の銃を左手に持ち、ヴァッシュは重く何かを思い出していた。
「……でも、やっぱり殺したくないし、誰かが死ぬのは嫌だ」
ヴァッシュはマスターであるバゼットの気配を追う事にした。
夜の街。
どこへ行っても人はおらず、探しても人はいない。
バゼットは焦っていた。
監督者である者に殺された事もあって、自分の実力でこの戦いを行きぬけるのかと。ランサーを失い、幸運にも生き残った自分が、また何の奇跡なのか、聞いた事も無い『ガンナー』というサーヴァントを得た。力量は分からない。ヴァッシュ・ザ・スタンピードという名前も聞いた事が無い。英霊である事は間違いないが、いつ時代のどんな英霊なのか? 武器は銃という英霊、実力は不明。分かっている事は一つ、その英霊に戦う気が無いと言う事だ。
橋を越えたところで、バゼットはその日の行動を終了する事にした。収穫は何もない。体調もまだ万全とは言えない。バゼットは来た道を引き返すことにした。
「あ~いたいた~バゼットちゃ~ん♪」
「ヴァッシュ……どうしたのです? 戦う気はないのでしょう? ……ですが戦う時は令呪を使用してでも戦わせますからね」
「うわっ 嫌だなそれ。とりあえず聖杯戦争は切り抜けようと思ってね」
「やる気になったと言うのですか?」
「愛と平和の為に!!」
何を言ってるんだこのサーヴァントは……バゼットはそう思いつつ、戻る事にした。とりあえず、この英霊の事を調べてみようと決意したのだ。焦ってまた死にかけても問題だと考え、今は冷静に今の状況、戦力を調べることにした。
聖職者のイメージはシエルさんですね。特に意味はないけどこの人に関しては修正もしてないからキャラがぶれてます。今後でてこない。さらばカレーさん。
一応、当時適当に作ったと思われる能力表が発掘されたため、一緒に載せときます。
【クラス】ガンナー
【マスター】バゼット・フラガ・マクレミッツ
【真名】ヴァッシュ・ザ・スタンピード
【二つ名】ヒューマノイド・タイフーン
【属性】中立・善
【筋力】 B 【魔力】 E
【耐久】 C 【幸運】 E
【敏捷】 A 【宝具】 EX
【保有スキル】
◆不殺:A+
呪いクラス。敵味方問わず殺さずを貫く。
◆騎乗:E
乗れなくはないが、下手くそ。
◆無限の弾丸
マスターとのパスが繋がっている限り、スピードローダに勝手に補充される。弾切れを起こさない。
【宝具】
◆ヴァッシュの銃(銀)
ランク:B
対人宝具
レンジ:1~10
最大捕捉:1
かなり重厚なリボルバー式拳銃。マグナム以上の威力があり、銃を使う者でもかなり重く感じる。過去に照準が大幅にズレるなどがあったが、シリンダーの交換などにより。修理済み。
◆隠し銃
ランク:B
対人宝具
レンジ:1~5
最大捕捉:3
左腕は義手。普段は普通の手にしか見えないが、それが高威力なサブマシンガンに変形する。
◆プラント
ランク:A
対人宝具
レンジ:1
最大捕捉:1
人外の戦闘能力、身体能力、射撃技術とずば抜けた反射神経、しぶとさを持ち、随所で人間を遥かに超えた能力を見せる。その正体は、突然変異によって生まれたプラントの「自立種」……つまり純粋な人間ではない。
◆エンジェル・アーム
ランク:EX
対軍宝具
レンジ:1~∞
最大捕捉:1~∞
身体と同化して放つ銃による砲撃。これが月に穴を開けたモノ。砲撃で月に着弾した際は肉眼ではっきりと確認できるほどの巨大なクレータができ、地表近くで暴発しただけで数百万人の大都市を消し去った程の威力を出した。