ダンジョンで狩人に出会うのは間違ってるだろうか   作:夜明けの戦

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嘘の秘訣は少しの真実を含ませることである
更に相手の望む『真実()』を加えてやれば人はそれを真実にするのだから

もし、君が本当の真実(世界)が知りたいなら行くと良い

ヤーナムへ


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「失礼ですがそちらの方、少々宜しいでしょうか?」

そう声を掛けられ振り向くと、ギルドの制服に身を包むエルフの女性がベル君を伴って立っていた。

 

「ええ、構いませんが、あなたはもしかしてベル君のアドバイザーの?」

先程から後ろの奥のカウンターでベル君が何やら叱られていたのは気付いていたが、門外漢の私が割って入る訳もいかず、また現状揉め事に首を突っ込むのは避けたいが為ベル君には申し訳ないが犠牲になってもらっていたのだが、どうやらこちらにも飛び火したようだ。

 

「はい、エイナ・チュールと申します、この度は私の担当しますベルく・・ベル・クラネル氏を助けていただき有難うございます」

彼女は頭を下げながらそう言ってきた。

 

(やれやれ、礼儀正しいが些か声が攻撃的だな、此方を探ろうとしているのがバレバレだ、「ベル君」と言いかけてたな、成る程随分と入れ込んでるようだ、自身で気づいているかはわからんが、さて礼節には礼節でもって返すのが道理だな)

彼はエイナに対し『狩人の一礼』をし名乗る

 

「これはご丁寧にどうも、私の名はランドルフ・B・アーミテイジと申します、以後お見知りおきをミス・チュール、それと助力の件ですがベル君ならあの程度は一人で対処できたでしょう」

 

「?!い、いえ、それでも有難うございます」

エイナは彼の丁寧な返事と所作に少し戸惑った、ベルが名前を知らなかった件も敢えて彼が教えていなかったのではないかと疑って掛かっていたので名前をあっさり明かした事と礼の仕草が様になってる、いや慣れている事に少し驚いた

 

(態とらしくなく、動きも物腰も丁寧、この人もしかして上流階級出身?貴族にも通じるレベルだし、そんな人が詐欺なんて事するかしら?)

彼女は出自柄上流階級などのマナーなどに詳しく、彼が上流教育を受けていることに直ぐに気付いた、貴族と言うのは世間の思う以上に名声やプライドに拘りを持つ人種であり、そんな者たちが悪事を働けばどうなるかは想像にかたくない、悪徳貴族などと呼ばれる者もいるがそれは厳しいが必要な政策だったり、裏でやっていた事が明るみに出た間抜け等がほとんどであり、表から見て暗い部分があるなど貴族にとって恥でしかない。なので彼女は詐欺だとすればこんな判りやすそうな事をするとは思えないと考えた。

 

「それで、ミス・チュール、私に聞きたい事とは?」

そう切り出し相手が考えを纏めるまえにこちらに注意をそらす

 

「あ、いえそんな大したことでは無いのですが、随分な実力者とお見受けしまして、何故彼、べルく・・クラネル氏のファミリアのような所を訪ねようとされるのかと」

揺さぶりが効いたお陰か若干失礼な本音が顔をだしている言葉が帰ってくる、後ろのベル君が少し落ち込んでいるな

 

「おや、異なことをファルナはどの神が付与してくださっても変わりないのですから、自らがこれだと思う神より授けて頂けばよいのではないのですか?」

腕を組み、手を顎にあて首をかしげる仕草をする

 

「いえ、ですが」

段々と追い詰められるように言われ、次の言葉を紡ぐ前に空かさず割り込む

 

「それに、御会いしたいと申しただけで、所属するかはまた別の話ですからね。・・・ですが、正直構わないと思うのも事実ですね」

一言めで少し安心したようなエイナに落ち込むベルだが、二言目で双方がまた反対の反応をする。

 

「それは何故?」

エイナが聞く。

 

「ベル・クラネル君、彼が所属するファミリアなら、私は入っても構わないと考えてます」

 

「へ?ぼくがですか?」

ベルが自分を指差しながら間抜けな顔で言う

 

「そう、君だ、今日日君のようなまっさらで純粋な者は殆ど見たことがない、だから君のような人物を見出だした神様ならこの身を預けてもかまわない」

そう言い切った。

 

「・・・そこまで仰るなら仕方がないですね」

そう諦めたように微笑みながら言うエイナ

 

「ご理解頂けたようで何よりです、まあ、本当に所属するかはまだ判らないんですがね」

おどけたような言い方と仕草で肩をすくめる

 

「え゛そんなぁ~」

さっきから恥ずかしそうに嬉しそうに身悶えていたベルが声をあげる、そして皆で笑いだす。

 

(いやはや、本当に素直な子達だ、此方の話を鵜呑みにしてくれるとは、私が奴等(神々)になどに従う気が無いとも知らず)

彼は二人から見えないマスクの下に黒い笑顔を浮かべているだろう顔に手を当てながら考える

 

奴等(神々)が何の為にこの地上に来たのか、勢力図の拡大だろうか?奴等(神々)の数は幾らなのか・・・いや幾らいようと)

 

「クッ、クククククカァカカカ」

 

(スベテ、カレバイイ)

 

「?」

そこで彼はまた何とも言えない違和感を感じた

 

(前回から感じるこの違和感は何であろうか、世界が変わったせいか?動きのキレは寧ろ良い、神秘も威力が上がってる気がするがこれは検証しなければハッキリしないな、ん?)

そんなことを考えていたらこちらに集まる視線に気が付き、そばの二人をみると

 

「「・・・」」

ドン引きされていた

 

(・・・やれやれ、人前で奴ら(神々)のことを考えるのは今後は控えよう)

彼はこの日そう固く誓った。

 




最近ダクソやブラボーのコラボが増えて俺トクです

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