ダンジョンで狩人に出会うのは間違ってるだろうか   作:夜明けの戦

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新たな場所、それは希望、再起、出発そしてやり直し、全てを清算出来る可能性
然れど、それは未知、無知、先の見えぬ場所
さあ、かの者よ君はどう思う・・・





そして、過去は簡単に逃げられるものではない


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薄暗い照明のダンジョンの中、白い少年が走っていた、彼ベル・クラネルはまだ冒険者になって10日ばかりのヒヨっ子である、今日も零細探索系ファミリアである自身の家の為魔石を求めダンジョンに潜っていた、いや彼が求めるのは魔石だけではない、彼が真にダンジョンに求めるのは『出会い』である。

彼は亡くなった祖父より毎年誕生日に絵本を貰っていた、それは英雄達の物語、華々しい活躍、巨大な魔物を打ち倒す彼等に少年は強く惹かれた、更に祖父より施されし教育に「女の子との出会いを求めてこそ漢」なるものがあった為、英雄と女性達の恋愛に強い憧れを抱いていた、そんな彼が抱くシチュエーションはダンジョンでピンチの女の子を助け恋いにおちると言うものである、と言ううわけで彼は此処オラリアのダンジョンにやって来ているわけなのだが、この後彼に訪れる『出会い』は残念ながら彼の思い描くものより些か血生臭いものになるのだが。

 

そんな理由もあり彼は何時も道理にフロア2~3階あたりでモンスターを狩っていた、と言っても彼は駆け出しのさらに言えばソロの冒険者である、彼のアドバイザーも三体以上の敵とは戦わないようキツく言われていた、二体の時も一対一の状況になるよう立ち回るよう言われていた、なので今の状況は酷く不味いものだった。

初めは曲がり角にいるコボルトが後ろを向いていたのでラッキーだと思い後ろから脳天にナイフを突き立てたのだが、倒したあといざ魔石を取ろうと思い近寄った時、曲がり角の向こう側から二体のコボルトが現れたものだから、さあ大変今は後ろのコボルトを併走させない様に走っていたのだが、少々考えが甘かった、この手は走って一体が突出してきたらそいつを攻撃し、また後ろに走って逃げ、また攻撃を繰り返す集団との戦闘方法であったが、先の戦闘でゴブリンには通じたのだが、如何せんコボルトは彼が思うより速かった、おかげで彼は前に意識を殆ど向ける余裕もなくダンジョン内を走り回っていた。

そして、その時は来た、ベルが必死に走しり曲がり角を曲がった先に薄らとコート姿の人影が見えた、ベルはまずいと思いながらも後ろの状況を考えると引き返すことも出来ずその人影の方に走って行った。

 

『トレイン』と言う言葉をご存じだろうか、魔物を何体も引き連れ走りまわる事の通称、一部のネットゲーム経験者なら知っているであろう、これは引き連れた本人も危険だがそれ以外にも引き連れた者と遭遇した他の冒険者に被害が及ぶため此処オラリアでも冒険者間では普段絶対やってはいけない事の一つとして上げられている、更にそれで起きる問題、それが『怪物進呈(パス・パレード)』引き連れたモンスターを他人に押し付ける、または巻き込むこと、意図してやってしまったわけではないがこの状況完全に怪物進呈(パス・パレード)である、ベルは取り敢えず声だけでも掛けて注意を、または逃げてもらおうと声を上げようとして・・・すっ転んだ、前と後ろに注意を取られすぎて足元に転がる『それ』に気づかなかった。

ベルは何が起きたのか把握できずとにかく巻き込んだ彼に謝らなければと彼の方を向き謝罪の言葉を述べようとしたのだが、遠くから彼を見たとき仕立てのいいコートを着たようなシルエットが見えていたので、目上の紳士だとおもっていた、

 

「す、すいません、人が居ると思わな・・く・・て・・・」

 

そう、彼はベルの思うとおり長身の仕立ての良い強化されたコートとマスク、帽子を被った紳士だった・・・さらに、厳つい石槌を持ち死体の山の上に血塗れで佇んでいることを除けば。

そして、彼らのファーストコンタクトの第一声は

 

「うっ」

 

(うっ?)

 

「うっわあぁぁぁぁぁぁぁぁ」

ベルの叫びで始まった。

 

 

 

そんな悲鳴を上げられた狩人はと言うと頭を抱えたい心境だった

 

(何と言うか、久々にまともそうな人間に会ったと思ったらいきなり叫び出されてしまったか、あれか?この子も狩人を恐れている人種か?)

また、ヤーナムの街の連中みたいにまともに相手されないのでは無いかと少々不安になるが

 

(まあ、良いダンジョンにいる時点でマトモな部類の者ではないだろう、喋れそうな分だけマシというものだ、それに・・・僅かだがこの子から狩人(私達)や奴等と似た気配を感じる、取り敢えずは・・・・・・恩でも売っておくかな。)

 

そう彼が断じると少年の方へと歩みを進める、今だ尻餅をついて、半泣き状態の少年を通り越し二体のコボルトと相対する、奴等は尻込みしているようだった、まあ、それも仕方ないことではあるのだが、同胞の骸が山となっている所に警戒もせず迂闊に飛び込むのはどんな者でもしないだろう。

 

(やはりこう言うところは獣と違う、こいつらは命を惜しむ、逃げようとしたり躊躇するようだな、獣どもなら考えなしに突っ込んでくるものを・・・やはり情報が欲しいさっさと終わらせるか)

 

そう考えた彼はコボルトに躍り掛かった。

 

 

 

ベルは腰が抜けて動けなかった、情けない話であるがモンスターに襲われて命の危機に陥った事はあっても、人間に相対して死を覚悟する事なんて思っても見なかったのだ、血塗れの彼は細身の長身ながら不釣り合いな大きさの石槌を片手で操りこちらに歩いてくる、その一歩近づく度に彼の躰から放たれる圧が増すのである、普通に考えれば殺されると思うだろう・・・

 

(ああ、僕死んじゃうのかな、こんな処で何もできず・・・ああ、神様ごめんなさい)

そう一人嘆く少年を他所に彼は横を通りすぎっていった

 

(へっ?)

 

ベルが不思議に思い後ろ振り向くと一瞬彼の姿が霞み、コボルトが一体潰されていた、ベルは更に混乱する、まさに目にも止まらぬ速さ等、彼の目は追いつけず、頭は理解できなかったからだ、それはコボルトも同じらしく相方が行き成り潰されて驚いていた、がそこに無防備に晒された狩人の背があったことでこの個体は反射的に攻撃に移ることが出来た、それを見たベルは咄嗟に叫んだ

 

「危ない、後ろに!!」

 

そう叫ぶと同時に狩人が振り返るが、彼の得物は深く地面に食い込んでいた、これは不味い、助けなければ、ベルの身体は無条件にその選択を選び、体制を立て直して飛び掛ろうとするも

 

(ダメだ、間に合わない!?)

 

そう諦めかけた時

 

『シャキーン』という甲高い音が響き、狩人が振り向きざまにコボルトを両断していた

 

「へっ?!何で・・・剣が?」

 

ベルの混乱は最高潮に達しようとしていた、先程から変わる展開について行けず今も頭を抱えグニャグニャ身体を揺らしながらブツブツと『血塗れ』『瞬間移動』『剣が』など呟いている。

そして、そんな彼を見た狩人は・・・若干引いていた、やっぱりこの少年も墓暴きどもの仲間かとちょっと心配になって来たが取り敢えず現状を知る手掛かりはこの少年だけなので、接触を試みてみることにした。

 

 

ベルが頭を抱えていると彼が近寄ってきて声を掛けてきた

 

「少年、怪我は無いか」

 

「あ、あありがとうございます、特に怪我はしてません、ってそれよりも、すいません巻き込んでしまって、ところで、さっきの一体どうやったんですかスキルですか?すごく速くって目が追いつきませんでしたよ、あ、他人にスキルを聴くのはマナー違反でしたねごめんなさい、あ、僕の名前はベル・クラネルっていいますヘスティアファミリア所属です!、だけど凄いですねモンスターを一撃でその凄そうな銀の剣も一体どこから・・・それに!?」

混乱から一転して興奮気味に狩人に詰め寄るベルに狩人も少々驚いていた

 

(何だこの反応は?狩人を恐れている訳では無いようだが・・・いや、違うこの子は狩人を知らない?まさか、此処がダンジョンならこの少年はヤーナムの、いや最悪を考えるなら白髪に赤い目、トゥメルの者?・・・まあ、兎に角この子を落ち着け話を聞くほうが早いか・・・・なんだか、昔こんな感じに他人に迫られた事があったような・・・)

何やら思い出そうとしたら一瞬、黒い笑顔の女性が見たような気がして背筋に寒気を感じたので彼は思い出す前に思考を切り替えた。

 

こうして彼らの初の会話はキラキラした目の興奮した少年に迫られ、昔会った尼僧のトラウマを思い出されそうになって精神的にダメージを負う狩人と言う奇妙なものから始まった。

 

 




現在の装備
ヤーナム一式
教会の石槌
ロスマリヌス(収納中)


アデーラは彼にとってトラウマですww
まあ、この主人公、実験と称して偽医者も真っ青の外道行為を行っていますが、そんなんだから兎君にビビられるだろうな・・・(´-ω-`)

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