『さあ!前年度よりも今年は盛り上がっております!これは男子の加入がいい方向に傾いた結果だろうか!このままの勢いで次の競技にいってみたいと思います』
入学してからあっという間の10月。
そんなとある日。今日は空は雲ひとつない晴天。絶好の体育祭日和…というか、正に真っ最中。
もうすぐ午前中の競技が終わっちゃうよ?なタイミングだったり。
『午前最後の競技は「二人三脚」だー!!出場選手の方は速やかに集合場所に集GOしてください!』
スピーカーからはそんな司会の声が聞こえてくる。
朝からあのテンションだけど疲れないのかな?
「瀬奈くん。私達の出番ですよ」
「あ、園田さん…今行きます」
「今日までせっかく練習したんですから頑張りましょう」
あぁ…アレね。練習っていうか特訓的な感じのやつだった気がするけど。
最初は園田さんが近すぎてドキドキしてたりしたんだけど、途中からはそんなことを考えてる暇もなかった…園田さんのスパルタぶりに…思い出すと泣きそうになる。
「できるだけ上位にはくいこみたいですね」
「や、ホントにね。あの時間を無駄にしたらメンタルやられちゃうから」
「海未ちゃんとの特訓きつそうだったもんね?」
あ、もう周りからも特訓って認識なんだ。
「きつかった?いやいや…ソンナコトナイヨー」
「瀬奈くんが遠い目を!?」
「穂乃果。人のことよりそちらは大丈夫なんですか?」
「ん?だいじょぶだよ!ね、ことりちゃん」
「うん!穂乃果ちゃんと私ならだいじょーぶかも?」
「なぜに疑問符!?」
なぜだろう…些かの不安を拭い去れない
まあ、それは自分達にも言えることだけど。
「とりあえず、皆で頑張りますか」
「「「おーっ!」」」
『さてさて、選手が集まったところで今更だとは思いますが、ルールの説明をさせていただきます。2人1組を作っていただき、お互いの片足を紐で結び、足を3本にしてもらいます。その状態でゴールへ向かって走るのがこの競技…と、お集まりの皆様は理解している思います。しかし、今回はそれだけでは面白くないという方々の声に耳を傾けた結果。追加ルールをご用意することになりました!』
「えー!」「なんだそれ!」「ふざけるなー!」
各所から不満の声が上がる。
や、それはそうでしょうね。ここにきてのルール追加とかどうなってるんですか。
『ノンノン。皆様これは既に学院長にも許可をいただいていることなので、皆様の不満はウォータースライダーの勢いで流させてもらいます!』
その瞬間、僕と園田さん、そして高坂さんは南さんの方を見てしまう
「あ、あはは…うちのお母さんがごめんねぇ」
「いやいや、南さんのせいじゃないんだけどね。こっちこそゴメン。つい見ちゃって…」
「ううん。気持ちはわかるから…」
『気になる追加ルールですが、とても簡単です。コースの途中に白い封筒が置いてあるのがおわかりになるでしょうか?』
ん?封筒かどうかはわからないけど、何か山積みなってるのは見えるけど…えっ?あれ封筒なの?置き方雑すぎるでしょ。
『あそこに見える封筒の中にはお題が入ってまして、ペアの2人でそのお題をこなしてゴールを目指してもらう、という形になっています。例えば、なんですけど「手をつないで」といったお題が入っていたら、手を繋ぎながらゴールを目指していただくというような感じです。まあ、方組むところを手を繋ぐという形にしただけなのでハードルは極めて低いですけど』
むむ、これは実にやばい展開ではなかろうか。
どんなものがくるのかわからないけど、僕達みたいな異性の組み合わせだとキツイものが多くなるんじゃなかろうか。
場合によってはリタイアも考えなくちゃいけないかも。
「二人三脚…なんて恐ろしい競技なのですか…」
驚愕に震える園田さん。
「いや、ここのが特別なだけだけ思いますけど…」
『ち・な・みに、お題をクリアできないとその場で失格だぞっ☆それでは、第1レースの準備が整いましたので、さっそく始めさせていただきます』
「ひどすぎー!」「さいあくー!」などと、クレームの声が上がる。
お題以前に競技のハードルが高すぎるでしょ!!
「on your mark」
あれ?今まで気づかなかったけど掛け声が意外に本格的だった!?
「get set go!」
「パン!」というピストルの音と共に一斉に走り出す。
みんな結構速いな…。相当練習してきてるのかな。
まあ、お題なんてものがあるから正直速さ云々は二の次かもしれないけど。
『早くも1組のペアがお題まで辿り着いたー!一体どんなお題を引くことになるのか!!』
「ちょっとー!『お姫様抱っこ』って普通に無理でしょ!」
うわー…あれはひどいな。事実上のリタイアじゃないですか…。
「『2人でスキップしながら』って、行けそうで難しくない!?」
『皆さん手こずっているようですね。おーっと、周りが手こずっている中で悠々と進んでいくペアがあるぞー!あれは…絢瀬絵理さん、東條希さんの生徒会ペアだー!!』
先輩達出てたのか。
それにしても凄いサクサク走ってるけど
2人のお題はなんだろう?
『ここで情報が入りました。ななな、なんと生徒会ペアの引いたお題は「そのまま」とのことです。…え?コレずるくない!?え、あ…こういうのを引く運の要素も大事?だそうです』
なにそれ!?そんなのもあるんた…。
あの山積みの中からそれを選ぶなんてどんな確率。
「カードがウチに教えてくれたんよねー」
「こういうのは希に任せておけるから安心ね」
このスピリチュアルっ娘め!!
『そのまま1着でゴーール!圧倒的な運命力を見せつけられたー!』
運じゃ希先輩には勝てる気しないんだけど。
とりあえず、自分の時には無難なものを引くよう祈ろう…希先輩に。
着々と進むレース。
その間に『両手繋いで』とか『おんぶ』だったり、意外にいけそうなものから無理難題、様々なお題を見せつけられた。
ちなみに高坂さん、南さんペアは『歌いながら』なんてお題を引いて、凄い楽しそうに走ってたっけ。
アレはアレで恥ずかしいとは思うけど難易度的にはイージーなんだろうな。
「とうとう出番が回ってきてしまった…」
「もうお題次第としかいえないですね」
激しく同意!
『これで最後のレースとなります。できることなら最後らしく素晴らしい展開を期待したいですね』
ハードルあげるの大好きですねっ!?
『おや?最後のペアには、初である男女のペアがあるみたいです。いやーこれは期待が高まりますねー』
もうこの人嫌だ…。
「on your mark get set go!」
ピストルの音を聞いて走り出す。
1、2、1、2とリズムを合わせて走る。
よし!とっく…練習の成果は出てる。これならいいペースでいける。問題はここから…。
『なんと1年生の混合ペアがトップでお題まで辿り着きましたー!さて、ここからが勝負の本番です。運を見せつけられるのか!?』
「瀬奈くん。あなたが引いてください」
「…いいの?」
「はい。瀬奈くんが引いたものなら受け入れられる思います」
それはそれで何気にプレッシャー半端ないけどね。
お願いします!どうか無難なものを!希様ー!
勢いよく封筒の山に手を入れ、手に掴んだ1枚を引き抜く。
ゆっくりと封を開け中身を確認する。
〜お題〜
『ゴール後に精一杯抱きしめる』
こういうパターンもあるのっ!?
難易度がルナティックすぎる!?
「……」「……」
『トップで着いたはずのペアが動かず他のペアに抜かれていくー。一体どんなお題を引いてしまったのでしょうか!…きましたきました情報がきましたー。えーと「ゴール後に精一杯抱きしめる」だそうです!なるほど、こういうのもあったんですね。女子同士ならば、なんら問題のない簡単なお題なはずなのに異性になったとたんに上がる難易度ー!!しかし、これは胸が高まります!ゴクリンコ!』
いやいや、これは厳しくないですか ?
僕も大分恥ずかしいけど、園田さんとか超絶無理なやつじゃない。
「園田さん…これは諦めた方が」
「…いえ、やります!」
え?やるの!?なんで!?もはやただの羞恥プレイだよ!?
「普通に恥ずかしくない?」
「恥ずかしいに決まってます!でも…瀬奈くんとせっかくペアになった競技ですし、最後まで走りたいんです!」
「園田さん…」
「そ、それに瀬奈くんとなら…いやじゃ……」
ちょっと最後の方は聞き取れなかったけど、そうか…そこまでの決意を持ってるなら僕もやるしか…。
「とりあえずゴールまで急ごう!まだ全然追いつけるし、後のことはゴールした後で!」
「そ、そうですね」
急いでゴールを目指して足を進める。
どうにか遅れていた分を取り戻し、先頭に追いつく。
そのまま勢いを殺すことなく、トップへ踊り出し、ゴールテープを切った。
『ゴーール!1年生混合ペアがトップのゴールです!だがしかし!まだ本当の意味でのゴールではありません!むしろ、ここからが始まりです』
「せ、瀬奈くん一思いにやってください!」
覚悟がすでにきまってる!?
目をぎゅっと瞑り、身構える園田さん。
あれ?なんかこんな状況なのに普通に可愛いとか思っちゃったよ?
「「「はーやく!はーやく」」」
ちょっと周りは無責任に煽らないで!?こっちもいっぱいいっぱいなんだから!
「すぅー、はぁー。少し我慢してね」
そして、力強くも優しく抱きしめる。
「んっ…///」
この状況で艶かしい声出さないで欲しいんですど!?色々とやばいですから!
…あんなに走ったのに良い匂いするな…とか、考えてないからね!
『これでやっとゴールだー!他の参加者が空気になってしまうほどのインパクト!ごちそうさまでした!正直ちょっと羨ましいぞ!!私も抱きしめてー!』
「あ、私もー!」「じゃあ、私も!」などと周りから次々と声があがっていく。
なんでこの学院こんなにノリいいの!
嫌いじゃないけどねっ!
ひとしきり堪能…ゲフンゲフンッ…お題をこなし、園田さんから体を離す。
「ごめんね園田さん。大丈夫だった?」
「ぜぜぜ全然大丈夫ですよ!そういう競技でしたからね。仕方ないです」
少し慌てながら、頬を紅く染めている。
多分僕も紅いと思うけど…。
まあでも、正直役得でした!と言わざるを得ないぞっ☆
あ、なんか口調が移った。
『冗談はさておきまして、今の競技で午前の種目が終了しました。この後、1時間のお昼休憩を挟んだあと午後の種目に入ります。それでは皆さん午後に向けてしっかり食べるんだぞっ☆ただし食べ過ぎには注意してください!なお、お昼には炊き出しもやってますので、生徒はもちろん。一般客の方も是非お召し上がりになってください。以上、放送部の桜まみでお送りしました!また午後にお会いしましょう』
やっと終わった…なんか凄く長く感じた。
午後も同じような感じだったら持たないよー。
「瀬奈くーん、海未ちゃーん、1位おめでとー!凄かったね!!」
「ありがと高坂さん。どうにかってかんじだったけどね」
「私も瀬奈くんと走りたかったなー」
え?あの状況をみてそんなこといえるなんて凄いね。
僕はもうあんな公開処刑は嫌だけどね。
「とりあえず、午後に向けて腹ごしらえとしますか」
「あ、ことりちゃんが向こうで準備して待ってるよ!」
「そうなんだ。僕はちょっと購買よってからいくから、2人とも先に行ってて」
「はーい」「わかりました」
さてさて、それでは今日の食料を買いに行きますかね。
またまた駄文で失礼します!
今回も怒涛の完全オリジナルです。
やはり学校といえばコレしかない!ということで書いて見たかったんです!
しかもまさかの2部構成!?
皆様には申し訳ないですが、もう少しお付き合いえただければと思います。
それではまた次回に会いたいぞっ☆