魔法少女リリカルなのは ~若草色の妖精~   作:八九寺

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30:弟子の初陣、そして黒服の参戦

 

 

 

 説明終了、アリサの異様な気迫に気圧(けお)された……、我が弟子ながら恐ろしい。

 僕の後ろでは、同じく気圧されてたフェイトとアルフが、抱き合ってカタカタと震えてたり。

 

「OK、事情はだいたい把握したわ。アナタがジークの言ってた黒服の子ね」

「えっと――――」

「あ、私はアリサ。アリサ・バニングスよ、よろしく」

「ふぇ、フェイト・テスタロッサです。よろしくお願いします……?」

 

 会話慣れしてないのか、フェイトがおろおろとしてぎこちない。

 そのままアリサ主導でがーるずとーく?――“ぼーいずとーく”という言葉は無いし、需要もないらしい――に突入した。

 

「……どうしてこうなった」

「あの娘、場の空気を掴むのが巧いというか、主導権を取り慣れてるというか……。いい子であることは間違いなさそうだけど」

 

 必然的というか何というか、戦闘に突入する事もできず、僕とアルフも少し離れた所でそれぞれの身内を眺めつつ会話に興じる事となっていた。

 二人揃って、絶賛空中体育座り中である。

 本当ならさっさとジュエルシードを封印に行くべきなんだろうけど、結界も張られてるしユーノと白服に任せておけばいいや、もう。

 

「……ん、フェイトはどこか怪我でも? 動きが硬い」

「……見ただけでわかるもんなのかい?」

「武術を噛じってればわかる」

 

 さっきから見てた感じだと、肩か背中かな……?

 そこを庇って動いてる節がある

 とりあえずそう尋ねてみた。

 

「当たり、一応治療はしたんだけどね、私もフェイトも治癒魔法は得意じゃないんだよ」

 

 それを聞いて少し思案した。

 頭の中でとっさに損得勘定をする。

 

「……あげる」

 

 僕は虚空から空色の液体が入った半透明のビンを取り出して、アルフに渡す。

 

「怪我用の薬。お風呂にお湯張って、それを全部入れて痛みが消えるまで浸かればいい」

「どういうつもりだい?」

 

 僕の意図が分からなかったらしいアルフが警戒した面持ちでビンを眺めてる。

 仕方ないので簡単に説明する。

 

「僕的には野良ジュエルシードを誰でも良いから早急に管理下に置いて欲しい。フェイトもジュエルシードを集めたいけど万全じゃない」

「つまり、アンタとアタシ達両方に得ってことかい?」

「そゆこと」

 

 ……理解が早くて助かる。

 

「毒とかじゃあ無いって保証は?」

「お望みならこの場で飲んでみせる。……飲用じゃないから、美味しくは無いけど」

「……嘘じゃないみたいだね、そういうことならありがたく受け取っておくよ」

 

 納得したのか、アルフがビンを懐に仕舞い込んだ。

 ちょうどこちらの話が纏まったところで、アリサ達側に向き直る。

 

「その、バニングスs「『アリサ』で良いわよ、私もフェイトって呼ぶから」え、えっと、アリサ、ジークが何か私のこと話してた?」

「ええ、フェイトのことは見込みのある筋がいい魔法使いって」

「……ホント?」

 

 ……いつの間にか仲良くなってるし。

 あとフェイト、なんかキラキラした目でこっちを見るな。

 

「……まだまだ伸びしろは有るし、自分の不得意を把握してるから強い。実戦経験を積めばもっと強くなれる」

「へぇ? ジークにしちゃベタ褒めじゃない」

「スジはいいから、これからの経験と努力次第」

 

 ――――……ふむ。

 そこまで言って、僕の頭に妙案が浮かんだ。

 

「アリサ、フェイトと戦え」

「「……はい?」」

 

 アリサと、なぜかフェイトも間の抜けた声を上げる。

 

「師匠命令。僕とばかり戦闘訓練して変なクセがついちゃ困る、たまには相手を変えてみた方がいい」

「ちょ、そんなのアタシ達に何の旨みが――――」

 

 言い募ろうとしたアルフに、昨晩手に入れたジュエルシードを見せる。

 

「アリサと戦って勝てたら、昨日封印したコレを贈呈。僕と戦うよりは勝ち目も有るし、負けても何も求めない」

 

 僕はそのまま『どう?』とフェイトに視線を投げた。

 先ほどまでの表情は何処に行ったのか、闘志に満ちた気配でフェイトがうなずいた。

 

「……わかった、その勝負受けて立つ。……母さんのためにも負けられない」

「ジークの“師匠命令”は絶対なのよね……仕方ないか」

 

 二人が自然と距離をとる。

 

 アリサは右手に杖、左手は外套の中に。

 フェイトは漆黒の戦斧を腰で溜めるように。

 各々が構えを取ったところで声をかける。

 

「相手の胴体に直撃を入れた方が勝ち。では、始め!!」

 

 開始の号令と同時、斧と杖が噛み合い火花を上げた。

 

 

◇◇◇

 

 

 杖と斧で切り(?)結ぶ二人を尻目に、僕はアルフに一声かける。

 

「アルフ、審判よろしく。僕はちょっと出かけてくる」

「え? 別に良いけど……アンタは弟子の戦いを見てかないのかい?」

「見てたいのは山々、だけど白いのが未だにジュエルシードを封印できてないみたいだから、ちょっと行ってくる」

「あ。そういえばアタシ達はジュエルシードの封印に……っていうかあの白い子の方はまだ封印できて無かったのかい、アタシ達結構長いこと話し込んでた気がするんだけど」

 

 全くだ、不甲斐ない。そんな会話の合間にも、僕たちの眼前で戦いが続く。

 距離を取ったフェイトが金色の弾幕を展開する。

 

「フォトンランサー、――――シュート!!」

「ッ! ブレイズ――――」

 

魔力を込めたアリサの一声。

アリサのコートの裾から、魔法のように――実際に魔法を使ってるけど――ナイフがフェイトの攻撃と同数、十数振り射出される。

 

「――――シュート!!」

「――――!」

 

 フェイトの攻撃とアリサの迎撃。

 それがぶつかり合い、二人の中間に魔力爆発の花が咲く。

 

 僕の『剣群乱舞』をアリサなりに解釈して、形にした魔法。その名は『ブレイズ』

 基礎の術式は同じ、されど運用方法なんかの細部はアリサのオリジナル。

 アリサ自身で名付けた初めての魔法だ、愛着も持ってくれるだろう。

 

 激突を潜り抜けた幾振りかがフェイトに迫るも、危なげなく杖で叩き落とされる。

 

「……それ、ジークの技?」

「そ。私はジークの弟子だから。だけど、私のアレンジ入ってるから別物って言っちゃ別物なんだけどね」

 

 ……うむうむ、初手としてはいい攻防。

 

「じゃ、アルフお願い。可能なら、フェイトに『色々な戦い方(魔法)を見せてあげて』と」

「あいよ、こっちはちゃんと見といてあげるから。そっちもヘマするんじゃないよ?」

「ん」

 

 さっき作った鷹の半分を僕との連絡用兼、予測外の事態用に残す。

 特にそれはアルフへ伝えない。どうやら気づいて無いみたいだし。

 

 僕はこの場をアルフに任せると、未だ収まっていないジュエルシードの反応の方へ跳んだのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

「未熟者め、封印にどれだけ手間取ればこんなに時間がかかる」

「「じ、ジーク君(さん)!?」」

 

 目的の場所へたどり着いた僕は、大きな木の化け物に向き合って滞空する白服と地から助言を与えていたらしいユーノを見下ろす。

 

 前回はただ木が大樹と化して街を覆っただけだった。

 けど今回はそれより小さい代わりに自我を持っているみたいだ、……全く面倒な。

 白服が全体的に薄汚れてるから、苦戦してたんだろう。

 

「この木、障壁使ってくるの!」

「なら障壁を抜く方法を考えろ、未熟者」

「ひ、酷い言われようなの……」

 

 わざわざ尻拭いをするのもイヤだけど、ジュエルシードを放って置くわけにも行かない。

 肩へたすき掛けに2丁、P90TRを吊して初弾を装填して構える。

 

「ジークさん、無理です! 質量兵器じゃあの障壁は――」

「――無策で魔法障壁を相手にする訳ないだろうに」

 

 ユーノにそう返して、僕は暴走体と距離を詰める。

 地から大人五人で腕を回しても抱え切れなそうな太い根が棘のように、目の前からは電柱より二周りは太い枝が僕を貫こうと槍襖<やりぶすま>の如く突き出された。

 

 ジュエルシードの防衛行動であろうそれらを避け、四肢を使って受け流して接近する。

 

「なんて無茶苦茶な空戦機動(マニューバ)……!」

「……射程内」

 

 細かく狙うならもっと近づくべきなんだろうけど、相手はこれほどの巨躯。

 手足の如く銃器を取り扱えない僕だけど、この距離なら外す方が難しい。

 

――――パララララララ

 

 空気を入れた紙袋を勢いよく叩き潰したような音を連続させて、腰だめに構えた銃の銃口から弾丸が放たれる。

 短弓以上の連射に長弓以上の射程、そして弩弓以上の破壊力……科学とは恐ろしい。

 そして僕はそれに魔法を組み合わせる。

 

「――あぁ、良かった、抜けた」

「嘘……!?」

 

 着弾した瞬間、弾が当たったあたりに紫電が疾り、障壁を抜いた。

 作ってはみたものの、白服やフェイトに使えず――電撃ゴム弾じゃないから当たり所によっては死んでしまうので、デビットさんとの約定が(かせ)になる――死蔵する羽目になっていた、対魔法障壁用特装弾が暴走体の体躯を喰い破る。

 

 ダメージは徹っているようで、化け物が苦悶の声――声帯は無いだろうから、これは“軋み”や“葉のさざめき”だと思うけど――を上げた。

 

「――む」

 

 ……だが、決定打にはならない。

 

 僕の攻撃は確かに被害を与えているけど、体の大きさに対して如何せん火力不足すぎる。

 ヒトで例えるなら、針で無数にちくちく刺されてる感じだろう。

 

 機関銃とか呼ばれてる銃は連射で大木を削り切れるらしいけど、この銃じゃ無理みたい。

 

 どうしたものかと悩みつつも射撃は止めない。

 暴走体の回復力じゃ、これくらいのダメージは瞬時に元通りだろう。

 

 攻撃を絶やさないように注意しつつ、交互に弾装を交換した。

 弾装にも魔法をかけて、入る弾を倍以上に増やしてるけどこれじゃキリがない。

 奴の体内に留まった弾が一時的にだろうけど、障壁の再生成を阻害している。

 

 今の内に障壁の内側に入り込み、肉弾戦を仕掛けるか。

 面倒だけど仕方ない。

 

 そんなことを考え、突撃をかけようとしたところで下から声が響いた。

 

「なのは、今だ!!」

「うん!! ディバイン――」

 

 ……いやちょっと待て、何故魔力を溜める。

 

「――バスター!!」

 

 桃色の光線が化け物を抉っ……もとい着弾した場所を消し飛ばした。

 

「リリカルマジカル! ジュエルシードシリアルⅦ、封印!」

 

 暴走した魔力が押さえ込まれ、収束する。

 白服はそのまま流れるようにジュエルシードを封印して見せた。

 

 ……それ自体はいい。

 攻撃から封印に移る切り替えは見事だったし、そのおかげで僕は面倒な思いをせずに済んだ。

 

 …………だけど、何でこうも癪に触る介入をしてくるのか。

 言葉で表すなら、『読んでたマンガのラストを、隣に来たアリサがポロリと喋ってしまった』時くらい癪に触ってる。

 

「やったよユーノ君!!」

「なのは、やったね!」

 

 ……付き合いきれん。

 とっととジュエルシードを回収してアリサたちの所に戻ろう。

 

 青き宝石に手を伸ばしたところで唐突に叫ばれる。

 

「あー! ジーク君! そのジュエルシードがどっちのか勝負だよ! 1対1の真剣勝負!」

「その理論はおかしい」

 

 僕の作った隙に、勝手に攻撃打ち込んで封印しときながら、何を言ってるのだこの阿呆は。

 

「封印したの私だもん!!」

「……むぅ」

 

 過程はどうあれ、事実だけに反論しにくい。

 ……問答するだけ時間の無駄か、さっさとケリを付けてしまおう。

 

「……わかった、その決闘受ける。殺さないようにはするけど、大怪我しても文句言うな」

「の、望むところなの!」

 

 ……腰が引けてるぞ、白いの。

 

 対人外仕様のP90TRを仕舞い、弾丸をSRゴム弾(ショックラウンズ・ラバーブレット)――当然『対障壁加工済み』――を装填した拳銃・ファイブセブンに持ち代える。

 とりあえず、宝石を掴んで白服の眉間めがけて投げ渡した。

 

「痛っ!?」

 

 見事に眉間に当たったジュエルシードを掴めず、胸の前でお手玉しだす。

 運動神経か反射神経が鈍いのか、どっちだ。

 

「預かってろ、昨日の二の舞になったら困る」

「え、ちょ!? レイジングハート、お願い!」

 

 無事、白服の杖にジュエルシードが仕舞い込まれたのを確認して、僕は距離をとって構えをとる。

 ざっ! っと海風が頬を撫でた。

 今晩のご飯は魚が食べたいな、うん。

 

「用意はいいな、――良くなくても始めるけど」

「い、いつでもい――」

 

 白服が構えをとった瞬間、言葉の途中だけど一瞬の加速で距離を詰めた。

 

「――ッ!?」

 

 右手の飛び道具に意識を向けさせたうえでの、左手による近距離戦闘。

 心の隙をつく戦法だ。

 

 白服もとっさに後ろへ下がって杖の柄で防ごうとするが、僕の踏み込みの方が早い。

 

 空いている左手の掌底で、白服の顎を下から掠る軌道を描く。

 脳を揺らせて戦闘不能に持ち込むつもりで――

 

 

「ストップだ!!」

 

 

 ――突如割り込んだ黒い影の手によって、僕の掌が止められたのだった。

 




少々間が空いてしまいましたが、30話更新です。
おそらく、後10~15話以内に無印編は終わりそうです。

アリサVSフェイトは、キンクリされる予定ですが、コメント次第によっては30.5話の扱いで補筆しようかと。

次回(31話)予告:クロノ君は噛ませ

感想の返信は、主に次話更新前に行われることが多いです、ご容赦ください。



Q.こいつを見てくれ、これをどう思う?

http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im3716166

A.……将来的に、どうジークを動かせばこんな状況に出来るか、小一時間考えました(白目
このシリーズの存在を今更知りました。教えてくれたとある人、ありがとう。
……見つからなければ、あんな目にあうことも無かったのに。(意味深&メモ帳を開きながら

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