魔法少女リリカルなのは ~若草色の妖精~   作:八九寺

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皆様、UA15000突破しました(^_^)
まことにご愛顧ありがとうございます。

さて……何故か更新早いでしょう?
それはね、ストックがあるからなんだ……(遠い目)

あと、期末考査の季節だから、更新が早いのですよ。

その理由?
私は、試験前に部屋の掃除をするんではなく、SS書きに熱中するからです……



17:振って湧いた休日の邂逅 うぃず(with) 剣士

17:振って湧いた休日の邂逅 うぃず(with) 剣士

 

 

「ねえマスター、明日の魔法の練習お休みにしてもらって平気?」

「ん? ……他の習い事と被った?」

 

1週間の集中講義を行ってから数日後の夜、自室で説明書片手に銃器の整備を行っていた僕の所にやってきたアリサの言葉に首を傾げた。

 

アリサは学校の勉強以外にも多くの習い事をしている。

そうやって多くの習い事をしている都合上、講師の方の急な用事の変更や何かしらの発表会の前はその日程がずれ込んだり増えたりするらしい。

 

あの1週間以来、毎日寝る前に僕の魔法の授業はもちろんの事、それ他の習い事も手を抜かず打ち込んでいる姿を見ているから文句なんて言えない。

それに最近は自主的に早起きして僕の日課の朝練の隣で魔法の練習をしていたりもするのだ。結果として予想以上の成長の早さになっている。

 

「あー、そう言うのじゃなくて、すずか、私の親友に『明日一緒に遊ぼう』って誘われたから……やっぱりダメ?」

「……構わない。アリサはこのところ頑張ってたから、1日くらい休んでもいい」

 

適度に体を休めないと、訓練の能率も下がる。

それに、最後の最後では生まれ持った才能や血筋――家柄……という意味じゃない。たとえば父が人間、母が竜人だったりするとその子は総魔力量の伸びしろが純粋な人間より大きかったりする――に左右されるけど、ある一定量まで総魔力量は訓練で伸ばすことが出来る。数日間、絶やすことなく魔法を使い、1日休む。たったこれだけで総魔力量は僅かだが確実に増えるのだ。

 

後はこれは長い年月地道に繰り返すことで魔力量が増えていく……って寸法だ。

 

手軽に魔力を増やす方法は有るんだけど、えっと、うん……・・異性同士の目合<まぐわい>が手段だから……。

手軽だけど一番重い手段だ。

 

「ありがと、じゃあ明日はお休みね。それじゃジーク、おやすみー」

「ん、おやすみー」

 

お互いに手を振って別れてから、僕は少し悩む。

 

「…………明日なにしよう」

 

降って沸いたいきなりの休日。

その浪費の仕方を僕は思案するのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

「――――という訳です」

「なるほど、いつも平日に来るのに今日はどうしたのかと思ったらそう言う事か」

 

翌日、銃の手入れなどを一通り終わらせ、暇になった僕は『喫茶 翠屋』の休日限定のランチセットを食べながら今日の経緯をここのマスターと話していた。

 

海鮮……ドリル?ドリア?ドリヤ?……とにかくそんな名前のランチセット、初めて食べたけど中々に美味しい。

 

ここのマスターは“こっち側――世界の裏側――”の人だったから、気兼ねなく“そっちの”会話ができる。

結構、僕は翠屋にお世話になっているのだ。

 

しかも、ここのマスター――僕はマスターマスター言ってるが、ちゃんと“高町士郎”と名前がある。念のため――こっち側を引退する前は護衛を専門にしていたとか。

その都合で、僕は不慣れ――というかアリサが初体験――な護衛のコツを教えてもらっていたりした。

 

「ふむ、それにしても残念だ」

「……(もきゅもきゅ)?」

 

口の中がドリアで一杯なので、首をひねるだけで意志表示する。

 

「いや、うちの娘がジーク君と同じくらいの年だから、店に来ていたら紹介しようと思ってたんだが……あいにく今日は友達の家に行ってしまっててね」

「(ごっくん)……それは残念」

「まったく、タイミング悪く恭也も居ないとは……」

「……ご子息?」

 

見た目は若いマスターさんだが、そこそこ大きい息子さんが居るらしい。

 

「ああ。我が家に伝わる武道を修めていてな、ジーク君と話が合うと思ってたんだが……」

「(あむあむ)腕のほどは?」

「親としての甘い目があるかもしれないが、一流だな。既に奥義も会得している遣い手だ」

「(はふはふ……熱い)……俄然興味がわいてきました」

「ま、居ないものはしょうがない。またの機会があるさ」

「(……舌ヤケドした)そうですね。……ごちそうさまでした」

 

両手をあわせて小さく頭を下げる。

僕の国には無かった文化だけど、食事の風習に関してはその地の物を守るのが当然だろう。

 

「おっと、今コーヒーを淹れてくる。ちょっと待っててくれ」

「はい」

 

マスター士郎の後ろ姿を眺めながら、僕はこれからの予定を考えるのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

「……平和だ」

 

春先とはいえ、少し肌寒い風に晒されながら僕はつぶやく。

身動きせず、ただ一点を見つめ続ける。

 

「……へくちゅん」

 

僕は今、アリサの“しんゆー”の家の屋根の上に寝そべってアリサを見守っていた。

 

ただただ単純に、なにをするか思いつかなかったので、魔力を読んで――弟子の位置を把握することなどたやすい――アリサを探し、休日返上で護衛に勤しんでいるのである。

 

しかしながら、位置が悪くアリサを含め3人で会話しているのは分かるのだけど後の二人は背を向けているので顔が見えない。

 

とりあえず一見したところ、特に危険は無さそうだったので気を抜こうとした瞬間――――

 

「……ッ!」

 

――――背筋に寒さとは一線を画する悪寒が走った。

立ち上がろうとはせず、そのまま即座に横に転がる。

 

ほぼ同時、ついさっきまで僕の体があった場所に数本の針――と言っても裁縫用の物ではなく、投擲などに使う戦闘用の物だ――が深々と刺さっていた。

 

「……何か用でも?」

 

転がりながらその勢いで起きあがり、投擲者へ向きなおる。

同時に、魔法で異空間に格納していた、以前模擬戦で使った物干し竿を取り出した。

 

本当は拳銃を使いたかったんだけど、音が出るから確実に階下のアリサに気づかれてしまう。

それは避けなくてはいけない。

 

さいれんさーとか言う物があるらしいけど、あいにく僕は持ってないわけだし。

 

彼は僕の問いに答えず、問いを返す。

 

「いったいどこからそんな物を出した?」

「……答える義務なんてあります?」

 

僕は会話をしながらも落ち着いて相対している相手を観察する。

 

 

男性、年は……僕の倍くらい、20歳くらいだろうか?

両の手に一振りづつ短剣……いや、短刀を順手に構えている。

即応できるように程良く脚に力を蓄えて、機を伺っているようだった。

 

先の攻撃から鑑みるに、暗器も隠し持っているだろう。

 

「その年齢でここまで侵入してきたか……月村邸の警備は並大抵の人間には突破できない、それだけでお前が普通の人間じゃないのは明らかだ」

 

 

……僕は空を飛んでこの屋根に直接来たんだけど、その大層な警備は関係あるんだろうか?

……普通の人間じゃ無いことは認めるけどね。

 

というかそれ以前に、そんな警備を敷いてるこの館は何なのだろう?

彼はこの屋敷を守護する役職に就いているのだろうと、僕は当たりをつけた。

 

「目的は何だ!」

「…………」

「……黙<だんま>りか、いいだろ――――」

「――――……ずいぶんとおしゃべりですね」

 

僕は、相手の声にかぶせてそう言い放つ。

相手をいらつかせて冷静さを奪うのが目的だったけど、効果は早かった。

 

「フ……ッ!」

「……!」

 

一瞬で距離を詰めてきた彼の双刀と僕の物干し竿が噛み合い、火花が散る。

 

……結構驚いた。

彼からは魔力を一切感じない。

 

つまりは鍛え上げた自らの技量と肉体だけであそこまでの速度を出していると言うことだ。

 

そんなことを考えている合間にも、僕と彼の間では銀の閃光が縦横無尽に駆け、そのたびに橙の火花が周りに散る。

手足の間合いの広い彼は嵐のように。手足の間合いの狭い僕は体全体を使い、舞踊を舞うようにそれぞれの獲物を振るう。

 

鋼<はがね>同士の打ち合いが百を数えたあたりで彼がいったん距離をとった。

追撃はせず、そのまま相手を伺う。

 

「……存外保つな」

 

「……それは、お互いさま」

 

正直、予想外。

“故郷でのあの時”以来、腕の立つ者と戦うどころか、最近まで自主練習すら怠っていた僕の技量が下がっているのは予測済みだったけど、彼の技量の見積もりが甘かった。

 

魔法で速度や筋力を上げている僕とやり合えるというのは、にわかには信じ難い。

 

「……敵を褒めたくはないが、真っ直ぐないい剣筋だ。……いい師に学んだな」

「……そちらも、師に恵まれている」

 

師匠のことを褒められて悪い気はしない。

事実、彼の剣からは師の面影――言うまでもないけど戦い方の“雰囲気”であって短刀に“霊が憑いている”わけではない――が感じられる。

 

「そう言えば互いの名も流派も知らず戦いを始めていたな……」

「……確かに」

 

一騎打ち、しかも百合近く斬り結んでいるのに互いの名前、流派も知らないと言うのは極めて稀だ。

 

わずかに逡巡し、僕は口を開く。

今の僕にこの名を名乗る資格があるとは思えないけど、これ以外に名乗れる名前もない。

 

「……アルカディア騎士団流ま……剣闘術、ジーク・アントワーク」

 

……危うく、『“魔法”剣闘術』って言いかけた、あぶない。

 

「先に名乗りを上げたこと、感謝する。……俺は御剣流、高町恭也、推して参る!」

 

 

…………あれ?

 

 

 

ほんの少し前に聞いた名前に、僕は変な表情を浮かべたらしい。

彼がそんな僕の様子を見て怪訝な表情を浮かべた。

 

「……どうした?」

「……つかぬ事を聞くけども、お父上の名前は“士郎”?」

 

どうやら僕は、面倒くさい状況に陥っていたようだった。




旧話を各所改定してます。

ご意見ご感想、誤字脱字などありましたら、感想欄からお願いいたします。
また、幾つかタグを追加してますので、よろしければ確認をば。

そう言えば、15話と16話の投稿の間で、総合評価が3956ptから3870ptに下がったんですが……どうやって算出してるんでしょうね、これ?

あと、高校3年生は今日がセンター試験ですね。
落ち着いて頑張ってくださいな~(←当時、国語しかまともに出来なかった人)

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