魔法少女リリカルなのは ~若草色の妖精~   作:八九寺

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信じられないだろ、3ヶ月ぶりのお休みと思ったら、これから緊急でバイトに召集されるんだぜ……。

と愚痴りつつも更新;;

休暇が欲しい、連休なんて贅沢は言わないから1日でいい;;


12:魔法使いの杖

12:魔法使いの杖

 

カチャカチャ、カチャカチャカチャ

 

アリサが学校に行ってる間、僕は部屋に籠もり、ちょっとした工作を行なっていた。

朝から始めたのに、もう日は傾いて部屋の中を茜色に染めている。

 

カチャカチャ、カチャカチャカチャ……パチリ

 

「……ひとまずは、完成」

 

自分で引いた図面と見比べて、誤差が無いか綿密に確認を繰り返す。

……うん、我ながらいい仕事。

これで“外枠”は完成、後はコレに“力”を込めるだけ。

僕は懐から拳を縦に二つ重ねたくらいの大きさの水晶と、ナイフを取り出す。

水晶を机に固定して、動かないことを確認すると、ナイフを手首に当てる。

 

そして――――

 

「えい」

 

―――― 一思いにナイフを一閃した。

 

「わととと……」

 

僕は傷口から勢いよくあふれ出た血を顔に跳ねさせながら、受け皿に入れた水晶に掛けていく。

水晶と血が触れた場所が、ほのかに光を発した後に血を吸って紅く染まっていく。

 

「……こんなものかな?」

 

水晶が血を限界まで吸ったことを確認すると、僕は傷口を舐めて血を止める。

同時に、部屋の扉が開かれて、学校から帰ってきたアリサが顔をのぞかせ――――

 

「ただいま~……ってあんたは部屋で何をやってるのッ!? 何でアンタの周囲3メートルが殺人現場みたいにスプラッタな状況になってるのよ!? そこに正座して何やってたか話しなさい!!

やっぱその前に手に持った刃物置きなさい!!」

「……血溜まりに正座するの?」

 

流石にそれは、僕としてもご遠慮願いたいよ?

 

「~~~~ッ! ああもう! 血は止まってるみたいだから、お風呂に行ってさっさとその血を流してきなさい!! 話はその後で聞くから!!」

「ん。分かった、入ってくる」

 

確かに血は乾くと、こびり付いて落ちにくくなるから

 

「ちゃんと血をキレイに流してくるのよ!(……まったく、いきなり見たとき私がどれだけ心配したかも知らないで…………)」

「うん? 最後に何か言った?」

「言ってないわよッ! いいからさっさと入ってきなさい!」

 

これ以上怒鳴られないために、僕はそそくさと部屋を後にするのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

「…で、何をしてたのか正直に話してもらうわよ?」

「アリサにプレゼントを作ってた」

 

お風呂上がり、ホカホカ気分のまま正座で尋問される僕……“しゅーる”だ。

僕は今日1日掛けて組み上げたモノをアリサに差し出した。

 

「……これ……『杖』?」

「そう」

 

僕が差し出したのは、アリサの身長より長い金属製の杖。

さっき僕の血で赤く染めた水晶は、その先端に取り付けてある。

 

僕が使うんだったら装飾なんて付けないけど、女の子のアリサのために装飾をつけて見栄えをよくしておいた。

 

「綺麗な杖……でも、何で今更? 魔法の訓練を始めたときには渡してくれなかったのに」

「本気で僕と一緒に戦いに出るとしたら、アリサじゃ足手まとい。それを補うには、いい武器で底上げするしかないから」

 

……あーるぴーじー――当然だけど“携行型対戦車砲”のほうじゃない――と同じだ。

レベルも上げずにボスと戦うには、強い武器を手に入れるしかない。

 

「ふ~ん。……でもソレとさっきのリストカット……手首を切ってた事は何の関係があるのよ?」

 

……? ……ああ、そっか。この世界には魔法が存在しないから、分からないのか。

 

「……あれは、杖の材料として、血が必要だったから。魔術師の髪や血には魔力が宿る、魔法関係の武器や防具を作るときに血は比較的“ぽぴゅらー”な材料」

「へ~、ファンタジー物の小説なんかでもそういうのがあったりするけど、ホンモノがいうと説得力があるわね~」

「試しに持ってみて。……けっこう自信作」

 

久しぶりに作ってみたけど、腕が鈍ってなくてよかった。

 

「あれ? 意外と軽いのね? この杖、綺麗だけどゴツいから結構重そうなのに…」

「ん。鮫島に頼んで買ってきてもらった金属パイプとかを材料に『軽化』と『強化』の魔法を重ねがけして部品を作った後、溶接の魔法で杖の形に組んで、最後に先端に水晶を付けて完成。……材料たったの2980円」

 

☆材料内訳☆

ステンレスのパイプ ほぉむせんたーで購入

各部金属パーツ 同上

水晶 手持ちの材料

 

☆作り方☆

1.完成像を思い浮かべます

2.パーツを力技――筋力強化の魔法――で“くにゃ”っと好みの形に加工します。

3.パーツに『軽化』・『強化』の魔法を“これでもか!”というほど重ねがけ。

4.溶接の魔法でパーツをくっ付けて、外郭は完成

5.ナイフと、水晶を手元に用意します。

6.ナイフを手首に添えて“すぱぁっ”っと切ります。

(※注意1 躊躇うと逆に危ないので一気に行きましょう)

(※注意2 止血できる準備をしておきましょう、失敗しても責任は取れません)

7.血が新鮮なうちに水晶に掛けます。

8.紅水晶が完成したら止血し、水晶についた余分な血を落とします。

9.紅水晶を4で完成した外郭へ組みこんだら完成です。

 

「安っ!? 下手したらお昼のショッピング番組の商品より安いわね!? ……そんな材料でいい杖なんて出来るの?」

 

うん、まぁ、普通の魔術師が作ったんだったらダメだけどね――――

 

「ゲームで例えるなら、クリア後に手に入るオマケ武装並みにいい杖だよ?」

 

――――杖の核が……もとい血の格が違うから。

 

「何そのチート武器!?」

 

アリサが唖然とした表情で僕を見ている。

……ちょっと、恥ずかしい。

 

「材料費は2980円、だけど売ったら小さな国一つ買えるから」

 

僕は控えめに胸を張って自慢する。

この体に流れている妖精の血は、それくらいの価値がある。

元いた世界で僕を追っていた人間の中には、僕を生け捕りにして一儲けしようという集団だっていたんだから。

 

そんなことを思い出しながらも、表情には浮かべない。

 

「うわぁ……スゴイのねこの杖。……でもいいの? そんな貴重な杖を貰っちゃって」

 

……価値を知って怖気づいたのか、腰が引けているアリサの姿を見て楽しんでなんか無いよ?

 

「構わない。アリサは友達、だから対価は要らない」

 

僕はアリサに杖を押し付けた。

僕には無用の長物、殴るくらいにしか用途が無い。

 

ちょっと躊躇うそぶりを見せたけど、アリサは一度頭を振るとそれを受け取った。

 

「ありがたく使わせてもらうわ」

「それでいい」

 

これがいま僕に打てる最高の手段。

後は、僕がどれだけ上手に“闘い方”に教えられるかと、アリサの努力しだい。

 

本当は、一ヶ月くらい掛けて基礎から鍛え上げたいけど、いつ次の事件が起こるかわからない以上しょうがない。

 

「後でアリサの戦装束を作るから、それが終わったら技術や理論を後回しにして戦闘訓練を始める。1週間でとり合えず戦いに出せるくらいには鍛えるつもりだから、覚悟して――――」

 

――――臨(のぞ)んで欲しい。

 

そう繋げようとした僕を、アリサの言葉が停めた。

 

「――――5日よ、どんなに厳しくてもいいから5日で教えて。」

「いや、それは――――……わかった」

 

……もちろん最初は止めるつもりだった。

けど、アリサの目を見てやめた。

 

あの目に宿ってる意思の光は、ホンモノだ。

 

その意思を頭ごなしに止められるはずも無い。

 

「明日から5日間、習い事やお稽古は全て断って。学校から寄り道しないで帰ってくること、……それが5日で教える条件」

「わかったわ、明日からヨロシクね。……『センセイ』って呼んだほうがいいかしら?」

 

「……別に名前でもどっちでもいい、だけど『師匠』の方が好み」

 

…………取り急ぎ、明日からの練習のため今日は徹夜で針仕事――アリサの戦装束造り――に打ち込む必要がありそうだった。

 

 




2013/6/22 改訂済み

さて……アリサをどれだけ強くしてみたものか…。
戦闘スタイルは、とりあえず物理型(?)魔法使い。

亀更新ですが、ご容赦いただけると幸いです。
また、ご意見ご質問などあればどうぞ。
くだらない事から裏設定まで、出来うる限り細かくお答えいたします(感想欄など参照)

ではまた次の更新でお会いしましょう ノシ

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