あたしと弱味と仮彼女:R   作:近衛龍一

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らぶ……すとー………りー…?
厄日フルデイズ


あの廊下での衝突事故から一週間。

あたしは事あるごとに水谷君を目で追っていた。

別に変な感情があるわけではない。

ただ今まで気にもしなかったから少し知っておこうと思っただけだ。

 

簡単に言うなら完璧人間。

悔しいけど、あたしより完璧。

現段階で問題点は性格だけだ。

愛子の言うとおり顔良し頭良し運動神経良し。

どこを取っても男子の中ではトップ。

そういえば清涼祭じゃ水谷君と三浦君のおかげで売り上げが伸びたって言ってたっけ。

クラスの男子とは仲良く話してるんだけど、友達……というより本当にクラスメイトって感じ。

自分から話しかけにはいかず、話しかけられたら話しているみたいだった。

それ以外で一緒にいるのは三浦君だけだから彼だけが友達なのだろうか。

おまけ情報で愛子から聞いたんだけど、過去に付き合ったことはないらしい。

言い寄られはするものの、全部軽くあしらってるんだって。

何様かっての。

結論から言うと水谷君対しての印象は変わらず、馬に蹴られて死ねばいいと思っている。

 

というわけで水谷君とは話すことすら嫌なため、あれからーー元々話したことなんてないのだが、一言も話していない。

なのに、なのに今何故あたしは……

 

「ちょっと……キス……!?」

「み、水谷君……本当にその子と……?」

 

なんで、こんなやつにキスをされているのだろうか……?

いや、本当はそんなことすら言ってる余裕はない。

とりあえず、自分でも状況を整理したいのでさいしょから、順を追って説明したい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

それは極々普通の平日、放課後のことだった。

 

「はぁ……今日数学の宿題が出てることすっかり忘れてたわ……」

 

図書室でしばらく自習した後、部活終わりの愛子に会って話していたら、今日数学の宿題が出ていることを思い出した。

模範生なる者が宿題を忘れるわけにはいかない。

面倒だけど教室まで戻って今取ってきたのだ。

思い出しただけ良かったので愛子には感謝したい。

だけど時間も時間で生徒もちらほら程度。

部活動生が多い文月学園でこの人の少なさは中々見ない。

 

「早く帰ろう……」

 

春も過ぎようとしているのに心なしか肌寒い。

近道しようと、あたしは校舎の裏側へと回った。

この後自分が人生最大の後悔をするとも知らずに……。

 

『……から………っすよ』

『……もさ………は………じゃん?』

 

通路の角。

若干聞こえる人の声にあたしは足を止める。

いつもなら厄介ごとに巻き込まれないように面倒してでも遠回りするのだが、今日はただでさえ帰るのが遅れている。

ここまで来たのだし、出来るならばこの道を通りたいところだ。

だけどこの時間、こんな場所で話しているとなれば誰かに聞かれたくない話かもしれない。

二つの考えがあたしの中で葛藤を生み出し、あたしは少しだけ話を聞くことにした。

壁から少しだけ頭を出し、耳を傾ける。

 

「だから言ってるじゃないっすか。俺には彼女がいてですね……」

「嘘だぁ〜。だって水谷君女の子と遊ばないって言うじゃん?」

「しつこいっすよ先輩? 遊ばないだけで本気の恋愛くらい俺でもしますって」

「だけどぉ〜、水谷君に見合う人なんてそうそういないよ?騙されたり脅されてるだけじゃない?私たちが見極めてあげるよ」

「余計なお世話っす……」

 

状況把握には充分だった。

今水谷君が三年の先輩に絡まれてる。

そして嘘か本当か、水谷君は彼女がいると証言。

先輩達が疑いつつ水谷君を逃がさないってわけだ。

たったそれだけの話。

正直、水谷君に彼女がいようがいるまいがどうでもいいし、あんなやつ助ける気にもなれない。

けれどもここで通れば変に絡まれる可能性は高い。

瞬時のそろばんがあたしの脳内で弾かれ、すぐにその場を去ることにした。

だけど、それは一瞬遅かったらしい。

 

優子(・・)っ!!」

「………え?」

 

突然呼ばれたあたしの名前(・・)

誰かがこちらに来る足音。

肩を掴まれる感触。

これらが今全てあたしに起こっているだと……?

少なくとも掴まれた肩に力が入っていることはあたしの勘違いではないはずだ。

ゆっくり振り返ると、と〜〜〜〜っても笑顔の水谷君。

掴んだ力を緩めることなく角を越え先輩の前へと引きづられた。

あたしだけでなく先輩達の方もどうやら今の状況を眺めることしか出来ないらしい。

なんて、意外と冷静なことを考えていると、水谷君の口から衝撃的な言葉が飛んで来た。

 

「こいつです。俺の彼女、木下優子」

「「え………?」」

 

思わずあたしも声が零れた。

こ、こいつ今なんて……?

というか、いつの間に肩を抱き寄せられている……!?

肩がそいつに触れていることに気がついて、あたしはさっきの発言を訂正しようと水谷君の方を向いて口を開けた。

そしたら、既に水谷君の顔があたしの目の前にあってーー

 

「ちょっと……キス……!?」

「み、水谷君……本当にその子と……?」

 

考えたら今日は散々な一日だ。

朝から目覚め時計が止まってて、秀吉の方も今日に限って寝坊してたからあたしも遅刻しかけて。

休憩時間中に何もないところで転んで恥をかいて。

体育のバレーの時間では離れたコートから飛んできたボールが後ろ頭に当たって。

放課後、宿題を忘れて。

そして水谷君に人生初めてのキスをされている。

本当に、今日はなんて厄日だろうか。

かくして、話は冒頭に戻るのだった。




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